ヒロイン全員俺の嫁    作:平成オワリ

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第6話 不幸フラグを改変し、大人になった俺の授業風景

 ミリーを原作のような不幸の運命から改変させた翌日。

 

 ――おい、あれがリンテンス家の……。

 ――入学早々、やったらしいぜ……。

 

 いつも通り朝食を食べて廊下を歩いていると、そんな声が聞こえてきた。

 

 やったとはまさか……と斜め後ろを歩くミリーを見て昨夜の出来事を思い出す。

 

 ベッドに押し倒されたあと、俺を柔らかく包む熱。

 目に映るのは男ではありえない上下運動する二つの丘。

 

 そしてなにより、普段は髪で隠れている瞳が、こちらを見下すように妖艶な気配を漂わせ、彼女の我慢出来なくなった荒く熱の篭もった吐息が俺の耳を刺激した。

 

 思い出すだけで歩幅が狭く、内股になりかねないので必死に記憶を封印する。

 さすがにこんな朝の学舎で、俺の男らしさを見せつけるわけにはいかないからな。

 

 ……というか、いくらなんでも噂が流れるのが早すぎるだろ。

 童貞はこういう噂話に敏感なんだから勘弁して欲しい。

 

 初めての経験であり、色々と疲れていたこともあってひそひそ話をしているやつらを睨み付けると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「はぁ……」

「ご主人様、どうされました?」

 

 俺が溜め息を吐くと、心配そうに尋ねてくる。

 

 この目隠れした奧に潜む、エロスの瞳。

 思わず昨夜のことが再び脳裏に浮かび、想像を振り切りながら周囲の状況を伝える。

 

「どうも昨日の俺たちの件が噂されてるみたいでな……」

「え……そんな……」

 

 やはり女の子ということもあり、ショックを受けているのか言葉に詰まる。

 

 しかし、どこで漏れたのだろうか?

 学園寮はそれなりに防音が効いているから音が漏れたとは考えにくいが、入るところを見られたのかも知れない。

 

 いくらハーレムが認められている世界とはいえ、節操なしが女にモテるはずがない。

 

 しかも今は入学してすぐ。

 どう控えめに見ても、権力でどうにかしたようにしか見えないだろう。

 

 なんにせよ、今後はもう少し注意する必要が――。

 

「でしたらご主人様の武勇伝をもっと広めないといけませんね!」

「いや駄目だろ」

 

 ちょっとドヤ顔で可愛いが、なにをどういう思考をしたら俺の下半身事情なんかを広めようとする結論に至るんだ?

 

 何故? という顔をしてこちらを見てくるが、俺が言いたいわ。

 ショック受けてた顔はなんだったんだよ。

 

「でも……」

「でもじゃない。昨日も言ったが、俺はここで可愛い婚約者を作るために頑張るんだから、こういうことを表沙汰に――」

「リンテンス様! おはようございます!」

「は?」

 

 ちょっと野太い声が聞こえてきてそちらを見ると、昨日ボコボコにしたクソガキ――ブロウ・ドマードがいた。

 

 両手を膝につけて腰を落とし、まるでヤクザの子分が兄貴に挨拶をするような、ずいぶんと気合いの入った体勢だ。

 

 ブロウの背後には取り巻きたちも同じ体勢で俺を見つめてくる。

 

 どう見ても、キラキラ輝く未来が待っているような魔法使いの学校で見るような光景じゃなかった。

 

 俺はヤンキー漫画に転生した記憶はないんだが?

 

「俺らドマード派は今後、リンテンス様の舎弟として手となり足となり動いていく所存です! どうか今後ともよろしくお願い致します!」

「「「お願いします!!!」」」 

 

 一糸乱れぬ動きで頭を下げるむさい男たち。

 学園を歩く生徒たちが何事かという目で見てくるが……。

 

「……なにこれ」

 

 そう言った俺は悪くないと思う。

 

 

 

 とりあえず授業の時間が迫っていたこともあるので、取り巻き軍団を一度解散させた。

 

 そして授業が始まる。

 

 教室は大学のように何段にも分かれた机。

 階下には教壇があり、そこに教師が拡声魔法を使いながら授業をしていく。

 

 たまに実技を経験させるため、教壇の回りには結構広い空間があり、ゲームでも時折教師と戦闘したり、同級生と授業の一環として戦ったりした思い出がある。

 

 原作の舞台でもあり、この世界を実際に体験出来るのは正直楽しい。

 

 だが、今は魔法学園の授業よりも先ほどの件の方が頭に過ってしまう。

 

「あいつらのせいで変な注目を浴びてたが、そもそも何のつもりであんな真似をしたんだ?」

「多分、ご主人様が言ったことを忠実に守ろうとしているんだと思います……」

「俺の言ったこと?」

 

 隣で授業を受けているミリーがそう言うが、心当たりが……。

 

「そ、その……チ、チンコ潰すか……今後こういった被害が起きないように動くか選べって……」

「よく聞こえなかったからもう一回頼む」

「……だ、だからその……チンコを……」

 

 美少女の口から恥ずかしそうにチンコとか言われるとそれはそれで興奮してしまうな。

 

 などと思っていたら、とんでもない殺気が下から飛んできた。

 見れば、今まさに授業をしている女性教師が凄い目でこちらを見上げている。

 

 黒に近い青髪を腰まで伸ばし、刀のように鋭い黄金の眼差しは歴戦の戦士を彷彿させる。

 

 カルラ・ブルーローズ。

 俺と同じオルガン王国の出身の魔法使いだ。

 

 黒のスーツにタイトスカートで、出来るキャリアウーマンといった雰囲気。

 王国の魔法使いの証であるマントを羽織り、腰には刀を差した彼女は、俺に向かって冷笑してくる。

 

「クロード・リンテンス。どうやら神童と名高い貴様には私の授業はつまらないらしいな」

 

 これ以上ふざけるなら殺すという意思表示だろう。

 俺もそんな彼女に降参するように、笑みを浮かべて

 

「あはは……そんなことないですよカルラ姉さん。すみません、集中して授業を聞きます」

「学園ではブルーローズと呼べ」

「はい。今後気を付けます」

 

 そう言うとブルーローズ先生は授業を再開する。

 

 ちなみにブルーローズは貴族名ではなく、ソルト王が最も優秀だと判断した魔法使いに与えた称号の一つだ。

 

 円卓の騎士とかそういう感じがモチーフになっているのだろうが、結論から言うと彼らは一人一人が一騎当千の化け物である。

 

 うちの父親も称号を持っているが、貴族の場合は戦争でもなければその名を名乗ることはなく、彼女がそう名乗るのは学園にいる貴族の子弟に対する牽制みたいなものだろう。

 

 ……オルガン王国のブルーローズに逆らう生徒なんて、いないだろうしなぁ……。

 

 ちなみにゲームではヒロインではなかったが、人気投票では毎回上位に来るほど非常に人気の高いキャラだった。

 

 まずビジュアルが良い。

 黒髪ロングでクールな瞳。それでいて軍服に近い格好なのにタイトスカートで、さらに黒タイツという性癖の塊と言っても良い存在だ。

 

 彼女に顔面をまたがられて、この豚と罵られたいユーザーは多かったことだろう。

 そういうキャラではないが、実際SNSなどで上げられるファンアートで妙に多かった。

 

 ファンに豚紳士が多かったんだなきっと……。

 

 さらに彼女は八年前の戦争で婚約者を亡くしており、自分と同じような悲劇が起きないように学園では厳しく生徒を鍛えて、彼らが生きて帰られるようにしようと心を鬼にしている優しい教官でもある。

 

 この辺りは本編ではなく、ファンブックに記載された公式設定だった。

 

 ゲーム内の台詞でも時折そんなことを言っていたので、もしかしたら追加パッケージではヒロインになる予定だったのかもしれない。

 

 ゲームでは彼女に導かれて主人公含む生徒たちは強くなり、そして最期は俺たちを守る為、ソルト王に歯向かって死んでしまうのだが……。

 

 というのがゲームでの設定。

 ソルト王が大陸支配に乗り出さないこの世界ではもう、彼女が死ぬことはないだろう。

 

「ご主人様……やっぱりブルーローズ先生は怖いですね……」

「あれで本当は優しい人なんだぞ」

「そういえばカルラ姉さんって言ってましたね……お知り合いだったんですか?」

「俺の師匠みたいな人だからな。本人に言うと否定されるが」

 

 八年前はまだ俺もソルト王と面会も出来ない時期だったし、大した力もなかったので彼女の婚約者を助けることは出来なかった。

 

 だからソルト王から彼女を紹介されたときは驚いたものだ。

 

 剣士としても超一流だが、魔法使いとしてはさらにその一段階上の彼女に子どもの俺が勝てるはずもなく、毎日ボロボロにされたっけ。

 

 とはいえ、今思うと手加減も結構されてた気もする。

 

 それに、毎日傷だらけになったあとは決まって一緒にお風呂に入ってくれて身体を洗ってくれたり、傷を癒やしてくれたりしていた。

 

 ――まったく、お前は仕方ないやつだな。

 ――その年で頑張りすぎだぞ。ボロボロにしてる私が言うことではないがな。

 ――男なら、女を泣かさないくらい強くなれよ。

 

 そう優しげな声で話しかけられながら全身を洗われると、どうしても抵抗が出来なかったのだ。

 

 俺も成人男性の魂があるから最初は遠慮していたのだが、そのときだけ見せる聖母のような微笑みと女神の裸体の魅力には勝てず……。

 

 スレンダーな身体だけど本当に素晴らしかったです。

 いつも邪な心でいてすみませんでした。

 

 俺の師匠はソルト王だが、強くなれた要因の一つは間違いなく彼女にもあるので、心の中だけで師匠と呼ぶようになったのである。

 

「まだ二十三歳なんだよなぁ……」

 

 婚約者が死んでしまい、国のためだけに生きてきた彼女だが、そろそろ幸せになって良いと思う。

 

 あと子ども時代の俺の性癖を壊してた責任を取って貰いたい。

 

 そんなことを考えていたら授業が終わり、放課後――。

 

「リンテンス様! ご報告があります! 特ネタです!」

 

 チンコ頭のブロウ・ドマードが再び嬉しそうな顔をしてやってくる。

 

「絶対それ、特ネタじゃなくて厄介事持ってきただろお前……」

 

 嫌な予感がしつつ、とりあえず話を聞くことにした。

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