三好inアニポケ(仮)   作:フォークロア

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第十二話 エイパムの沈黙、エンテイの咆哮

──カントー地方、クチバシティ近郊のポケモンセンター。

 

オレンジ諸島から帰還したマサカズとリーフは、旅の再始動に向けて準備を整えていた。

 

「さて……オレンジ諸島でゲットしたポケモンたちを実戦で試してみるか」

 

マサカズは受付でバトルフィールドの使用を申し込み、リーフと共に観戦席へ向かう。

対戦相手は、カントーを旅する若手トレーナー。使用ポケモンの一番手はワンリキーであった。

そして、マサカズは先鋒にエイパムを選出する。

 

「エイパム、いくぞ!」

 

エイパムが尻尾を揺らしながらフィールドに立つ。

対するはワンリキーは、筋肉質な体を揺らしながら、構えを取る。

 

「“でんこうせっか”!」

 

マサカズが指示を飛ばす。

だが、エイパムの動きはワンテンポ遅れていた。

その隙を突くように、ワンリキーが“からてチョップ”で先制。

エイパムは吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。

 

「エイパム!」

 

リーフが思わず声を上げるが、エイパムはなんとか立ち上がる。

相手のワンリキーは続けて”ちきゅうなげ”を仕掛けてくる。

 

「エイパム、“かげぶんしん”!」

 

マサカズの指示に、しかしエイパムは直ぐに応じられなかった。

結果、ワンリキーに掴まれ、見事に”ちきゅうなげ”が決まり、戦闘不能となった。

 

「……戻れ」

 

マサカズは静かにモンスターボールを構え、エイパムを戻す。

その表情には、わずかな疑問が浮かんでいた。

 

(……昨日は調子が悪かっただけだと思ったが、今日も反応が遅かった。やはり……)

 

マサカズは続けて、オコリザルを出す。

 

「オコリザル、“インファイト”!」

 

怒りの拳が唸りを上げ、ワンリキーを圧倒。

続いて出されたストライクには“みきり”で攻撃を躱し、“かみなりパンチ”と“インファイト”で打撃を与え、撃破。

最後に出されたサンドパンには、サイドンを出して応じる。

サンドパンは、”あなをほる”を仕掛けてくるも、サイドンの、“じしん”でフィールドごと制圧し、“がんせきふうじ”で撃破に成功。

マサカズはバトルに総合勝利、、、、を収める。

だが、勝利の余韻に浸ることはなかった。

バトル後、マサカズはエイパムをジョーイさんに預け、回復をお願いする。

 

「……一度エイパムとよく話し合ってみる必要があるな」

「マサカズ……」

 

リーフはその背中を見つめながら、静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

──夜のポケモンセンター。

 

外は静かに風が吹き、星が瞬いていた。

マサカズは部屋の隅にあるソファに腰を下ろし、モンスターボールを見つめていた。

その中には、今日のバトルで敗北したエイパムがいる。

リーフは隣に座り、黙ってマサカズの横顔を見つめていた。

 

「……ミュウ、頼む。通訳してくれ」

 

ミュウがふわりと浮かび、エイパムのモンスターボールを開く。

エイパムは静かに姿を現し、尻尾を揺らしながらマサカズの前に座る。

 

「エイパム。今日のバトル……お前の動きが少し遅れていた。昨日の砂浜でもそうだった。……何か、あるのか?」

 

ミュウが通訳を始めると、エイパムはしばらく黙っていた。

やがて、ぽつりと口を開く。

 

『……怖いんだ。バトルが。』

「……怖い?」

『技を出すのが遅れるのは……迷ってるから。戦いたくないわけじゃない。でも、攻撃されるのが怖い。痛いのも、仲間が傷つくのも……怖いんだ』

 

マサカズは目を伏せ、拳を握った。

 

「……気づけなかった。すまなかった、エイパム」

「マサカズ……」

 

その言葉に、リーフは何も言う事が出来ず、マサカズを黙って見ていた。

マサカズは続ける。

 

「バトルに負けたことを、お前のせいにするつもりはない。俺が、お前の状態を見抜けなかった。それがすべてだ」

 

エイパムは目を伏せながら、尻尾で砂をなぞる。

 

『……でも、みんな戦ってる。オコリザルも、サイドンも。僕だけ……怖がってる』

「それでいい。お前はお前だ。無理に戦わせるつもりはない。お前が望むなら、バトル以外の道を探す。それが、トレーナーとしての俺の責任だと思ってる」

 

リーフはその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。

 

(……マサカズって、やっぱりすごい。ポケモンに謝れる人なんだ)

 

エイパムはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

『……ありがとう。マサカズ』

 

ミュウがふわりと浮かび、微笑む。

 

(あなたはやはり、そういう人なんですね……)

 

マサカズはエイパムをそっと撫で、モンスターボールに戻す。

 

「……お前のこと、ちゃんと考える。だから、もう少しだけ付き合ってくれ」

 

リーフは静かに微笑み、マサカズの隣で星空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──翌朝のポケモンセンター。

 

マサカズはロビーのテレビ電話の前に座り、通信画面に接続を試みていた。

数秒後、画面が切り替わり、懐かしい顔が映し出される。

 

『マサカズ! 久しぶり!』

 

相手はセレナであった。

画面越しとはいえ、彼女の瞳は輝いており、再会の喜びが溢れていた。

 

「セレナ……元気そうだな。カロスはどうだ?」

『うん、元気だよ! 今はパフォーマーの勉強をしてるの。まだポケモンは貰ってないけど、来年にはトレーナーデビューできる予定!』

 

セレナは嬉しそうに語る。

マサカズは微笑みながら頷いた。

 

「そっか。お前らしいな。俺は今、カントー地方を旅してる。前はオレンジ諸島を回って、ラプラスを保護したりしたかな」

『へえ~! ラプラスって、あの海を渡るポケモンだよね? すごい……!』

 

セレナは目を輝かせ、画面に身を乗り出す。

 

『それで今はどこにいるの?』

「クチバシティに向かう途中だ。バッジは今、二つ。次で三つ目になる」

『バッジ集めって、やっぱり大変? パフォーマンスとは違うけど、ポケモンとの信頼がすごく大事なんだろうなって思ってて……』

「そうだな。バトルはポケモンとの信頼がすべてだ。モチベーションを持たせないと、本領を発揮させてやることはできない。だけど、それはパフォーマンスも同じだと思うぞ。ポケモンが心から楽しんでなきゃ、観客には伝わらないと思う」

 

セレナは少し照れたように笑う。

 

『……マサカズって、昔よりずっと頼もしくなったね。なんか、ちょっとカッコいいかも』

「はは、そうか? お前も変わったよ。前よりずっと芯が強くなった」

 

画面越しに、二人はしばらく言葉を交わす。

旅の話、ポケモンの話等々。

セレナとの通話は、マサカズにとって旅の節目を感じさせるものだった。

リーフの方も少し離れたロビーのテレビ電話を使い、母親と久しぶりに会話をしていた。

その表情は微笑んでおり、そんな二人の会話をミュウは見守っていた。

 

──その時、センターの自動ドアが勢いよく開く。

 

「ジョーイさん! 僕のシャワーズが……!」

 

トレーナーが抱えていたシャワーズは傷だらけだった。

ジョーイがすぐに対応に入り、トレーナーは息を切らしながら叫ぶ。

 

「近くに……エンテイが現れたんです! ゲットするために挑んだけど、歯が立たなくて……!」

 

その言葉に、センター内の空気が一変する。

トレーナーたちがざわめき、次々に立ち上がる。

 

(おいおい、ジョウト地方なら兎も角、カントーに現れるのか。流石アニポケ世界、何が起こるか分からんな)

 

「マサカズ、私たちも行こう!」

「あ、ああ。すまん、セレナ。またな」

 

マサカズはセレナに一言断りを入れ、通話を切るとリーフと二人でポケモンセンターを飛び出し、エンテイの目撃情報があった森の奥へと向かう。

 

 

──木々を抜けた先、開けた岩場にて

 

「いたわ!」

「っ……!」

 

エンテイは堂々と立っていた。炎の鬣を揺らし、瞳は鋭く輝いている。

 

「ミズゴロウ、お願い!」

『ゴロ!』

 

リーフはミズゴロウを構える。

 

「さあ、バトルよ。ミズゴロウ、“みずでっぽう”!」

 

リーフが先手を打つが、エンテイは飛び上がって回避。

 

「なっ……!」

 

そのままマサカズの背後に着地し、振り返ったマサカズと目が合う。

──圧倒的な存在感。

マサカズは冷や汗を流しながら、ニヤリと笑う。

 

「流石、伝説の三犬。格が違うな……ミズゴロウ!」

『ゴロッ!』

「“みずのはどう”!」

 

マサカズもミズゴロウを前に出し、“みずのはどう”を命じる。

だが、エンテイは躱して距離を取ると、“かえんほうしゃ”を放ってくる。

巨大な炎が唸りを上げ、マサカズとリーフを呑み込もうとしたその瞬間――

 

「ミュウ!」

 

ミュウが割って入り、“サイコキネシス”で炎を押し返す。

再び距離を詰めてくるエンテイ。

──その時、褐色の肌に灰色の髪、カチューシャのリボンをつけた少女が現れる。

 

「カイリキー、“クロスチョップ”!」

 

カイリキーの拳がエンテイに命中。

だが、エンテイは“かえんほうしゃ”でカイリキーを弾き飛ばす。

 

「ミズゴロウ、“なみのり”!」

 

リーフが続けて命じるが、エンテイが躱した先に休んでいたイワークに命中してしまう。

イワークが咆哮を上げ、突進してくる。

 

「俺に任せろ!」

 

マサカズはミズゴロウと共にイワークを誘導し、戦線を離脱する。

 

「マサカズ!」

『マサカズさん!』

「ミュウ、リーフとエンテイの相手を頼む! リーフもキリの良いところまでな!」

 

──マサカズの背中が森の奥へと消えていく。

 

マサカズがイワークを引きつけ、岩場の奥へと消えていった後、リーフはミズゴロウと共に、なおも堂々と立ち尽くすエンテイと向き合う。

その場に居た少女も、カイリキーと共にエンテイと対峙する。

エンテイの鬣が風に揺れ、瞳は鋭く、威圧感に満ちていた。

 

「ミズゴロウ、“みずでっぽう”!」

 

ミズゴロウから、水の弾がエンテイに向かって放たれる。

だが、エンテイは微動だにせず、炎の鬣を揺らしたまま真正面から受け止める。

水が蒸発し、白い蒸気が立ち上っていた。

 

「“なみのり”!」

 

リーフは続けて指示を飛ばす。

ミズゴロウが地面を揺らし、水の波を巻き起こす。

しかし、エンテイはその波を跳び越え、空中から“かえんほうしゃ”を放つ。

炎が唸りを上げ、ミズゴロウを包み込む。

 

「ミズゴロウ!!」

 

リーフが駆け寄ると、ミズゴロウは倒れていた。

尻尾が弱々しく揺れ、戦闘不能を告げていた。

リーフはそっとミズゴロウを抱き上げ、モンスターボールに戻す。

 

「……ごめんね。無理させちゃった」

 

その背後で、少女が一歩前に出る。

 

「カイリキー、構えなさい!」

 

四本の腕を持つカイリキーが姿を現し、筋肉を震わせながら構える。

 

「“クロスチョップ”!」

 

カイリキーが地面を蹴り、エンテイに向かって突進する。

鋭い交差する拳が、エンテイの肩に命中。

──エンテイが一歩後退する。

その瞬間、少女の瞳がわずかに驚きに揺れる。

 

(押している……いや、違う。エンテイが受け流しただけッ)

 

「“ばくれつパンチ”!」

 

カイリキーが拳を振り上げ、エンテイの胸元に叩き込む。

だが、エンテイはその拳を炎の鬣で受け止め、反撃の“かえんほうしゃ”を放つ。

炎がカイリキーを包み、地面に叩きつける。

 

「カイリキー、戻りなさい」

 

少女は素早くモンスターボールを構え、カイリキーを戻す。

そして、しばらくそのボールを見つめていた。

 

「……まだまだ修業が足りなかったようです」

 

エンテイは静かに背を向け、岩場の奥へと歩き去っていく。

その背中には、圧倒的な風格と孤高の炎が揺れていた。

二人はその場に立ち尽くし、去っていくエンテイの背中を見送った。

リーフは静かに呟く。

 

「……あれが、伝説のポケモン」

「ええ。格が違います。ですが、挑む価値はありました」

 

少女はリーフに近づき、ミュウの存在に触れる。

 

「ミュウがいるなら、まだ戦えたのでは?」

「ミュウは私のポケモンじゃないわ。マサカズが私の身を守るためにつけてくれたの。私の力で倒せなかった以上、彼のポケモンを使ってエンテイをゲットするのは筋違いでしょう」

 

少女は「なるほど」と頷き、立ち去ろうとして立ち止まる。

 

「もうじき嵐が来ます。どこか雨宿りできる場所を探しておいた方が良いですよ」

 

晴れた空を見上げながら、リーフは少女の後ろ姿を見送る。

 

「……あの人、ミュウを見ても、まったく動じていなかった……」

 

リーフは少女の正体に気づいていなかったが、ミュウは知っていた。

 

(流石は、ガラル・ジムリーダー、サイトウさん。ストイックですね……)

マサカズは最初からエンテイをゲットするつもりはなかった。ただ、バトルしたらそれなりの経験値が貰えると考えていたため、キリの良いところまで戦うつもりでした。 




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