トリコロールの旗を掲げて   作:理由もなく歩く人

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5. 作戦開始

 

夜七時、全国放送のテロップが走り、テレビ画面は急遽エリゼ宮の大広間へ切り替わった。

照明は厳かに、両脇に共和国旗が掲げられる。大統領の席には執務服のままのがヴィクトル・シュヴァリエ座り、静かにカメラを見据えた。

 

「国民の皆さん。今宵、私は重大な報告をいたします。」

 

画面越しの声は落ち着いているが、その奥にある硬さは隠しきれない。

 

「数日前、我が共和国の外交団がロウリア王国へ赴き、真摯なる対話を申し入れました。しかし、相手側は我々を『蛮族』と呼び、外交を拒絶しました。さらに、帰還の途上にて我が艦隊は襲撃を受け、我が軍艦が被弾する事態となりました。これ以上、我が国民と我が旗を放置することはできません。」

 

大統領は一拍の間を置いた。スクリーンには、外交団の映像、煙を上げる艦影のワンシーンが一瞬映る—編集されたクリップだが、生のインパクトは十分だった。

 

「我らは長く外交による解決を志向してまいりました。だが、我が国の主権と国民の安全が侵されるとき、国家は行動しなければなりません。政府は本日、『庇護の盾』作戦を正式に開始します。これは我が国の艦艇・航空戦力をもって限定的にロウリア沿岸の制海・制空の確保を図り、海上における国民と同盟艦の安全を回復するための措置です。決して侵略を目的とするものではなく、正当防衛に基づくものであることをここに明言します。」

 

カメラに向かってゆっくりと頷く大統領の顔に、疲労と決意が混ざる。

 

「国民の皆様には冷静さを保ち、政府の指示に従ってください。共和国の旗は我々の誇りです。共に守り抜きましょう。」

 

画面はゆっくりとフェードアウトし、各放送局は緊急ニュースの特別報道に切り替わった。

外苑の群衆の一部は拍手を始め、別の場所では静かな恐怖が広がる。SNSは瞬時に反応を示し、賛否、恐れ、支持、憤りが渦巻いた。

 

 

 

 

 

 

鈍い鉄の巨影が連なり、荒れ気味の海を西へと進む。

 

先頭に立つのは、フランス海軍の誇り――原子力空母「シャルル・ド・ゴール」。

その両翼にはアキテーヌ級フリゲート、フォルバン級駆逐艦、さらにアメリカ海軍の「カール・ヴィンソン」を中心とした打撃群が並走し、空と海を睨みつけていた。

後方には、揚陸艦「ミストラル」「トネール」「ディクスミュード」、そして「かが」が控え、数千名の兵士と戦車、装甲車両を載せている。

 

シャルル・ド・ゴールの艦橋では、緊張した空気が漂っていた。

 

「敵の動向は?」

「E-3Fより報告。沿岸に帆船と思しき艦隊、数百隻。さらに……空からの接近物多数、ワイバーンと推定」

 

オペレーターの声が重苦しく響いた。

外交の道は閉ざされた。ロウリアはフランスを侮り、交渉団を追放した。もはや選択肢は一つ

――武力をもって自国民と国土を守ることだ。

 

 

 

 

 

カール・ヴィンソン空母打撃群 上空

 

『第97戦闘攻撃飛行隊全機へ。ワイバーン接近中、距離36マイル。艦隊到着までに迎撃せよ』

「了解。全員聞いたな?武器使用許可は出ている。行くぞ!」

 

12機のF-35Cが艦隊の前方に向かっていく。

 

『第97戦闘攻撃飛行隊全機へ。現在第2航空団第1戦闘飛行隊が多数のワイバーンと戦闘中、直ちに援護に向かえ』

 

『……隊長、敵は多いんですか?』

 

移転前に部隊に入ったばかりの新人が不安そうに聞く。

 

「心配するな。敵は多くても性能や技術は俺たちの方が圧倒的に上だ。絶対に勝つぞ」

 

隊長が勇気づける様に言うとヘルメット内に緊迫した声が響く。

 

『こちら第1戦闘飛行隊!敵の数が多すぎる!ミサイルを撃ち尽くした!』

「こちら第97戦闘攻撃飛行隊だ。直ちに下がってくれ。我々が相手をする」

『了解!全機今すぐ下がれ!』

 

やがて少しすると十数機のラファールとすれ違う。

同時にレーダーが多数の影を映し出した。

 

「敵が映ったぞ!全機、後ろを取られるな!」

 

すぐさまワイバーンが飛ぶ方向に顔を向ける。

すぐにストライク・アイがワイバーンを捉えた。

 

「いくぞ!FOX3!」

 

F-35Cの両翼から発射されたAIM-120Dがまっすぐワイバーンに向かった。

 

 

 

 

 

「クソッ!なんなんだあいつら!見たこともない形だぞ!」

「早すぎて見えなかった……。強すぎる……」

 

フランス航空宇宙軍のラファールによって半数近くが落とされたロウリア軍竜騎士団は士気が下がっていた。

竜騎士マルコスもその1人だ。

 

(なんだあれ……。この前突っ込んできたやつと全く違う……。もしかしてフランスは…)

 

そこまで考えた時、先頭のワイバーンが爆発した。

 

「来たぞ!敵の第2波だ!」

 

誰かが叫ぶと同時に隊から離れて行く竜騎士たちが出始めた。

 

「あんなのに敵うわけねぇ……」

「俺は逃げるぞ!」

「おい!お前ら待て!」

 

団長が止めようとした時、悲劇が始まった。

 

「く、来るなぁぁ!」

「逃げ……うわぁぁ!」

「邪魔だ!どいてくれよぉ!」

 

竜騎士たちがパニックになって散らばる。

いくらワイバーンが撒こうとしてもARHによって誘導されたAIM-120Dは自分の役割をこなした。

 

一騎、また一騎と海に落ちて行く。

 

「エルド!また避けられるか?いくぞ!」

 

前回のESSMを避けられたので次も避けられると思った。

 

「うわぁぁ!どけぇ!」

「こっちに来るな!……うわぁ!」

 

逃げてきたワイバーンの翼が当たり、二騎は大きくバランスを崩した。

そこに2発のAIM-120Dが直撃し、爆発する。

 

竜騎士マルコスの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

シャルル・ド・ゴール CIC

 

「敵影ロスト。残りは敵艦隊のみです」

「第4航空団に連絡、敵艦隊への攻撃を開始せよ」

「了解。第4航空団へ攻撃開始」

『了解。全機、攻撃開始』

 

レーダーから敵船が次々と消えてゆく。

 

「ミサイル、足りますかね?」

「足りないな。『カール・ヴィンソン』の第113戦闘攻撃飛行隊に残りはあげよう。……そういえば敵の基地の方は?」

「すでに上陸地点の近くにある敵基地は第12航空団が潰しています」

「なら敵艦隊の位置も上陸地点から離れているし上陸開始するか」

 

 

 

 

 

「被害を報告しろ!」

「すでに半分以上が沈みました!脱走者も出ています!」

 

先程まで優越感に浸っていた海将シャークンは部下からの報告に顔面蒼白になった。

 

「敵は魔帝か何かか!何故ワイバーンが全滅するんだ!」

「シャークン様!敵艦隊が進路を変えました!」

「どういうことだ……、我々はここにいるのに……しまった!上陸されるぞ!」

 

すぐさま部下が魔信を使うが何も聞こえない。

すると先程、船団の半分を沈めた音が迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

「上陸作戦開始!」

 

ミストラル級「トネール」の艦内から、EDA-R型揚陸艇が次々と出撃する。

装甲車両、歩兵、工兵部隊が波を切って砂浜へ向かう。

 

空ではNH90輸送ヘリが旋回し、EC665 ティーガーがロケット弾で敵の砦を粉砕。

かがの甲板からもSH-60やオスプレイが発艦し、上陸部隊を支援した。

 

海岸線にいた少数の兵士は第22海兵歩兵大隊によって次々と制圧され、砂浜に第31工兵連隊が陣地を築いていく。

第7機甲旅団のルクレール戦車が突入し、後続の第9海兵軽機甲旅団のAMX-10RCが砂浜に轟音を立てて上陸した。

 

「こちら先遣部隊、海岸確保! 損害軽微!」

 

無線の報告に、艦橋で歓声が上がる。

砂浜には、フランス国旗が翻った。陽光を受け、白・青・赤が鮮やかに海風にはためいている。

 

 

 

 

 

軍事省・統合参謀本部

 

「本部長。上陸完了しました」

 

ド・ヴィル統合参謀本部長は司令官の1人から報告を受ける。

 

「ご苦労。では次に行こう。機甲旅団は進軍開始、首都へ進め。第11落下傘旅団は作戦開始せよ」

 

 

 

 

 

 

 

第64航空団 第1、第2輸送飛行隊

 

4機のC-130Jはラファールに護衛されながらロウリア王国首都ジン・ハーク上空に近づいていた。

 

「降下まで30秒!」

 

「いよいよか……緊張するな」

「ああ、逸れるなよ」

 

ついにジン・ハーク上空に到達した。

 

「降下開始!!」

 

 

 

首都の上空に白い落下傘が咲いた。

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。


執筆中に重大なミスを起こしたので投稿が遅れました。
皆さんもタブを消す時は気をつけましょう。

次回から首都制圧作戦です。
陸軍、国家憲兵隊の活躍をお楽しみに。


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