サヴァイヴ(オリジナル小説)   作:一塔

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信頼

 船内の空気は、少しずつ元の落ち着きを取り戻し始めていた。

 

 先ほどの一件で、一時はどうなるかとエリンも肝を冷やしたが、ユウコの初動とナツキの受け継ぎ、ランやサリー、ミラ達の自然な立ち回りのおかげで、客室全体が不安に飲まれることはなかった。

 吐いてしまった生徒はメディカルルームへ移動し、クリスタルが対応に入っている。教員達にも必要な範囲で状況は共有され、周囲の生徒達にも“体調を崩すことは珍しいことではない”と、乗務員達の落ち着いた言葉が行き渡っていた。

 

 それがどれほど大きいことか、エリンは痛いほど分かっていた。

 

 客室は、空気が一度崩れると早い。

 誰か一人の不調が、別の子の不安を呼び、不安がまた不調を呼ぶ。

 特に今日の便は、高等部の生徒十五名。初めて宇宙船へ乗る子もいれば、憧れや興奮で気が張っている子もいる。そういう時に、一つの揺れが全体へ広がるのは本当に一瞬だ。

 

 だが、今日は持ちこたえた。

 いや、持ちこたえただけではない。

 乗務員達が、自分の持ち場で、自分の頭で、ちゃんと空気を戻したのだ。

 

 エリンは、通路脇に立ちながら小さく息を吐いた。

 

 ようやく、胸の奥に張っていたものが少しだけ緩む。

 

 食堂へ移動する生徒達も出始めていた。

 ラウンジの窓際に興味を示す子もいる。

 最初は席で固まっていた子達も、少しずつ宇宙船という空間に馴染み始めていた。

 もちろん、まだ油断はできない。

 だが少なくとも、今この時間の客室には“期待と楽しみ”が戻ってきている。

 

 その時だった。

 

 前方通路の向こう、少し離れた場所に、見慣れた背の高い姿が見えた。

 

 リュウジだった。

 

 その隣には、スペースホープ側の若いパイロットがいる。

 二人とも客室へ出てきているのが見えた。若いパイロットの方は周囲を見ながら少し緊張したように歩き、リュウジはその半歩前を、いつもの無駄のない歩幅で進んでいる。

 

 きっと客室の様子を見せているのだろう。

 パイロットにとって、乗務員がどう動き、客室がどう呼吸しているかを知ることは大事だ。リュウジならそのあたりまで考えて、若いパイロットへ“客室を見る目”を教えようとしていても不思議ではない。

 

 エリンはそう察し、二人を遠くから見ていた。

 

 その視線の中で、また別の動きが目に入る。

 

 メノリが、クミコへ何か話していた。

 

 クミコは一瞬だけ目を丸くし、それから真面目な顔で頷いている。

 あの様子――誰かを呼びたいのだろう。

 

 エリンは少しだけ眉を上げた。

 

 まさか、とは思う。

 だが、メノリの性格を考えると、やりかねないとも思った。

 

 

 クミコは、メノリから頼まれた時、一瞬だけ本気で困った。

 

 目の前の生徒――いや、正確にはお客様であるメノリは、驚くほど落ち着いた顔でこう言ったのだ。

 

「リュウジを呼んでいただけませんか?」

 

 まるで、旧友をちょっと呼び止めるくらいの口調で。

 

「え、えっと……」

 

 クミコは反射的に周囲を見た。

 たしかに、少し前方にリュウジが見える。若いパイロットと客室を見て回っている最中だ。

 だが、呼ぶ?

 しかも今?

 乗務中に?

 クミコの頭の中で、“絶対に勝手に呼んではいけない”と“でもお客様の要望は聞かないといけない”が盛大にぶつかった。

 

 メノリは、そんなクミコの迷いを察したのか、少しだけ口元を緩めた。

 

「無理にとは言いません。ですが、リュウジに“メノリが呼んでいる”とだけ伝えていただければ十分です」

 

「は、はい……」

 

「断るようなら、ルナに言いつけると伝えてください」

 

 クミコは頷いた。

 頷いたものの、内心は完全に混乱していた。

 

 メノリという生徒が、リュウジと知り合いなのは分かった。

 さっきエリンとも普通に話していたし、ただのファンというわけでもなさそうだ。

 でも、今ここで操縦士を呼ぶのはどうなのか。

 

 それでも、呼ばなければいけない。

 クミコは一度だけ呼吸を整え、それからリュウジの方へ歩いていった。

 

 歩き方は乱さない。

 焦って見せない。

 サラに何度も何度も言われたことを、自分へ言い聞かせながら。

 

「リュウジさん」

 

 通路の途中で、少し声を落として呼ぶ。

 

 リュウジが足を止め、振り返った。

 隣にいた若いパイロットもつられて立ち止まる。

 

「どうした」

 

「リュウジさん、お客様がお話ししたいと……」

 

「俺に?」

 

 リュウジの眉がわずかに寄る。

 

「はい。あちらのお客様です」

 

 クミコが視線を誘導すると、リュウジの目がその先を追う。

 そして、その視線がメノリで止まった瞬間、表情が明らかに変わった。

 

 眉間に、はっきりと皺が寄る。

 

「……上手く断ってくれ」

 

 思ったよりも即答だった。

 

 クミコは一瞬だけ「やっぱり無理ですよね」と言いそうになったが、そこでメノリに言われていた一言を思い出す。

 

「えっと……るな? に言うぞと、断ったら言ってくれと言われました」

 

 その瞬間、リュウジの顔がほんの僅かに固まった。

 

「……」

 

 クミコは自分でも“るな?”の発音が怪しかったと思った。

 だが、効果は抜群だったらしい。

 

「……分かった」

 

 リュウジが、短くそう言った。

 

 ものすごく不本意そうではあったが、従うようだ。

 隣の若いパイロットが、何も言えずに目だけ泳がせている。

 

 リュウジはその彼へ短く言った。

 

「先に操縦室へ戻っていろ」

 

「は、はい!」

 

 若いパイロットはすぐに頷き、半ば逃げるように前方へ戻っていった。

 

 リュウジは一度だけ小さく息を吐くと、メノリの座席の方へ歩いていく。

 その足取りには、諦めと、少しの警戒が混じっているようだった。

 

 クミコはそれを見届けてから、ほっとするやら不安になるやらで、微妙な顔をして自分の位置へ戻る。

 どう考えても普通のやり取りにはならない気がしたからだ。

 

 

 メノリの座席へ着くと、リュウジはきっちりと“仕事の顔”を作った。

 

「お客様、どうかなさいましたか?」

 

 その口調は完璧だった。

 柔らかく、丁寧で、余計な感情を表に出していない。

 

 だが、その一言を聞いた瞬間だった。

 

「……ぶっ」

 

 メノリが思わず口元を押さえた。

 

 肩が微かに震えている。

 明らかに笑いを堪えていた。

 

「おい」

 

 リュウジが、周囲には聞こえない程度に小さく呟く。

 

 メノリは口元を押さえたまま、何とか息を整えて言った。

 

「すまない。リュウジの口調が可笑しくてな」

 

「仕方ないだろ」

 

 リュウジも声を潜めたまま返す。

 

「周りの目もある」

 

「そうだな」

 

 メノリはようやく笑いを収め、少しだけ真面目な顔へ戻る。

 

 そのやり取りを、隣のスワレは目を丸くしながら聞いていた。

 

「ねぇ、メノリ、誰なの?」

 

 遠慮のない声だった。

 メノリは、その問いに実にあっさり答える。

 

「ああ、私の友人のリュウジだ」

 

 その瞬間、スワレの顔が文字通り跳ねた。

 

「ええええっ!? リュウジって、あのS級のリュウジ!?」

 

 声が大きい。

 しかも反応が速い。

 

 メノリはしまった、という顔を一瞬したが、もう遅かった。

 

「え、うそ!?」

「S級って言った!?」

「本物!?」

「えっ、あのパイロット!?」

 

 周囲の生徒達が一気にざわつき始める。

 

 スワレは完全に興奮していた。

 

「握手してほしい! いや、サイン!? 写真!? え、無理、どうしよう!」

 

 メノリは一瞬だけ目を閉じた。

 やはりこうなったか、という顔だ。

 リュウジは無言で眉間を押さえそうになったが、もちろんそんなことは出来ない。

 客室の中だ。

 しかも今、自分が原因で空気が大きく揺れ始めている。

 

 ざわめきは隣の列へも広がる。

 “リュウジがいる”という事実は、普通の高等部生にとってはあまりにも強すぎる刺激だった。

 

 エリンは、その空気の揺れをすぐに察した。

 

 やっぱり。

 

 内心でため息をつきたくなる。

 でも、今はそれを顔に出している場合ではない。

 

 このままだと、一気にリュウジへ意識が集中し、便の空気が“研修便”ではなく“有名人のいる便”へ変わってしまう。

 それは避けたい。

 だが、もう完全に無かったことにも出来ない。

 

 エリンは、ためらわず前方のマイクを手に取った。

 

 アナウンスのスイッチを入れる。

 客室へ、柔らかい電子音が一つ響く。

 

「皆様、少しだけご注目ください」

 

 その声で、ざわつきが少しだけ止まる。

 生徒達の視線が、前方のエリンへ向いた。

 

「本日の機長より、皆様に挨拶をしたいと申し出がありました。皆様は席を立たず、そのままお待ちください」

 

 そのアナウンスが入った瞬間、客室の空気が別の意味で弾けた。

 

「えええ!?」

「機長って、もしかして……!」

「やっぱりリュウジ!?」

「うそ、本当に!?」

 

 期待と興奮で、声が一気に上がる。

 だが、“席を立たずに”という一文が入っていたおかげで、立ち上がる者はいない。

 それがエリンの狙いだった。

 

 リュウジは、メノリの席の横に立ったまま、ゆっくりとエリンの方を見た。

 

 その視線には、はっきりとした困惑があった。

 

 ――なんて事を

 

 ほとんどそのままの意味が乗った目だった。

 

 エリンは、そんなリュウジへ視線を返す。

 

 こうなったら仕方ないでしょ。

 責任とりなさい。

 

 言葉にはしていない。

 だが、視線だけで十分だった。

 

 リュウジは数秒、完全に嫌そうな顔をした。

 けれど結局、逃げるわけにはいかないと分かったのだろう。

 小さく息を吐くと、メノリへ向けてだけ低く言った。

 

「あとで話がある」

 

 メノリは口元に笑みを残したまま、小さく頷く。

 スワレは今にも爆発しそうな顔で、でも席を立たないよう必死に膝の上で拳を握っていた。

 

 リュウジはそのまま前方へ歩き出す。

 

 客室の中央を、S級パイロットの制服姿が静かに進んでいく。

 生徒達の視線が一斉に集まる。

 興奮。

 憧れ。

 信じられないという気持ち。

 その全部が空気に滲んでいた。

 

 エリンはマイクを少し離し、リュウジへ渡す位置で待った。

 

 リュウジはほんの一瞬、マイクを見た。

 それから、エリンへ小さく困惑した視線を送る。

 

 だがエリンは平然としていた。

 むしろ微かに“ちゃんとやって”とでも言いたげな顔だ。

 

 リュウジはまた一つ息を吐く。

 それからマイクを受け取った。

 

 客室が静まり返る。

 

 誰もが、その一言を待っていた。

 

「本日の機長を務めます、リュウジです」

 

 その声が客室へ広がった瞬間、生徒達の空気がまた少しだけ震えた。

 だが、今度はざわつきではない。

 ちゃんと耳を傾ける静けさだ。

 

「本日はご搭乗ありがとうございます」

 

 声は低く、よく通る。

 誇張のない、けれど自然と聞かせる力のある声だった。

 

「皆さんの多くは、こうして宇宙船へ乗るのが初めてだと思います。不安もあるでしょうし、緊張もあると思います」

 

 その一言に、何人かの生徒が無意識に姿勢を正した。

 

「ですが、それは特別なことではありません。初めての時に不安があるのは自然なことです。ですから、無理をせず、分からないことや気分が優れないことがあれば、遠慮なく客室乗務員へ伝えてください」

 

 リュウジの目が一度だけ客室を見渡す。

 その視線は、特定の誰かではなく、“この便に乗っている全員”へ向いていた。

 

「今日の便は、皆さんをただ運ぶためだけのものではありません」

 

 その言い方に、教員達も静かに耳を傾ける。

 

「これから皆さんが向かう観測ステーションでの時間が、より良いものになるように、ここへ来るまでの移動も含めて、私達はこの便を整えています」

 

 エリンは、その言葉を聞いてほんの少し目を細めた。

 そう。

 この便はただの移動ではない。

 それを、リュウジはちゃんと分かって言葉にしている。

 

「宇宙から見える景色も、観測ステーションで得る知識も、皆さん一人ひとりにとって違う意味を持つと思います。ですから、ぜひ自分の目で見て、自分の頭で考えて、楽しんできてください」

 

 そこまで言ってから、リュウジはほんの少しだけ口元を和らげた。

 

「それでは、短いフライトですが、よろしくお願いします」

 

 マイクを戻す。

 

 客室は一瞬だけ静まり返っていた。

 次の瞬間、ぱちぱちと拍手が起きる。

 最初はスワレだった。

 そこへ周囲の生徒達がつられ、教員達も微笑みながらそれに加わる。

 

 ざわつきは消えていない。

 でももう、“有名人だ!”という浮ついた騒ぎではなくなっていた。

 機長として言葉を受け取ったあとの、前向きな熱に変わっている。

 

 エリンは、その変化をはっきりと感じた。

 

 助かった。

 そして、さすがだった。

 

 こういうところなのだ。

 リュウジという人は。

 

 責任を取らされたような形にはなった。

 でも、マイクを持った瞬間に、自分が今何を話すべきかを迷わない。

 それが、彼の強さだった。

 

 リュウジはマイクを返しながら、エリンへ低く言った。

 

「……勘弁してください」

 

「ありがとう」

 

 エリンはにこりともせずに返す。

 その反応に、リュウジはもう何を言っても無駄だと悟ったのか、そのまま一歩下がった。

 

 前方では、ミラがすでに次の動きに入っている。

 拍手の余韻を拾いながら、客室の空気が“浮きすぎない”ところへ静かに戻していく。

 ランは後方から、生徒達の呼吸が今どう変わったかを見ていた。

 ハズキは明るくしすぎず、でも楽しさは残すような温度で飲み物の案内へ移ろうとしている。

 サリーは、さっきまで取り残され気味だった生徒達が今の挨拶をどう受け取ったか、顔の色で確かめていた。

 

 そしてメノリは、自分の席からそんな一連の流れを静かに見ていた。

 

 リュウジが客室全体へ言葉を落とし、エリンがその流れを受け、乗務員達が次の空気へ繋ぐ。

 それを、メノリは自分の目で確かめていた。

 

 たしかに、これはただの“地学研修のフライト”ではない。

 そして、スペースホープも、エリンの言ったとおり、悪いことばかりではないのかもしれない。

 

 隣のスワレはまだ興奮を抑えきれない顔をしていたが、それでも小声で囁く。

 

「メノリ、ほんとに友人なんだ……すご……」

 

 メノリは小さく息をついた。

 

「今は静かにしていろ。まだフライトの途中だろ」

 

「う、うん……でもあとで絶対詳しく聞くからね!」

 

「好きにしろ」

 

 そのやり取りも、どこかいつも通りで、少しだけ客室の空気を和らげた。

 

 エリンは再び全体を見渡した。

 

 混乱は収まった。

 むしろ、今の挨拶のおかげで、便全体のまとまりは少し強くなったかもしれない。

 

 そう思いながらも、彼女はすぐに次の段取りへ頭を切り替える。

 

 エリンは、客室の空気がようやく落ち着きを取り戻したのを見届けてから、前方通路へ立つリュウジへ近づいた。

 

 機長としての短い挨拶を終えたあとも、客室にはまだわずかな熱が残っている。

 だがそれは、最初のざわつきとはもう違っていた。

 “S級のリュウジがいる”という浮ついた興奮ではなく、“この便は本当に大丈夫なんだ”という安心と、そこに少しだけ混じる憧れに変わっている。

 

 エリンは、その空気を壊さないように声の角度を落として言った。

 

「リュウジ」

 

「どうしましたか」

 

 リュウジは、まだ少し不本意そうな顔のまま答えた。

 さっきの挨拶を客室でやらされたことに対して、完全に納得したわけではないのだろう。だが、怒っているというよりは、いつものように“余計なことを背負わされた”という顔に近い。

 

 エリンはその表情に、少しだけ口元を緩めた。

 

「メディカルルームで、リュウジに会いたいって言う子がいるんだけど、行ってくれない?」

 

 その言葉に、リュウジの眉がわずかに動く。

 

「……俺に?」

 

「ええ」

 

「俺が行って、余計に興奮しませんか?」

 

「大丈夫よ。今はもう少し落ち着いてると思う」

 

 エリンはそう答えてから、ほんの少しだけ視線を柔らかくした。

 

「それに、せっかく会いたいって言ってるんだもの。あの子、具合が悪いのを必死に隠してたわ。会ってあげたら、きっと安心する」

 

 リュウジは数秒だけ黙っていた。

 その沈黙の意味は、エリンにはなんとなく分かった。

 リュウジは、こういう“憧れ”を向けられること自体には慣れている。

 だが、それをどう受け止めるかは、今でもどこか不器用だ。

 

「……分かりました」

 

 やがて、リュウジは短くそう言った。

 

 その返事に、エリンは素直に微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

 リュウジは、その微笑みに少しだけ視線を逸らすようにしてから、小さく息を吐いた。

 

「……そういう顔をされると、断りづらいです」

 

「どういう顔?」

 

「そういう顔です」

 

 低い声でぼそりとそう言ってから、リュウジはそのままメディカルルームの方へ歩いていった。

 

 エリンはその背中を見送りながら、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

 今日の便では、客室乗務員としての技量だけではなく、こうした“人と人の間”をどう整えるかもまた大事になる。

 生徒達にとっては、初めての宇宙船、初めての本格的な地学研修、初めて尽くしの一日だ。

 だからこそ、リュウジに会いたいという気持ちも、緊張や不安の一部として大事に扱いたかった。

 

 

 メディカルルームの扉を軽く叩くと、中からクリスタルの声がした。

 

「どうぞ」

 

 リュウジが扉を開けると、医療ルームの中は客席とは別の静けさに満ちていた。

 

 クリスタルは椅子に座る少女の脈を見終えたところだった。

 少女は、吐いて少し身体が楽になったのか、先ほどより顔色は戻っている。

 だが、まだ頬は赤く、目元にも強い羞恥と緊張が残っていた。

 

 そして、扉の向こうに立つ人物を見た瞬間、少女の目が大きく見開かれる。

 

「……え」

 

 声にならない声だった。

 

 クリスタルは、その反応を見てすぐに状況を察したらしい。

 呆れたように肩をすくめる。

 

「ああ、来たわよ。あんたが会いたいって騒いでた人」

 

「ク、クリスタルさん……!」

 

 少女が真っ赤になって抗議するような声を出す。

 だが、その顔には明らかに嬉しさも混じっていた。

 

 リュウジは数歩だけ中へ入り、医療ルームの扉を後ろ手に閉めた。

 閉め方は静かだった。

 不用意に“特別な空間”へしないためだろう。

 

「具合はどうですか」

 

 その声は、客室での機長としての声とも、友人相手の声とも少し違った。

 柔らかいわけではない。

 でも、必要以上に冷たくもない。

 “今は相手が体調を崩したお客様だ”と理解している時の、リュウジなりの気遣いがそこにあった。

 

 少女は、どう答えていいのか分からないまま、膝の上の手をぎゅっと握った。

 

「だ、だいじょうぶです」

 

「そうですか」

 

 リュウジはごく短く頷く。

 それだけなのに、少女の呼吸が少しだけ落ち着いた。

 

 クリスタルがそこで、呆れたように言う。

 

「さっきまで“会えないならやだ”って意地張ってたくせに、本人来たらそれ?」

 

「ち、違……」

 

「違わないでしょ」

 

 クリスタルはあっさり切る。

 だがそのやり取りが、逆に少女の硬さを少しだけほどいた。

 

 リュウジは、その様子を見てから静かに問う。

 

「宇宙船は初めてですか」

 

「……はい」

 

「酔いやすい方ですか?」

 

「分かりません……。たぶん、初めてなので」

 

「そうですか」

 

 また短い相槌。

 だが、そのテンポが少女に余計な緊張を与えない。

 

「だったら、最初に吐けたのは悪いことじゃありません」

 

 少女が顔を上げる。

 

「え……?」

 

「我慢し続けて酷くなる方が面倒です。今のうちに少し休んで、落ち着いてから戻ってください」

 

 それは慰めというより、事実として淡々と告げる言い方だった。

 だが、その“特別扱いしない”感じが、少女には逆にありがたかったのだろう。

 

 目元に浮かんでいた涙が、今度は別の意味で揺れる。

 

「でも……あの……」

 

「なんですか」

 

「会えて、よかったです」

 

 ようやく絞り出した本音だった。

 

 リュウジは一瞬だけ目を瞬いた。

 それから、ほんのわずかに表情を和らげる。

 

「そうですか」

 

 返事はそれだけだった。

 だが、その一言に少女は救われたような顔をした。

 

 クリスタルは、そのやり取りを見ながらくすっと笑った。

 

「はい、これで満足したなら少し休む。いいわね?」

 

「……はい」

 

 今度の返事は素直だった。

 

 リュウジはそこで、それ以上踏み込まず、短く言った。

 

「戻る時は客室乗務員の指示に従ってください。無理はしないでください」

 

「はい」

 

 少女は頷く。

 その頷き方には、さっきまでの意地はなかった。

 

 リュウジはクリスタルへ軽く目をやる。

 

「お願いします」

 

「はいはい、任されました」

 

 クリスタルが手をひらひらさせる。

 

 そのやり取りを最後に、リュウジは静かにメディカルルームを出た。

 扉の向こうへ消える直前、少女はもう一度だけその背中を見つめ、今度は吐き気ではなく、安堵から深く息を吐いた。

 

 

 その後、フライトは結局のところ無事終了した。

 

 観測ステーションへ近づくにつれ、窓の外に見える景色は火星コロニーの人工空とはまるで違うものになっていった。

 重さのない暗さの中に広がる宇宙。

 その中へ浮かぶ観測設備の白い輪郭。

 生徒達の声は、今度は最初の興奮とは違う、本物を前にした時の息を呑む静けさへ変わっていた。

 

 着艦の最終段階では、エリンも乗務員達も最後の確認に神経を集中させた。

 緊張している子はいないか。

 荷物は落ち着いているか。

 教員は立ち上がりそうになっていないか。

 メディカルルームへ移動していた少女は、クリスタルの判断で少し休んだあと、落ち着いた顔で席へ戻っていた。

 そしてその表情は、離陸前や嘔吐後とは打って変わって、どこか満ち足りていた。

 

 観測ステーションへ無事到着し、ハッチが開く。

 ステーション側の職員と引率教員達の連携のもと、生徒達は順番に降りていく。

 この段階では、エリンはあえてミラ、ラン、クミコを同行側へ回した。

 今日の研修全体を見据えれば、最初の誘導と現地での落ち着きの橋渡しができるこの三人を、ステーション側へつけるのが最善だったからだ。

 

「ミラ、ラン、クミコ」

 

「はい」

 

「先生方と連携して、最初の三十分は呼吸を落ち着けることを優先して。クミコ、先頭を急がせない。ミラは空気を持ち上げすぎない。ランは静かな子を見落とさない」

 

「はい!」

 

 三人の返事が揃う。

 

 エリンはほんの少しだけ目を細めた。

 頼もしくなった。

 そう本心から思う。

 

「行ってらっしゃい」

 

「はい!」

 

 ミラは明るく、だが以前より落ち着いた笑顔で頷いた。

 ランは静かに一礼し、クミコは緊張しながらも、もう逃げるような目はしていなかった。

 

 生徒達がステーションの方へ流れていく中、メノリもまたその列にいた。

 一度だけ振り返り、エリンへ軽く会釈をする。

 エリンも優しく頷き返した。

 そのすぐ隣ではスワレが何か興奮した様子でメノリへ話しかけており、メノリはいつもの少し呆れた顔でそれを受け流していた。

 

 その背中を見送りながら、エリンは少しだけ肩の力を抜いた。

 

 ひとまず第一段階は終わった。

 だが、乗務員達の仕事はまだ終わらない。

 宇宙船に残る者達には、次の仕事が待っている。

 

 

 生徒と教員達を送り出したあと、宇宙船内に残ったのは、エリン、ハズキ、アズサ、ユウコ、ナツキ、サリー。

 客室は少し静かになった。

 先ほどまでの熱と期待が抜けた分、どこか広く見える。

 

 エリンは、その静けさの中でブリーフィングを始めた。

 

 場所は客席の中ほど。

 いつも通り、円になるほど近くはないが、顔が見える距離へ集まる。

 サラが毎日のようにやっていた、“終わった直後に言葉へ落とす”時間だ。

 もうどら焼きはない。

 だが、その代わりに、皆の頭はまだ熱を持っている。

 

「お疲れ様」

 

 エリンの一言から始まる。

 

「まず、全体としてはよく持ちこたえたと思う」

 

 誰もすぐには口を開かない。

 褒められたことより、これから何を言われるかの方が気になるからだ。

 

「乗り入れは滑らかだった。最初のオリエンテーションもよかったわ。ミラ、クミコ、アズサの並びは正解だった」

 

 アズサは、嬉しいのを表に出しすぎないようにと必死で口元を引き締めた。

 

「でも」

 

 やはりそこで止まるはずもない。

 

「ハズキ、最初の一便目のテンションをそのまま持っていきそうになってた。今日は持ち直したけど、あの一歩が続くと、教育便では空気が軽くなりすぎる」

 

「はい」

 

「ナツキ、途中までは少し後ろへ引きすぎ。ユウコの処理が大きくなってからの入りは見事だったけど、あれを“いざという時だけ”にしないで。もう少し早く支えに入れる」

 

「はい」

 

「サリー、周囲が揺れた時に自分の視線を一瞬預けすぎた。大崩れではないけど、あの一拍が続くと、全体が遅れる」

 

「はい」

 

「アズサ、最初の不安の強い子への入り方は良かった。でも二回目の確認に行くタイミングが少し遅い。最初にほぐれた子ほど、後で反動が来ることがあるから」

 

「はい」

 

 エリンは、いつも通りに指摘していく。

 責めるためではない。

 次に繋げるために。

 そのトーンは厳しい。

 でも、サラの訓練を経た今の彼女の言葉には、乗務員達ももう“切られる”感覚だけではなく、“前へ押される”感覚を受け取れるようになっていた。

 

 そして、エリンは最後にユウコを見た。

 

 ユウコは、少し緊張した顔で背筋を伸ばしている。

 さっき着替えたばかりの制服は、もう整え直されていた。

 だが、あの一件が自分の中でまだ完全には整理できていないのだろう。

 目の奥には、少しだけ戸惑いが残っている。

 

「ユウコ」

 

「はい」

 

 ユウコが顔を上げる。

 

 エリンは、ほんの一瞬だけ言葉を選んだ。

 それから、素直に言った。

 

「ごめん」

 

 ユウコが、明らかに目を見開いた。

 

「……え?」

 

「私がもっと早く気づけてればよかった」

 

 その場の空気が、一瞬だけ止まる。

 

 客室乗務員のブリーフィングで、チーフパーサーがこんなふうに謝る場面は珍しい。

 それもエリンは、必要以上に感情で引っ張ることをしない人だ。だからこそ、その一言の重みは大きかった。

 

「いえ、そんな……」

 

 ユウコがたじろぐ。

 思わず手を振りそうになったが、何とか自分を止める。

 

「貴方に助けられたわ」

 

 エリンはまっすぐに言った。

 

「最初の一言で、あの子を守った。服が汚れたことより先に、相手を守る言葉が出たのは見事だったわ。それにナツキとの入れ替わりも、ほとんど完璧だった」

 

 ユウコは、返す言葉を失った。

 褒められている。

 しかも、“助けられた”とまで言われた。

 

 ナツキもまた、黙ったままその言葉を聞いていた。

 自分の動きについてもエリンがちゃんと見ていたことが分かり、胸の奥に小さな熱が灯る。

 

 エリンはそこで全体を見渡し、いつものように締めに入る。

 

「しばらく休憩したら、宇宙船の清掃をしましょう」

 

「はい」

 

「吐瀉対応した席だけじゃなく、ラウンジと食堂も確認する。生徒達が戻ってくる前に整えたいから、手際よくいくわよ」

 

「はい」

 

 ブリーフィングはそこで終わった。

 皆、短く息を吐く。

 大きな山は一つ越えた。

 だが、それで終わりではない。

 まだこの便は途中で、戻りのフライトもある。だからこそ、今は休みすぎず、でもちゃんと一度息を落とす必要があった。

 

 

 ブリーフィングのあと、乗務員達はそれぞれ短い休憩へ入った。

 

 ギャレーで水を飲む者。

 壁際で静かに脚を伸ばす者。

 メモを見返す者。

 そして、さっき着替えを終えたばかりのユウコは、通路の端に立ったまま、どこか不思議そうな顔をしていた。

 

 その表情を、ナツキが見逃すわけがない。

 

「何その顔」

 

 隣へ来て、壁にもたれながら言う。

 

 ユウコは、はっとしたように顔を上げる。

 

「え?」

 

「なんか、褒められたわりには嬉しそうじゃない」

 

 ナツキの言い方は、ややぶっきらぼうだ。

 だが、今日はそこに棘がなかった。

 

 ユウコは少しだけ視線を逸らし、小さく呟いた。

 

「……助けられたって、どういう意味なんだろ」

 

「は?」

 

「いや、だから……」

 

 ユウコは、自分でもうまく説明できないまま言葉を探す。

 

「褒めてもらえたのは分かるんだけど、なんか……エリンさんが“助けられた”って言うのが、ちょっと分かんなくて」

 

 ナツキは一瞬だけ黙った。

 それから、少しだけ呆れたように肩をすくめる。

 

「そりゃ、そのままの意味じゃない?」

 

 ユウコがぎょっとして振り返る。

 

「それで? 何が気に入らないの?」

 

「気に入らないわけじゃないけど」

 

 ユウコは慌てて否定する。

 

「ただ……最近、甘すぎないって思っただけ」

 

「甘い?」

 

 ナツキが眉を上げる。

 

 ユウコは少しだけ唇を尖らせる。

 

「だって前のエリンさんなら、ああいう時まず“次はもっと早く気づいて”とか、“その後の処理をもっと早く”とか、そういうふうに言いそうじゃない」

 

「まあ……分かる」

 

 ナツキは素直に頷いた。

 

「なのに今日は、ごめん、とか、助けられた、とか。なんか……」

 

 ユウコは言葉を探す。

 褒められて嫌だったわけではない。

 むしろ嬉しかったはずだ。

 でも、その嬉しさと同じくらい、ひっかかりもあった。

 

「最近のエリンさん、少し甘いっていうか、優しすぎるっていうか……」

 

 その言葉に、ナツキは少しだけ考えるように視線を落とした。

 

 ユウコが言いたいことは、分からなくもない。

 前のエリンなら、たしかにもう少し先に“改善点”を置いてから、最後に一言だけ認めるくらいだったかもしれない。

 今のエリンは、もちろん厳しい。

 厳しいのは変わらない。

 でも時々、前よりずっと素直に、相手の良かったところを言葉にするようになった。

 

 それが甘い、とユウコは感じたのだろう。

 

「でもさ」

 

 ナツキは、壁にもたれたまま静かに言った。

 

「それって、甘いのかな」

 

 ユウコが眉を寄せる。

 

「え?」

 

「私は、違う気がする」

 

 ナツキは続ける。

 

「昔のエリンさんをずっと知ってるわけじゃないけど、少なくとも今のエリンさんって、“自分が全部背負う”のをちょっとずつやめてる感じしない?」

 

 その言葉に、ユウコは少しだけ黙った。

 

「……どういう意味?」

 

「前はたぶん、全部自分で拾って、自分で戻して、自分で片付けようとしてたんだと思う」

 

 ナツキの声は低いが、妙に落ち着いていた。

 

「でも今は、私達が出来たことをちゃんと見てる。見て、任せて、もし助けられたら助けられたって言う。私はそれ、甘いっていうより……」

 

 そこで少しだけ言葉を探す。

 

「信じてるってことなんじゃないかなって思う」

 

 ユウコは、思わず目を瞬いた。

 

「信じてる……」

 

「そう」

 

 ナツキは頷く。

 

「だって、あの時もしエリンさんが全部駆け寄って、全部自分で処理してたら、たしかに客室はもっと早く静まったかもしれない。でもそれやらなかったでしょ」

 

「……うん」

 

「ユウコに任せた。私にも任せた。クミコにも、アズサにも、ランさんにも、サリーにも、ミラさんにも。皆が自分の場所で動くのを見てた」

 

 ナツキの言葉が、少しずつユウコの胸へ入っていく。

 

「その上で“助けられた”って言ったなら、それは本当にそう思ったんじゃない?」

 

 そう言われて、ユウコは黙り込んだ。

 

 たしかに、あの時のエリンは自分へ謝った。

 でもそれは、自分が悪かったと責任逃れで言ったわけじゃない。

 もっと早く気づけたかもしれない、でも実際にその場を守ったのはユウコだったと、両方をそのまま認めた言葉だった。

 

「……なんか」

 

 ユウコは、小さく息を吐く。

 

「そう言われると、ちょっと分かるかも」

 

「でしょ」

 

 ナツキは少しだけ口元を緩めた。

 

「それに、あの人、甘いわけじゃないよ。さっきだってちゃんと私の引きすぎを刺してきたし」

 

「それはそう」

 

 ユウコも思わず笑う。

 

「全然甘くはないよね」

 

「うん。ただ、前より素直になっただけじゃない?」

 

 その言葉に、ユウコは少しだけ遠くを見る。

 

 前より素直になった。

 そうかもしれない。

 

 昔のエリンがどれほどだったのか、自分は知らない。

 でも、少なくともここ数ヶ月、スペースホープで一緒に仕事をしてきたエリンは、厳しいだけの人ではなかった。

 時々びっくりするくらい真っ直ぐに言葉を渡してくる。

 それは、きっと彼女自身が何かを越えてきたからなのだろう。

 

「……でもさ」

 

 ユウコが少しだけ悪戯っぽく言う。

 

「ナツキ、珍しくいいこと言うね」

 

「なにそれ」

 

「いや、もっと“別に普通じゃない?”くらいで終わるかと思ってた」

 

「失礼」

 

 ナツキが眉をひそめる。

 だが、その表情は本気で怒っているわけではない。

 

「そっちこそ、最近ちょっと素直になったんじゃない?」

 

「は?」

 

「昔なら、今みたいに“褒められたのにひっかかる”とか、そんなの口にしなかったでしょ」

 

 ユウコは一瞬だけ言葉に詰まり、それからふいと顔を逸らした。

 

「……まあ、そうかも」

 

「でしょ」

 

「でも、そんな事を言うあんたも大概だからね」

 

「たまたまだよ」

 

「絶対たまたまじゃない」

 

「はいはい」

 

 そんなやり取りを交わしているうちに、二人の間にあった微妙な張り合いは、少しだけ別の色へ変わっていた。

 

 ライバル意識はある。

 でも、それだけじゃない。

 同じ便を支える者同士として、今同じものを見て、同じチーフの背中を追っているのだと、そんな感覚が少しずつ育っている。

 

 通路の向こうでは、エリンがクリスタルと短く言葉を交わしていた。

 メディカルルームの少女と男性は、このあと少し休ませてから皆んなの元へ戻すらしい。

 リュウジは既に再び前方へ戻っており、コックピット側で若いパイロットと何かを確認している。

 ミラとランとクミコは、観測ステーション側の教員達と連携しながら、生徒達の最初の動きを見ているはずだ。

 

 便は、まだ続いている。

 

 だが、ユウコの胸の中にあった小さなひっかかりは、今、少しだけ形を変えていた。

 

 甘いのではない。

 信じられたのだ。

 任されたのだ。

 そして、それに応えられたのだ。

 

 そう思うと、遅れてじんわりと嬉しさが込み上げてくる。

 

 ナツキはその横顔を見て、ふっと息を吐いた。

 

「やっと顔戻った」

 

「え?」

 

「さっきまで変な顔してた」

 

「失礼すぎるでしょ」

 

「事実」

 

「もう」

 

 ユウコは文句を言いながらも、さっきよりずっと自然に笑えていた。

 

 その笑顔を見て、ナツキもほんの少しだけ目を細める。

 

 休憩は、そろそろ終わりだ。

 このあと宇宙船の清掃が始まる。

 戻りの便もある。

 やることはまだまだ山ほどある。

 

 それでも今、この短い合間に交わされた会話は、二人にとって小さくない意味を持っていた。

 

 エリンが前より素直になったこと。

 それはつまり、自分達が前より少しだけ頼られる側になったということでもある。

 

 ユウコは、もう一度だけその事実を胸の中で噛みしめた。

 

 それからナツキへ向き直る。

 

「ありがと」

 

「何が?」

 

「別に」

 

「変なの」

 

「そっちこそ」

 

 また軽くやり合いながら、二人は立ち上がる。

 

 その背筋は、訓練前よりも少しだけ、しなやかに伸びていた。

 

 

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