「確かにあの森ならちょうど良いかもしれないな。サトシもキャタピーとで良い感じになったし。」
『はい。でも、油断は禁物ですよ。虫ポケモンでも怒ると怖いですから』
「その時は頼むぞ、相棒。ポケモンを持ってないんだから、君だけが頼りだ」
『フフン♪ 私の姿を見たら、ギャラドスもリングマも裸足で逃げ出しちゃいますよ』
トキワシティへミュウと共にテレポートでやってきたマサカズは、そんな会話を交わしながらトキワの森へ向かうため、街中を歩いていた。
その時――。
路地裏から、かすかな鳴き声と罵声が聞こえた。
「……ん? 誰かいるのか?」
マサカズが近づくと、そこには――
傷だらけのピカチュウがいた。
その体は泥にまみれ、震えていた。
そして、ピカチュウの周囲にはロケット団の下っ端が数人、網を持って迫っていた。
「おいおい、こんな街中でポケモン狩りかよ……」
『マサカズさん、あれは見過ごせません!』
「同感だ。ミュウ!」
ミュウは頷くと空中に浮かび”はどうだん”を放つ。
「「「ぎゃあぁぁぁ!!!?」」」
青白い光がロケット団を吹き飛ばし、彼らは星となって消えた。
「大丈夫か、ピカチュウ……」
マサカズはそっと手を差し伸べる。
ピカチュウは怯えながらも、その手に身を委ね気を失った。
ピカチュウを保護したマサカズは、ポケモンセンターへと連れていった。
ポケモンセンターで治療を受けた後、ピカチュウは目を覚ました。
「起きたか」
「……ピカ」
「ごめんな。もっとはやく助けてやれたら良かったんだが」
ピカチュウは最初マサカズを警戒していたが、ミュウの通訳を通じて、少しずつ心を開いていく。
『この人……優しい』
「ピカチュウ……君さえよければ、俺の“仲間”になってくれないか」
『あたし……マサカズのポケモンになりたい!』
『だ、そうですよ』
「そうか…! よろしく頼む、相棒」
その言葉に、ミュウがぷくっと頬を膨らませる。
『ムッ。一番の相棒は私ですからね!』
マサカズは苦笑しながら、ピカチュウの友情ゲットに成功する。
そんなマサカズは、ピカチュウをマサラタウンへ連れ帰ると、孤児院の院長へ多少事実と異なる経緯を説明して、孤児院へ置いて貰うことにする。
翌日、オーキド研究所の森へピカチュウ達と共に足を運んだマサカズは、ミュウを相手にピカチュウを使った模擬戦を始めてみる。
ピカチュウへと覚えている技を使う指示を与えながら、時には回避、アドバイス等を行なう、よりポケモンバトルの実戦に近い経験を積む。
ピカチュウの電気技とミュウの超能力が交錯する中、マサカズは“リアルポケモンバトル”が如何に難しいかを痛感する。
「……なるほど。ポケモンを勝たせるには、ただ強いだけじゃダメなんだな」
ポケモンはレベルアップを通じて、進化や新しい技という目に見える形で成長するが“如何にして勝利に導くか”はトレーナー次第である。そのトレーナーとしての指示の難しさをマサカズは身を以て実感した。
『どうですか、ポケモンバトルの程は?』
「まるで飛行機パイロットで敵機と戦ってる時と将官として艦隊指揮を行なうのを“同時にやっている”ような気分だよ。これは……熱中するな」
ポケモンの視点と一緒になって見るバトルだけに、共に戦っている感覚はゲームで感じることはできない臨場感をマサカズに与えた。サトシがポケモンバトルで苦戦しつつも、時には臨機応変に対応できているのが、如何に凄いことかが分かるというものである。
気がつくと日が暮れていたのに気づかずにマサカズは、その日疑似ポケモンバトルに嵌まっていた。
そんな経験を積みながらおくっていたある日。
マサラタウンではオーキド博士主催のサマーキャンプが始まった。
課題は、森の中から“オレンのみ”と“モモンのみ”を探すことであった。
サトシ、シゲル、リーフ――幼馴染たちも参加していた。
「誰が一番早く見つけられるか、勝負だ!」
「負けないよ、サトシ、シゲル、マサカズ!」
「受けて立つぜ」
「やれやれ」
各々が木の実を探すために森の中を散策していく。
マサカズはミュウとピカチュウを呼ぶと共に森へ入り、散策をはじめる。
「ピカピッ!」
『ありましたよ、マサカズさん』
「“オレンのみ”ゲット!」
すぐに目的の木の実を見つけたが、その時――。
「きゃああああっ!」
悲鳴が森の奥から響いた。
マサカズが駆けつけると、オニスズメに襲われている少女がいた。
「ピカチュウ、電気ショック!」
オニスズメが撃退され、少女は助けられた。
(あれっ? この子って確か……)
ミュウはふとある人物に思い当たる。
彼女の名は――セレナ。
「……ありがとう。あたし、迷子になって……足も痛くて……」
泣きじゃくるセレナに、マサカズはそっとハンカチを巻いてあげる。
「これでよし。君、この辺では見かけないけどどこから来たんだい?」
「…カロス地方のアサメタウン」
「カロス……それはまた遠いところから来たんだな」
「あたし、サマーキャンプに本当は来たくなかった!ママが無理矢理参加させて……迷子になるし来たくなかった」
マサカズはセレナの頭を撫でてあげると、彼女を宥める。
「そっか。親は子に対して良かれと思って行動する生き物なんだ。時には迷惑に感じることもあるかもしれない。けど、それを親だけのせいにしちゃいけないよ。最後は自分が決めて行動することなんだから。セレナは何かやりたいこととか、なりたいものとかあるかい?」
「…ううん」
「なら先ずはそこからだな。目標も定まらないんじゃ、ただ周りに流されて無難な方の道しか行けない。セレナがやりたいこと、したいことを見つけて、ちゃんと気持ちを伝えてみな」
「私のやってみたい事……」
『そうそう。人生、もっと楽しまなきゃ損ですよ!』
ミュウが現れると、サイコキネシスで大道芸を披露。
セレナは笑顔を取り戻し、マサカズと語り合う。
「知ってるか? ホウエン地方やシンオウ地方にはポケモンコンテストという競技があってな。こういった風にポケモンを“魅せる”戦いがあるんだ。セレナも目指してみたらどうだ、ポケモンコーディネーター」
「ポケモンコーディネーター……、私にできるかな……」
「似合うと思うぞ。もしポケモンを貰ったら……一緒に旅してみるか?」
「あっ…うん! やってみたい。えーと……」
「あっ…マサカズ。それが俺の名前だよ」
「あたし、セレナ」
「セレナか。よろしくな」
その後、足を挫いていたセレナをキャンプ地へ連れ戻すためマサカズは彼女をおんぶした。
「キズは浅いようだが、酷くなったら大事だ。送ってくよ」
「……ありがとう。マサカズ///」
セレナは顔を赤らめマサカズに感謝を伝えた。
(これは……面白いことになりましたね!)
事情を察知したミュウは意味ありげにニヤニヤ笑った。
その後ビリで帰った彼だったが、セレナの母・サキが涙ながらに迎える。
「セレナ! 良かった、探したのよ」
「ママ……ありがとう。ごめんなさい。マサカズがオニスズメから守ってくれたの」
「あなたが娘を助けてくれたのね」
「できることをしたまでですよ」
「ありがとう……本当にありがとう……」
マサカズは微笑ましく、親子のやり取りを見つめていた。
その日から、セレナとマサカズはよく連絡を取り合う仲となった。
後にセレナは地元にあるポケモンパフォーマーにも興味を示し、「人を笑顔にするパフォーマンス」を目指していくのである。
やがて、彼女は気づく。
――自分が、マサカズに恋をしているということを。
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