二回目の最終選別【1】
どうも皆様、霧雨いろは改め、月詠イナバです。二つ目の人生もよろしくお願いします。
最終選別(二回目)を受けることになりました。どうしてこうなった。
この狂い咲く藤花も久しぶりだ。しかし、感慨に耽る余裕のある者は私くらいのものだろう。私は一番乗りしたが、後からやってくるものたち全員が緊張した面持ちをしている。
と、いうか。
全員、弱いなあ……ひよっこどころか殻付きの雛だよ。孵化したてだよみんな。大丈夫?死んじゃわない?いや死ぬな、最終選別よく死ぬもんな。当時は分からなかったけど今ならわかる。死ぬわこれ。みんな弱い。
でも何人か強い子いる……あっカナヲちゃんだ!蝶屋敷で何回か会った子だ、わー可愛い。大きくなったなあ。
こっちは、実弥くんの弟だ!不死川玄弥!見ただけで分かる。実弥くん、やっぱ弟はいねえは無理があるよ似すぎてる。
あと猪頭、すごく目立つ。すごい、視線がもうそっちに向かう。あと自分も多分見られてる。まあこの中だと私が一番強いもんね。
金髪の子は、いたいた。我妻善逸だ。この段階では大人しいのね、泣きつく相手がいないからかな?
そして───
「……おや、まあ」
やはり、来てしまったか。彼がここにいるということは、家族は鬼となり、冨岡義勇が彼を鱗だ先生の元へと導いたのだろう。
竈門炭治郎。物語の主人公にして、最後の歯車。
彼がここに来たことで、頭の中に展開していた、竈門炭治郎が現れなかった場合の構想は全て脳内のゴミ箱の中に捨てた。
太陽の耳飾り。我が師匠が身を焼き尽くすほどに焦がれた太陽の子。原初にして最強。それの残火が彼か。
よく生き残ってくれた。四百年。
「皆さま、今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます」
双子のように顔がよく似ている、白い髪の子と黒い髪の子が、挨拶と説明を始めた。大きくなったなあお二人とも……二年で子供ってこんなに育つんだね……。
説明を聞く限り、私の知っている最終選別の時と規則は変わっていないようだ。途中棄権も可能、と。うんうん。
それにしても七日間かあ、長いなあ……。
あ、そうだ。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
お二方のその言葉と同時に、選別参加者たちはさっさと山の中へと入ってしまった。私はあえて取り残される。私の背中を、二つの視線が「入らないのか?」と問いかけるように見ていた。
とんとん、とつま先で軽く地面を叩き、呼吸を整える。前方には先に藤襲山へと踏み入った選別参加者たちの背中。足の裏全体で地面を踏み締め、一気に加速。
一歩、二歩、三歩。その間に刀を抜き、目の前に現れた飢えた鬼の前に、誰より先に踊り込む。
弱いなあ君も。黒死牟に比べたら雲泥の差。まあ、すまないがさっさと首を斬られてくれたまえ。
「弐の型【珠華ノ弄月】」
あっさりと、鬼が縦四等分になった。そのまま頸を切り落とすと、ボロボロと崩れてなくなってしまう。
と、いうか。ここの鬼はどれだけ残っているかは不明だが、数年前までは私が補充していたからな。負ける道理がない。
なんか静かだなと思って周囲を見渡したら、参加者たちが唖然としてこちらを見ていた。最後まで踏み入ってこなかった人間が気付けば自分たちを追い越して一番先頭に立っているのだからね。
さて、全員揃っているな。感心感心。
納刀して、柏手をひとつ。パァン!と大きな音がして、すでに集まっていた注目がさらに集まった。
「生まれたての雛鳥のようにか弱き皆々様、静粛、注目!」
最終選別は始まった。七日経つより先に降りてしまえば失格となる。鬼殺隊士となりたくば、絶対に降りる訳にはいかない。
つまり、鬼殺隊士を諦めない者だけがここに残る!なんと効率的!
「弱っちい雛鳥と俺を一緒にするんじゃねえ!」
「待てよ!やべえよアイツ!仮面被ってて強いんだぞ!」
まあ確かに仮面被ってて明らかに胡散臭いけどね?猪頭と比べてこっちの方がヤバいと言われるのはちょっと心外。
飛びかかってきた猪頭こと嘴平伊之助だが、ふむ、全身がやたらと柔らかい。関節技を決めても抜け出されるのがオチになるかな?ま、いいや。
自分の刀ではなく、返してもらった小刀で伊之助の刀を軽く受け止めてそのまま受け流す。重心を崩した伊之助の足を払い、鳩尾に蹴りを一発。最後に猪頭を軽く引っ張ってくるんと投げれば、地面に軽々と激突した。
最後に胸の辺りを踏みつけることで、動きを地面に縫い止める。
「まだまだ甘いね。私にとっては雛鳥も同然だけど、反論は?」
痣を出すまでもなく、抜刀させることすら叶わないほどの実力差。彼らから見れば私は、人の形をした化け物のように見えるだろう。それではダメだ。それでは死んでしまう。人の形をした圧倒的才能とは継国縁壱ただ一人。
彼らから見た私が『とてもつよい人間』の範疇に収まるだけの実力を、この七日間で身につけさせる。
「あの!最終選別って、この中で生き残ることだって聞いてるんですが……」
「うん。君たち、死にたくないでしょう?死なないためには強くなるのが一番手っ取り早い。私だって同期になる人はたくさんいてほしい。大丈夫、君たちは鬼に殺されることはないさ、私が守るもの」
強さと経験値において、この中で私を上回るものは存在しない。ああ、柱就任中は兎角忙しかったというのに、七日間も指導に回せる時間が生まれるなんて望外の喜びだ。
「私が七日間、君たちを守る。その代わり君たちは、私が納得するだけの強さを身につけてほしい。大丈夫、死にかけるかもしれないけど死なないようにするし、棄権も受け付けます」
「じゃあ俺は棄権……」
「そこの君は強制参加!逃がさないよ」
「なんでぇ!?」
善逸がギャーギャー文句を言い出した。元気になったようで何より。カナヲと玄弥は、どういう反応をしていいのか悩んでいる。足元の伊之助はウゴウゴ蠢いている。
さて、竈門炭治郎はどうだろう?と思ってそちらを見たら、明らかに困惑していた。でしょうね。
「それでは皆々様、七日間どうぞよろしく。この場所にいる鬼なんて簡単に頸を斬り落としてしまえるようになるまで、全霊を持って鍛えるので、死なないように頑張りましょう!」
さあ、始めようか。
少しばかり早いが、柱稽古の時間だ!
あの世の槇寿郎「お前柱辞めてるだろう」