三好inアニポケ(仮)   作:フォークロア

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第六話 トキワの森・後半 リーフの試練と特訓

森の朝は、静かに始まる。

木々の間から差し込む光が、テントの布地を淡く染めていた。

 

「良いのか?」

「うん。今日の朝食は私が作るね!」

 

マサカズの気にかけに、リーフは頷いて答えるとエプロンを巻き、意気込んで調理器具を並べる。

昨日のマサカズの料理に感動した彼女は、負けじと腕を磨こうと決意し朝食を一人で作ろうとしていた。

 

「フシギダネ、あの木の実取ってきてくれる?」

「ダネッ!」

 

フシギダネが器用に“つるのムチ”で枝から実を引き寄せる。

キャタピーも、地面に落ちた実をコロコロと転がして運んでくる。

 

「ありがと、キャタピー。……ふふ、かわいい」

 

マサカズは少し離れた場所で、ピカチュウとヒトカゲの模擬訓練を見守っていた。

ミュウは空中でくるくると回りながら、リーフの調理風景を眺めている。

 

『リーフさん、やる気ですね』

「……だな」

 

そうして、リーフが作った朝食は、森の木の実を使ったカレー風味のリゾットと、フシギダネが見つけてきた香草のサラダであった。

ピカチュウが一口食べて「ピカァ!」と跳ね、ヒトカゲも「カゲッ」と尻尾を振って喜ぶ。

マサカズも一口食べて、静かに頷いた。

 

「……悪くない。味のバランスも取れてる」

「ほんと!? やった!」

 

ミュウも満足そうに食べており、キャタピーはリーフの膝の上で小さく跳ねていた。

 

──食後

 

リーフはキャタピーとの連携訓練に取り組む。

 

「まずは、“いとをはく”の精度を上げよう。木の枝に向かって、まっすぐ!」

 

キャタピーが糸を放つが、軌道がぶれて枝を外す。

 

「うーん……じゃあ、少し近づいてみようか」

 

距離を調整しながら、何度も繰り返す。

やがて、糸は枝に絡みつき、キャタピーがぶら下がることに成功する。

 

「できた! すごいよ、キャタピー!」

 

──次に“たいあたり”の訓練。

 

リーフは木の幹に的を描き、キャタピーに突撃させる。

 

「低く構えて……今!」

 

キャタピーが幹にぶつかり、的の中心を捉える。

リーフは両手を挙げて喜んだ。

 

「やった! キャタピー、すごいよ!」

 

キャタピーは照れくさそうに、リーフの足元にすり寄る。

その仕草に、リーフはそっと膝をついて抱きしめた。

 

「……ありがとう。あなたと出会えてよかった」

 

その様子を、マサカズは少し離れた場所から見守っていた。

焚き火の前でナイフを研ぎながら、静かに呟く。

 

「……仲間との絆ってのは、こうやって育まれていくものなのかもしれないな」

 

ミュウがふわりと浮かび、マサカズの肩に乗る。

 

『リーフさん、いいトレーナーになりそうですね』

「……ああ。あいつは、ちゃんとポケモンの声を聞ける」

 

森の風が、静かに吹き抜ける。

絆は、確かに芽吹いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──森の昼下がり。

 

リーフはキャタピーとの連携訓練を終え、サムライ少年とのバトルに臨んでいた。

サムライはカイロスを繰り出し、鋭いハサミを鳴らす。

 

「昨日の借りを返すでござる。リーフ殿、尋常に拙者と勝負願いたい!」

「もちろん。キャタピー、いこう!」

 

リーフは頷き、キャタピーをそっと地面に下ろす。

サムライは驚いたように目を見開いた。

 

「キャタピーで……カイロスに挑むでござるか?」

 

自身もキャタピーを持っているサムライだけに、その使い勝手の悪さを理解していたので、まさかカイロスに当ててくるとは思わなかった。

しかし、リーフは勝つつもりだったのである。

 

「カイロス、“はさむ”!」

「キャタピー、“いとをはく”!」

「無駄でござる!」

 

キャタピーの糸はまっすぐにしか飛ばせないことを理解していたサムライは、カイロスをジグザグに動かせながら接近させる。

こうすることにより糸がカイロスに絡みつくことはないと、サムライは不敵に笑う。

だが、リーフの狙いは別にあった。

 

「キャタピー、いとを上の枝に巻きつけて、回り込んで!」

 

キャタピーは木の枝に糸を絡みつけて舞い上がると、ターザンのようにカイロスの背後へ移動し、回り込む。

 

「もう一度、“いとをはく”! 今度は、カイロスの目を狙って!」

 

糸がカイロスの視界を奪い、動きが鈍る。

 

「しまった……!」

「キャタピー、“たいあたり”! 続けて、いとを吐いてカイロスを木に縛り付けて!」

 

キャタピーがカイロスを木に押しつけると、今度は糸で木の周りを一周しカイロスを縛り付ける。

 

「“たいあたり”をカイロスに連打よ!!」

 

キャタピーの連打攻撃が決まると、カイロスは戦闘不能となる。──その瞬間、キャタピーの体が光に包まれた。

 

「進化したのね……トランセル……かわいい……!!」

 

リーフは目を輝かせながら、色違いのトランセルを抱きしめた。

その体はオレンジ色に輝き、静かに羽化の準備を始めていた。

 

一方のサムライは唖然としていた。まさかこのような方法で負けるとは夢にも思わなかったのである。

 

「……どうやら侮っていたのは拙者の方でござったようだ」

 

カイロスを戻し、キャタピーを繰り出す。

 

「拙者も、キャタピーで勝負するでござる!」

 

リーフはトランセルを続投。

だが、勝負が再開されようとしたその時──ブゥゥゥン……森の奥から不穏な羽音が響いた。

森の奥から、羽音が此方に近づいて来る。

 

「まずい、スピアーの群れでござる……!」

 

サムライが叫ぶ。

次の瞬間、無数のスピアーが空を覆い、襲いかかってきた。

その数は尋常ではなかった。

 

「リーフ!!」

「きゃあっ!」

 

マサカズが駆け寄り、リーフを抱きかかえて“どくばり”を回避する。

 

「逃げるぞ、リーフ。これは不味い!」

「うん……!」

 

だが、違う方向からもスピアーが群がり、逃げ道を塞がれる。

マサカズはピカチュウとヒトカゲを繰り出し、連携してスピアーを撃退していく。

リーフもまたフシギダネを繰り出し、“ねむりごな”で応戦し、なんとか退路の確保に成功しようとしたその時──一体のスピアーが、リーフのトランセルを掴み、空へと舞い上がった。

 

「トランセル!!」

 

リーフが叫び、追いかけようとする。

だが、マサカズが肩を掴んで止める。

 

「リーフ、落ち着け。もうすぐ日が暮れる。今取り返そうと動いていったら、闇討ちに遭ってやられるだけだ」

「でも……でも……!」

 

リーフはその場に膝をつき、涙をこぼす。

 

「私の……はじめてできた仲間なのに……!」

 

マサカズはそっとリーフの肩に手を置き、静かに言った。

 

「大丈夫だ。必ず迎えに行こう。明日の朝一番で、取り返す。サムライ……」

 

サムライが頷く。

 

「スピアーの巣の場所は拙者が知っている。案内するでござる」

 

リーフは涙を拭いながら、マサカズの言葉に頷いた。──その夜、マサカズ達はサムライの家で一晩を明かすことになった。

リーフはトランセルのいない寝袋を見つめながら、静かに呟いた。

 

「待っててね、トランセル……絶対、迎えに行くから」

 

リーフは奪われた絆を取り戻すことを決意する。

マサカズも窓の外を見つめながら、にじいろのはねをそっと握りしめた。

夜の森に灯る誓いは──決意の朝へと続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けたトキワの森──朝露が葉を濡らし、空気はひんやりと澄んでいた。

マサカズとリーフは、サムライ少年の案内でスピアーの巣へと向かっていた。

リーフの瞳には、決意の光が宿っていた。

 

「トランセル……今行くから」

 

サムライは地図を広げながら言う。

 

「巣はこの先の断崖の上。昨日の襲撃は、繁殖期による気性の荒さが原因でござる。慎重に行かねばならぬ」

 

巣に到着すると、マサカズはすぐに異変に気づいた。

 

(タマゴが大量にある。これはまずいな……)

 

リーフは木の傍にいたトランセルを発見すると、駆け寄り抱きしめる。

 

「トランセル! よかった、無事で……!」

 

トランセルは涙を流しながら、リーフにすり寄った。

その瞳には、見捨てられたかもしれないという不安と、再会の喜びが混ざっていた。

しかし、いつまでも感動の再会に浸ってる場合ではなかった。

 

「急いでここを離れるぞ」

 

マサカズがリーフの肩に手を添え、急いで離れることを促す。

それは彼の勘が警鐘を鳴らしていたからである。──しかし、一歩遅かった。

突然、巣に居るタマゴたちが動き始めると無数のビードルが孵化し、一斉にこちらへと視線を向けてきたからである。

 

「……来るぞ!」

 

眠っていた親スピアーたちも目を覚まし、羽音が森を震わせる。

 

「全員応戦だ。ピカチュウ、“十まんボルト”! ヒトカゲ、“かえんほうしゃ”! ミュウ、“はどうだん”!」

 

マサカズの指示で、ポケモンたちが応戦する。

だが、多勢に無勢。押し返すには限界があった。

──その時、一体のスピアーがリーフに向かって急降下し襲い掛かってくる。

 

「リーフ!」

 

マサカズがサムライから借りた刀を構え、スピアーを叩き落とす。

 

「マサカズ!!」

「俺が殿になる。逃げろ、リーフ!」

 

その様子を見ていたリーフは、覚悟を決めて立ち止まる。

 

「私は、あなたに助けられた。だから、今度は私があなたを助ける!」

 

リーフはフシギダネを繰り出し、“ねむりごな”で多数のスピアーを眠らせる。

ミュウ、ピカチュウ、ヒトカゲ、フシギダネの連携で、残りのスピアーたちも徐々に後退していく。──だが、上空ばかり気にしていたため地上に目がいってなかったのである。

 

近寄ってきたビードルの一体がリーフに“どくばり”を放とうとしてきたのである。──しかしその瞬間、トランセルが身を挺して“たいあたり”しリーフを守った。

 

「トランセル……!」

 

(これだ……!)

 

マサカズは奇策を思いつく。

 

「リーフ! トランセルに全力で“いとをはかせてくれ!”」

「っ……分かった! トランセル、“いとをはく”!」

「ミュウ、“サイコキネシス”でトランセルのいとを操るんだ!」

『わかりました!』

 

ミュウが“サイコキネシス”でトランセルを持ち上げ、空中を移動させながら糸を操ると、巨大なネットが完成し、地上のビードルたちを包み込み捕縛に成功する。

 

「やったな、リーフ!」

「うん……トランセル!」

 

──その瞬間、トランセルの体が再び光に包まれる。

 

「進化……!」

 

羽が広がり、色違いのバタフリーが姿を現す。

ピンクがかった体に、緑色の瞳――美しく、力強い姿だった。

 

「……どうやら勝負は拙者の負けでござるな」

 

その様子を見ていたサムライは、静かに言った。

 

──スピアーの巣からの脱出劇を終えた翌朝。

 

マサカズとリーフは、トキワの森の出口で別れの挨拶を交わしていた。

 

「色々と世話になったな、サムライ」

 

マサカズが礼を述べると、サムライは兜を正しながら頷いた。

 

「拙者も、主らとの出会いで学ぶことが多かったでござる。拙者もキャタピーをバタフリーへ進化させるまで、この森で修行を続ける所存」

 

リーフは笑顔で手を差し出す。

 

「今度会ったら、また勝負しようね。もちろん、バタフリー同士で!」

「その時は、拙者も負けぬよう精進しておくでござる!」

 

三人は笑い合い、別れを告げる。

ニビシティへと向かう道すがら、リーフの色違いバタフリーが空を舞い、ミュウがその後を追うように跳ねていた。

 

「……トランセルの時より、ずっと自由そうだな」

「うん。あの子、飛ぶのが嬉しくて仕方ないみたい」

 

マサカズは静かに頷いた。

 

「仲間は、こうして成長していくんだな」

 

そして、ニビシティの門が見えてくる。

街の空気は森とは違い、石造りの建物が並び、ジムの存在感が街の中心にどっしりと構えていた。

 

「ポケモンセンターで一泊して、明日と明後日ぐらいでジム挑戦の予約を入れよう」

「うん。私ももうクタクタ。一休みしてから、バタフリーとフシギダネで挑戦してみたい」

 

──翌日。

 

マサカズはジムの受付に立ち、挑戦を申し込む。

受付が笑顔で案内すると、岩壁に囲まれたバトルフィールドへと通される。

 

「挑戦者、マサカズさんですね。ジムリーダー・タケシが対戦を受けます」

 

タケシが現れる──その落ち着いた瞳と、鍛えられた体はマサカズの知る姿そのものであった。

彼がはじめに出したポケモンは、イシツブテであった。

 

「岩タイプの洗礼、受けてもらうぞ!」

 

マサカズは静かにモンスターボールを構える。

 

「ヒトカゲ、行くぞ」

 

マサカズにとって、初のジム戦が始まろうとしていた。




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