──朝のオレンジ諸島。
海での一日を満喫して過ごしたマサカズとリーフは、その島で一泊していた。
朝の浜辺から見える景色は、潮風が心地よく、波音が遠くで響いていた。
「せっかくオレンジ諸島に来たんだし、ラプラス以外にもポケモンを探してみるか」
「賛成。島を探索してみよ!」
「じゃあ、手分けして探索しよう。ミュウはリーフの護衛について一緒に回ってくれ」
マサカズが提案すると、リーフは少し驚いたように目を見開いた。
「えっ……別行動? それに、マサカズいつもミュウと一緒じゃ……」
「だからこそだ。俺がミュウに頼りすぎてるのは事実だ。だからいざって時に、ミュウがいなかったらどうする? 降りかかる火の粉を自分で払えるようにならなきゃな」
『分かりました、マサカズさん。リーフさんのことは、お任せください!』
マサカズの提案にミュウが了承すると──リーフは少し顔を曇らせながらも、マサカズの言葉に頷いた。
「……わかった。気をつけてね」
「おう。リーフもな」
こうして、マサカズとリーフのオレンジ諸島での冒険が始まった。
リーフと別れたマサカズはピカチュウを肩に乗せ、森の奥へと足を踏み入れた。
木々が生い茂るその場所は、野生ポケモンたちの気配に満ちていた。
──と、その時。
「……ん?」
頭上から何かが飛び降り、マサカズの帽子をひったくっていった。
「あれは……エイパムか!」
見ると木の上で、エイパムが尻尾で帽子を掲げ、得意げに笑っていた。
隣にはマンキーもいて、二匹でいたずらが成功したことを喜び合っている。
「返してもらうぞ。ピカチュウ、“10まんボルト”!」
『ピィカーチュウゥゥ!!』
マサカズはピカチュウに“10まんボルト”を命じるが──木の上を飛び回る二匹にはなかなか当たらなかった。
「なら、リザード。出ろ!」
『ザードー!』
リザードが姿を現すと、マサカズは木の枝を飛び移るエイパムの動きを読み取る。
「次に飛び移る枝は……そこだ。リザード、“かえんほうしゃ”!」
炎が枝に命中し、強度が弱くなったところにエイパムが飛び乗る。──すると、枝が折れ、エイパムが地面に転落。
気を失ったところをマサカズがモンスターボールを当ててゲットに成功する。
落ちた帽子を拾いパンパンと叩いたマサカズは、帽子をかぶり直す。
「……帽子の回収完了」
『ブヒッ!!』
だが、友を奪われたマンキーは怒り、地面に着地するとマサカズに向かって構える。
「ほぉー、おもしろい。骨のある奴は大歓迎だ。ピカチュウ!」
『ピッカ!』
マサカズはピカチュウを前に出し、にらみ合いが始まる。
──だが
『ドオーン!!』
『ブヒーッ!!?』
「なっ!?」
突然横合いから巨大な影が現れる。サイドンであった。
突進してきたサイドンにマンキーが突き飛ばされ、茂みの奥へと姿を消す。
「サイドンだと!? にしては通常のサイズよりデカいな……」
通常個体よりひとまわり大きいポケモン。──それはオレンジ諸島に住むポケモンの特徴の一つであった。
特にマサカズが居たこの島は豊富な食料と広い森が、野生ポケモンを異常に育てていたのである。
サイドンはマサカズを視界に捉えると、咆哮を上げて襲いかかってくる。
「ピカチュウ、“なみのり”!」
ピカチュウから放たれる効果抜群の水の波がサイドンを包み、動きを封じる。
続けてマサカズは“アイアンテール”を命じて転倒させるが、サイドンはすぐに起き上がり、再び突進してくる。
(デカいだけあって耐久力も高いか……!)
──その時
『ブーヒーッッ!!』
『ドーン!!?』
今度は、茂みから怒り狂ったオコリザルが現れ、サイドンに“クロスチョップ”を叩き込んだ。
「マンキーが進化したのか……!」
怒りを進化の力に変えたオコリザル。──その力はサイドンを戦闘不能へと追い込んだ。
再び、オコリザルはマサカズに向き直る。
その瞳には、闘志が燃えていた。
「リザード、行くぞ!“かえんほうしゃ”!」
リザードの炎が唸りを上げて放たれるが、オコリザルは身をひねって回避。
そのまま懐に飛び込み、“インファイト”でリザードを弾き飛ばす。
「大丈夫か!」
リザードは地面を転がりながらも、すぐに立ち上がる。
その瞳は、まだ戦えると語っていた。
マサカズは不敵な笑みを浮かべる。
「……いいぞ。こういう刺激が欲しかったんだ!リザード、“メタルクロー”で接近戦だ!」
リザードが爪を光らせて突撃。
しかし、オコリザルは拳でガードし、距離を詰めさせない。
「今だ、“かえんほうしゃ”!」
炎がガードの隙間を突き、オコリザルの顔をかすめる。
怯んだ瞬間、マサカズは続けて叫ぶ。
「“かみなりパンチ”!」
リザードの拳が雷を纏い、オコリザルの腹部に直撃。
衝撃で地面が揺れ、オコリザルは膝をついた。
それは、まるでボクシングの「ワンツー」。
ジャブで注意を引き、ストレートで本命の強打を叩き込む――連続攻撃の美学だった。
マサカズは昏倒している『サイドン』『オコリザル』、それぞれにモンスターボールを投げてゲットに成功する。
こうして、マサカズは『エイパム』『サイドン』『オコリザル』の3体を手に入れた。
「……なかなか濃い一日だったな」
ピカチュウが肩に乗り、リザードが満足げに炎の尾を揺らす。
──夕暮れの浜辺。
マサカズとリーフは、それぞれの探索を終えて合流すると浜辺に焚き火を起こしていた。
星が瞬き、波音が遠くで囁いている。
その周囲には、今日ゲットしたポケモンたちが並んで座っていた。
──オコリザル、エイパム、サイドン、ガルーラ、ピジョット、ロコン。
それぞれが炎の揺らぎに照らされ、表情を浮かべていた。
「ピジョット、ガルーラ、ロコン……リーフも3体ゲットしたんだな」
「うん。ピジョットとガルーラは凶暴だったけど、ミュウが助けてくれて……」
「……ミュウをつけておいて正解だったな」
マサカズは静かに頷きながら、リーフの無事を喜んだ。
そして、二人はゲットしたポケモンたちを順番に出して交流を深めていたのである。
「……こうして並ぶと、みんな個性強いな」
マサカズが苦笑すると、リーフも頷く。
「うん。でも、なんだか……家族みたい」
その時、サイドンとガルーラが互いの存在に気づき、視線を交わす。
静かに距離を詰める二体の姿は、まるで再会を喜ぶ恋人たちのようだった。
ミュウがふわりと浮かび、通訳を始める。
『この二体、島で何度か顔合わせしてたみたいです。どうやら……恋仲だったようですね』
「えっ!?」
リーフが驚き、ガルーラは照れくさそうに目をそらす。
サイドンは無言で頷いた。
「……なるほど」
マサカズは焚き火の向こう側に回り込み、サイドンとガルーラの前に立つ。
「俺たちはカントーのトレーナーだ。これから帰って、バッジを集めてポケモンリーグに挑戦する。だが、お前たちの意思を曲げてまで、この島から連れ出すつもりはない」
サイドンの瞳が揺れる。
マサカズは続ける。
「サイドン、お前にはもう一段階進化できる道がある。俺と共に来るなら、今よりも強くしてやれる。だが、ガルーラとこの島で穏やかに暮らしていきたいなら、それも尊重する。どうする?」
ミュウが通訳を始めると、サイドンはゆっくりと立ち上がり、ガルーラの肩に手を置いた。
『おもしれえ。今より強くなれるってんなら俺は付いていくぜ。ガルーラ……』
ガルーラは一瞬驚いたようにサイドンを見つめ、やがて静かに頷いた。
『サイドンさんが行くなら、私も行くわ。一緒に居たいもの……』
リーフはそのやりとりを見て、そっと微笑む。
「……ガルーラ。私も、あなたのこと……すごく頼もしいと思ってる。これから一緒に旅してくれるなら、嬉しいな」
ガルーラは照れくさそうに頷き、子どもを胸元で抱き直した。
マサカズは次にオコリザルの前にしゃがみ込む。
「お前のあの時の動きは良かった。リザードとの打ち合い、見事だったぜ」
オコリザルは腕を組みながら、鼻を鳴らす。
『当然だ。あれくらいの炎使いには負けねえ……って思ったけど、あいつ、なかなかやるな』
リザードのモンスターボールが小さく震えた気がした。
リーフはピジョットの前に立ち、そっと語りかける。
「あなた、最初はすごく荒れてたけど……ミュウが止めてくれて、今はこうして落ち着いてる。空を飛ぶ姿、すごく綺麗だった。これから、私と一緒に空を旅してくれる?」
ピジョットは翼を広げ、静かに鳴いた。
『……風は、悪くない。キミの風なら、乗ってみてもいい』
ロコンは焚き火のそばで丸くなり、リーフの膝に頭を乗せていた。
その柔らかな毛並みに、リーフはそっと手を添える。
「……ありがとう。みんな」
ミュウがふわりと浮かび、輪の中心でくるくると回る。
『これで、みんな仲間ですね。ふふっ、賑やかになってきました』
焚き火の炎が、静かに揺れる。
その灯火は、絆の証だった。
マサカズとリーフは、ポケモンたちと共に輪になって座り、星空を見上げた。
「……明日も、いい日になるといいね」
「そうだな。旅はまだ続く。だけど、今夜は……この時間を大切にしよう」
──波音が優しく、夜を包み込んでいた。
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