ヒロイン全員俺の嫁    作:平成オワリ

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第16話 予期せぬ原作改変は無理矢理修正する

 入学してからずっとバタバタとしていたが、ここ最近は平穏な日々が続いていた。

 

 授業は王宮で習ったことばかりで退屈極まりないものだが、それくらいで丁度いいと思う。

 

 世界が平和になった今、無理して強い力を必要とすることはない。

 貴族として将来領地を経営する際に必要な知識があれば、それでいいのだ。

 

 ちなみに日本の義務教育はこの世界よりもずっと進んでいたおかげで、算学含め色々と効率化出来た。

 まあそれ込みで神童なんて呼ばれていたわけだから、情けないことも出来ないのだけど……。

 

「リンテンス様、良ければ一緒にお勉強しませんか?」

「あの、お茶会も出来ますのでお話が出来ればと……」

 

 そんな風に教室では毎日、俺の周囲にはクラスメイトたちが集まるようになって、俺はご機嫌である。

 

 男子は若干俺のことを恐れていて近づかない者もいるが、女子は俺と交流を持ちたがる子が多い。

 

 下級貴族がどうなろうと上級貴族の令嬢たちからしたら関係ないが、それでも物語に出てくるような振る舞いかつ、大国の大貴族ともなれば、最高の物件である。

 

 まず玉の輿確定。

 たとえ第二、第三夫人、いや愛人であっても寵愛を受けた時点でこの学園の勝ち組だ。

 

 まあ……正直色々と調べれば調べるほどにキツい女子が多いんだけど……。

 

「ごめん、今日はシンシア様と約束があるからまたね」

「あ、そうでしたか」

「ふふふ、お二人の邪魔は出来ませんわね」

 

 外向きの対応でそう言うと、女子たちは笑顔で離れ、ついでにこっそりミリーを睨む。

 

「っ――⁉」

 

 ミリーはそれで怯えたように目を伏せてしまった。

 

 ……そういうところを見せるから、近づきたくないんだよなぁ。

 

 バレていないと思っているんだろうけど、目線で結構バレバレなんだよ。

 男も怖いが、女も怖いということだろう。

 

 ミリーは小国の貧乏男爵家。

 いくら俺の従者になったとはいえ、それで令嬢たちからの評価が上がるわけではない。

 

 令嬢たちからすれば、なぜか入学初日から俺のメイドになった彼女の立場は複雑だ。

 

 むしろ嫉妬の対象になってしまい、彼女自身も若干引け目があるからか、俺に現状をどうにかしてほしいなどとは言ってこない。

 

 これがまた厄介なことを引き起こさないと良いが……。

 

「あー! また暗い顔している!」

「わっ⁉」

 

 いきなり背後からおでこに手を入れられて、髪を上げられるミリー。

 クリッとした瞳が驚いたように丸く、可愛らしい。

 

「ア、アリス様! その、恥ずかしいので……」

「いいじゃんいいじゃん! ミリーは可愛いんだから顔上げようよ!」

 

 あわあわと困惑したミリーの背後から聞こえてくる元気な少女の声。

 彼女は肩から顔を出すと、俺を見て意地悪げな顔をする。

 

「やっほー! 相変わらずクロード君は人気だねぇ」

「アリスか。おかげさまでな。ところでミリーがそろそろ泣きそうだから、離してあげてくれ」

「ありゃ、ごめんごめん」

 

 顔を真っ赤にしてぷるぷると震えており、限界が近そうだ。

 彼女を泣かせるのはベッドの中だけで……。

 

 なんてアホなことを考えている間にアリスは手を離してあげていた。

 ミリーはすぐ逃げるように俺の背後に隠れてしまう。

 

「うぅー!」

「いやーなんかこういう顔も、そそるよねぇ……」

「変態親父じゃないんだから、そういう絡みは止めてあげろって」

「だってミリー可愛いんだもん!」

「こんな発言をするのが公爵令嬢で、オルフェウス王国は大丈夫なのか……?」 

「もちろん!」

 

 そして原作ヒロイン、しかもパッケージの顔になるようなメインヒロインの一人なのだから驚きだ。

 いやまあ正直言って、超可愛いんだけどさ。

 

 アリス・フォルセティはミリーと同じ北方の小国オルフェウス王国にある、公爵家の令嬢だ。

 

 国の規模が違うが、それでも公爵というのは王家に連なる由緒正しき家柄。

 リンテンス家とどちらが家格が上かと言われると、簡単には天秤にかけられない程度には高い。

 

 そんな彼女だが、令嬢とは思えないほど気さくな性格をしていて、原作でも最初に仲間になる少女だ。

 

 本来の歴史であればクロードと一緒にミリーを助けに動くのだが、それを俺一人で解決してしまったため、交流が遅れていた。

 

 ……はずなんだけどな。

 

 自国の令嬢を助けたことで俺に興味を持ったらしく、あちらから距離を詰めてきた。

 そして俺の立場上なんだかんだ対等に話せる相手というのは少なく、いつの間にか悪友みたいな関係になっている。

 

 これが歴史の修正力というやつなのだろうか?

 

 なんか思ったよりも友達感覚が強くなりすぎて、ハーレムとか考えずに仲良くなってしまった。

 

「クロード君さ、今日シンシア様とデートなんだよね?」

「ああ。それがどうした?」

「紹介して欲しいんだ」

 

 真面目な顔でそう言うが、俺はこいつの性格をもう理解している。

 

「目的は?」

「あの立派なおっぱい揉みたいです」

「俺もまだなのに揉ませるわけないだろうが」

 

 そう言った瞬間、教室の視線が俺に集中する。

 

 ――まだなんだ……。

 ――俺だったら耐えられねぇのに、すげぇ。さすがクロード様だ。

 

 そんなひそひそ声が聞こえてきた。

 

 駄目だ、学園では立派なリンテンス家の神童クロードで通しているのに、こいつが絡むとちょっと馬鹿になる。

 

「まだだったんだ……その、ごめんね」

「謝るんな! 仲は良好だし、良いんだよ。こういうのは自然な流れがあってだな……」

 

 背後からミリーの視線が妙に重いが、あれは俺のせいじゃない。

 

「とにかく! そういう目的ならシンシアと会わせない」

 

 俺が結構マジでそう言うと、アリスも焦ったような表情。

 

「冗談! 冗談だから! 実は最近上級生が騒がしくて、結構一学年にも被害が出てるみたいなんだ!」

「ああ……」

「だから生徒会長が力を貸してくれないかなって思ってさ」

 

 そういえばそんなことをブロウたちも言ってたな。

 さすにが俺の派閥には手を出さないよう徹底されてるみたいだけど、たしかに最近は少し騒がしい。

 

 とはいえ、だからってシンシアの力を頼るのは間違ってる。

 

「……本来、力ある生徒に庇護されるのは悪い話じゃない」

「そうかもだけど……」

「それに、シンシアがなにかをしたとしても、来年には卒業なんだ。自分たちで対処出来ないなら、自然に任せた方が良いと思うぞ」

「うっ……」

 

 要するに、彼女を厄介事に関わらせるなと言外に伝えると、アリスも怯む。

 

 ただまあ彼女が懸念していることもわかる。

 学園という小さな世界であっても、世界中から貴族が集まるのだ。

 

 四天王は言わば同年代のトップ貴族たち。

 国が違う上級貴族を相手にするのは戦争の火種にもなりかねず、本当に危険な行為だから迂闊な動き方は出来ないと思っているのだろう。

 

 チュートリアルでもわかるように、アリスは正義感が強く、人のために動くような少女だ。

 このまま一年生に被害が続くことだけでなく、将来のことまで含めて懸念しているのかもしれない。

 

「派閥が出来るのはこれまでの歴史でも普通にあったことだ。なにか特別なことが起きてるわけでもないし――」

「でも、さすがにオルガン王国のレオナ王女が動くのは反則だよ……」

「……」

「もう一学年でも結構派閥に取り込まれてるって話だけど、さすがに一国の王女が纏めた派閥が出来ちゃうと将来にも影響しちゃうし、それに慌てた四天王の人たちが強引な勧誘もしてるみたいで……クロード君?」

「……」

 

 ……やべぇかもしれない。

 

 なにやってんだあの姫。

 ああそうか、二学年はすでに四天王の派閥がかなり幅を利かせているから、先に一年生から集めたってわけか。なるほどな。

 

 いや駄目だって、これは全然自然じゃねぇ!

 俺が干渉したから動き出したんだもんあの人!

 

「被害ってたとえばどんな?」

「あ、その一番はさっきも言ったように強引な勧誘が多くて、逆らった場合は結構力ずくみたい」

「ああ、トップというより末端が暴走し始めてる感じか」

 

 俺の知ってる四天王の面々でそこまで強引なのは一人だけだ。

 ってことは俺のせいで強引の代名詞みたいなレオナが動き出したせいかこの状況。

 

「わかった……とりあえず俺が話をつける」

「え?」

「強引な勧誘は止めさせる。本人の意思が伴ってない場合は、俺の庇護下に入れるって宣言してやるよ」

 

 立ち上がり、時計を見る。

 シンシアとのデートまでまだ時間があるな。

 

「おいブロウ、聞いてたな」

「はい! クロード様の威光を見せつけるときが来ましたね!」

「とりあえずレオナ王女と四天王、全員呼び出せ」

「え、俺がですか?」

 

 顔を青ざめているが、なんだかんだで俺の派閥の左腕ポジションくらいにはいるんだから仕方ない。

 

「全員、この教室に集めろ」

「「「なっ――⁉」」」

 

 そう言った意味を理解出来ない者は、この学園にはおらず、教室に緊張が走る。

 そしてブロウの身体が思い切り震える。

 

 つまり、俺の方が格上だから来いと、そう言ったのだ。

 

「そ、そんなことしたらクロード君が――」

「行け」

「は、はい!」

 

 心配そうな顔をするアリスの言葉を遮り、ブロウを追い出す。

 クラスメイトたちは恐ろしいモノを見るように、遠巻きから俺を見つめていた。

 

 そんな彼らに俺は笑みを浮かべる。

 

「問題無い」

 

 関係のない一学年に手出しをさせなければ良いだけの話だからな。

 

 予想しなかった原作改変になるが、そういうのは力ずくで修正すればいい。

 

 こっちは赤ん坊の頃から鍛えてきたんだ。

 たかが一歳年上だからって調子に乗らないでもらおう。

 

 俺の笑みを見たクラスメイトたちが妙に心酔しているような感じがするが、多分気のせいだと思い、来るであろう上級生たちを待ち構えるのであった。

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