三好inアニポケ(仮)   作:フォークロア

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第十五話 サントアンヌ号・前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライチュウ、戦闘不能! フシギソウの勝ち! よって勝者、マサラタウンのリーフ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クチバシティの港には、夕陽が差し込んでいた。

潮風に吹かれながら、マサカズとリーフは並んで歩いている。

手には、クチバジムで勝ち取ったばかりのオレンジバッジが輝いていた。

その時、近くの船から汽笛が響く。

 

「ねえ、マサカズ。あれ、見て!」

 

リーフが指差した先には、白く輝く巨大な船体――豪華客船サントアンヌ号が停泊していた。

甲板にはドレス姿の乗客たちが談笑し、船内からは優雅な音楽が漏れてくる。

 

「……サントアンヌ号か」

「豪華客船だよね。すごいな……いつか、ああいう船で世界一周してみたい」

 

リーフの瞳は、憧れに満ちていた。

マサカズは少しだけ苦笑し、何とも言えない表情を浮かべる。

 

「そうか。世界一周か……」

 

彼の脳裏には、前世の記憶がよぎっていた。

日本海軍将官として、軍艦に乗り世界を巡った日々。

それは戦いと任務の連続で、優雅な旅とは程遠いものだった。

 

「マサカズ?」

「ああ、いや……いい夢だと思うぞ」

 

その時、二人の前に現れたのは――ガングロギャル風の男女。

厚底サンダルにサングラス、派手なメッシュヘア。

 

「お兄さんたち、サントアンヌ号のチケット、欲しくない〜?」

「今なら特別に、無料でプレゼントしちゃうゾ☆」

 

マサカズは眉をひそめた。

その声、そのテンション――間違いない。

 

(……ムサシとコジロウか)

 

ハナダジムでジュンサーに引き渡されたはずのロケット団。

脱獄して再び活動していることに、もはや驚きはなかった。

 

(アニポケのギャグ要員……不動すぎるだろ)

 

マサカズは傍観を決め込む。

だが、リーフはチケットを手にして目を輝かせていた。

 

「マサカズ、乗ろうよ! せっかくだし、ちょっとだけでも!」

「……沈むかもしれないぞ」

「え?」

「いや、なんでもない。……念のため、ラプラスも連れて行くな」

 

水上移動と救助に最適なポケモンとして思い浮かぶのはラプラスしかいない。

マサカズは原作同様な展開になっても、最悪助かるだろうと踏んでラプラスを手持ちに加えた。

 

──そして、乗船の時。

 

サントアンヌ号のホールに足を踏み入れた瞬間、リーフは息を呑んだ。

 

「……すごい。夢みたい」

 

サントアンヌ号のホールは、まるで別世界だった。

天井から吊るされたクリスタルのシャンデリアが、波の揺らぎに合わせて微かに煌めき、壁際では生演奏のバンドが優雅なワルツを奏でている。

ドレスに身を包んだ乗客たちが、笑顔でグラスを傾けながら、ゆったりとしたステップでフロアを舞っていた。

リーフは目を輝かせながら、その光景に見入っていた。

その横顔を見つめながら、マサカズは静かに言葉を紡ぐ。

 

「良かったら、一曲踊ってみるか、リーフ」

「えっ……マサカズって、社交ダンス踊れるの!?」

 

驚きと戸惑いが混じった声。

マサカズは少しだけ口元を緩めて答えた。

 

「まあ、な」

「じゃあ…お願いしようかしら」

 

リーフがそっと手を差し出すと、マサカズはその手を優しく取った。

指先が触れ合った瞬間、リーフの心臓が跳ねる。

 

──音楽が変わる。

 

軽快なジルバのリズムが流れ始める。

マサカズはリーフの腰に手を添え、もう片方の手で彼女の指を包み込む。

一歩、二歩。

リーフの足が自然とマサカズのリードに沿って動き出す。

 

「……すごい、マサカズ。まるで風に乗ってるみたい」

「リズムに身を任せれば、自然と動けるさ」

 

ステップは軽やかに、ターンは滑らかに。

リーフのスカートがふわりと舞い、マサカズの足取りは正確で、まるで長年のペアのようだった。

 

──曲が変わる。

 

今度はゆったりとしたワルツ。

マサカズはリーフの背に手を添え、ゆっくりと回転を始める。

リーフは目を閉じ、音楽とマサカズの動きに身を委ねた。

 

「……こんなに優雅な時間、初めてかも」

「俺も、久しぶりだ」

 

──最後は情熱的なタンゴ。

 

マサカズの動きは鋭く、リーフのステップはそれに応えるように力強くなっていく。

視線が交差し、呼吸が重なり、二人の世界が音楽の中に閉じ込められていく。

その瞬間、二人の間に流れたのは、言葉では語れない心がひとつになったような感覚だった。

 

──そして、曲が終わる。

 

マサカズがリーフをそっと回転させ、最後に手を取って静止する。

ホールが静まり返り、次の瞬間――拍手が鳴り響いた。

二人のダンスは観客達をも魅了していたのである。

 

「はぁ……はぁ……マサカズ……凄かったよ///」

 

リーフは頬を紅潮させ、息を切らしながらマサカズを見上げる。

マサカズは少しだけ照れたように笑い、頭をかいた。

 

「すまん。……俺も、ちょっと熱中してたみたいだ」

「ううん……すごく、楽しかった」

 

彼の中では自然と、かつてヨーロッパの駐在武官として踊った記憶が蘇っていた。

 

──その時、聞き慣れた声が背後から響いた。

 

「マサカズ! リーフ!」

 

振り返ると、サトシが手を振って駆け寄ってくる。

その後ろにはカスミとタケシも続いていた。

 

「久しぶりだな、サトシ。……カスミに、タケシさんも」

「まさか、こんなところで会えるなんて!」

「君たちも乗ってたんだな。豪華客船で再会とは、粋な演出だ」

 

リーフは嬉しそうに笑いながら言った。

 

「私たち、クチバジムに挑んで、オレンジバッジを手に入れたの。マサカズも一緒に」

「オレたちもだよ! ピカチュウが頑張ってくれてさ!」

 

カスミが頷く。

 

「マチスさん、強かったけど、サトシのピカチュウが本当に粘ってくれたの」

「ピカッ!」

 

ピカチュウが胸を張って跳ねる。

マサカズはその姿を見て、静かに微笑んだ。

 

──その後、五人は船内のレストランへと移動し、会食の席についた。

テーブルには豪華な料理が並び、グラスにはノンアルコールのシャンパンとオレンジジュースが注がれていた。

 

「乾杯、だね!」

「旅の再会に!」

 

グラスが軽く触れ合い、笑顔が交差する。

 

 

「「「「「「「「「「オオオォォォ!!!」」」」」」」」」」

 

「「「っ?」」」

 

マサカズ達はその声に振り返る。

船内のホールでは、乗客たちによるポケモンバトルが盛り上がりを見せていた。

シャンデリアの下、ジェントルマン風の男がラッタを連れてステージに立つ。

 

「さあ、私のラッタに挑戦してくださる勇気のある方はいませんか?」

 

そのラッタは先ほど、挑戦してきたトレーナーのスターミーを“ひっさつまえば”で撃破していた。

観客がざわめく中、俄然やる気を出したサトシが一歩前に出る。

 

「俺が行く! バタフリー、頼む!」

 

バタフリーが軽やかに舞い上がり、ラッタと対峙する。

ラッタの“とびげり”と、バタフリーの“たいあたり”の攻防が繰り広げられる。

だが、ラッタの“ひっさつまえば”が鋭く突き刺さり、バタフリーも大きく揺れる。

しかし、バタフリーも“しびれごな”で動きを封じ“かぜおこし”で応戦すると、一気に形勢が傾いていくが、ジェントルマンが中断する形で、勝負は引き分けとなった。

食事の席へと戻ってきたサトシに、ジェントルマンとパートナーの女性が近づいて来る。

 

「先ほどは見事な勝負でした。キミのバタフリーはすばらしい」

「いやー、おじさんのラッタもカッコよかったよ」

「ならば話は早い。交換しようではないか」

「交換?」

 

ジェントルマンが笑みを浮かべながら言う。

 

「ポケモンを持つ者は、気に入ったポケモンがあれば交換し合う。これが世間の常識だよ」

「えっ、そうなの?」

「交換し合った友達は、また別の友達と交換する。こうして友情はどんどん深まり、広がってゆく。これがポケモンが取り持つ友情なんだよ。全国に広がるポケモンの輪なんだ」

「ふーん……」

「友情が広がるのよ♪」

「うんうん、絆が深まりますよね。グイッと」

 

「…………」

 

パートナーの女性の発言にタケシも頷き、カスミもリーフも興味深そうに耳を傾ける。

しかし、マサカズはその様子を静かに見つめていた。

 

「タケシ、どう思う?」

「もう、そりゃぜひ交換してもらわなきゃ」

「そっか……マサカズはどう思う?」

 

サトシは少し迷いながら……マサカズへ聞いてきた。

 

(俺にも意見を求めてきたか……及第点だ、サトシ!)

 

マサカズは若干の嬉しさを覚えると、グラスのノンアルシャンパンをグビっと飲み干し、サトシを見据えた。

 

「……サトシ、交換にはメリットもあれば、当然デメリットも存在する」

 

マサカズの発言に場が静まり返る。

 

「メリットとしては、新しいポケモンに出会える。レベルが上がりやすい、進化するかも、だな。デメリットとしては、いうことを聞かない、交換した元手持ちポケモンとは基本会えない。それから新しく仲間になったポケモンとの関係を一から作らないといけない、だ」

 

マサカズは一拍置いて、問いかける。

 

「お前……バタフリーのこと嫌いなのか?」

「なっ!? そんな訳ないだろ!」

「なら聞こう。交換されたポケモンは、どう思う?」

「それは……」

 

サトシは言葉に詰まる。

 

「今日あったばかりのそこの男がどんな奴で、どこに住んでるか知ってるか? 相性の向き不向きだってある。それに合わなければ、トレーナーの都合によって、捨てられたり、ネグレクトされたり、或いは虐待される場合等もあるかもしれない」

「そんなことは……」

「別にアンタの人間性を疑ってる訳じゃねぇ。気分を悪くしたら済まなかったな。少し世間知らずに世の中を教えてるだけだ。さて、今言ったことを今日会ったばかりの他人がしないと誰が保証してくれるんだ、サトシ?」

 

マサカズの声は静かだったが、重みがあった。

 

「バタフリーだって、新しいトレーナーとの関係を築いていかないとならない。お前がポケモンなら、あってすぐの人間に、はいそうですかって言うと思うか? ポケモンにだってそれぞれに意思があるんだ。主と離れたくないとか、この味好きとか嫌いとか」

 

気がつけば、マサカズの発言に皆が沈黙していた。

 

「……あまり言い過ぎたら困惑するだろうから、これだけは言っておく。バタフリーに聞いてみろ?交換してもいいですか?って。YesかNoかくらいなら意思表示可能だろう。交換したいって、いったい誰が決めたんだ?」

 

誰もが言葉を失っていた。

タケシもカスミも、ジェントルマンも、リーフでさえも。

みんな、気が付いたのである。 交換したいという行いは、所詮トレーナー都合であるのだと。

そこまで考えてなかったし、周りの意見に流されていた自分に恥じらいを覚えた。

サトシはゆっくりとバタフリーのモンスターボールを見つめ、そしてジェントルマンに振り返った。

 

「……交換、やめるよ。バタフリーは俺が初めてゲットしたポケモンで、やっとここまで成長させたんだ。だから──」

「しょうがないな。今回は諦めるとするよ」

 

そう言うと、ジェントルマン達は離れていく。

 

「ありがとう、マサカズ。お前が言ってくれなきゃ、俺、交換に応じて後悔してたと思う」

「ン……こういった事は今後もあるから気を付けろ。俺等はもう周りから大人だと見られてるんだからな。何事も自己責任だぜ」

「マサカズ、俺……お前と戦いたい。今の俺で、どこまで通じるか試してみたい!」

 

サトシはマサカズにバトルを申し込む。──そして、マサカズは静かに頷くとモンスターボールに手を伸ばす。

 

「……いいだろう」

 

ホールの一角にスペースが空けられ、乗客たちがざわめきながら見守る。

リーフ、カスミ、タケシも息を呑みながらその場に立ち会っていた。

 

「ピカチュウ、行くぞ!」

「ヌマクロー、前へ」

 

──両者がフィールドに立つ。

 

ピカチュウは電気を帯びた頬を輝かせ、ヌマクローは冷静な瞳で相手を見据える。

進化したミズゴロウ――その姿は、かつての可愛らしさを残しつつも、地に足のついた力強さを纏っていた。

 

「ピカチュウ、“十まんボルト”!」

 

雷鳴が走る。

黄色い閃光がヌマクローに向かって放たれる――が、ヌマクローは微動だにしない。

 

「えっ!? 効いてない!?」

 

マサカズは静かに答える。

 

「ヌマクローはじめんタイプも持っている。電気は通らない」

 

サトシは驚きながらも、すぐに次の指示を飛ばす。

 

「なら、“なみのり”だ!」

 

ピカチュウが水の波を呼び起こし、ヌマクローに向かって押し寄せる。

だが――

 

「“れいとうビーム”」

 

ヌマクローが口を開き、冷気の光線を放つ。

波が凍りつき、氷の壁となってピカチュウの攻撃を遮る。

 

「くっ……ピカチュウ、“でんこうせっか”で回り込め!」

 

ピカチュウが素早く動き、ヌマクローの背後を取る。

だが、マサカズはすでに読んでいた。

 

「“ちょうおんぱ”」

 

ヌマクローが音波を放ち、ピカチュウの動きが乱れる。

足元がふらつき、攻撃のタイミングがずれる。

 

「今だ、“マッドショット”」

 

泥の弾がピカチュウに命中し、衝撃で吹き飛ばされる。

床に転がったピカチュウは、しばらく動けなかった。

 

──審判を務めていたタケシが手を上げる。

 

「ピカチュウ、戦闘不能! よって勝者、マサカズ!」

 

ホールが静まり返る。

サトシはゆっくりとピカチュウを抱き上げ、優しく頭を撫でた。

 

「……強いな、マサカズ。俺、もっと強くなるよ」

 

マサカズは静かに微笑んだ。

 

「その思いがある限り、お前は自分には、、、、負けないだろうさ」

 

その瞬間、二人の間に流れたのは、勝敗を超えた信頼だった。




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