トリコロールの旗を掲げて   作:理由もなく歩く人

22 / 26
20. クーズ王国沖海戦 後編

「…………は?」

 

『カール・ヴィンソン』の士官室で艦橋に設置されたカメラの映像を見ている、ミリシアルの在パーパルディア大使、ルネウの口から呆けた声が漏れる。

なぜなら、今パソコンの映像にはコア核が使用された後のキノコ雲とそっくりなものが映っているからである。

 

「……コ、コア魔法」

 

エモール王国の大使、スマラも目をこれでもかと見開いている。

 

「……皆様、画面に顔を近づけてみると目が悪くなりますよ」

「体調にお変わりはありませんか?」

 

その時、士官室の扉を開けてロシュフォールとエステルが室内に入って来る。

その二人の姿を見ると、ルネウとスマラが駆け寄ってきた。

 

「な、なんなんだ!?あの兵器は!魔帝のコア魔法と同じではないか!」

「……き、貴様ら魔帝の手先か!」

「魔帝?コア魔法?……なんです?それは」

 

エステルは驚き後ろに下がるが、ロシュフォールは微笑みを顔に貼り付けたまま聞き返した。

 

「コア魔法と言うものは存じませんが、あれは核兵器と言う、科学で作られた物です。魔法ではありません」

「か、科学がそんな物を作れるはずがない!」

「そうだ!科学を使う国は後進国だ!」

「は?……なんだと竜人が!」

 

スマラの発言がムーゲの怒りを買い、収集がつかなくなる。

ロシュフォールはため息を吐くと、ゆっくりと喋った。

 

「………皆様、落ち着きなさい。質問にはしっかりと答えますから、ね?

 

ロシュフォールの声が空間を支配する。

エステルは懐かしいなぁ、と思いながら紅茶を淹れていた。

 

「それでは、質問をどうぞ」

「………私から…しっかりと国に帰していただけますよね?」

 

ムーゲの質問にロシュフォールは深く頷いた。

 

「はい、もちろんです。我々は皆様を保護しただけであって、このパーパルディアとの問題が解決次第、すぐに帰国できるように手配します」

「……貴国は本当に科学で発展してきた国なのか?魔帝との関わりは本当にないんだな?」

 

スマラは竜人族の身長の高さを利用して威圧をかけながら聞く。

エステルは軽くビビるがロシュフォールはにこやかに対応した。

 

「もちろんです。そもそも、我々は“魔帝”と言う言葉は初めて聞きました。……ねぇ、エステル?」

「…は、はいっ!初めて聞きました!」

 

ロシュフォールはクワ・トイネとの会談の一部で“古の魔法帝国”は聞いたが、“魔帝”とは聞いて無いのでそう返す。

スマラは怪しい目を向けるが嘘ではないと捉え、椅子に座った。

 

「……最近はグラ・バルカスがそうだが移転国家と名乗る国がこれで二つ目か」

「グラ・バルカス?」

 

ルネウがぼそっと呟く。

初めて聞く国の名前にエステルが聞き返す。

 

「……第二文明圏の西側に移転してきた国だ。レイフォルと言う列強最弱を一日で滅ぼした国だ」

「一日ですか……そのグラ・バルカスと言う国の兵器の写真はありますか?」

「先週ぐらいに本国から送られてきた写真ならある。……これだ」

 

ルネウは自分のカバンの中から一枚の写真を取り出した。

そこには第二次大戦で大日本帝国が建造した大和型戦艦が写っていた。

 

「……大和」

「や、やまと?……よくわからないがこれはグラ・バルカスの主力戦艦だと思われる」

「……我々も戦艦が必要そうですねぇ」

 

ロシュフォールはそう呟くと、エステルと共に士官室を後にした。

残された三人は外交官らしくすぐに落ち着きを取り戻し、情報の整理を始めた。

 

「……フランス共和国、……かなりの国力を持った国だな。下手したら……列強を超えるぞ」

 

ネウルは声を絞り出すように言う。

他の二人も頷いた。

 

「おそらくパーパルディアに代わり、五大列強入りするのではないか?」

「それは確定事項ではないか?こちら側に入れればグラ・バルカス帝国への抑制となる。ただ……」

 

ムーゲはパソコンの画面に映るキノコ雲を見る。

 

「間違っても敵対はしたくないな」

 

三人は本国に伝えるための資料などを作成し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃てぇ!」

 

司令官の号令と共に重巡ヒアダムの20.3cmが一斉に火を吹く。

 

「次弾装填!急げ!」

「射程に入った艦は撃ち続けろ!」

 

二回目の斉射も装填が完了するとすぐに発砲するが、最大射程ギリギリなので全く当たらない。

全く当たらない砲撃に痺れを切らした司令官は次を命じた。

 

「航空隊を出せ!空爆で沈めろ!敵の対空兵装は少ないぞ!」

「『スローン』と『ボイド』に連絡!航空隊を発艦させろ!」

 

二隻の軽空母から合計36機が飛び立つ。

 

「『駆逐艦ケフェウス』より連絡、作戦海域を離脱できたようです」

「これでフランスの兵器を本国に教えることができるな。よし、全艦、『ケフェウス』の時間を稼げ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コンタクト!方位045、距離19に多数の未確認機を確認。高速で接近中!」

 

『ウィリアム・P・ローレンス』のCICでレーダー員から報告が入る。

レーダーには敵艦隊から離れる36のマークがあった。

 

「『シャルル・ド・ゴール』から対空戦闘指揮権の譲渡を確認。TAO(対空戦闘指揮官)、対空戦闘を開始せよ」

「了解。目標を識別せよ」

「目標群、敵と確認しました」

 

36機も来る時点で友好的な存在とは思えない。

そう判断し、すぐに敵と認定した。

 

「イージスをオート・スペシャルに設定。全武器使用許可!」

 

36機となると人力で捌ききれるかわからないため、TAOはイージスシステムを自動にした。

 

「SM-2、1番から12番を発射!目標1001から1012までと交戦中」

 

レーダーに映っていた先遣隊と見られる12機が消える。

 

「SM-2、全弾命中!ESSM発射!15マイル以内に漏れてきた目標へ対処」

 

前甲板のVLSから24発のESSMが白線を引いて飛び立つ。

 

「巡洋艦Aから砲撃です。数8………外れます」

「……うざいな。総員対水上戦闘配置、対空戦闘指揮権を『ダンケルク』に譲渡」

「了解、『ダンケルク』に対空戦闘指揮権を譲渡」

「対艦ミサイルが残っている艦は?」

「……敵艦が多かったのでほとんど残っていません。本艦と『アミラル・ルゾー』のみです」

 

艦長の顔が苦虫を噛み潰したようになる。

レーダーに映っている敵艦は19。一隻離脱したが、こちらは二隻で12発しか撃てない。

だからと言って第二次大戦の巡洋艦相手に砲撃戦は行いたくない。

『ダンケルク』の6インチ砲も重巡相手には厳しいかもしれない。

 

「敵砲弾への警戒維持。攻撃目標、AからD。方位270、距離18マイル」

「了解。NSMシステム、オンライン。目標諸元をキャニスターに転送……。ウェイポイント地点を設定、射撃解よし。ターゲットロック。シーカー準備完了!」

「撃て!」

 

艦中央に設置された四角いボックス状のデッキ・ランチャーから、轟音と共にオレンジ色の火炎が噴出した。

固体ロケットブースターが点火し、重量400kgを超えるNSMが、キャニスターのフロント・ハッチを突き破り、白煙の尾を引いて大空へと突き進む。

数秒後、ブースターが切り離され、ミサイルの腹部から三角形のエアインテークが露わになる。

小型ターボジェットエンジンがハミングを開始し、折り畳まれていた主翼がバネ仕掛けで展開された。

 

NSMはシースキミング高度まで降下した。

 

「巡航速度M0.9を確認。目標まで数マイル、IIRシーカーアクティブ」

「目標識別。パターンマッチング完了。エイムポイント(着弾点)を水線下のエンジンルーム直上に設定」

 

NSMが重巡ヒアダムのエンジンルーム目掛けて吸い込まれるように進む。

あとは着弾を待てば良いだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次弾装填完了!照準再確認よし!」

「撃てっ!」

 

おそらくこれで二桁目になるであろう斉射が行われる。

全艦で数百発を撃っても、まだ一発も相手に命中していなかった。

 

「全弾外れます!」

「いい加減当たれぇ!次弾装填急げ!」

「駆逐艦『ステファン』より報告!砲身が熱でやられました!」

 

先程から冷却無しで撃ち続けているため、各艦からの砲撃不可能の連絡が多くなってきた。

 

「駆逐艦は砲撃中止!魚雷戦への準備へ移れ!」

 

新たな命令を出したその瞬間、右を進む巡洋艦『ソンブレロ』の艦中央が吹き飛んだ。

 

「『ソンブレロ』、大破!速度が落ちます!」

「な、何が起きた!」

 

続けて左と後方を進んでいた巡洋艦二隻も同じように艦中央が大爆発を起こす。

左を進んだ巡洋艦『マター』は爆発轟沈した。

 

「『マター』沈みます!『ラニケニア』、航海不能!」

「どういうことだ!攻撃を受けているのか!?……うわぁぁっ!」

「ほ、報告!機械室消滅!浸水が止まりません!」

 

急激な浸水に艦が傾き始めた。

自己判断で海に飛び込む乗組員もいる。

 

「総員退艦!全艦に連絡、作戦中止!負傷者を救助し撤退しろ!」

 

命令を受けた駆逐艦が近寄ってくる。

だが、その駆逐艦も突如大爆発を起こし轟沈した。

 

「ほ、報告!駆逐艦八隻が沈みました!残っているのは空母含めた四隻のみです!」

「……な、なんだと!?フランスは百発百中の砲弾でも持っているのか!?」

「わかりませんが司令官!早く退艦しt」

 

第37地方隊の旗艦、重巡洋艦ヒアダムはNSMの着弾によって起きた火災が弾薬庫に引火し、艦全体が粉々に爆発して沈んだ。

残った空母と駆逐艦には『ダンケルク』の155mmが降り注ぎ撃沈した。

 

フランスによる核攻撃の様子を撮影したフィルムを持った駆逐艦『ケフェウス』は数日後に本国へ帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国・聖都パールネウス

 

 

「エストシラントとデュロが吹き飛んだ!?」

 

部屋の中でカイオスの声が響く。

 

「おそらくフランスの攻撃かと……皇帝陛下を含めた首脳陣の行方はわかりませんが、死亡したかと……」

「しかし、これで捕える人数は減ったな」

「カイオス様、パールネウスの皇国軍は全て我々の指揮下です。アルーニの軍はエルト様が掌握しました。ご命令一つで残党を制圧することができますぞ」

 

カイオスは椅子から立ち上がると、自分が着ている服を整える。

 

「………さあ、始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。

もうすぐパーパルディア皇国編も終わりです。
次は列強各国との外交などが増えると思います。

感想、評価、お気に入り登録よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。