最近月一投稿になっているので危機感を抱いています……
ロウリア王国 首都ジン・ハーク
「……前に来た時よりも街並みがずっと変わっているね」
「ロシュフォールさんはロウリア外交を担当されていましたもんね」
「その通り。………少々嫌なこともあったけどね」
ベランジェの質問にロシュフォールは苦笑いしながら答える。
二人は今日、あることでロウリア王国から招待され、迎えが来るまでジン・ハークの街並みを探索していた。
戦後、フランス政府が行った(強引な)企業進出により、ロウリア王国は急速な発展を遂げていた。
街だけでなく、ありとあらゆる物が近代化し始め、最盛期のパーパルディアを超えそうな勢いだ。
「……しかし、ついこの前までは敵であったのに、何と言うか………友好的な振る舞いですね」
ベランジェは建物の二階から手を振る子どもに向けて、笑顔で手を振り返しながら言う。
ロシュフォールも同じく笑顔を向けながら答えた。
「……この国の国民が
誰でも嬉しいんじゃないかな」
「……そうだと良いですね」
二人は話しながらさらに街の中を進む。
活気あふれる市民たちがいる中、企業関係者や国家憲兵隊員など、フランス人もよく見られた。
「まだロウリアへの憲兵隊派遣は終わらないんですか?」
「まだ治安は不安定な部分も多い、それに多くの邦人もいる。当分は続けると思うよ」
「……早く治安回復して、子どもたちが遊べるようになって欲しいんですが………」
ベランジェはモヤモヤとした気持ちで話す。
元々、首都制圧戦を行ったのはフランスだ。
国王だけを拘束していれば市街地の被害は少なくなっていたかもしれない。
市民の安全を侵す必要はなかったのではないか。
けれど、首都を攻撃しなければ城に突入した
ロウリア軍は大規模な反転攻勢を起こすことが可能な兵力を残していた。
首都という、国で最も重要な都市を陥さなければ戦闘は続いていたかもしれない。
フランス国内のニュースでもこの内容はよく議論されている。
“
ただ、この答えは誰にもわからない。
突然喋らなくなったベランジェにロシュフォールは声をかける。
「…………悩み事かな?私で良かったら聞くよ」
「…あぁ、すいません。少し、………ロウリアとの戦闘は、どっちが正しかったのかって」
彼の悩みにロシュフォールは立ち止まり、腕を組んで考える。
しばらくすると、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「………難しいね。私が思うには、戦争は悪い方なんて存在しないと思っているよ」
「どうしてですか?」
「国同士が陣営を組み合い、その両陣営が戦う、これが戦争だね。
片方はもう一方を敵と見做し、悪と決める。
戦争は恨みじゃ戦えないんだよ。
どの兵士も自分の背後にあるものを命を懸けて守りたいから戦う。
その背中に守られている人からすれば、その存在は正義だ」
ロシュフォールは続ける。
「お互い、守られている人から正義と呼ばれている存在に、善悪をつけられるかい?」
「………自国を思って戦った人たちの前で、そんなこと決められませんね」
「そうだろう?………ただ、矛盾するかもしれないけど、
どうしても、“勝てば官軍、負ければ賊軍”になるのが争いなんだよ」
ロシュフォールの言葉にベランジェは複雑な気持ちになる。
「エステルにも教えたけど、会談を行う時は決して、相手が格下だとか敗戦国だから、と言った
理由で相手を見下してはいけないよ。
対等な存在として、同じ場所に立つ人間として相手と話し合うんだ。
それができないなら、その人間に外交を担当する資格は無い」
「………大統領がパーパルディア外交前に僕に言ってきた事と同じですね」
「そりゃそうだろう」
「……え?どういうことですか?」
ロシュフォールは、知らなかったのかい?と言いそうな表情をする。
「大統領は元外務省だよ。それも私の課にいたんだから。生意気な部下だったよ」
「マジっすか…」
ロシュフォールから外務省時代のシュヴァリエに対する愚痴を、迎えが来るまで聞かされる
ベランジェだった。
「――で、一番大変だったのがアメリカ大使との会談だったよ。
あれほど見せる資料を間違えるなと言ったのに、今年の軍事費のグラフを間違えて
二年前のグラフを持ってきたことだね。あの時は肝を冷やしたね」
「それは大変でしたね………あ、着きましたよ」
疲弊したベランジェが車窓からの景色が変わったことに気づき、ロシュフォールに知らせる。
その目はどこか嬉々としていた。
「おお、最近は色々なことがありすぎて何年か経ったように思えるよ」
「……本当に色々ありましたね。
ところで……クワ・トイネやクイラの代表団はまだ来てないようですね」
周りを見回しながらベランジェは呟く。
「侵略されてなくても関係は良いとは言えなさそうだったからね。
招待を蹴ったか、わざと遅刻しようとしているのかな」
「たまにあるやつですか……」
実際、会談を行う際などにある遅刻や不参加もよくある事だ。
現実でも遅刻で有名なロシアのプーチン大統領は最大で8時間遅刻した例もある。
「どの世界も外交は変わらないのかもしれないねぇ………」
「……ロ、ロシュフォール殿!お待たせしてもっ、申し訳ありません!」
「ああ、リンスイさんでしたか。
そんなに急がなくても、遅刻ではありませんよ」
駆け足で二人のもとに来たのはクワ・トイネの外務卿、リンスイだった。
その後ろからクイラのメツサルもやってきた。
「二カ国で招待を受けるかどうか決めていましてね。
フランスも参加しないだろうと思っていたら、まさかのあなた方が現地入りしていると聞いて」
リンスイとメツサルの話によると、フランスから戻ってきたロウリア34世は速攻で二カ国に行き、
政府首脳陣の前で侵略を計画していたことについて土下座で謝罪してきたらしい。
その後、何度か会談を行い、関係は良くなっていると言う。
「是非ともロウリア王を改心させたシュヴァリエ大統領に直接感謝をお伝えしたいのですが……」
「もちろんです。大統領もお二人に会うことを楽しみされていると思いますよ」
「外交官の皆様!城内の準備が整いましたので御入りください」
礼服らしき服を着た案内役が城内から出てくる。
「それでは、行きますか。
――国王の就任を祝いに」
「久しいな、ロシュフォール外務次官」
「お久しうございます、陛下。
私も陛下がお変わりないようで喜ばしく思います」
「そう固くなるでない。
私は其方に謝罪しなければならないからな」
ハーク・ロウリア34世は恭しく頭を下げるロシュフォールを止め、自ら頭を下げた。
「フランスではシュヴァリエ殿に世話になってな、民がどうしたら何事もなく過ごせるか
教わったのだ。
おかげで再就任してからの政策が民から好評でな。
彼にあったら改めて感謝を伝えてほしい」
「……承りました」
「あそこまでロウリア王を改心させるとは、やはりあなた方の大統領は類い稀な才能をお持ちなのでは?」
「いやぁ〜………これでも国民から反感買ってデモとか起きるんですよ」
「デモとは何ですか?国民の反感ということはクーデターや大反乱が起きているのですか?」
「そこまで物騒ではないです………」
後ろで三人が小声で何かを話しているのを気にしながらもロシュフォールはカバンから資料を取り出す。
「本日は、大統領からのお願いであるものに参加していただきたく来ました。
そこのお二人とベランジェもこちらへ」
ロシュフォールはこの王の間にいる全員にある資料を手渡した。
「ロ、ロデニウス大陸条約機構……?」
聞き慣れない単語にほとんどが首を傾げる。
「これは、我々の世界にあったある集団防衛機構を参考にしました。
簡単に言えば、多国家による軍事同盟です。
まず、加盟すれば我々の基準であらゆる物を近代化します」
「それは……私たちのような小国でもフランスのような国になれると?」
全員の目線がロシュフォールに向く。
「その通りです。
敵国からお互いを守り合うために軍も近代化し、連携が取れるようにします」
「………我が国が、列強を超えられるのか」
ただ条約機構に入れば列強を超える技術を手に入れられる。
それはこの上ないほど魅力的な誘い文句だった。
「ロシュフォール殿!我が国は喜んでこの条約機構に加入いたしますぞ!」
「なっ!?わっ、我々も是非ともその案に乗らせていただきたい!」
リンスイに続いてメツサルも嬉々として飛びつく。
その二人をベランジェに任せてロシュフォールはハークの方を向く。
「ロウリア王国はいかがいたしますか?
パーパルディアのような大国に舐められるのは嫌でしょう?」
「………相変わらず策士だな、ロシュフォール。
この世界で其方に敵う外交官はいないだろう。
――我が国も加入を希望する」
珍しく他国の人間を褒めるハークに周りの重鎮たちは驚き顔を見合わせる。
ロシュフォールは嬉しそうに目を細めた。
「大統領の代わりに感謝申し上げます」
「久しぶりに其方と話がしたい。
いい店を紹介しよう、少し付き合ってくれ」
「かしこまりました。
ベランジェ君、残りはよろしくね」
押し付けられたベランジェは肩をすくめる。
「……仕方ないですね。これ、残業代出ますか?」
「しっかりと私が払うよ」
ロシュフォールはハークと共に城を後にした。
読んでくださり、ありがとうございます。
これで、ロデニウス大陸の国はこの作品の主要メンバー(?)になりました。
ちなみにこのあと、ハークはロシュフォールさんに酔い潰されて家来に運ばれながら帰宅したようです。
いやぁ、多作品との同時進行はキツい……
あと2話ほどストックがあるので今月中にもう1話投稿できるように頑張ります。
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マクロン大統領が新世代原子力空母(PANG)の名前を発表しました。本作はどうする?
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