三好inアニポケ(仮)   作:フォークロア

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第十三話 虹の予兆、マサカズVSサイトウ

「こっちだ、イワーク!」

 

マサカズはミズゴロウを伴い、岩場の斜面を駆け下りながらイワークを誘導していた。

背後では、イワークが地面を砕きながら追いかけてくる。

──眼前に大きな岩が見えてきた。

マサカズはそこに登ってやり過ごそうとするが――

 

「っ!」

 

岩ごと砕かれ、マサカズは空中に弾き飛ばされる。

だが、落下先はイワークの背中だった。

 

「……乗ったか! なら、これでどうだ!」

 

マサカズはモンスターボールを取り出し、イワークに投げつける。

一度は吸い込まれるが、すぐにボールが跳ね返され、イワークが再び咆哮を上げる。

しかし、その数秒間の時間で十分だった。

 

「ミズゴロウ、構えろ!」

 

マサカズはミズゴロウを前にイワークと向かい合う。

イワークが突進してくる。

 

「“いわおとし”!」

 

ミズゴロウが岩を落とし、イワークの動きを一瞬止める。

 

「今だ、“なみのり”!」

 

水の波がイワークを包み、勢いを削ぐ。

だが、イワークはまだ倒れない。

 

「続けて“アイアンテール”!」

 

ミズゴロウの尾が光り、イワークの頭部に直撃。

その瞬間、ミズゴロウの体が光に包まれる。

 

「進化……!」

 

ミズゴロウはヌマクローへと進化した。

その姿は、より力強く、頼もしくなっていた。

──イワークは地面に穴を掘り、地中へと潜り込む。

マサカズは構えるが、次の攻撃は来なかった。

叶わないと悟ったのか、イワークはそのまま逃げ去っていった。

──その直後、空が曇り始め、雨が降り出す。

 

「戻れ、ヌマクロー! 良くやってくれた」

 

マサカズはモンスターボールにヌマクローを戻し、労いの言葉をかけると、急いでポケモンセンターへ向かおうとする。

だが、その道中――

 

「……うん? あれは……ヒトカゲ?」

 

──岩場に佇む小さな炎。

雨に打たれながら、じっと誰かを待っているようだった。

マサカズは最初、サトシがゲットする“無印ヒトカゲ”かと思った。

だが、近づいてきたトレーナーの姿を見て、違ってたかと思い直した。

よく見ると、そのトレーナーは、オレンジ髪で見たことのないポケモン――まよなかのすがたのルガルガンを連れていた。

ヒトカゲはその少年に駆け寄る。

だが、少年はヒトカゲを蹴飛ばす。

 

「お前、まだいたのか。消えろ」

「カゲ……?」

 

マサカズはオレンジ髪の少年に近づく。その顔は無表情であった。

 

「……お前、ソイツのトレーナーか?」

「何だ、お前?」

「通りすがりのただのトレーナーだ。で、どうなんだ?」

「ああ。元、だけどな」

「元?」

「弱いから捨てたんだ。この程度のヒトカゲならいくらでもいる」

「…………」

 

聞いていたマサカズは唖然とした。あまりにも自分本位だからである。

 

「だが、しつこくついてくるから“ここで待ってろ”って言ったんだ。」

「……えらく陰湿だな。相性が合わないから別れるのは別に構わないと思うが、ハッキリ言わずに煩わしいから嘘をつくか?」

「それがどうした? ポケモンは強さこそすべて。死にたくなければ強くなればいい」

「それは“トレーナー都合”でありトレーナーとしての責任放棄だろ? ポケモンが強くならないのをポケモンのせいにするのは他責思考だ。ポケモンを手放すにしても、その後の生活を無事に送っていけるように努めるのが、トレーナーとしての必要最低限な責任の取り方だと思うが。そもそも…」

「…で、何かいいことがあるのか?」

 

マサカズの発言をクロスは遮る。これ以上聞く気は無いという感じにマサカズも『最近の若い者は……これは何を言ってもダメだ』と悟る。

 

(こういうタイプ、意外と多いんだよな。この世界……)

 

「……はぁ。俺がこの子を保護しよう。構わないな」

「好きにしろ。俺の名はクロス。最強のトレーナーになる男だ」

 

少年──クロスはそう言うと立ち去って行く。

 

(最強のトレーナーになれなかったら、その後どうするつもりなんだ、アイツ……)

 

『ヒ…カ…カゲ…』

「っ……!」

 

クロスが立ち去った後、ヒトカゲはマサカズの前で倒れ込む。

見ると尻尾の炎が弱くなっていた。

マサカズはヒトカゲを抱きかかえる。

 

(確か尻尾の炎が消えたら死ぬんだったか……)

 

マサカズは冷や汗をかく。

 

(ミュウと離れたのは判断ミスだったか。いや、これは完全に想定外だ)

 

ミュウが居ればテレポートで直ぐにポケモンセンターに駆け込めるが、それが出来ない今、急いで応急処置することが求められている状況であった。

──マサカズは今、ミュウが居なければ“いざという時どうするか?”を問われていた。

 

(げんきのかけらはある。あとは……)

 

そして、傘をさしてなるべくヒトカゲを濡れないようにすると、近くに洞窟を発見し駆け込む。

洞窟内に入ると、奥で焚き火を囲む先客がいた。

──褐色の肌に灰色の髪、カチューシャのリボンをつけた少女――サイトウだった。

サイトウはマサカズに近づくと、ヒトカゲの尻尾の炎を見つめ、表情を引き締める。

 

「……なんで、こんなになるまで放っておいたんですか!?」

 

マサカズは一瞬だけ眉を動かし、静かに答える。

 

「俺のポケモンじゃない。捨てられて雨の中にいたコイツを保護したんだ。トレーナーが迎えに来てくれるって信じて、な」

 

サイトウは納得すると、ヒトカゲの額に手を当てる。

 

「体温が下がりすぎています。すぐに温めないと」

「もちろんだ。出ろ、リザード」

 

マサカズはモンスターボールを取り出し、リザードを呼び出す。

 

「コイツのピンチだ。今日いっぱい付き合ってくれ」

『ザード!』

 

リザードは頷き、焚き火のそばに座ると、炎の尾をヒトカゲに向けて揺らす。

 

「少しコイツを抱いててくれないか。俺は薬を用意する」

 

サイトウは頷き、マサカズからヒトカゲを受け取ると、膝の上にヒトカゲを抱き寄せ、優しく毛布をかける。

マサカズはバッグから“げんきのかけら”を取り出すと、かけらを砕いて煎じて飲ませる。

ヒトカゲは微かに喉を鳴らし、薬を受け入れた。

 

「……だいぶ医学の知識に長けているのですね」

 

サイトウが問うと、マサカズは静かに答える。

 

「まあ、旅に不測の事態はあり得ると考えてたからな。ポケモンが何らかの拍子に“ひんし”の状態となって、いざポケモンセンターが近くにない時のために、必要な知識と道具で応急処置を行えるように準備してたんだ」

 

その言葉に、サイトウは感心する。

マサカズの前世軍人として学んだ衛生看護のスキルは、今世界でも存分に活かされたのであった。

マサカズはサイトウからヒトカゲを受け取ると、腰を落ち着ける。

一瞬ヒトカゲが目が開ける。

 

「大丈夫だ。お前を絶対助ける」

「……」

 

その言葉に、サイトウは暖かな目を向けた。

それからしばらくして、サイトウがヒトカゲの容態を確認する。

 

「だいぶ落ち着いてきました。あとは安静にして回復を待つだけです」

「……山場を超えたか」

 

マサカズは深い息を吐くと、少し気を抜いて壁に背を預けた。

 

「あなたはポケモンリーグを目指して旅をしているのですか?」

「まあ、な。バッジを2個集めてる。これから3つ目を目指してクチバシティへ向かうところだ。そういうアンタは……格闘家……なのか?」

「ええ。今は修行のため、この地方に来ております」

 

──その時、洞窟の入り口から気配が流れ込んでくる。

マサカズとサイトウが振り向くと、そこには――エンテイが静かに歩いてきていた。

その背後には、コラッタ、ニドラン、パラスたちが身を寄せ合い、暖を求めてついてきていた。

エンテイは洞窟奥の隅に座り、ポケモンたちに炎を分け与えるように静かに佇む。

 

「……自然の驚異の前では、人間もポケモンも同じだな」

「そうですね」

 

その夜、マサカズとサイトウはヒトカゲを見守りながら、静かに眠りについた。

だが、夜半──マサカズの影から、ひとつの気配が現れる。

 

『…………』

「っ……!?」

 

生前の軍人としてのスキルにより、気配と視線を感じたマサカズは目を覚まし、辺りを見回す。

だが、誰もいなかった。

 

「……気のせいか」

 

マサカズは再び目を閉じる。

黒い影は再び現われると静かに、彼の影へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──朝の洞窟。

 

焚き火の炎は既に消えていたが、リザードの炎はまだ静かに揺れていた。

マサカズが膝の上に抱えていたヒトカゲが、ゆっくりと目を開く。

尻尾の炎にも、昨夜とは違う力強さが戻っていた。

 

「……目を覚ましたか」

 

マサカズは毛布をそっと外し、ヒトカゲの顔を覗き込む。

ヒトカゲは一瞬驚いたように瞬きをし、マサカズの顔を見つめる。

 

「お前の元トレーナーはお前を捨てた。だから、俺はお前を一時的に保護しよう。だが、俺はお前をゲットはしてやれない」

 

ヒトカゲは少し落ち込んだように目を伏せる。その表情には、寂しさと理解が混ざっていた。

 

「お前はどうあってもヒトカゲだ。周りはそう見てくる。野生に返っても、な。ここで出逢ったのも何かの縁だ。お前さえ良ければ、俺にお前に相応しいトレーナーを探す手伝いをさせて欲しい。どうだ?」

 

ヒトカゲはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。

そして、自らマサカズのモンスターボールに触れ、光に包まれて入っていった。

 

「……ヒトカゲを”ゲット”はしないのですね」

 

サイトウが問いかける。

 

「俺はもうリザードを持ってるからな。無責任なことはできない。しかし、責任が取れる範囲で取るさ。ヒトカゲを助けたときから、そう決めてた」

 

『なるほど』とサイトウは静かに頷き、微笑む。

 

──その時、マサカズの懐から光が漏れ始める。

 

「……ん?」

 

取り出すと、それは“にじいろのはね”だった。

 

「それは……まさか、にじいろのはね!?」

「なんだ? これを知ってるのか?」

「ええ。伝説のポケモン・ホウオウの羽です。ホウオウはごくまれに気に入った人間に“にじいろのはね”を渡すと聞きますが……あなた、ホウオウに出会ったことがあるのですか?」

「まあ……旅立ちの日に出逢った、な」

 

(正確には、そん時ミュウが貰ってきただけなんだが……)

 

マサカズはその時のことを思い出す。

しかし、サイトウは興味深そうにマサカズを見ていた。

 

「にじいろのはねに導かれホウオウに会う者が“虹の勇者”となるという伝説があります。あなたはどうやらホウオウに気に入られたトレーナーのようですね」

 

その言葉に、マサカズは少しだけ肩をすくめる。

 

「……そんな大層なもんじゃないさ。俺はただ、自分がやりたいと思ったことをやってるだけだ。だから目の前で捨てられたポケモンも守った。それだけだ」

 

サイトウはしばらく黙っていたが、やがて微笑む。

 

「……その姿勢、尊敬します。あなたのようなトレーナーが、もっと増えるべきです」

 

そう言うと、サイトウは懐からモンスターボールを構える。

 

「あなたに興味が湧きました。是非、私と勝負してくれませんか?」

 

マサカズは一瞬だけ驚いたように目を見開き、やがて笑う。

 

「いいだろう。えーと……」

「そう言えば名乗っていませんでしたね。私はサイトウ。ガラルから来ました」

「ガラル?」

 

マサカズはダイヤモンド&パールまでの原作しか知らないため、ガラル地方の名に少し驚く。

 

「俺はマサカズ。カントーのマサラタウン出身だ」

「では……存分に戦いましょう!」

 

──かくして、二人のポケモンバトルが始まる。

 

「ルチャブル、行け!」

『ルチャー!』

「リザード、行くぞ!」

『ザード!』

 

炎の尾を揺らしながら、リザードがフィールドに立つ。

対するサイトウが出したのは、ルチャブル。

空中で軽やかに回転しながら着地し、鋭い視線を向ける。

 

(知らないポケモンだ……)

 

初めて見るルチャブルの姿にマサカズは久しぶりに新鮮さを感じる。

 

「ルチャブル、“フライングプレス”!」

 

空中から急降下するルチャブル。

マサカズは即座に指示を飛ばす。

 

「リザード、“かえんほうしゃ”!」

 

炎が唸りを上げて放たれるが、ルチャブルは空中で身をひねり、炎をすり抜ける。

そのままリザードの肩に打撃を叩き込む。

 

「“メタルクロー”!」

 

リザードの爪が光り、ルチャブルの腹部に命中。

ルチャブルは後退しながらも、すぐに体勢を立て直す。

 

「“とびひざげり”!」

 

再び空中からの強襲。

マサカズは冷静に見極める。

 

「“みきり”! 続けて“かえんほうしゃ”!」

 

リザードが身をひねって攻撃を回避。

そのまま背後に回り、“かえんほうしゃ”を至近距離で放つ。

炎がルチャブルを包み、地面に叩きつける。

だが、ルチャブルはすぐに立ち上がり、翼を広げて再び空へ。

空中で旋回しながら、ルチャブルが“エアスラッシュ”を放つ。

リザードはそれを受けながらも、踏みとどまる。

 

「“かみなりパンチ”!」

 

拳に雷を宿し、跳び上がったリザードがルチャブルに突撃。

空中で拳が命中し、ルチャブルは地面に落下。

だが、リザードも着地に失敗し、膝をつく。

両者とも、限界が近い。

サイトウが静かに呟く。

 

「……美しい。空と炎の交差」

 

マサカズはリザードを見つめ、静かに言葉をかける。

 

「お前なら、まだ立てる。行け、リザード!」

 

リザードが立ち上がり、炎の尾を高く掲げる。

最後の一撃を賭けて、両者が突進する。

拳と翼が交差し──リザードが地面に倒れた。

 

「……戻れ。お疲れ、リザード」

 

マサカズは静かにモンスターボールを構え、リザードを戻す。

サイトウのルチャブルも、ふらつきながら立っていた。

 

「ルチャブル、よくやったわ」

 

サイトウは微笑みながら、ルチャブルをボールへ戻すと次のボールを構える。

 

「次は……オトスパス!」

『オースパース!』

 

水と格闘の複合タイプ、オトスパスが姿を現す。

その触手が地面を叩き、威圧感を放つ。

 

(オクタンみたいなポケモンだな……ッ)

 

マサカズは笑った。久しぶりにバトルに楽しさを感じていたのである。

 

「なら、こっちは……オコリザル! キミに決めた!」

『ブヒーッ!』

 

マサカズはオコリザルを選出。

オコリザルは腕を組み、鼻を鳴らして構える。

 

「私にかくとうタイプで挑みますか! おもしろい!」

 

──格闘タイプ同士の、真っ向勝負。

サイトウの言葉にオトスパスが地面を叩きながら構える。

その触手はしなやかで、力強く、まるで武道家の腕のようだった。

 

「オコリザル、“インファイト”!」

「オトスパス、“きあいパンチ”!」

 

マサカズの指示で、オコリザルが一気に距離を詰める。

拳が唸りを上げ、オトスパスの胴体に直撃。

だが、オトスパスはすぐに触手で受け流し、“きあいパンチ”を叩き込む。

拳と触手がぶつかり合い、空気が震える。

 

「“かみなりパンチ”!」

「“つっぱり”」

 

オコリザルの拳に雷が宿り、オトスパスの触手を弾く。

だが、オトスパスはすぐに“つっぱり”で反撃し、オコリザルの腹部に連打を浴びせる。

 

「“みきり”!続けて、“メガトンキック”」

 

オコリザルが身をひねって攻撃を回避。

そのまま背後に回り、“メガトンキック”を叩き込む。

オトスパスは地面に倒れ込むが、すぐに触手で跳ね起きる。

その瞳には、まだ闘志が宿っていた。

 

「“きゅうけつ”!」

 

オトスパスの触手がオコリザルを絡め取り、体力を吸収していく。

 

「“オーバーヒート”!」

 

オコリザルが口から炎を放ち、オトスパスを後退させると、再び構えを取る。

──両者とも、満身創痍。

だが、まだ立っている。

サイトウが静かに呟く。

 

「……これが、格闘の頂」

 

マサカズは笑みを浮かべる。

 

「お前のポケモン、いい動きだ。だが、こっちも負けられない。オコリザル、“インファイト”!」

「オトスパス、“きあいパンチ”!」

 

最後の一撃を賭けて、両者が突進する。

──拳と触手が交差し──オコリザルが地面に膝をついた。

 

「……オコリザル、戻れ。よくやってくれた」

 

マサカズは静かにモンスターボールを構え、オコリザルを戻す。

──サイトウのオトスパスも、ふらつきながら立っていた。

 

「ありがとうございました」

 

サイトウが頭を下げる。

マサカズも頷き、笑みを浮かべる。

 

「強いな、アンタ。完敗だ」

 

──完敗だった。

だが、マサカズは嬉しそうだった。

その姿に、サイトウは確信する。

 

(この少年……ただのトレーナーではない。あの眼差し、あの判断力。まるで戦場を知る者のようだった。おそらくまだまだ伸びていくでしょう。これからが楽しみです……!)

 

サイトウが拳を差し出すと、マサカズは少し驚き、拳を合わせる。

 

「また、バトルしてくれ。サイトウさん」

「ええ、マサカズ。お互い――より高みに!」

 

二人は再戦を誓いあった。




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