「オマエを叩いたバットだがこんなんになっちまった。」
藤原さんが手に持っていたのは、叩いた部分が見てわかるほどに一部だけ凹んだバットだった。
「なんでか分かるか?」
「多分、なんですけど…叩かれた感じがそれ程硬くなかったので、柔らかい素材で出来ていたとかですか?」
「まぁ、60点てとこだな。ほら、こいつ持ってみろ。」
そう言い乱雑にバットを投げてくる。
「おっとっとっと。あれ?すごい軽いし、持ち手も簡単に潰せちゃった。これ、もしかして。」
「そうだ。そいつの素材は紙で出来てる。」
「やっぱり。でも見た目はどう見ても鉄バットですよね?」
「こっからが講義の本題だ。物質創造の理論を教えてやる。」
「理論、ですか?あの、頭使うの苦手で…。」
そう、私の頭はお世辞にも良いとは言えない。悪くはないが平均にギリギリでしがみついているレベルだ。
「理論って言ってもそんな難しいことじゃねえ。誰にでもわかるようにやってるつもりだ。」
そうぼやきながら黒板に書き始める。
「物質創造はまず物の外観を決める。今回の場合、アタシは鉄バットにした。そこから構成物質を決定する。これがコイツが紙製である理由だ。」
「あ、あの…それっておかしくないですか?」
「ああ、おかしい。でもそれが"魔法"って奴だ。お前もやってみろ。」
いきなりすぎる無茶振り。
「そ、そんなやり方分からないですし無理ですよぉぉ。」
「なにも自分だけでやれと言ってねぇよ。アタシも手伝ってやる、と言うより新人は魔力の使い方がまだなってねえから手伝う決まりがあるんだが。」
よかったぁ。流石に即1人で実践ではないよねそりゃ。
「手出せ。」
「えっと、はい。これで良いですか?」
「今からアタシの魔力をお前に流して使い方を教えてやる。集中しろ。」
人と手を繋ぐの久しぶりすぎて無理ぃぃぃ。藤原さんの顔間近で見ると強すぎて集中できないぃぃぃ。
「おい!話聞いてんのか!これは安全に関わってんだからちゃんと集中しろ!怪我すんぞ。」
「は、はいぃぃぃ。」
「深呼吸しろ。目を閉じて、自分の感覚に集中しろ。いくぞ。」
体の中になにかが流れ込んでくる。でも、不思議と違和感はない。
「わかるか?体感は人によって違うこともあるが大体は全身に水が流れてく感じだと言っている。」
「はい。この温かいのが魔力なんですよね?」
「わかったならコイツに指向性を持たせてくぞ。試しにペンでも想像してみろ。」
「はい。」
ペンと言われいつも教室で使っているボールペンを思い浮かべてみる。
「できたか?ならそれが掌に乗ってる姿を想像しろ。」
「はい。出来ました。」
「今からお前の魔力を使って物質創造をする。この感覚を忘れんなよ。」
魔力が繋いでいない方の手に集まってるのが分かる。まるで手の上で雲が出来てるような光景が脳裏に浮かんだ。その少し後に手に何かが乗ったような軽い感覚がする。
「よし、目開けてみろ。」
「これが…」
「そうだ。これが物質創造だ。感覚掴んだか?」
「3日目だか4日目には自分でやってもらうからな。」
「はい!はい?えっ?新人研修って1日だけじゃないんですか?」
ポカンとした顔になる藤原さん。
「は?何言ってんだよ。1日で覚えれるわけねぇんだから大体1週間は研修だし終わった後も基本2ヶ月は先輩の付き添いがあるぞ。」
「え、えぇぇ〜〜〜〜!!!」
そんな社会人みたいなシステムしてるの魔法少女って。それに2ヶ月半は藤原さんと一緒なの怖いよ〜。