ヒロイン全員俺の嫁    作:平成オワリ

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第28話 才能の原石を見て笑う

 ――やはりこうなりましたか。

 

 そんな呟きが聞こえたのは、片っ端から派閥のやつらをぶっ飛ばしている最中のことだ。

 

 言葉を発したのはイラ先輩。

 彼は俺とオウカによってなぎ倒されていく派閥の二学年を困ったような、仕方ないような、そんな複雑そうな表情で見ていた。

 

「あはははは! 弱い弱い弱いぞ! 某の前に立つなら、もっと気を練り込んでから来るといい!」

「「「ぎゃー! 剣鬼ー⁉」」」

「剣鬼剣鬼! 某こそが剣の鬼である!」

 

 刀を振り回しながら吹き飛ぶのは、この世界が元々ゲームの世界だからだろうか?

 

 まあ魔法使いはみんな魔力を持っているので、自然と危機が迫ると防衛本能的に魔力で防御するからそうなっているだけだと思うが、なんかやってる方もやられてる方も楽しそうに見える。

 

「オウカ、そっちはもう任せてもいいかー⁉」

「お任せあれ! 我が鬼を調伏した今、すこぶる快調ゆえ誰一人旦那様の背には近づかせませぬ!」

 

 怒りで血走った目で俺の方に向かってくる男たちをファイアーボールで吹き飛ばし、ついでに尋ねると元気な返事。

 

 どうやら力が有り余っているらしく、まだ百人以上いるはずだが一人で相手をすると言いきった。

 

 なんだかちょっと怖い大型犬が、主人に構って欲しくて元気にはしゃいでいる様な可愛さがあり、あとでたくさん甘やかしてやろうと思う。

 

「さて、じゃあ俺はっと」

 

 どうやら二学年の中にも俺に対して良い思いを持っていない、というか多分反リンテンス派みたいな感じなやつらがいるので、優先的に吹っ飛ばす。

 

 こいつらだけ妙に殺気が強いから判別が簡単だった。

 

 そうして派閥のリーダーたちの前までやってくると、彼らは強い意志で俺を見ていた。

 

「いちおう聞きますが、やりますよね先輩たち」

「当たり前だろ! お前が強いのはわかっているが、これ以上好き放題されてたまるか!」

 

 リカちゃんがそう憤るように言うが、ゲームのシステム的には最強キャラの一角とはいえ、シナリオ上はまだ一学生でしかない。

 

 そしてそれはロイド先輩もイラ先輩も同じだ。

 

 オウカを見ればわかるとおり、彼らもまたそれぞれ高い潜在能力を秘めている。

 四天王なんて一纏めにされているだけあり、それぞれのルートにおいて覚醒イベントがあり、最終的にラスボスであるソルト王を倒すに必要な戦力。

 

 とはいえ、オウカのように覚醒イベントを経てない今、能力値的にはそう高くないし、ライゼンにも劣るだろう。

 

「この程度の戦力で、俺に勝てるとでも?」

「んなもん、やってみねぇとわかんねぇだろうがよぉ!」

「前回やったんだからわかると思いますけどね」

 

 四天王二人がかりでも歯が立たなかったのに……と思ったが俺の力を恐れてる雰囲気があるので、強がりっぽいな。

 

 直接俺とやり合った二人はいいとして、問題はイラ先輩。

 なんかやる気を感じられないというか、頭良いはずなのにこんな作戦でどうにかなると思ってるところが不思議で仕方が無い。

 

 まあとはいえ、こっちも喧嘩を売られた以上、やりあうことは決定事項として……。

 

「イラ先輩はなにか言うことあります?」

「いいえ。このまま待ってても派閥の人たちが全滅してしまうだけなので、さっさと始めましょう」

 

 そう言うと同時に、イラ先輩が炎を放ってくる。

 同時に動き出したセリカとロイド先輩。

 

 前回は前後だったが、今度は左右から攻撃を仕掛けてくる。

 正面から魔術を使って攻撃するイラ先輩の邪魔をしないためだろう。

 

「おらよ!」

「はぁ!」

 

 同時攻撃を躱すのは簡単だが、力の差を見せつけるため受け止め――。

 

「あれ?」

 

 この間よりも遙かに重い。

 まだ全然受け止められるが、こんな短い間で急成長出来るものか? と思う程度には二人とも威力が上がっていた。

 

「これは……」

 

 すぐに距離を取った二人は、改めて連続で攻撃を仕掛けてきた。

 魔力を纏った肉体で受けていると、やはり威力が上がっている。

 

 それに、動きも以前よりだいぶキレがいいな……。

 

「なるほど……」

 

 イラ先輩を見る。

 戦闘が始まった最初の攻撃以降、彼から魔術が飛んでくることはない。

 だというのに、彼の身体からは魔力が流れ続けていた。

 

 これは身体強化魔法か?

 イラ先輩は魔法の天才で攻撃魔法を得意としているが、ゲームではどちらかというと強化系の魔法を中心に使っていた。

 

 ゲームでは当たり前に使われるそれだが、本来自分以外の相手を強化するのはこの世界では超高等技術のはずだが……。

 

「くっそ、これでも駄目なのかよ!」

「私たちも普段より強くなってるはずなのによぉ!」

 

 二人が焦ったような声を上げるので、予想は当たっているらしい。

 もちろん俺も身体強化を使っているが、他者に干渉するのは本当に難しいのだ。

 

 それを難なくやってしまうとは……。

 

「天才だなぁ」

 

 俺みたいなチート持ちとは比べものにならない才能だ。

 少なくとも学生レベルを遙かに超えていると思う。

 

 それにロイド先輩にしても、セリカにしても、こうして上がった身体能力を十全に使いこなすセンス。

 

「さすが、将来ソルト王を倒す可能性を持った原石たちだな」

 

 自分の張りぼてとは異なる圧倒的な才能に、つい笑ってしまう。

 良い素材というのは、たとえそれが人であっても見ていて楽しいものだ。

 

「まあそれはそれとして」

「「っ――⁉」」

 

 俺は二人の攻撃を受け止めると手首を掴み、同時に振り回した。

 

「うわぁぁぁぁ⁉」

「うおおおおお⁉」

「あははははははは! まだまだ甘いわぁ!」

 

 ブンブンと勢いよく振り回された二人から悲鳴が響くが、気にした様子もなくそのままイラ先輩の方へと飛び出した。

 

 彼は最初逃げようとするが、自分の能力では無意味と気付いたのだろう。

 一発だけ反撃の炎を放ってきたが、それはロイド先輩を横薙ぎして打ち消した。

 

「で、どうします?」

 

 呆気に取られた顔をしていたが、すぐに諦めたように大きく溜め息を吐くと一言。

 

「参りました。僕たちの負けです」

「勝者、リンテンス!」

 

 カルラ姉さんがそう言った瞬間、背後で派閥で残った最後の面々がオウカに吹き飛ばれて、決着がつくことになった。

 

 さて、なんで聡明なイラ先輩がこんなことをしたのか、改めて聞かないとな。

 

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