ドラゴンボール coverR 其之三百六十七 (短編) 作:やま おさ
未来
悟空達が人造人間と対峙している時代より10年以上経った未来の世界。
人造人間により荒廃した世界で、僅かに残るカプセルコーポレーション研究室内。
「雨が降れば、桶屋が儲かるって、訳じゃあ無いけど・・、孫君が何かを呼び込むのよね」
未来の世界のブルマは息子のトランクスと共に、自らが開発した一体の人型機械を前にいる。
「でも、それだけじゃあ、何の確信もない。悟空さんを殺す理由にするは無理がある」
過去の世界へ心臓病の薬を届けたはずのトランクスが、自らの行動と反した言葉を口にした。
「トランクス・・・、貴方も分かってると思うけど、サイヤ人ていうのは異常なの」
サイヤ人とは悟空やブルマの夫、そしてトランクスの父であるベジータと呼ばれた男の事。
その二人は地球以外の星で生まれた種族で、二人が話しているのは、サイヤ人が関係している事らしく、しかしながら穏やかな話題では無いのは分かる。
「たった一度の変化を起こしただけで、星をも破壊する事が出来るフリーザを意図も簡単に倒すなんておかしいのよ」
悟空とベジータが生まれた星は、かつて宇宙を恐怖に陥れたフリーザという者に破壊されていた。
そのフリーザは悟空達の前にも現れて大きな脅威となったが、強い怒りによって変化をして悟空により討ち果たした。
それは、ブルマが言ったスーパーサイヤ人という形態に変化した結果である。
「そして、何かある度に更なる変化をして、より強くなっていったのよね」
「それは僕も同じだ。それに、父さんもサイヤ人じゃあないですか?」
「孫君は別。小さな頃は地球に住む人間よりも少し強い程度だったのよ」
レッドリボン軍を倒した頃の悟空は、たった一人で軍隊を壊滅するほどの力を持っていた事になるが、レッドリボン軍は人間の兵士で構成されており、兵器を所有していたと言っても、フリーザとは比べるまでもない。
それを倒したのだから、悟空の力はサイヤ人の中でも別格であると言う。
「力に際限がないのよ・・・。」
と、言った後に、ブルマは問い掛ける。
「ねえ、トランクス。17号と18号をどう思う?」
「異常です・・。御飯さんをも倒す位だから」
トランクスは人造人間の二人は理解が出来ないほど強いと応える。
そして、御飯という者は悟空の息子であり、人造人間との戦いで多くの仲間が死んでいく中で生き残っていたが、17号と18号との戦いの末に死んだ。
「最初はクローン技術かとも思ったけど・・・」
二人の人造人間は悟空のクローンかと思うブルマ。
しかし、18号と呼ばれる人造人間は女性だ。
男である悟空から、女性のクローン人間は誕生しない。
「若しくは、孫君の細胞や遺伝子に組み込めば・・」
ブルマは人造人間の力を生み出す方法を、思い付くままに口にしていく。
「そう、ドクターって言うからには、医学や遺伝子工学に近いはずなのよ」
と、言うように、僅かではあるが、人造人間の成り立ちに気付いてはいる。
「でも、元は二人とも只の人間のはずよ」
トランクス曰く、最初から人造人間の二人が強靭であったならば、ドクターゲロの手下になるわけもないと言う。
「そう。だからこそ、ここまで17号達が強くなるはずが無いのよ」
その言葉の意味は、人間が得る限界を越えている存在がおかしい。
クローンや遺伝子技術があるからこそ、人間を越える力を持つ事が出来て、悟空の存在があったからこそ、強靭な人造人間の誕生があったと言う意味だ。
「サイヤ人・・・。そう孫君がこの世からいなくなれば・・」
と、それは既に願望でしかない結果論を呟き、目の前に立つ人型機械を見上げる。
「このプログラムだけが、救いになるはずだわ。今の機械工学をドクターゲロが解読するのは無理なはずなんだもの・・」
ブルマが造った人型機械には、生き物を迫害しないというプログラムを組み込んである。
悟空以外に敵意を見せなければ、第三者に悪用される可能性が減ると見込んでの事だ。
「母さん、悟空さんを殺すなら、ドクターゲロが人造人間の研究を始める前の時代に送らなければ意味がありませんよ」
既に、トランクスの心のなかでは、悟空を殺す事に理解を示しているようだ。
そして、この二人がいる世界は、心臓病の薬により死を免れた悟空がいる世界とは異なる現実であり、トランクスが言っているのは人型機械を過去に送り出す時間軸。
人造人間17号と18号の開発が始まる前に悟空を世の中から消して、世界を救うつもりなのだろう。
「それでも、私達の世界では人造人間の脅威は消えないと思うわ」
と、ブルマは言う。
「私が送り込んだのが、孫君を殺してしまえば17号達は生まれてこないかも知れないし。これほど強くなってはいないんだから」
人型機械が思惑通りに行動すれば、今の世界に存在する人造人間は消えてもおかしくはない。
または、力が衰えているはず。
過去の世界で何者が人造人間を破壊すれば、人型機械を送り出すブルマ達は実在しなくなる訳で、今のブルマとトランクスが悟空を殺すべきという判断も発生しない。
大きな矛盾だ。
それは、薬で悟空を救うのも同じ事で、心臓病で悟空が死ぬ事が無くなるのならば、今の人造人間は過去倒される可能性があるから、今の世界に人造人間は存在しなくなる可能性が生まれる。
と、いう、観点から、
・送り込んだ人型機械が悟空を殺す。
または、
・心臓病の薬で悟空が救われる。
そのいずれかで、未来が変わる事は十分あって、気付いていないかも知らないが、ドクターゲロ自身を殺してしまえば、全ては解決する。
にもかかわらず、今の世界に17号達は存在している。
そして、17号と18号が存在しているという事は、この世界ではセルの存在が無い。
又は過去の世界で倒されたという事である。
セルは、悟空や他の人造人間より強いにも関わらず・・。
「もしかしたら、違う世界の私達が、孫くんを生かす為に過去へ向かったのかもね」
と、言って、指で摘まんだ薬を見せる。
この世界では、未だ悟空を救う為に、薬を過去に届けるという選択肢は発生してはおらず、悟空の命を奪った心臓病の薬は、未来の世界では特効薬として存在しているとブルマは言う。
「孫君が生きていれば、17号と18号も倒してくれたかも知れないんだし」
トランクスにより命を救われてた悟空がいる世界も現実なのだ。
と、言っても、今の世界が変わらないと思う諦めから、口から漏れる言葉がある。
「ねぇ、トランクス。試しに心臓病の薬を持って行ったら、パラレルワールドの存在が分かるかもよ・・」
悟空を世の中から消す為の行動起こし、更には悟空を守る為の行動を起こせば、今の世界に変化が起こる可能性は高まる。
しかし、悟空を殺した後に、同じ人物を救うという二つの事実は実現可能か?。
結論から言えば可能である。
それは、過去へと戻る技術により、悟空の殺害は実行出来る事であり、今の世界で人造人間が現れるまで悟空と共にいた事実が同時に発生しているからだ。
しかし、
「パラレルワールドの存在なんて無意味ですよ。僕達がいる世界では17号と18号が消えないならば、他の世界でも人造人間の恐怖はあり得るのだから」
そう、自らがいる世界と違う世の中がある事など、分かっても現状に変化が無いならば、何の意味も持たない。
トランクスにとっては、自らの眼の前にある事が全てなのだろう。
「でも、過去に送り込んだ後で、17号達が私達の前から消えなければ、今度は孫君に死んでもらっては困るのよ」
過去を変える為の行動にも矛盾が発生するが、自らの行動に対しての矛盾を語るブルマがいる。
そう、送り出した人型機械が失敗すれば、現状を救う為には悟空自身の存続は不可欠となるのである。
「でも、この世界では人造人間が現れる前に、悟空さんは死んでしまっている」
故に、治療薬を過去へと届けるしかないのだ。
そのような、矛盾による矛盾の繋がりはブルマにも分かるのか、
「もう、私でも、何がをすればいいのか分からないの」
と、呟き、決意を現すように、過去へと送らざるを得ない者の前に立つ。
そして、手にしたコントローラのボタンを押して、
「私の名前がわかる?」
と、話し掛ける。
「いや、分からない・・。あなたは誰だ・・・」
初めて、人型機械は返事をする。
開発者あるブルマの記憶を消す。
この行動が意味するものは、生みの親であるブルマの記憶を消して、過去のブルマがドクターゲロに狙われないため。
今、悟空を殺害する自分の存在を維持する為に、未来のブルマが行った事は隠さねばならない。
もし、人型機械を製造した存在が発覚すれば、過去で自分が殺害される恐れかあるからだ。
「笑っちゃうわね・・。孫君を殺そうとしていながら、私を生かそうなんて・・・」
親しく思う友人に害を及ぼす自らを擁護する。
そんな、ブルマの言葉から悔いに満ちた想いが伝わる。
しかし、それは後悔とは言えない。
如何なる葛藤を心にしても、自らの都合を他者に押し付けるならば、全ては悪意となる・・。
と、思う、ブルマを残して、人型の機械は過去へと消えていった・・。
しかし、何かしらの理由で、人形機械はドクターゲロの手に陥る事になる。
それは16号と呼ばれて、僅かなから解析された技術は後の人造人間開発1に応用。
そして、より強靭な人造人間17号と18号を生み出す事になる。
しかし、その結果として性格面も16号に偏り、穏やかな性格となったのだろう。
それが、過去と未来の人造人間の違いなのか。
しかし、未来の世界ではあるはずの今でも、攻撃的な人造人が存在している。
やはり、過去を変える事が出来きても、未来は変わらないのか?。
それは、既に発生した事実は永遠に取り返しのつかない事になる。
それは、私達が存在する世の中でも同じ事なのだろう。
地球を脅かす問題の全てに人間が関わる今、自らが起こした結果が自分自身を締め付けるという矛盾のみが存在するのだから。