ドラゴンボール coverR 其之三百六十七 (短編) 作:やま おさ
かつて、世界を軍事力で支配をしていた軍隊があった。
その名はレッドリボン軍。
しかし、その組織は数十年前に孫 悟空という者の手により壊滅した。
しかし、数少ない生き残りの1人であるドクターゲロが造り出した人造人間が現れて、再び人類に脅威を与えつつある。
多くの人々が知らぬ間に、静かではあるが人類を圧迫しつつある世界。
その原因である人造人間は16号を皮切りに20号までNo.が振られている。
その内の20号はドクターゲロ自身が人造人間となった者であり、ゲロの助手とも言える19号と共に悟空達に(成人)より倒された。
しかし、19・20号の力を遥かに凌ぐ、16号・17号・18号は存在して、更には未来の世界からやってきたという人造人間セルが現れた。
新たな敵であるセルは、自らが完全体になる為に、17号と18号を吸収すべく人造人間同士の争いが起きて16号は負傷、治療を試みるべく、悟空の仲間であるブルマという女性の元に預けられた。
そんな16号を前にして、ブルマは口を開く。
「聞いていた通り、性格が穏やかなのね・・」
16号は戦いを好まないように見えるほど物静かである。
「でも、やっぱり貴方が機械で造られた理由が分からないわ・・」
ブルマ自身は科学者でもあり、人造人間16号が機械で造られているのを知った事で、解析する意味を含めての手当てを行っている。
しかし、未だに多くの謎が残っている。
他の人造人間は人をベースにして造られているはずと推測している。
何故ならば、ドクターと言う呼び名を持つゲロだけに、機械工学よりも医学を得意とするはずであり、かつてのレッドリボン軍で軍事兵器開発に関わっていたらしいが、16号の構造は過去のレッドリボン兵器とは比べものにならないほどの破壊力がある。
「既に、レッドリボンが倒れて数十年が経っているとはいえ、簡単に16号ほどの力を生み出す事なんて出来るはずがないのよ・・」
機械工学を専門とするブルマでさえ解析に苦労をする16号がドクターゲロに造り出せる事が出来るとは思えない。
「ねぇ、16号。これから聞く事に応えて」
と、ブルマは話し掛ける。
会話により答えを導き出すつもりなのだろう。
「あぁ・・・、了解した。ブルマ博士」
このように、人に対して極めて従順な16号。
「あなたは何が目的で造られたの?」
これまでに、何度も問い質した事を聞いてみる。
「俺は孫 悟空を殺す為に造られた・・」
「それは、何度も聞いているわ」
従順ではあるが、余り多くを語らない。
そして、16号が存在する理由は、孫 悟空を殺す為と言う。
それは、生みの親がドクターゲロという事であれば、当然とも思えるが、ブルマは違和感を覚える。
「他に、知っている事は?」
と、ブルマに聞かれても、
「いや、何も無い・・」
と、答えるだけだ。
このように、思ったような答えを得る事は出来ない。
「ふう・・。ちょっと、気分を変えるた方がいいかも」
言葉により理解を得ようする事に無理を感じるのか、気分転換にと庭へ脚を進める。
「機械に気分転換って、言うのもおかしいけれど」
共に、16号を連れて研究室に隣り合う緑地に向かうブルマ。
ブルマの研究室は実家であるカプセルコーポレーションの中にある。
その敷地内は広大な緑地で囲まれていて、豊かな緑と彩りの花が咲き乱れており、小鳥や昆虫が集う楽園になっていて、鮮やかな小鳥が16号の肩や掌の上に留まっている。
「本当、生き物には優しいのね」
「そういう風に造られた・・」
「そうみたいね。でも、それがおかしいのよ・・」
16号は不思議なほど、生き物を大事に想う。
そこが、ブルマの違和感に繋がる。
「ドクターゲロが生き物に危害を与えないって言うようなプログラムをする理由が無いのよね・・」
ドクターゲロは、自らを改造して人造人間20号を名乗り、強い力を手に入れた。
そして、孫 悟空達の前に現れた際に、自らの腕で民間人を犠牲にしている。
それ故に、16号だけを特別な性格にする理由は無い。
「あなただけが、生き物に優しい理由が分からないわ・・」
しかしながら、明らかに力が強い人造人間16号が、ドクターゲロ本人に敵対をしないようにプログラミングしたとも考える事は出来る。
しかし、それはのドクターゲロだけを非攻撃対象にすれば良いだけだ。
「そういえば・・、トランクスが、未来の世界と私達がいる世界では17号と18号の二人は、少し違うと言っていたわね・・」
トランクスとは17号と18号によって荒廃した未来の世界からやってきたブルマの息子。
その目的は、本来は人造人間が現れる前に心臓病で死んでしまう悟空に薬を届ける為にタイムマシンで現代に現れたのだが、現代の17号と18号は未来の世界よりも強く、しかしながら性格は穏やかだと言う。
必然、未来の17号と18号の力は劣るが、性格は攻撃的だと言っていた。
「この世界の17号と18号は性格穏やか・・」
何か、気になる事でもあるのか、一瞬の合間だけブルマは口を閉ざす。
「ねぇ、16号。17号と18号について、何か知ることはある?」
「知らない・・・。気付けば、近くに居ただけだ」
共に、造り出された存在でありながら、身近にいた17号と18号の事すら知らない。
明らかに、不自然だ。
「それでも、明確に孫君への殺意を見せる・・」
謎とも言える16号の存在。
そして、再びブルマは呟く。
(あなたは、誰の手で造られたの?・・・)
それは、16号にも届かぬ心の声だ。