今年も『トリコロールの旗を掲げて』をよろしくお願い致します。
パーパルディア皇国から850海里
「司令官、作戦海域到着まで2日です」
「了解。………さっきも聞いたがソナーに反応は?」
「どの艦にも反応はありませんでした。やはりパーパルディア周辺海域にいる可能性が高いと思われます」
「わかった。監視を続けてくれ」
数日連続の反応無しに、司令官はため息をつく。
彼は机の上に置かれた現地のスパイが撮った写真に視点を落とす。
そこにはロウリア制圧戦で艦載機を発艦させる『シャルル・ド・ゴール』が写っていた。
この他にも周囲に展開する『フォルバン』や『あきづき』の写真もあった。
「………接触したら攻撃か……。このプロペラが無い戦闘機や巨大空母に勝てるのか……?」
司令官は自信がなさそうに呟く。
この写真はもちろん軍の上層部も確認しており、仮に戦闘を行った場合『我が軍と互角、少なくともケイン神王国を上回る』という結果が出ているが、多分勝てるだろう、と上層部は考えているので接触時の攻撃許可が出されたらしい。
周辺に駆逐艦クラスがいなく全て巡洋艦なのも気になるが主砲が最大でも二基しかないのが疑問だ。
「護衛の巡洋艦なら余裕そうだが………」
「………空母は我々より運用能力が高いのは確定ですね」
「……君もそう思うか」
「ですが本当の問題は……」
フランス本国の位置がわかっていないというところである。
現在確認されている空母は三隻。
本国にはまだこの大型空母が大量にいる可能性がある。
彼らも上層部も同じ事を考えている。
「まぁ、列強の一角も落とせて我々の支配下ですし、多少苦戦する可能性も少しはありますが余裕でしょう」
「そうだな。………では、予定の航路を逸れないようにこのまま進め」
グラ・バルカス海軍本国艦隊第37地方隊の二十隻はパーパルディア皇国周辺海域に向けて進み続けた。
街の所々から黒煙が上がる。
そして至る所から銃声、爆発音、人の叫び声が響いていた。
「ルクレール各車、
「
「
高台に陣地取った第2機甲旅団・第501戦車連隊のルクレール12両がパラディス城周辺のリントヴルムに向けて
命中したOECC弾はメタルジェットを噴き出し、リントヴルムの皮膚を貫き、体内で火薬を起爆させた。
もちろんその爆風に生物の体が耐えられるはずもなく、リントヴルムは内側から弾け飛んだ。
肉片と共に砲弾の破片が飛び散り、周囲の皇国兵を引き裂いていく。
「着弾確認、目標撃破しました!」
モニターで状況を確認している下士官が連隊長に報告する。
画面には赤く染まる地面と所々に落ちている四肢や肉塊が写っていた。
モニターを覗き込んだ連隊長が眉を顰める。
「これは………酷いね。なんと言うか……一方的だ」
「連隊長、旅団司令部からです。『南西方向から敵一個大隊がそちらに向かっている』とのことです」
「敵部隊確認しました!距離16kmです!」
小型ドローンを操作している士官が報告する。
「第40砲兵連隊へ、こちらに向かってくる敵部隊を確認した。榴弾砲支援を要請する」
『了解。攻撃まで30秒』
『
「了解。全門へ、弾種は
丘の上に展開している第40砲兵連隊のカエサル 155mm自走榴弾砲にBONUS砲弾が装填される。
その周りでは隊員たちが射角などを調整していた。
「射角、方位よし!」
「
「
一斉に155mmの砲弾が空に打ち上がる。
やがて勢いが落ちた砲弾は重力に引っ張られ、皇国兵めがけて落ち始める。
砲弾が目標地域上空に到達すると、タイマー信管によって2個の子弾が放出された。
子弾はリントヴルムを戦車と認識すると自ら着弾地点を調整し、その巨体を貫いて爆発する。
「スプラッシュ!全弾命中です!」
「よくやった!敵の状況は?」
「奴ら、慌てて逃げ出していますよ!」
その時、無線に朗報が流れてきた。
『作戦行動中の全部隊へ、第11落下傘旅団が敵の大規模基地を制圧、制空権を完全に確保した。これより第3航空団より近接航空支援を開始する。全部隊へ、前線を押し上げろ』
「聞いたな?全隊員へ、これより作戦をフェーズ2に移行する。今から我々は城の制圧を担当する特殊作戦旅団の援護を行う。第501戦車連隊は前線に移動。第40砲兵連隊は応援として来る第1砲兵連隊と合流しろ」
『RAVAGE 1-1,
『
隊長のルノーは周りの隊員を見回して一人一人の表情を見る。
今回はロウリア制圧戦でハーク城に突入したメンバーが選ばれた。
全員が実戦を経験しているので緊張の表情は見られなかった。
『こちら地上班!敷地内への突入を開始した!敵の抵抗が激しくて降下地点の安全を確保できない!』
「了解、スモークを焚いてくれ。それで降りれる」
『スモークを展開する!』
「よし!総員降下開始だ!」
ドアが開きロープが降ろされる。
隊員たちは白い煙の中に降りていく。
ルノーも機長に礼を言い降下すると外の皇国兵は一掃されていた。
「スモーク、感謝する」
「いや、お前らが降りなければ負傷者が増えていただろう」
ルノーは地上班の隊長と改めて突入の確認を行う。
その時、唐突に城の扉が開き、赤髪の男が飛び出してきた。
すぐに隊員たちがMP5を向けると慌てて両手を上げた。
「う、撃たないでくれ!わ、私はムー国大使のムーゲだ!」
「大使?」
「前進中に大使館員がたまに保護されているぞ」
「ほ、本当だ!決して敵ではない!証明できる物はある!」
「………とりあえず武器がないか確認してから保護するか」
「
『了解した。これで4カ国目だ』
「4カ国目……?』
首都なんだからもっと大使館があるはず……、我々の攻撃に気づいて逃げたのか?
ルノーはそう考えるが、銃声と共にその考えは消えた。
「コンタクト!」
「フラッシュバンを投げろ!突入する!」
皇国兵の視界が白く染まる。
「な、何だこれぇぇ!」
「目がぁぁ!」
「さ、退がれ!退がれぇぇ!………うわぁっ!」
「て、敵は見たこともない魔法を使ってきた!応援を要請s……」
「捕虜は取るな、ですよね。隊長」
「ああ、その通りだな」
「ルディアス様!早くお逃げを!城内に侵入されましたぞ!」
「わかっている!早く城を出て逃げるぞ!」
周りにいる衛兵に急かされながらもルディアスは逃亡の準備をしていた。
『ルディアス様!あと数分だけであれば敵を食い止められます!早くお逃げくだs……ぎゃぁぁぁ!』
『裏口に敵が侵入した!後退する!……おい!後ろ!敵がすぐ………』
「一階からは出られません。窓から降りるしか……」
「わかった!降りる!降りるぞ!」
(私には世界を征服する使命があるのだ!こんなところでは死ねない!)
護衛の衛兵たちが先に飛び降りていく。
ルディアスも意を決して三階から飛び降りた。
「……うぐっ!……はぁ、はぁ、た、助かった……」
「前に敵が!ルディアス様!隠れt……」
ルディアスを庇った衛兵の頭に銃弾が命中し、衛兵は事切れる。
その衛兵の犠牲もあり、ルディアスは物陰に隠れられた。
「クソッ!まさかもう城が包囲されているなんて!」
「これから一斉射撃により敵を怯ませます!その隙にあちらの物陰へ!」
衛兵が数メートル先の小屋を指差す。
そして衛兵たちはマスケット銃を構えると
「今です!」
一斉に発砲した。
それに合わせてルディアスも走り出す。
完璧なタイミングだった。
飛び出す瞬間が
VAB装甲兵員輸送車に搭載されていたM2重機関銃の12.7mm弾がルディアスの頭を貫通する。
衝撃に耐えられなかった頭は首と別れて肉片となり飛び散る。
ルディアスの視界は自身の持つ野望と共に一瞬で闇に染まった。
「ルディアス様ぁぁっ!……おのれ蛮族めぇぇ…うがっ!」
重機関銃の制圧射撃に耐えられなかった壁に穴が空く。
皇帝の護衛たちも彼の下に送られた。
彼らに死を届けたM2の射手が後輩に聞く。
「よし!敵は全滅か?」
「そのようです。そろそろGIGNがこの国の皇帝を捕まえる頃じゃないですか?」
「そうだな!」
「……隊長。どこを探してもいないんですが」
「え?もう城を制圧して30分経つぞ!?どこかに隠し部屋らしきものがあるのか?」
「とっくに逃げたのでは?」
「それは困るなぁ……」
部下の報告をルノーは近くの椅子に腰掛けたまま聞いていた。
先程から城内のどこを探してもルディアスがいない。
やはり知らぬ間に逃げて行ったのだろうか。
「ルノー少佐!作戦本部から全部隊あてに連絡です。『作戦をフェーズ3に移行する。皇都にいる全部隊は撤退せよ』との事です」
ついに始まるなぁ、とルノーは呟く。
そして部下を集めて中庭に着陸したカラカルに乗り込んだ。
パリ・エリゼ宮 大統領執務室
「ついに我々はこの手段に出るんだね。ド・ウィル参謀本部長」
「その通りです。大統領。……後戻りはできませんぞ」
シュヴァリエは気を引き締めるとド・ウィルを真っ直ぐ見つめ、軽く頷く。
ド・ウィルはそれを見て一息つくと
「では、改めて。
―――大統領。パーパルディア皇国、皇都エストシラントおよび工業都市デュロへの核兵器使用許可を」
読んでくださりありがとうございます。
今回カエサル 155mm自走榴弾砲が使用したBONUS砲弾は子弾が二つ内部にありますが、オスロ条約の例外規定を満たしているのでクラスター爆弾ではありません。
そろそろフランスの登場人物設定でも書いてみようかなぁ、と思っています。
設定にも色々追加予定なのでお楽しみに。
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