サヴァイヴ(オリジナル小説)   作:一塔

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焼肉

 コロニーロカA2の繁華街は、夜になると昼間よりも少しだけ賑やかになる。仕事を終えた会社員、学生、買い物帰りの家族連れ、どこかのチームの打ち上げらしい集団。人工の夜空の下に伸びるネオンはどこか作り物めいているのに、その光の下を歩く人たちの笑い声は妙に生々しかった。

 

 そんな通りの一角にある焼肉屋の奥の席で、ペルシアは上機嫌にビールジョッキを掲げた。

 

「それじゃあ、乾杯!」

 

 周囲の視線なんて気にしない、いつもの勢いのいい声だった。

 

「いや、急に呼び出してどうしたんですか?」

 

 カイエが頬杖をついたまま、半ば呆れたように言う。目の前には火が入り、網の上ではすでにタンがじゅうじゅうと音を立てていた。油が落ちるたびに小さな火が上がり、そのたびに香ばしい匂いがふわりと広がる。

 

「そうですよ!」

 

 ククルもすぐに乗る。こちらは呆れているというより、本気で理由を知りたそうな顔だった。

 

「乾杯!」

 

 エマはそんな二人を置いて、一番先にジョッキを掲げた。躊躇がない。ペルシアの誘いに対して、こういうところで一番相性がいいのは昔からエマだった。

 

「お、エマはノリがいいね」

 

 ペルシアが嬉しそうに言って、ジョッキを軽くぶつける。エマも笑いながら同じように傾けた。

 

 ククルとカイエも、結局は渋々といった顔でグラスを口に運ぶ。ククルはまだ酒に慣れていないのか、ほんの少し舐めるようにしか飲まなかったし、カイエは最初から自分のペースを崩すつもりがない顔だった。

 

 テーブルにはすでにキムチ、包み菜、タン、カルビ、ハラミ、それからナムルの盛り合わせまで並んでいる。ペルシアの“軽く一杯”はだいたい軽くでは済まない。

 

「それで、そろそろ呼び出した理由を教えてください」

 

 カイエが焼けたタンを裏返しながら言った。

 

「ん? そりゃ私が会議でこっちに来てるから」

 

 ペルシアは何でもないことのように言って、ビールをもう一口飲んだ。

 

「意味が分かりません」

 

 ククルが即座に突っ込む。エマはその横で肉をひっくり返しながら笑っていた。

 

「ペルシアさん、デザート頼んでいいですか!?」

 

「いいわよ。ここのデザート美味しいのよ」

 

「楽しみです」

 

 話が脱線しているのに、本人たちは楽しそうだ。カイエが深々とため息をついた。

 

「本当にそれだけですか?」

 

「半分わね」

 

「半分?」

 

「そ。残りは、カイエとエマが副パーサー昇格祝いかな」

 

 ペルシアがさらりと言ったその言葉に、今度はカイエもエマも少しだけ表情を崩した。

 照れたような、気まずいような、でもやっぱり嬉しいような、そんな顔だ。

 

「……ありがとうございます」

 

 カイエが素直に頭を下げる。

 

「ありがとうございます、ペルシアさん」

 

 エマも明るく言った。

 

「いいのいいの。ちゃんと偉いことなんだから。もっと胸張って喜びなさいよ」

 

 ペルシアはそう言いながら、焼けた肉を包み菜に乗せ、豪快に口へ放り込む。食べ方に遠慮がない。そういうところも昔から変わらない。

 

「まあ、一人はまだ副パーサーになってないけど」

 

 そう言って、ペルシアはわざとらしくククルを見る。目が完全に面白がっていた。

 

「う゛っ……」

 

 ククルがあからさまに気まずそうな声を出した。エマが吹き出し、カイエが小さく眉を寄せる。

 

「あははは!」

 

 ペルシアは遠慮なく笑った。

 

「笑わないでください!」

 

 ククルが顔を赤くする。その様子がまた面白くて、ペルシアの笑いはしばらく止まらなかった。

 

「ごめんごめん。でも、副パーサーってのは運や巡り合わせって部分もあるからね」

 

 ようやく笑いを収めながら、ペルシアは言った。

 

「そうだよ、ククル」

 

 エマがすかさず宥める。

 

「う、うん……ありがとう」

 

 ククルは唇を尖らせながらも頷いた。

 

 ペルシアはそこで少しだけ真面目な顔になった。とはいえ、その真面目さも長くは続かないのがこの人らしいのだが。

 

「カイエやエマの今の実力は、正直、現場を直接見てないから断言はできない。でもククルの実力は、こないだの任務でしっかり見させてもらった」

 

 ククルが顔を上げる。

 

「ドルトムントの時と比べたら、見違えるほど良かったよ」

 

「ぺ、ペルシアさん……」

 

 ククルの声が一気にしおらしくなる。褒められると思っていなかったのだろう。素直に嬉しい顔をしていた。

 

「既に副パーサーとしての実力は備わってると思う。少なくとも“足りてないからダメ”って話じゃないわ」

 

 ペルシアがそう言うと、ククルの目がじわっと潤んだ。

 

「ありがとうございます……!」

 

「泣くな泣くな。まだ昇格したわけじゃないでしょ」

 

「でも嬉しいです……!」

 

「そういうところは相変わらずねぇ」

 

 ペルシアは苦笑しながらも、どこか満足そうだった。

 カイエとエマもそれを見て、少しだけ表情を和らげる。ククルが置いていかれているわけではないことを、二人とも気にしていたのだ。

 

 焼肉はその後も順調に進んだ。タンからカルビ、ハラミ、ホルモンへと皿が空いていき、キムチは追加され、包み菜も減っていく。エマは最初に言っていた通り、途中で本当にデザートのメニューまで眺め始めたし、ククルは最初の気まずさが消えると、また元気よく肉を焼き始めた。カイエは相変わらず冷静に焼き加減を見ていて、誰よりも網の管理が上手かった。

 

「カイエ、あんた焼肉屋向いてるんじゃない?」

 

「副パーサーを辞める予定はありません」

 

「まだ始まったばっかりでしょ」

 

「だからです」

 

「真面目〜」

 

 そんな軽口が続く中、自然と話題は仕事の方へ移っていった。

 

 最近のフライトのこと。新しく入ってきた若い乗務員のこと。ハワード財閥旅行会社の新しい規定のこと。そして、やはり――エリンのこと。

 

 最初にその名を口にしたのは、ククルだった。

 

「……エリンさん、大丈夫かな」

 

 さっきまで少し明るかった空気が、ほんのわずかに落ち着く。

 誰もその名前を避けていたわけじゃない。ただ、出せば皆が同じことを考えると分かっていたから、なんとなく後回しになっていたのだ。

 

「よりによってスペースホープだもんね」

 

 エマがジョッキの縁を指でなぞりながら言う。

 

「あそこの会社、ミラとランがいるし気にはなってたけど……あんまりいい噂は聞かないね」

 

 カイエが淡々と続ける。言い方は冷静だが、声音には心配が混じっていた。

 

「乗務員も含めて、多く辞めちゃったらしいよね」

 

「乗務員も新人や、経験の浅い人ばっかりみたい」

 

 エマとカイエの言葉に、ククルはむっとしたように唇を結んだ。

 そしてすぐに顔を上げる。

 

「でも、エリンさんなら大丈夫!」

 

 その言い方には迷いがない。信じきっている声だ。

 

「きっと、エリンさんが立て直してくれる」

 

 ククルが言うと、エマも頷いた。

 

「そうだね。エリンさんの優しい指導が始まると思うと……」

 

「それはどうかな……」

 

 トロンとした目をしたペルシアが、焼いたカルビを頬張りながらぽつりと言った。

 すでにだいぶ酒が回っている。頬は少し赤く、目元もとろんとしていて、今にも眠りそうな顔なのに、声だけは妙に芯があった。

 

「え?」

 

 カイエが聞き返す。

 

「優しい指導まで行けばいいけどね……」

 

 ペルシアはそう言って、ジョッキを傾ける。

 ククルが不思議そうに首を傾げた。

 

「そうなんですか?」

 

「そうだよ」

 

 ペルシアは網の上の肉を見つめながら、少しだけ遠い目をした。

 

「良くも悪くも、ドルトムントは実力主義だったでしょ」

 

「はい」

 

 カイエが即座に答える。

 

「ああ見えて、ドルトムントに入社してくる乗務員は、他の会社の乗務員よりもレベルは高いのよ」

 

 それは、自分がその会社にいたからこそ分かる実感だった。

 人間関係は最悪なこともあった。理不尽も多かった。けれど、最低限の基礎だけは皆、叩き込まれていた。だからこそ、そこから先で差がついた。

 

 ペルシアは、グラスを置いた。

 

「だから、今のスペースホープは優しい指導だけじゃ、多分ダメなんだと思う」

 

 三人が黙る。

 

「エリンは優しいよ。優しいし、丁寧だし、ちゃんと一人ひとりを見る。でもね……あの子、本当に必要だと思ったら、優しいだけでは終わらないから」

 

 その言葉に、ククルの背筋がぴんとした。

 カイエもエマも、何か思い当たるものがある顔になる。

 

「……エリンさん、怒るんですか?」

 

 ククルが小さく聞く。

 

「怒鳴りはしないと思う。でも、あの子が本気で“ダメ”だと思った時は、逆に何も言わなくなるかもね」

 

 ペルシアは遠い昔を思い出すように言った。

 

「何も言わない……?」

 

「そう。何も言わずに、まずは見せるの。どれだけ足りないか。どれだけ今のままじゃ無理かを。優しく誤魔化さないで、ちゃんと現実を見せる」

 

 それは、ペルシアがよく知っているエリンの厳しさだった。

 怒鳴るよりも、慰めるよりも、ずっと重い。

 相手に“自分で気づかせる”タイプの厳しさだ。

 

「それ、結構こわいですね……」

 

 ククルが小さく呟く。

 

「怖いよ。けど、あの子はそこで見捨てないから」

 

 ペルシアの声は、少しだけ柔らかくなった。

 

「だから、今のスペースホープが立ち直るなら、あの子のやり方しかないかもね」

 

 テーブルの上で、肉の焼ける音だけが少しの間続いた。

 エリンが今、火星のコロニーで何を見ているのか。

 どんな空気の中に立っているのか。

 ここにいる四人には想像することしかできない。

 

「ミラとランがいるのは大きいと思う」

 

 カイエが静かに言った。

 

「ええ」

 

 ペルシアが頷く。

 

「あの二人は、地味だけど強いから。ドルトムントでちゃんと揉まれてるし、エリンのやり方も分かる」

 

「でも、他の乗務員は……」

 

 エマが言いかける。

 

「そこが問題」

 

 ペルシアが即答した。

 

「多分、今のスペースホープの乗務員は、基礎から怪しいんじゃないかしら」

 

「そんなにですか?」

 

「分からない。でも、会社があそこまで崩れたなら、現場も相当だと思う」

 

 ペルシアは腕を組み、少しだけ真面目な顔になる。

 

「乗務員ってね、誰かひとり優秀なのがいてもダメなのよ。全体の最低ラインが一定以上じゃないと、船内の空気ってすぐ崩れるから」

 

 その言葉に、カイエが深く頷いた。

 ククルとエマも黙って聞いている。

 

「だから、エリンがやるなら、まずはそこからよ。最低ラインを引き上げる。優しいだけじゃ、それは無理」

 

「……そっか」

 

 ククルが小さく呟いた。

 

「うん。だから私は逆に、エリンが今どういう顔してるか、ちょっと心配」

 

 ペルシアがそう言った時だった。

 

 さっきまで勢いよく話していたその口が、ふっと止まった。

 

 ジョッキを持ったまま、目が半分閉じる。

 そして、そのまま、こくんと首が落ちた。

 

「あ」

 

 エマが最初に気づいた。

 

「……寝てる?」

 

 ククルが恐る恐る聞く。

 

「寝てるね」

 

 カイエが即答した。

 

 ペルシアは片手にジョッキを持ったまま、完全に船を漕いでいた。口元は少し緩み、今にも「むにゃ」とか言いそうな顔をしている。数秒後には本当にテーブルに頬をつけ、そのまま動かなくなった。

 

「早いですね……」

 

 ククルがぽかんと呟く。

 

「いや、結構飲んでたし」

 

 エマが苦笑する。テーブルの上には空のジョッキがいくつも並んでいた。

 

「こうなると思ってた」

 

 カイエはあまり驚いていなかった。

 むしろ「やっぱり」という顔で、ペルシアの端末をそっと引き寄せる。

 

「え、どうするの?」

 

「迎えを呼ぶ」

 

「迎えって、誰を?」

 

 ククルが聞いた瞬間、カイエは何の迷いもなく答えた。

 

「ローズさん。酔っ払って、寝落ちしたら呼んでってペルシアさんに言われてたし」

 

 その名前に、ククルとエマが同時に「ああ」と納得した顔をした。

 最近のペルシアの周辺事情を知っていれば、最適解はそこしかない。

 

 カイエが端末を操作し、短く現状を伝える。

 返事はすぐに返ってきたらしい。カイエは「来るって」とだけ告げた。

 

「早っ」

 

 エマが笑う。

 

「近くにいるんじゃない?」

 

 ククルが言うと、カイエは少しだけ眉を上げた。

 

「……近くにいなくても来る人だと思う」

 

 その言い方が妙に含みがあって、エマがにやりと笑う。

 

「カイエ、言うねえ」

 

「事実を言っただけ」

 

 それからしばらくして、店員が運んできたデザートがテーブルに並ぶ頃、焼肉屋の入り口の方で少しざわめきが起きた。

 

 背筋の通った、整った顔立ちの男が店内に入ってくる。

 スーツ姿。表情はどこか疲れていて、それでいて諦めが滲んでいる。

 ローズだった。

 

 彼は奥の席にいるペルシアを見つけた瞬間、深く、長いため息をついた。

 

「……やっぱりこうなったか」

 

 その言い方に責める響きはあまりない。呆れと慣れがちょうど半分ずつ混ざった声だった。

 

「ローズさん、こんばんは」

 

 カイエが席を立つ。

 

「こんばんは。悪いな、呼び出して」

 

「いえ。こちらも、こうなるだろうとは思っていました」

 

 カイエが淡々と返す。

 ローズは「そうか」とだけ言って、眠っているペルシアの顔を見下ろした。

 

 ペルシアは気持ちよさそうに寝ている。頬が赤く、片手はジョッキの名残を求めるように虚しく動いた。

 

「……会議の後に一人で帰るよりマシだと思っていたが、焼肉まで来ていたのか」

 

 ローズの声は小さかった。怒っているわけではない。ただ、もう少し自分を大事にしてくれと言いたげな響きがあった。

 

「デザート、美味しかったですよ」

 

 エマが言うと、ローズは一瞬だけ何とも言えない顔になった。

 

「そうか……それは良かった」

 

 そう言ってから、彼はペルシアのジョッキをそっと端へ避け、椅子の背にかけてあった上着を手に取った。動作が妙に自然で、慣れているのが分かる。

 

「ローズさんって、意外と面倒見いいですよね」

 

 ククルが思ったまま口にする。

 

 ローズは少しだけ目を細めた。

 

「意外、かどうかは知らないが……放っておくと面倒なことになる」

 

「それはそうですね」

 

 エマがくすりと笑った。

 

 ローズは眠っているペルシアの肩を軽く揺らす。

 

「ペルシア、起きろ」

 

「んぅ……」

 

 返事になっていない声が出るだけだ。

 

「ペルシア」

 

「……ローズぅ?」

 

 目を開けたのかどうかも怪しい顔で、ペルシアが呟く。

 ローズは少しだけ眉をひそめたが、その声にはちゃんと反応した。

 

「ああ、俺だ」

 

「迎えにきたの?」

 

「そうだ」

 

「えらい……」

 

「誰のせいだ」

 

 そのやりとりに、ククルが思わず吹き出しそうになる。エマは口元を押さえ、カイエは静かに視線を逸らした。見てはいけないものを見たような気分になるのだろう。

 

 ペルシアはふにゃりと笑って、また目を閉じかける。

 ローズは深々と息を吐いてから、彼女の腕を自分の肩に回した。

 

「立てるか」

 

「たてるぅ……」

 

 全然立てていない。

 体重の半分以上がローズにかかっている。

 

「無理そうですね」

 

 カイエが冷静に言う。

 

「見れば分かる」

 

 ローズも淡々と返し、そのままペルシアの体を支えて立たせた。

 動きに無駄がない。雑にも優しくもなりすぎない、ちょうどいい支え方だった。

 

 ククルはその様子を見て、小声で呟く。

 

「なんか……すごい慣れてますね」

 

「でしょ」

 

 エマがすぐに乗る。

 

「それ言うなら、お前たちも大概だぞ」

 

 ローズがちらりと三人を見る。

 その視線には、少しだけ疲れと、少しだけ苦笑いが混じっていた。

 

「まあ、ペルシアがこうして後輩を連れて飯を食うのは、悪くないことだと思う」

 

 その言葉に、三人は少しだけ目を丸くした。

 

 ローズは続けた。

 

「面倒だがな」

 

 その一言で、全員が笑った。

 

 ペルシアは半分寝たまま「んふふ」と意味もなく笑っている。

 焼肉の匂いと、甘いデザートの香りと、酔っ払いの体温が混ざる店内で、その光景だけが妙に穏やかだった。

 

 ローズは会計を済ませると言って席を離れたが、カイエが即座に止めた。

 

「それは私たちが払います。今日はお祝いでもあるので」

 

「そうか」

 

「あと、ペルシアさん、結構食べてました」

 

「見れば分かる」

 

 また同じ返しが来て、エマが小さく笑う。

 

 会計のあと、店の外に出ると、夜風が火照った頬に心地よかった。

 ネオンの光が少し滲んで見える。

 

 ローズはペルシアを支えたまま、一度三人の方を振り返った。

 

「今日はありがとう。……それと、あいつが変なことを言っていなかったか?」

 

「変なことって?」

 

 ククルが首を傾げる。

 

「大体、全部です」

 

 カイエが真顔で答えた。

 

 ローズは一瞬だけ天を仰ぎ、それから苦笑した。

 

「……そうか」

 

「でも、嬉しかったです」

 

 ククルがすぐに言う。

 

 その言葉に、ローズの表情が少しだけ変わった。

 

「そうか」

 

 今度の「そうか」は、さっきより柔らかかった。

 

「じゃあ、気をつけて帰れ」

 

「ローズさんも」

 

「はい!」

 

「おやすみなさい」

 

 三人がそれぞれ返すと、ローズは短く頷いた。

 

 そして、眠そうに目を閉じたままのペルシアを支えながら、夜の通りへ歩いていく。

 その背中を見送りながら、ククルがぽつりと呟いた。

 

「……ペルシアさん、ほんと自由」

 

「自由すぎるぐらいね」

 

 エマが笑う。

 

「でも、ちゃんと見てくれてる」

 

 カイエが静かに言った。

 

 二人がそちらを見る。

 

 カイエは夜の光の中で、少しだけ表情を和らげていた。

 

「昔も今も、あの人はちゃんと見てる。冗談みたいに笑って、適当に見えるけど、一番大事なところは外さない」

 

 ククルが嬉しそうに頷く。

 

「うん!」

 

 エマも笑った。

 

「だから、つい甘やかしちゃうんだろうね」

 

「それがペルシア派ってやつかな?」

 

 ククルが聞くと、カイエは小さくため息をつきながらも、否定はしなかった。

 

 夜のコロニーロカA2は、まだ賑やかだった。

 焼肉の匂いも、祝いの言葉も、エリンを案じる気持ちも、酔っ払って眠るペルシアの横顔も――全部が確かにそこにあって、三人の胸の中に残っていた。

 

 それぞれの道は少しずつ変わっていく。

 エリンは火星で、カイエとエマは副パーサーとして、ククルもまたその先へ向かっている。

 

 それでも今夜は、こうして同じテーブルを囲めたことが、少しだけ誇らしくて、少しだけ温かかった。

 

 

ーーーー

 

 

 翌朝、スペースホープの旅行事業部は、まだ始業時刻を少し過ぎたばかりだというのに、すでに重苦しい空気に包まれていた。

 

 原因ははっきりしている。

 

 ――エリンだ。

 

 昨日の午後、初めてのシュミレーションで現状を見た彼女は、その場ではほとんど何も言わなかった。ただ最後に、「今のままではフライトは無理」とだけ告げた。

 

 それだけだったのに、その一言は若い乗務員たちの胸に深く刺さったまま抜けていない。

 

 そして今朝。旅行事業部のフロアに現れたエリンの雰囲気は、さらに鋭くなっていた。

 

 表情はいつも通り落ち着いている。声も大きくない。だが、そこに柔らかさがない。感情の熱をあえて抜き取ったような、冷えた静けさだけがあった。

 

「今日から、朝から夕方までシュミレーションを続けます」

 

 フロア全体へ向けてそう告げた時も、エリンの口調に迷いは一切なかった。

 

「基礎を徹底的に見直す。乗客の乗り入れ、通路誘導、荷物対応、着席案内、サービス動線、緊急時の初動。全部やるわ」

 

 若い乗務員たちは一斉に背筋を伸ばした。

 だが、その「はい」という返事は、昨日よりも揃っていなかった。緊張よりも恐れが混じっていたからだ。

 

 ミラはその様子を見ながら、小さく息を飲んだ。

 

 ――エリンさん、どうしたの。

 

 言葉には出さない。出せない。

 けれど、胸の内では何度もそう問いかけていた。

 

 ミラもランも、エリンに教わった人間だ。ドルトムントの頃、エリンは確かに厳しかった。甘やかしはしない。誤魔化しも許さない。だが、それでも彼女は必ず“見せた”。

 

 こうやるのよ。

 ほら、一緒に。

 大丈夫、今のは悪くない。もう一回やってみよう。

 

 そうやって、言葉だけで終わらせず、自分の身体で手本を示してくれる人だった。

 

 だが今のエリンは違う。

 

 冷たいほどに指摘し、足りない点を容赦なく並べる。

 なのに、自分では動かない。

 

 その違いに、ミラもランも戸惑っていた。

 

    ◇

 

 午前最初のシュミレーションは、乗客の乗り入れから始まった。

 

 乗り込み口に乗務員役が並び、乗客役が順番に入ってくる。昨日と同じ流れだ。だが、今日はエリンがそのすぐ脇に立っていた。手元の端末を持ち、全員の動きを逃さない目で見ている。

 

 先頭に立った若い女性乗務員が、笑顔を作って乗客役に声をかける。

 

「い、いらっしゃいませ。スペースホープへようこそ――」

 

「声が高い」

 

 途中でエリンの声が差し込んだ。

 

 女性乗務員の肩がびくりと跳ねる。

 

「緊張しているのは分かる。でも、その声は乗客を安心させない。もう一度」

 

 冷静な口調だった。怒鳴っているわけではない。だからこそ、余計に逃げ場がない。

 

「は、はい……」

 

 女性乗務員は慌てて呼吸を整えようとする。

 だが、慌てた時点でさらに声が上ずる。

 

「いらっしゃいませ――」

 

「違う」

 

 即座に切られた。

 

「それだと“言葉をなぞってる”だけ。歓迎じゃない。やり直し」

 

 周囲がしんとする。

 

 ミラは目を伏せた。言っていることは間違っていない。間違ってはいない。

 だが――冷たい。

 

 エリンは、その女性乗務員がどう立てばいいか、どう息を吸えばいいか、どう視線を置けばいいかを教えない。ただ違うと言うだけだ。

 

 若い女性乗務員は唇を噛み、三度目でようやく声を出す。

 

「いらっしゃいませ」

 

「まだ硬い。次」

 

 その一言で、彼女は小さく顔を曇らせた。

 

 次の乗務員が前へ出る。今度は荷物対応だ。乗客役が重そうに鞄を持ち上げようとするのを見て、乗務員役の少女が「お持ちします」と手を伸ばす。

 

「待って」

 

 またエリンが止める。

 

「その位置から手を伸ばしたら、相手は荷物を取られるように感じる」

 

 少女が固まる。

 

「……すみません」

 

「謝る前に覚えて。謝罪は修正じゃない」

 

 静かな言葉だ。

 だが、その響きは刃に近かった。

 

「はい……」

 

「はい、じゃない。理解したなら動きで示して」

 

 少女の顔が青ざめる。

 彼女はもう一度やり直すが、今度は慎重になりすぎて、乗客役の荷物を受け取るタイミングが遅れた。

 

「遅い」

 

 エリンが端的に告げる。

 

「今みたいに躊躇すると、逆に相手に無駄な力を使わせる。配慮したつもりで負担を増やしてる」

 

 その言い方に、後方で見ていた新人の少女が小さく息を呑んだ。

 誰もが、自分も次に同じように言われるかもしれないと分かっている。

 

 そして実際、その通りになった。

 

 座席案内。

 通路誘導。

 荷物の収納補助。

 小さな子どもへの目線の落とし方。

 高齢者への歩幅の合わせ方。

 声掛けの順番。

 身体の向き。

 視線の位置。

 

 エリンは、片っ端から止めた。

 

「雑」

 

「今のは二手遅い」

 

「その言い回しは曖昧」

 

「自分で不安そうな顔をしてどうするの」

 

「それでは乗客があなたを信用しない」

 

「覚えてないなら現場には出せない」

 

「その程度の観察力で何が見えてるの?」

 

「動線を理解してない」

 

「言葉に頼りすぎ」

 

「謝れば済むと思ってる?」

 

 冷たい。

 とにかく冷たい。

 

 正論ばかりだ。だが、正論ばかりだからこそ、逃げ道がない。

 

 若い乗務員たちは見る見るうちに追い詰められていった。声が震え、肩が上がり、視線が迷う。エリンはそれすらも見逃さない。

 

「顔に出てる」

 

「怯えた顔を乗客に見せないで」

 

「今、自分のことでいっぱいいっぱいでしょ」

 

「それで人を支えられると思う?」

 

 その言葉に、とうとう一人の新人が目を潤ませた。

 まだ十代を少し過ぎたばかりに見える若い乗務員だった。必死に涙を堪えようとしているのが分かる。だが、エリンは慰めなかった。

 

「泣くなら外で泣いて」

 

 淡々とそう言っただけだ。

 

「今ここは訓練の場。泣いている人間に誰かが気を取られれば、訓練の意味がなくなる」

 

 その少女は唇を強く噛み、首を振って、何とか涙を引っ込めた。

 ミラはその姿に胸が痛んだ。

 

 昔のエリンなら、こんな時、一度呼吸を入れさせただろう。

 泣きそうな相手の視線を少し外し、「大丈夫」とまでは言わなくても、「続けられる?」と確認したはずだ。

 少なくとも、“外で泣いて”とは言わなかった。

 

 ――どうして、そんな言い方をするの。

 

 ミラの胸に、戸惑いと苛立ちが入り混じる。

 

 だが、その一方で別の感情もあった。

 今の若い乗務員たちが、このままの甘さで宇宙へ出るのは危険だという実感だ。

 

 だからこそ、エリンの冷たさを止めきれない。

 

    ◇

 

 昼を挟んでも、シュミレーションは休まなかった。

 

 短い休憩を挟み、午後はサービス動線の訓練に移る。ギャレーから客席へ、客席から通路へ、通路から緊急対応へ。乗務員として必要な“流れ”を身体に叩き込むための、最も退屈で、最も重要な訓練だ。

 

 だがここでも、若い乗務員たちは基礎のなさを露呈した。

 

 トレーを水平に保てない。

 カップを置く位置が一定しない。

 すれ違いの際に身体を逃がせない。

 誰かが通路に出た瞬間、全体の流れが止まる。

 

 そして何より、乗客の存在を前提に動けていない。

 

 サービスは“作業”ではない。

 船内にいる人間一人ひとりの状態を見ながら、動線と会話を組み立てる仕事だ。

 

 だが、若い乗務員たちは、まだ“手順”だけを追っていた。

 

「今、誰を見てたの?」

 

 エリンが尋ねる。

 

 若い乗務員の一人が言葉に詰まる。

 

「え……と、サービス表を……」

 

「違う。表は紙。見るのは人」

 

 即答だった。

 

「紙に従うのは最後でいい。まず見るのは人。何を欲しているか、どこに不安があるか、今話しかけていい顔か、それとも放っておくべきか。そこを見ずに運ぶだけなら機械でいい」

 

 あまりにも正しい。

 そして、あまりにも容赦がない。

 

 若い乗務員たちの顔から、少しずつ色が消えていく。

 もう自分が何を間違えているのかすら、分からなくなってきている者もいる。

 

 ランはその様子を見ながら、静かに息を吐いた。

 

 ランの知るエリンは、もっと“隣に立つ人”だった。

 一緒に動き、一緒に考え、一緒に反省する。

 厳しいことを言う時も、相手が一歩踏み出せる分だけの余白を必ず残していた。

 

 今のエリンは、その余白をわざと削っているように見える。

 

 ランは、乗務員役の若手が通路で止まったところで、そっと声をかけた。

 

「……大丈夫です。慌てなくていいので、まず一人だけ見てください」

 

 柔らかい敬語だった。

 それだけで、その若手の肩から少し力が抜ける。

 

 だが、その瞬間。

 

「ラン」

 

 エリンが低く名前を呼んだ。

 

 ランは振り返る。

 

「助けないで」

 

 その一言だった。

 

 ランは数秒、黙った。

 反論したい気持ちが胸の内に浮かぶ。だが、表には出さない。ゆっくりと頷く。

 

「……分かりました」

 

 穏やかな声で返すしかなかった。

 

 若い乗務員は再び取り残された顔になる。

 ランはその様子を見て、胸の奥に重いものを感じた。

 

 ミラもまた、似たようなことを経験した。

 

 通路誘導で完全に固まってしまった若手に、思わず一歩寄りそうになった時だった。

 

「ミラ」

 

 エリンが呼ぶ。

 

「はい」

 

「あなたまで甘くしないで」

 

 ミラはその言葉に、ほんの少しだけ目を見開いた。

 

 甘くしているつもりはなかった。

 ただ、崩れきる前に支えたいと思っただけだ。

 

 だがエリンは、それすら許さない。

 

「今ここで支えたら、次も同じところで止まる」

 

「……そうかもしれません」

 

「そうかもしれない、じゃない。そうなる」

 

 言い切る。

 

「今のこの子たちは、自分で崩れ方を知らない。崩れた経験がないまま、横から支えられて立ってきた。だから基礎が薄い」

 

 ミラは唇を結んだ。

 やはりエリンは、全部見えている。

 見えているからこそ、こんなに冷たい。

 

 だが、分かっていても、胸が痛かった。

 

    ◇

 

 午後も後半になる頃には、シュミレーションルームの空気は完全に変わっていた。

 

 朝のような緩みはない。

 かといって、理想的な緊張感でもない。

 

 全員が疲れきっている。

 汗で前髪が張り付き、喉が渇き、足取りも少し重い。

 そして、エリンの一言一言に、身体が先にびくつくようになっていた。

 

 それでも訓練は続く。

 

 誰も投げ出さない。

 投げ出せないのかもしれないし、投げ出したくないのかもしれない。

 その境目は、もう曖昧だった。

 

 やがて、夕方。

 

 訓練の最後にもう一度、乗り入れから通しでやらせたところで、エリンはようやく「そこまで」と声をかけた。

 

 若い乗務員たちは、解放された安堵よりも先に、次に何を言われるのかという緊張で固まった。

 

 エリンは、少し離れた位置から全員を見た。

 

 そして、今日一日の指導の中で最も短く、最も冷たい声で言った。

 

「……遅い。甘い。雑。以上」

 

 誰も息すら立てられなかった。

 

「明日も同じことをやる」

 

 それだけ告げて、エリンは端末を閉じる。

 

「解散」

 

 若い乗務員たちは、顔を見合わせることもできずに、その場に立ち尽くした。

 泣いている者はいない。怒っている者もいない。

 ただ、ひどく疲れている。心まで削られた顔だった。

 

 ミラはその空気に耐えきれず、エリンに声をかけようとした。

 だが、その前にエリンがランの方を向いた。

 

「ラン」

 

「はい」

 

 ランは静かに返事をする。

 

「後は任せるわ。」

 

 一瞬、ミラもランも意味が分からなかった。

 今から何を任せるというのか。

 

 だが、ランはすぐに理解したのだろう。穏やかに目を伏せ、一拍置いてから頷いた。

 

「分かりました」

 

 その返答の仕方が、かえってミラの胸をざわつかせた。

 

 エリンはそれ以上何も言わない。

 振り返りもせず、シュミレーションルームを後にした。

 

 扉が閉まる。

 

 重い沈黙が残る。

 

 若い乗務員たちは、ようやく少しだけ呼吸を取り戻したように、あちこちで小さく息を吐いた。誰かが壁にもたれ、誰かがその場にしゃがみ込みそうになるのを堪える。

 

 ランは、その全員を静かに見渡した。

 そして、穏やかな声で言った。

 

「……今日はここまでにしましょう」

 

 その声音は、エリンの後に聞くにはあまりにも柔らかかった。

 何人かの乗務員が、その一言だけで泣きそうな顔になる。

 

「座って。今すぐじゃなくていいけど、水分取って、呼吸を整えましょう」

 

 ランがそう言うと、若い乗務員たちは壊れものを扱うような動きで椅子に腰を下ろした。

 

 ミラは、扉の方を見つめたまま立っていた。

 エリンの去っていった方向を、しばらく見つめていた。

 

「……ラン」

 

「ん?」

 

「どう思う」

 

 短い問いだった。

 

 ランは少しだけ考え、それから静かに答えた。

 

「厳しすぎる、と思う」

 

 いつもより少しだけ重い。

 

「だよね」

 

 ミラも同意する。

 

「私の知ってるエリンさんじゃない」

 

「私も」

 

 ランは頷いた。

 

「あの人は、本来、ああいう教え方をしない筈。もっと……見せる人だった」

 

「そう。絶対に見せる。できない子を放っておかない。なのに今日は、何もしてないのと同じじゃない……」

 

 ミラの声には怒りが混じりかけていた。

 だが、そこでランが静かに首を横に振る。

 

「何もしていないわけではないと思う」

 

「どういうこと?」

 

「たぶん、わざと」

 

 その言葉に、ミラは黙った。

 

 ランは若い乗務員たちを見ながら続ける。

 

「今のこの子たち、ずっと“誰かが最後に何とかしてくれる”環境だったんだと思う。だから、自分で崩れたことがない。崩れないように支えられてきた。でも、それだと現場に出た時に持たない」

 

「だからって、あんな言い方をしなくても……」

 

「そうだね」

 

 ランは否定しない。

 

「私も、もう少し違うやり方はあると思う」

 

 そこははっきりと言った。

 

「でも、エリンさんが今やってるのは……まず“自分たちはこのままじゃ無理だ”って、本人たちに痛いほど分からせることなのかもしれません」

 

 ミラは唇を噛む。

 

 理屈は分かる。分かってしまう。

 だが感情が追いつかない。

 

「……それでも、つらいわ」

 

「うん。つらい」

 

 ランも正直に言った。

 

「見ている側も」

 

 その言葉に、ミラはようやく少しだけ肩の力を抜いた。

 

 若い乗務員たちはまだ静かだった。疲れきって、何を言えばいいのかも分からない顔をしている。だが、その目の奥には、朝にはなかった色があった。

 

 悔しさだ。

 

 傷ついたまま終わってはいない。

 少なくとも何人かは、自分の足りなさを“他人事ではなく、自分の問題”として受け止め始めている。

 

 ランはその目を見て、小さく息をついた。

 

「……たぶん、明日から」

 

「明日?」

 

「今日、あそこまで崩したから。明日から、ようやく形を入れるんじゃないかな」

 

「本当に?」

 

「分からない。でも、エリンさんなら」

 

 ランの言い方は断言ではなかった。

 それでも、その“なら”には信頼があった。

 

 ミラはもう一度、扉の方を見た。

 

 厳しく、冷たく、容赦がない。

 今日のエリンは、確かにミラたちの知るエリンとはかけ離れていた。

 初心者にもベテランにも、必ずやり方を見せて、一緒に前に出てくれる人だったのに。

 

 それなのに、どうして。

 

 ミラは胸の内で問い続ける。

 

 だが同時に――

 今のスペースホープに、優しい指導だけでは間に合わないことも、薄々分かってしまっていた。

 

 だから苦しい。

 

 エリンの冷たさが、間違っていると断言できないからこそ、苦しい。

 

 ランは静かに立ち上がり、若い乗務員たちに向き直った。

 

「……今日はお疲れさまでした。終わりにしましょう。自分がどこで止まったか、忘れないうちにメモだけして帰ろうね」

 

 その声に、何人かがゆっくりと顔を上げた。

 救われたような顔をしている者もいる。

 

 ミラは、その光景を見ながら、小さく思った。

 

 明日もきっと、厳しい。

 

 下手をすれば、今日よりも。

 

 それでも、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 フライトを再開するには、あの冷たさの向こう側まで行くしかないのだ。

 

 夕方のシュミレーションルームには、疲労と悔しさと、まだ形にならない小さな決意だけが残っていた。

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