三好inアニポケ(仮)   作:フォークロア

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第十四話 セレナへ託す絆、VSマチス

サイトウとの激戦を終え再戦を誓い別れたマサカズは、岩場の洞窟を出て、リーフとミュウと合流していた。

 

『マサカズさん!』

「マサカズ! 良かった、無事だったのね!」

 

リーフが駆け寄り、ミュウがふわりと浮かびながら微笑む。

 

「ああ。昨日は色々あって洞窟で一夜を明かしてな」

 

マサカズは昨日リーフと別れてからの経緯を話した。

 

「えっ……じゃあ、これからトレーナーを見つけるまでマサカズがヒトカゲを育てていくの?」

 

マサカズは少しだけ目を伏せ、曖昧に笑う。

 

「……まあ、そうなるな」

 

その答えに、リーフはそれ以上は踏み込まず『そっか』と頷いた。

そんなマサカズ達だったが、クチバシティへ向かう道すがら、ヒトカゲとポケモン達を交流させてみると、意外にもエイパムと気が合ったらしく、モンスターボールから出して歩かせてみると、二体は並んで歩き、時折じゃれ合いながら笑い声を上げる仲へとなる。

 

マサカズの見ている前で、エイパムが尻尾でヒトカゲの炎をくすぐり、ヒトカゲが「カゲッ!」と跳ねる。

その光景は、まるで姉弟のようだった。

 

「……仲良くなったな、あの二匹」

「うん。なんだか、見ててほっこりするね」

 

リーフが微笑み、マサカズも静かに頷く。

 

──その夜

 

クチバシティのポケモンセンターに宿泊したマサカズたち。

リーフは先に部屋へ戻り、マサカズはセンターの外に出ると、木陰の隅でミュウと二人きりの話し合いを始めた。──話題は、ヒトカゲの今後についてである。

 

「ミュウ、ヒトカゲの今後について色々考えてるんだが、お前の意見を聞きたい」

『リーフさんを交えないってことは、彼女にも関係することなんですね』

「ン……先ず前提として俺は、ヒトカゲを自分のポケモンにするつもりはない」

 

ミュウは驚いたように目を丸くする。

 

『でも、助けたのはマサカズさんですよ?』

「それは事実だ。だが、俺にはリザードがいる。ヒトカゲと掛け持ちすれば、どちらも中途半端になる。構えばリザードが疎外感を覚えるし、逆ならヒトカゲが劣等感を抱くだろう」

『なるほど……』

 

ミュウはしばらく黙っていたが、やがて得心がいったという顔をする。

 

『だから、リーフさんに育ててもらおうかどうかと悩んでるんですね!』

 

しかしマサカズは腕を組むと、空を眺めながら『そこが問題なんだ』と謂わんばかりの表情を浮かべる。

 

「先ずはじめにそれが思い浮かんだ。だが、それにもいくつかの懸念点もあるんだ。先ずリーフはつい最近オレンジ諸島で多くのポケモンをゲットしたばかりだ。其奴らとも交流を取っていかないといけない以上、ヒトカゲばかりに構ってはいられないだろう。それに、旅を続ければいずれ、ヒトカゲを捨てたトレーナー……クロスと再会するかもしれない。それはヒトカゲにとって、トラウマの再燃になるかもしれない。それが本当にヒトカゲにとって一番良いことなんだろうか……」

『…………』

 

ミュウは言葉を失い、マサカズは続ける。

 

「野生に返すのも悪手だ。誰かにゲットされて、進化を強要されるだろう。俺でさえ、ヒトカゲを選んだ一番の理由はリザードンに進化して活躍して貰うことだった。オーキド博士に預けても、あの人なら新人トレーナーに持たせる数合わせに使いかねない」

 

ミュウは静かに頷く。

 

『……確かに、ヒトカゲという種族は、周囲の期待が重いポケモンですよね』

「だからこそ、今のヒトカゲに必要なのは、構ってくれるトレーナー。戦わせることを強要しない、進化にこだわらない、そんな存在だ」

 

マサカズは目を伏せ、静かに呟く。要するに今のヒトカゲにとっては自分がやりたいことを見つけるため、人と触れ合うことによって心を癒す期間が必要なのだと存外に語っていたのである。

 

「どうするか……」

『うーん……』

 

問題点を指摘されるとミュウにも確かに難問であった。ベターな落とし処はやはり『リーフに育てて貰うこと』としか思い浮かばない。少なくともマサカズはそうであった。

 

「……やはり、リーフに預けるしかないか……」

 

その言葉に、ミュウは『ハッ!』とすると、ふわりと浮かび上がり、目を輝かせる。

 

『それも一つの手ですが、もう一つ、私に良い考えが思い浮かびました!』

 

マサカズが顔を上げる。

 

「……聞こうか」

 

ミュウはにっこりと笑いながら、ある少女の名前を口にした。

 

『セレナさんです!』

 

 

 

 

 

 

 

──ポケモンセンター・ロビー

 

マサカズはロビーの片隅にあるテレビ電話端末にアクセスし、カロス地方・アサメタウンに連絡を入れる。

時差を考慮するとカントーが夜なら、カロスは昼頃の時間帯であるため、問題は無く繋がった。

ミュウはふわりと浮かびながら、マサカズの肩に寄り添っていた。

画面が繋がると、懐かしい顔が映し出された。

 

『マサカズ!? どうしたの、こんな時間に』

 

セレナは驚いたように目を見開き、画面越しにマサカズを見つめる。

 

「少し、相談があってな。」

 

マサカズは、クロスに捨てられたヒトカゲを保護した経緯を語る。

セレナは真剣な表情で耳を傾けていた。

 

「俺はヒトカゲのトレーナーにはなってやれない。リザードがいるからな。だが、ヒトカゲには構ってくれるトレーナーが必要だ。バトルを強要しない、進化にこだわらない、そんな存在が」

 

セレナは少し驚いたように眉を上げる。

 

『それって……私?』

「そうだ。セレナは来年、ポケモンを貰う予定だろ。その時、ヒトカゲを最初の仲間として迎えてみるのはどうだ?」

 

セレナは言葉を失い、しばらく黙っていた。

ミュウがそっと補足する。

 

『今のヒトカゲに必要なのは、療養期間と安心できる居場所です。セレナさんなら、バトルや進化の色目を持たず、パフォーマンスやコーディネイトの道を歩むでしょう。ヒトカゲにとって、それは救いになります』

 

マサカズは頷きながら続ける。

 

「もちろん、簡単な話じゃない。お前はまだトレーナーじゃないからな。だから、まずはお前の母親――サキさんにキープしてもらって、来年お前が正式に引き継ぐ形にするしかないが、どうだろうか?」

 

セレナは深く息を吸い、画面の向こうで立ち上がる。

 

『……わかった。ママに話してみる。でも、マサカズ……』

「ん?」

『私、ヒトカゲに会ってみたい。直接、話してみたいわ』

 

マサカズは微笑み、ミュウに目配せする。

 

「ミュウ、頼めるか?」

『もちろんです。座標、アサメタウン。いつでもテレポートの準備は整っております』

「じゃあ、今から向かうから準備しててくれ」

「分かった。待ってる!」

 

マサカズはセレナとの通話を切ると、ヒトカゲのモンスターボールを手に取り、静かに呟く。

 

「行こうか。お前の未来を決めるために」

 

──光が包み込み、マサカズとヒトカゲはカロス地方へと瞬間移動する。

光から抜け出すと、マサカズとミュウは、カロス地方・アサメタウンの空気を吸い込んでいた。

──柔らかな風が吹き抜け、遠くでヤヤコマの鳴き声が響く。

見知らぬ土地。だが、どこか懐かしい温もりがあった。

 

「……ここが、セレナの住む町か」

 

マサカズはヒトカゲのモンスターボールを軽く叩き、そっと微笑む。

 

「行こう。お前の未来を決める場所だ」

 

 

 

 

 

 

──セレナ宅の玄関前。

 

インターホンを押すと、すぐに扉が開き、セレナが顔を出した。

 

「マサカズ!」

 

笑顔で駆け寄るセレナ。

その後ろから、優しげな女性――母親のサキが現れる。

 

「まあまあ、遠いところを……お茶でもどうぞ」

「お邪魔します」

 

リビングに通されたマサカズは、ヒトカゲをモンスターボールから出す。

 

「ヒトカゲ、彼女はセレナ。俺の幼なじみの関係でお前を迎え入れたいと希望してくれる人だ。セレナのポケモンになるか否か、お前に判断して欲しい。どう選択しても俺はお前の意思を尊重するよ」

 

ヒトカゲは少し緊張した様子で、セレナの足元に近づいていく。

 

「ヒトカゲ……」

 

セレナがしゃがみ込むと、ヒトカゲはそっと彼女の膝に頭を乗せた。

 

「……私のポケモンになりたい?」

『…………カゲッ!』

 

ヒトカゲが力強く鳴く。

セレナは驚き、そして笑顔で頷いた。

 

「私、来年トレーナーになったら、この子と旅に出る!」

 

サキは静かに頷き、マサカズに向き直る。

 

「この子がそう言うなら、私も協力するわ。キープしておきましょう」

 

マサカズは深く頭を下げる。

 

「ありがとうございます。……この子に、居場所を与えてくれて」

 

その時、マサカズのモンスターボールが震え、エイパムが飛び出してきた。

 

「……エイパム?」

 

エイパムはヒトカゲのそばに駆け寄り、尻尾で抱きしめるように寄り添う。

その瞳には、別れを惜しむような寂しさが滲んでいた。

──マサカズはしばらく黙っていたが、やがて口を開く。

 

「……セレナ。もう一体、預かってもらえないか?」

「えっ?」

 

セレナが驚くと、マサカズはエイパムに向き直る。

 

「エイパム、お前がヒトカゲと離れたくないことに俺は気づいてる。バトルに苦手意識を持ってることも。……俺はお前を無理に俺の旅に付き合わせるつもりはない。だから、お前に相応しい、、、、トレーナーのところで新たな旅を始めるんだ」

 

エイパムはマサカズを見つめ、少しだけ目を伏せる。

だが、やがてヒトカゲの隣に並び、セレナの方へと歩き出す。

──エイパムは途中で立ち止まり、振り返る。

その瞳には、申し訳なさと感謝が混ざっていた。

マサカズは立ち上がり、エイパムの頭をそっと撫でる。

 

「悪気を感じる必要はない。それがお前の選んだ道なんだろ。俺は、お前の意思を尊重するし、お前のトレーナーで良かったと思うよ」

「……ッ」

 

セレナは感動し、マサカズからモンスターボールを受け取る。

 

「ヒトカゲとエイパムを頼むな、セレナ」

「……ありがとう、マサカズ。私、絶対この子たちを大切にする!」

 

その後、マサカズはセレナ宅の玄関を出て、ミュウのテレポートで帰還準備を整える。

──空を見上げると、カロス特有の鳥ポケモン・ヤヤコマが飛んでいた。

 

「カロス地方……ここは俺も知らない地方だな」

 

見送りに来たセレナが、そっと声をかける。

 

「マサカズ、約束覚えてる? 私、来年ポケモンを貰えるの。そしたら……」

 

マサカズは振り返り、微笑む。

 

「一緒に旅する、だろ。ポケモンリーグが終わったら、一緒にカロス地方を旅してくれないか、セレナ」

「っ…うん! 約束だよ!」

 

その笑顔を胸に、マサカズはカントーへと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

──翌朝・ポケモンセンターの食堂

 

空は晴れ渡り、クチバシティの朝は静かに始まっていた。

マサカズはトレイに朝食を乗せ、窓際の席に座っていた。

 

「おはよう、マサカズ!」

 

リーフが元気よく現れ、向かいの席に腰を下ろす。

ミュウはふわりと浮かびながら、二人の間に座るように漂っていた。

ポケモン達も仲良くポケモンフーズを頬張るが、リーフは顔を振って疑問を抱く。

 

「……あれ? マサカズ。ヒトカゲとエイパムの姿が見当たらないけど、どうしたの?」

 

リーフが首をかしげると、マサカズは味噌汁を口に含んですすり終わると静かに答えた。

 

「ああ。信頼できるトレーナー候補、、に預けることにしたんだ。エイパムもヒトカゲと共に歩んでいくことを決めたから、一緒に送り出したんだ」

「……そうなんだ」

 

リーフは少し驚いたように目を見開いたが、それ以上は何も言わなかった。

マサカズがポケモンをぞんざいに扱う人間ではないことを、彼女はよく知っていたからである。

食事を終えた後、マサカズ達はクチバジムの受付へ向かい、ジム挑戦の予約を確認する。

 

「クチバジム、空いてるか?」

「はい。マチス様は本日午後からの対戦を受け付けております」

「……じゃあ、午後一番で頼む」

 

受付を終えたマサカズは、リーフの方へ振り返る。

 

「先にいいか、リーフ?」

「うん、いいよ。私は明日に予約を入れるから、今日は応援に回るよ!」

 

──午後、クチバジム。

 

雷のエネルギーが満ちるフィールドに、マチスが立っていた。

 

「ようこそ、クチバジムへ。俺のライチュウで、ビリビリにしてやるぜ!」

 

マチスがモンスターボールを投げると、ライチュウが電気を纏って着地する。

 

「ヌマクロー、行くぞ!」

 

マサカズが呼び出したのは、最近進化したヌマクロー。

地面タイプを持つその姿は、電気技に対して圧倒的な耐性を誇っていた。

 

「先手必勝! ライチュウ、“10まんボルト”!」

 

雷が唸りを上げてヌマクローに襲いかかる。

だが、ヌマクローは平然としていた。

 

「なっ……効いてない!?」

 

マチスが驚く。

進化したヌマクローは地面タイプを持っているため、電気技は無効だった。

 

「“なみのり”!」

 

マサカズの指示で、ヌマクローが水の波を巻き起こし、ライチュウを押し流す。

ボクシングと同じで効果いまひとつでも、ジャブを撃てば相手は受けにまわり攻撃が後攻に回らざるを得ない。

 

「“アイアンテール”!」

 

続けざまに尾を光らせ、ライチュウに叩き込む。

ライチュウは地面に倒れ、戦闘不能となった。

静寂の後、マチスが笑いながら手を挙げる。

 

「参ったぜ。オレンジバッジ、持っていきな!」

 

マサカズはバッジを受け取り、静かに頷いた。

 

「ありがとうございます」

「やったね、マサカズ!」

 

リーフが近づいて来ると、マチスと向かい合う。

 

「明日は私も挑みます。マチスさん、覚悟しててね!」

「オッケー、ガール。明日は今日みたいにいかないぜ!」

 

マサカズたちは笑いあう。

カントーの旅は、まだ続いていく。




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