アルペジオ:ロスト・アンカー 霧の艦は未知の海を征く 作:おかーちゃんサーナイト
交渉は成立し、大戦艦キリシマは横須賀鎮守府の第1ドックにその身を横たえた。約束通り、艦娘たちが使用する燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトが運び込まれ、キリシマのナノマテリアルへと変換されていく。鉄底海峡での激闘で消耗した船体が、みるみるうちに完全な状態へと修復されていった。
しかし、その補給と修復のプロセスが完了した時、鎮守府の司令部、特に経理や補給を担当する参謀たちの間に、大きなどよめきが走った。
「なんだ、この消費量は……!?」
「長門を出撃させ、補給した場合の、ほぼ2倍に相当するぞ!」
「これでは、ほとんど大和を一度運用したのと変わらないじゃないか!」
司令部の作戦室に、驚愕と困惑の声が響き渡る。
それも無理はなかった。彼らの常識では、キリシマの外見は、あくまで「金剛型戦艦」なのだ。
艦娘としての金剛型は、高速戦艦として程よい燃費と十分な火力を両立させた、艦隊の主力であり花形。一方、大和や武蔵、そして長門や陸奥といった艦は、その絶大な戦闘力の代償として凄まじい資源を消費するため、ここぞという時の艦隊決戦にしか投入できない、切り札中の切り札とされている。
外見は燃費の良い金剛型なのに、中身は最強クラスの切り札並みの資源を食らう。そのアンバランスな事実に、参謀たちは動揺を隠せないでいた。
そのざわめきを、厚士は冷静に受け止めていた。
アルペジオコラボで仲間になる姉妹艦ハルナの消費データを、彼は知っていた。霧の艦艇が、艦娘の常識を遥かに超えた「大食らい」であることは、想定の範囲内だった。
(まぁ、そんなもんだろうな)
むしろ、厚士の感覚からすれば、この程度で済んでいることに驚くくらいだった。
彼がいた未来の『艦これ』では、改大和型を最終海域に何度も出撃させ、連合艦隊の消費も込みで、一回の出撃で燃料弾薬が1000単位で溶けていくことなどザラだったからだ。
(やはり、この時代の提督たちは、まだ資材を湯水のように溶かして深海棲艦を殴りに行く、という価値観に慣れていないらしい)
厚士は内心でそう分析する。
大和一隻を出撃させるのと同じ資材で、あの鉄底海峡の地獄をたった一隻でひっくり返し、750隻の艦娘を連れ帰ってきたのだ。費用対効果で考えれば、むしろ破格の安さだと、厚士は本気で思っていた。
なおもざわめきが収まらない参謀たちへと、厚士は静かに、しかしはっきりと告げた。
「皆様が驚かれるのも、無理はありません。ですが、一つ、ご認識いただきたい」
厚士の言葉に、作戦室が静まり返る。
「大戦艦キリシマは、『艦娘』ではありません。彼女は、我々の未来の世界で運用される、最新兵装を満載した『実艦』です。艦娘がその身一つで戦うのに対し、彼女は排水量数万トンの巨大な船体そのものを維持し、我々の常識を超えた兵器を稼働させている。その消費が重いのは、当然の帰結であります」
その言葉は、参謀たちに一つの事実を改めて突きつけた。
自分たちの目の前にいるのは、少女の姿をした兵器ではない。
意思を持つ、本物の超兵器なのだと。
「彼女の価値は、消費する資源の量で測るべきではありません。彼女がもたらす『勝利』という結果で、測っていただきたい」
瑞丸中将が腕を組み、低く問いかけた。
「……つまり、貴官は“大和型以上の消費”が当然だと言うのか?」
「はい、中将閣下」
厚士は即座に応じた。
「ですがご安心を。大和型を出撃させてすら勝ち切れぬ局面を、キリシマは単艦で突破できる。結果として資材消費に対する戦果比は、大和以上です。実際、鉄底海峡において戦艦棲姫を一撃で沈めたのは、キリシマただ一隻の力によるものであります」
参謀のひとりが食い下がる。
「だが、資材は有限だ!無尽蔵に溶かしていては鎮守府が持たぬ!」
厚士は頷き、言葉を返した。
「承知しております。だからこそ、無駄な出撃は行わない。あくまでキリシマは“切り札”として運用する。必要な時に投入し、必ず勝ちを取る。それが我々の役割です」
言葉の端々に、厚士の「ゲームを知る者」らしい割り切りと経験が滲む。
彼にとって“資材を溶かすこと”は敗北ではない。勝利に必要な代償であり、必要経費にすぎなかった。
むしろ出し惜しみをして余計に被害を嵩み、勝利への一手を打たない選択こそが愚行だった。
なにしろ毎月改装設計図を作るのに勲章を求めてEO海域に出撃し、4-5や5-5、6-5になれば長門も大和も全力出撃。
それでも鎮守府は維持出来る様にちゃんと遠征を回していた。
現実世界の遠征と資材がどう回っているのかまだ分からないが、艦隊決戦の切り札という意味では、キリシマは「黒船」と言って差し支えはないだろう。
沈黙の後、瑞丸中将が深く頷いた。
「……なるほど。資材消費は大和に匹敵する。だが、戦果はそれ以上──そういうことだな、一佐」
厚士は背筋を伸ばし、力強く答えた。
「はっ! その通りであります。キリシマの消費は、すなわち未来兵器の代価。無駄にするつもりは毛頭ございません」
会議室に重苦しい空気は残るが、参謀たちのざわめきは収まりつつあった。
厚士の言葉は、少なくとも「浪費ではなく投資」として受け止められたのだ。
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会議が終わり、厚士がキリシマの艦橋へ戻ると、そこには腕を組んで不機嫌そうに佇むメンタルモデルの姿があった。艦内にいながら、鎮守府での会議の内容は、彼女にも筒抜けだったらしい。
「──聞いたぞ、アツシ」
キリシマは、じろりと厚士を睨みつけた。
「私が『大食らい』だと? 長門だの、大和だの……他の
ぷりぷりと怒るその姿は、まるで子供のようだった。霧の大戦艦としてのプライドが、鎮守府の参謀たちの凡庸な評価に傷つけられたのだろう。
「あの程度の戦闘と修復で、あの程度のナノマテリアルしか消費していないのだぞ! むしろ褒められるべきだろうが! それを、なんだあの言い草は!」
憤懣やるかたないといった様子でまくし立てるキリシマに、厚士は苦笑いを浮かべながら、艦長席にどかりと腰を下ろした。
「まあ、そう怒るなよ。仕方ないさ、彼らは『実艦』としての霧の艦隊を知らないんだから」
「だが、気分が悪い!」
「わかるよ」
厚士は、キリシマを宥めるように、穏やかな口調で続けた。
「でも、心配いらないさ。資材の大量消費なんてのは、必要経費だ。彼らも、これから何度もお前の戦果を見れば、すぐに慣れていく」
「……慣れる、だと?」
「ああ。勝利のためには、それ相応の対価が必要だってことを、彼らはこれから学んでいくんだよ。俺たちのいた未来じゃ、もっと凄まじい量の資材を、たった一回の出撃で溶かすことなんて当たり前だった。それに比べりゃ、お前の燃費なんて、可愛いもんさ」
厚士のその言葉には、絶対的な確信があった。
「今はまだ、外見が金剛型だからってだけで判断されてるだけだ。だけど、次に戦場に出れば、彼らは思い知ることになる。お前の価値が、長門や大和と比べることすらおこがましい、全く別の次元にあるってことをな」
厚士は、艦橋の窓から見える、穏やかな横須賀の港を見つめた。
「だから、今は黙って、力を蓄えておけばいい。俺たちがその価値を証明するのは、言葉じゃない。次の戦場で、圧倒的な『勝利』を見せつけることだ。そうだろ?」
その言葉に、キリしマはまだ少し不満そうな顔をしながらも、ふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「……まあ、貴様がそう言うなら、そういうことにしておいてやる。だが、覚えておけよ、アツシ。次に私を『燃費が悪い』などと抜かす奴がいたら、超重力砲で鎮守府ごと吹き飛ばしてやるからな」
その物騒な冗談に、厚士は「ほどほどにな」と笑って返すのだった。
彼らの前には、まだ多くの困難と、そして多くの戦いが待っている。だが、この奇妙な主従であり、相棒でもある二人の間には、既に確かな信頼関係が築かれ始めていた。
±±±±±
瑞丸中将が催した歓迎の宴は、盛大なものだった。
数日ぶりに、いや、この世界に来て初めてまともな人間の食事にありつけた厚士は、軍人としての行儀の良さを保ちつつも、その食べっぷりと飲みっぷりは、見ている周囲の艦娘たちの方が気持ち良くなるほどに豪快なものだった。心身ともに満たされた空腹が癒え、ようやくこの鎮守府に腰を落ち着けることができたという実感が湧いてきていた。
その翌日の昼下がり。
キリシマの艦橋で、厚士は今後の行動計画を練っていた。そこに、来客を告げる艦内アナウンスが流れる。
「アツシ、客だ。瑞丸のところから、『連絡員』とやらが来たぞ」
コンソールから顔も上げずに、キリシマがぶっきらぼうに告げる。
やがて、艦橋のハッチが静かに開き、一人の艦娘が姿を現した。
緑がかった黒髪に、理知的な印象を与える眼鏡。その手には、業務用の端末らしきものを持っている。軽巡洋艦「大淀」。その姿は、厚士もよく知っていた。
「失礼します。本日付で、大戦艦キリシマ及び、新井木一佐付きの連絡員を拝命いたしました、軽巡洋艦、大淀です。以後、よろしくお願いいたします」
淀みない、事務的で丁寧な自己紹介。
厚士は席を立ち、敬礼で応えた。
「こちらこそ、よろしく頼む。新井木だ。大変な役目だろうが、助かるよ」
てっきり、この横須賀鎮守府に所属している、経験豊富なベテランの艦娘、長門は無理だとしても陸奥辺りが常駐するものだとばかり思っていた。とはいえ、任務艦にして連合艦隊旗艦も務められる大淀ならば、瑞丸中将の側近として動いていただろうから問題はないだろう。だが、大淀は続けて、厚士の予想を裏切る言葉を口にした。
「恐縮です。私は、この任務に就くにあたり、新たに建造された個体でして、まだ鎮守府の業務にも不慣れな点が多いかと存じます。ご迷惑をおかけすることもあるかと存じますが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます」
「……新造艦?」
厚士は、思わず聞き返した。
この重大な任務に、経験豊富なベテランではなく、生まれたばかりの、何も知らない新人を?
一瞬、瑞丸中将の意図が読めず、厚士の思考が巡る。
これは、どういう意味だ? 人材が不足しているのか? いや、それなら他の艦娘を回せばいい。
──あるいは。
厚士の脳裏に、一つの可能性が浮かび上がった。
瑞丸中将は、敢えて真っ白なキャンバスをこちらへ寄越したのではないか。
この何も知らない大淀に、自分がどう接し、何を教え、どういう情報を与えるのか。彼女を通じて、こちらの人間性や、未来の知識の扱い方を、静かに観察しようとしている。
(……なるほどな。信用はされたが、信頼を勝ち得たわけじゃない。まだ、俺たちは試されている、ということか)
そう考えると、全てに合点がいく。あの人の良さそうな笑みの裏で、老練な司令官は、実に慎重な手を打ってきたものだ。
厚士は、内心で気を引き締め直しつつも、目の前の新人連絡員に、にこやかな笑みを向けた。
「そうだったのか。それは大変だったな。いや、こちらこそ、不慣れな世界で助けてもらうことばかりだろう。一緒に学んでいこうじゃないか、大淀」
「は、はい! 精一杯、務めさせていただきます!」
初々しく、そして力強く応える大淀。
その真摯な瞳を見ながら、厚士は静かに思う。
この鎮守府での生活は、ただ戦うだけではない。複雑な人間関係と、見えざる思惑の中で、自分たちの居場所を築いていく、もう一つの「戦い」の始まりなのだと。
「さて、大淀。早速だが、君に最初の仕事を頼みたい」
着任の挨拶もそこそこに、厚士は艦長席のコンソールを操作しながら、隣に立つ新人連絡員に声をかけた。
「はい、なんでしょうか、新井木一佐」
期待と緊張の入り混じった表情で、大淀が手元の端末を構える。
「瑞丸中将宛に、資材の使用申請書を作成してくれ。内容は──重巡洋艦娘一隻分の建造及び一ヶ月分の運用に相当する、燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの支給。以上だ」
「……重巡一隻分、ですか?」
予想外の、しかし具体的な要求に、大淀は少し驚いたように聞き返した。彼女の頭の中では、鎮守府の標準的な申請フォーマットが思い浮かんでいたのだろう。
「はい。何のため、とお尋ねになられるかと存じますが……」
「いや、構わない。それを申請書に明記する必要がある」
大淀は理路整然と、しかしどこか楽しそうに、厚士に説明を求めた。彼女にとって、これが記念すべき最初の業務なのだ。
厚士は、艦橋の窓から見える第1ドックの景色──そこに鎮座する、あまりにも巨大なキリシマの船体を見やりながら、説明を始めた。
「理由は、このキリシマに代わる、俺の『足』を作るためだ」
「『足』、でありますか?」
「ああ。君も知っての通り、このキリシマを動かせば、それだけで大和型並みの資材を請求することになる。ちょっとした偵察や、鎮守府近海の哨戒任務に出るだけで、だ。それはあまりにも効率が悪い。それに、キリシマをそう安易に動かせないとなれば、俺はここに引きこもるしかなくなる。まだこの世界に来たばかりで、客分の俺が、毎日タダ飯食らいというのも、どうにも肩身が狭くてな」
厚士のその言葉には、妙な説得力があった。彼がただの居候で終わる気がない、という意思の表れでもあった。
「だから、作るんだ。鎮守府近海の警備や、俺個人の足として使える、新しい艦を。……もっとも、君たちの知る艦娘とは、少し違うがね」
「と、申しますと?」
「霧の駆逐艦クラスを、一隻建造する。このキリシマのナノマテリアルを母体にすれば、それほど大規模な設備も必要ない。必要なのは、その核となる資材だけだ」
その言葉に、大淀は息を呑んだ。
霧の艦艇を、建造する?
そんなことが可能なのか。常識では考えられない提案だった。だが、目の前の男と、この艦そのものが、常識外れの塊なのだ。
「……承知いたしました。理由としましては、『鎮守府近海警備及び、客員提督の行動用として、霧の技術を用いた新型駆逐艦一隻を建造するため』……で、よろしいでしょうか」
大淀は、驚きを顔に出さず、冷静に要点をまとめて端末に打ち込んでいく。その順応性の高さと事務処理能力の片鱗に、厚士は内心で感心した。
「ああ、それで頼む。瑞丸中将には、この駆逐艦が完成すれば、鎮守府近海の哨戒任務は、キリシマを出さずとも、この一隻と俺だけで十分にこなせると伝えてくれ。長い目で見れば、その方が鎮守府全体の資材効率も格段に上がるはずだ、ともな」
「了解しました。早速、申請書を作成し、提出いたします」
大淀は深く一礼すると、てきぱきとした動作で端末を操作し、通信を開始した。
その姿を見ながら、厚士は静かに思う。
この優秀な連絡員は、これから自分の無茶な要求と、鎮守府の常識との間で、大いに手腕を発揮してくれることだろう。
そして、この「霧の駆逐艦」の建造は、自分たちがこの鎮守府に根を下ろし、その戦力として不可欠な存在となるための、重要な布石となるはずだった。
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大淀が鎮守府との通信に集中している間、CICの空間に、呆れたようなキリシマの声が響いた。メンタルモデルは姿を現さずとも、その意識は常に厚士の側にあった。
『──駆逐艦、だと? アツシ、貴様、正気か? この私がいながら、なぜわざわざそんな小型艦など建造する必要がある』
その声には、自身の能力に対する絶対的な自信と、小型艦艇に対する侮りが含まれていた。大戦艦である彼女からすれば、駆逐艦など豆粒のような存在でしかない。
厚士は、大淀に聞こえないように、小さな声で、しかしはっきりと答えた。
「キリシマ、戦争ってのは、デカい艦で殴り合うだけが全てじゃないんだ。特に、平時の艦隊運営は、軽巡や駆逐艦といった小型艦で、いかに燃費良く、効率的に回すかがキモなんだよ」
『だが、非力だろう。話にならん』
「それは艦娘の場合だろ? 俺たちが作るのは、霧の駆逐艦だ。クラインフィールドも張れるし、主砲の12.7cm砲からだって、お前と同じようにビームが撃てる。おまけに魚雷もミサイルも積めるんだ。鎮守府のすぐ近く、庭先をうろつく程度の深海棲艦相手なら、それだけで十二分すぎる戦力だ」
厚士は続ける。これは、この世界の常識に染まっていないキリシマに、艦隊運用の基本を教える良い機会でもあった。
「考えてみろ。遠方の北方海域や西方海域での大規模作戦なら、お前のような大型艦の出番だ。だが、毎日発生する近海の哨戒任務に、いちいちお前が出撃していては、鎮守府の資材がいくらあっても足りない。それは、俺たちの首を絞めるだけだ」
『……フン。ケチくさい話だな』
「ケチで結構。俺たちはまだ、ここに居場所を確保したばかりのよそ者なんだ。無駄飯食らいの穀潰しだと思われたくなければ、こういう地道なところで、俺たちの有用性を示していく必要があるんだよ」
その現実的な言葉に、キリシマは少しだけ納得したようだった。
そして、厚士は最後に、彼女のプライドをくすぐる一言を付け加えた。
「もちろん、その新しい駆逐艦の艦長は、俺がやる。だが、艦の頭脳であるユニオンコアの制御は、引き続きお前に任せるつもりだ」
『……なに?』
「つまり、その駆逐艦は、お前にとっての分身であり、遠隔操作できる手足のようなものになる、ってことだ。俺は現場で指揮を執るが、艦そのものを動かすのは、大本の主であるお前だ。どうだ、悪い話じゃないだろ?」
その提案に、キリシマはしばらく黙り込んだ。
自分の力が削がれるわけではない。むしろ、自分の支配下にある駒が一つ、増える。そして、その駒を動かすのは、自分と、自分が認めた指揮官であるアツシ。
『……ククク。なるほどな』
やがて、キリシマの楽しげな笑い声が、CICに響いた。
『面白い。実に面白いぞ、アツシ! 貴様の考えることは、いつも私の予想を超えてくる! よかろう、その『オモチャ』の建造、この私が直々に監督してやる! 生半可なものは作らせんぞ!』
どうやら、新しい艦の建造という「遊び」は、彼女の退屈を紛らわすのに、ちょうど良い刺激になったようだった。
こうして、鎮守府の資材効率の改善と、キリシマの新たな手足の確保という、二つの目的を孕んだ新型駆逐艦の建造計画は、その主たる大戦艦の全面的な協力のもと、静かに始動したのだった。