まのさば二次創作を書きたい   作:ひざぎ

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いつかの約束②

 

「それでね! シェリーちゃんが──」

 

 エマは何も気にしていない、というように牢屋敷での彼女たちとの関わりを語っていた。私がどれだけ彼女に対する憂いがあったとしても、その間に確執があったとしても、そのすべてを気にしていない、というように話をつづけた。

 

 実際、彼女にとってはもうそうなのだろう。

 

 

 

『だから──おあいこ!』

 

 

 

 エマは、私たちの間にあった確執を、たったそれだけの言葉で済ませてくれた。きっと、いや絶対に罪の比重は釣り合っていないはずなのに、それがまるで等価であるように、彼女はそう言いのけていた。

 

 そして、私たちは仲直りをした。小学校、中学校、ユキが自殺をするまでに紡がれていた幼馴染としての関係性、それを取り戻すための仲直り。

 

 ああ、その時は確かに仲直りができた。心の底から彼女に向き合えた。彼女の言葉に、彼女の振舞いに、私の言葉を重ねていた。

 

 

 

 ──けれど、やはり釣り合っていない。

 

 

 

 彼女が私にしていたこと。そして、私が彼女にしてしまったこと。

 

 注意を引くために、かまってほしいがために、故意に失敗を繰り返すこと。

 

 それが彼女の罪であるというのなら、あまりにもそれは私にとって軽すぎる。

 

 人の関心を引きたい、なんて一般的なものだ。私だって、ユキと二人でいたエマに対して嫉妬をして、【三人目】として彼女の関心を引こうとしていたのだから。

 

 そういった意味であれば、私はエマと同じ罪を抱えている。その上で、彼女の心を追い詰めるために行った数々の悪行が背中をなぞってくる。

 

「……すまないが、そろそろ行かなければいけない時間だ」

 

 私はエマの話を打ち切るように、彼女の話に割り込んでそう言った。

 

「遅れることは正しくない。エマも学校があるのだろう。君もそろそろ行った方がいいんじゃないか?」

 

 エマもこのまま私と立ち話をしてしまえば、自ずと遅刻という結果につながってしまうだろう。

 

(また【正しさ】、か。我ながら本当に呆れてしまうな)

 

 自分について、正しさにいつまでも囚われてしまうことに息がついてしまう。

 

「そ、そうだね。……うん、遅刻をするのは正しくないよね!」

 

 エマは私の言葉を受容したようで、正しい、という単語を繰り返してから笑顔になる。

 

(どうして君は、それでも私に笑ってくれるんだ)

 

 私は、そんな負に繋がる感情を抱きながら、そうして互いに背を向けて、反対方向へと進んでいった。

 

 

 

 

 それからも、朝は彼女とすれ違うことが多かった。

 

 最初こそは偶然だと納得できる範囲で、週に一度か二度くらい。早朝で出くわしてしまうのも、彼女が美化委員会に所属しているから、という話を聞いて納得をした。

 

 朝に彼女と出会えば、他愛のない話を繰り返して、そうやって時間を潰していく。正直、エマと過ごす時間は昔を思い出して楽しかったし、心地は悪くないものだった。

 

 だが、心地が悪くない故に、正しくない私がそんな居心地の良さを覚えていいのだろうか、と反発する自分がいる。もう心に語りかけてくるユキもいないはずなのに、それでも自問自答を繰り返す自分がいる。

 

 だから、その次の週からは道程を変えた。少し遠回りになってしまうけれど、その分、もっと早くから外に出れば時間については余裕があった。その上で、もうエマと邂逅しないことを想像しながら、一抹の寂しさを感じていたけれど──。

 

 

 

「──おはよ、ヒロちゃん!」

 

 

 

 ──それでも、エマは私と鉢合わせていく。

 

 

 

「……なんで君がここにいるんだ?」

 

「え? え、えーと……。なんでだろう?」

 

「あ、そうだ!」とエマは思いついたような声をあげた。

 

「今日は少し違う道とか、気分転換でもしようかなって、そう思っただけなんだ!」

 

 ……気分転換、という言葉で思い出すのは、私が自殺をして死に戻りをする前の二周目のこと。元気がなかったエマに対して、シェリーが気を利かせるように、みんなで腕相撲をして気分転換をしようとした、あの時のこと。

 

 気分転換するほどのことが学校であったのではないか。

 

 そんな心配が生まれて、私は「気分転換? 学校で何かあったのか?」とエマに聞いてみるものの「い、いや、そういうわけじゃないけど」と彼女ははぐらかすような態度しかとらない。

 

「……何かあったら私に教えてくれ。私はエマの為なら──」

 

 なんでもする、と口走りそうになったが、そうすることはできなかった。

 

 私の言葉よりも先に、食いつくようにエマが「本当?!」とニコニコと嬉しそうな表情でこちらを見つめてきたから。

 

「ヒロちゃんは本当に優しいね! でも大丈夫! 本当に何かあったわけじゃないんだ! ……あ、そうだ。ボクね、学校で新しい友達とかも出来たりして──」

 

 ……それから、彼女は日課と言わんばかりに、いつも通りの雑談を私に向けて語ってくる。

 

 私は、それに不思議な感情を覚えながらも、無碍にすることはできないその話に、結局時間のギリギリまで付き合うことになっていた。

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