半年に一度の柱合会議があっという間に感じられます、霧雨いろはです。
今回の柱合会議における柱の数は五人。炎柱の煉獄槇寿郎、岩柱の悲鳴嶼行冥、音柱の宇髄天元、水柱の霧雨いろは。そして今回が初の柱合会議である花柱の胡蝶カナエ。槇さんは遅刻してくるらしい。来るだけ十分とするか判断に悩む。
前回の柱合会議から一人減って一人増えた。頭数だけは変わらないが、顔ぶれは変わった。そして欠員。原作の柱って黄金世代だったんだなあと思う。
「お久しぶりですね。行さん、天元くん」
「南無……煉獄殿は……」
「遅刻ですね」
「旦那、また来ねえのかと思ったぜ」
さて現在の柱五人のうち、槇さんは論外として残り四人。この中で最年長の行さんと最古参の私との間でまとめ役の譲り合いが発生したのは少し前の話だ。結局押し負ける形で私がまとめ役になってしまった。とはいえ、槇さん除いて四人しかいないのだけど。
あと四人かあ……増えないかなあ柱……。大木か?とツッコみたくなるくらい私より遥かにデカい男しかいないのよ。煉獄槇寿郎といい悲鳴嶼行冥といい宇髄天元といい。今日で胡蝶カナエが増えて多少マシになるとはいえね。
「そういやアンタの継子……冨岡義勇だったか?」
「義勇が失礼でもした?」
「いや、なんか無理矢理手篭めにしたとか聞いたけど」
「……不純」
「コラコラコラ、行さん分かってて言ってますね?あと嫁三人いる天元くんには言われたくない」
「俺のどこが不純だ。派手に三人とも愛してるわ」
「器大きいねえ。て、そうじゃなくて。無理矢理継子にしたのはホントだけど」
「そこはマジなのかよ」
「煉獄殿の子息ではなかったのですか」
「槇さんの手前そこまで踏み切れなくて。個人的に、水柱の後継って考えましたしね」
ワイワイガヤガヤ、三人でお喋りしていたら空間に隠のものではない気配が増えた。ついにご到着か、花柱。
天元くんは元忍びという経歴ゆえに、私と行さん、槇さんは柱歴の長さゆえに。
今度の柱は一体いつまで生きるのか、という思考に至ってしまった、そして鬼滅の刃通りなら本当に若くして死ぬはずの、新たな柱。
さて、柱の代表者として挨拶せねば。
「こんにちは。花柱に命じられました胡蝶カナエです。よろしくお願いします」
「こんにちは、水柱の霧雨いろはです。岩柱の行さんより話は聞いています。こっちの派手な御仁は音柱の宇髄天元。あと一人、炎柱の煉獄槇寿郎は現在不在となっていますが……」
狐面をつけたまま近寄り、右手を差し出した。
「歓迎いたします。ようこそ、柱へ」
どうでもいいけど、胡蝶カナエの羽織が蝶の模様、私の羽織が紫陽花の模様。
私の羽織の方が花柱っぽくない?
柱合会議はお館様への謁見と会議を経て、最後に牛若丸と弁慶ごっこで締められた。
牛若丸と弁慶ごっことは、岩柱こと行さんの初柱合会議時に私の思いつきで始まったごっこ遊びのことだ。お館様に許可を得て庭園の石橋でやってみたら思いの外好評を得てしまったので、なんか恒例になった。
最初は牛若丸役の私と弁慶役の行さんの二人だったが、今回は弁慶に刀を奪われる武士役に天元くんがいる豪華版。
お館様夫婦はお茶を淹れてワクワク顔をして鑑賞中。柱同士の殺陣って、加減してても結構迫力あるからね。
カナエちゃんは完全に宇宙を背負っていた。途中から来た槇さんはまだやってんのかと呆れ顔だった。
そうして本日の柱合会議は終了。次の柱合会議ではカナエちゃんに牛若丸役をやってもらおうかな。生きてたら。
「お疲れ様〜。天元くん、一緒に鍋でも食べない?奢るよ」
「じゃ、派手に御合判に預かるとするぜ。何鍋だ?牛か軍鶏か」
「牡丹は好きかい?」
「いいねえ。旦那は?」
「断られちゃった。と、いうわけでカナエちゃん、一緒にどうかな」
槇さんは帰宅、行さんは後から合流予定。あとはカナエちゃん次第だが。
「行きます!」
いい返事だ。
みんなで予約済みの店に行き、個室にかける。そのまま第二回柱合会議みたいな雑談に移行した。産屋敷家の会議はお館様の御前で行われるので重要度の高いものが中心となる。それよりも一段軽くなった話題は、こういう酒が入り混じる場の方が口も軽い。
天元くんは早速酒を頼んでいた。人の金だと思って高い酒頼みおってからに。
酒をちびちび飲みつつ、運ばれてきたつまみを突きながらカナエちゃんの話を聞く。新人柱の話なんていくら聞いても面白いと相場は決まっているのでね。
「しのぶちゃん、妹さん継子なんだ?」
「筋力が足りないから刺突か。……そういやアンタから、筋力の悩みとか聞いたことねえな」
「育ちが特殊なもので。生まれ自体は平凡だとは思うんだけど」
「あの、辛ければ無理にとは言いませんが……どのような」
「参考までに?いいよ、あんまり意味ないと思うけどね」
現役柱で女性って私とカナエちゃんだもんね。女性隊士で参考になりそうなのって私くらいか。今後入ってくる甘露寺蜜璃は私以上に参考にならなさそうだし。
「アー……鬼に喰われるために生かされて?喰われる寸前に隊士にその鬼が殺されて?そのまま育手の元に行って鬼殺隊入り。……うわ、空気お通夜にしないで」
養父との生活は、はっきり言って楽しかったのだ。鱗滝先生との生活と同じくらい。そのまま喰われても別に良かった。むしろ喰われたかった。
目の前の牡丹鍋を突く。私は本来、この牡丹と同じように皿の上に乗っているはずだった。
やっぱ私が生存ルート入ってるの、何かの間違いじゃない?
「その鬼の血鬼術の影響のはず、多分」
「治したりされなかったんですか?」
「そこそこ長い間飼われてたせいで後遺症じみた感じで残っちゃった、みたいな。ただ、血鬼術の影響だから後遺症と表現してるけど、悪影響はほとんどないから気にしてない」
「その血鬼術の副作用みたいなものだったのか」
「恐らく。具体的にどんな血鬼術だったか、本人に聞きたくてももう斬られてるしね」
自分の肉体が改造されている自覚はある。あるのだが、それがどうなっているのか、我が事ながら分からないというのが本音だ。
飼養している家畜の餌を工夫するようなものと考えたら不思議でもないんだけど。
「だから、私の才能とかって実のところ───、」
『俺にもお前にも才能などない』
うるさい、脳内の煉獄槇寿郎。
嫌ってほど分かってるんだよ、そんなことは。
「どうかしましたか?」
「……キノコの石突噛んだ」
「ありゃ」
「えー、なんだっけ。才能?後天性だと思うんだよね。鍛え方ならそれこそ、そこの派手な忍者に聞くといいんじゃない。考え方地味だし」
「誰が地味だコラ」
「あっ、悲鳴嶼さんが来たわ。悲鳴嶼さーん」
「行さん来た?」
行さんを呼び寄せながら考える。しのぶちゃんも、ついでに天元くんも、そんなに気に病む必要ないと思うんだけどな。
この場の全員、相対評価における才能はあるかもしれないけど、絶対評価における才能は誰一人として持ってないんだから。