アタシは
もちろん、アイドルになろうと思ったのは有名になれば男と会える機会があるかと期待したというところもやっぱりある。結果は会うどころか、見かけることもなかったけど。
だけど今のアイドル人生もそれなりに充実しているので別に不満はない。
でも、ある日アイドル仲間が出会い系アプリをやっているのを見た。ちょっとどんな調子かを聞いてみたら「詐欺ばっかりで男とは話せない感じかな」っていう答えだった。まぁ、そんな簡単に男と会えたら皆やってるしね。
それでもやっぱり気になっちゃうもの。
アタシは今日のライブを終えて、帰りのタクシーの中で友達が入れていた出会い系アプリをインストールしてみることにした。そのまんまプロフィールの登録と前に撮った自撮り写真をアップロードして、男の人らしき人たちのプロフィールを見ていくことにした。
「どれも怪しいな。こんないかにもAIで作ったみたいな写真ばっかり」
業者が男を騙って大金をだまし取ろうとしている。正直ここに登録するぐらいに男を求めている人が騙されない保障は何一つない。それにいくらお金を払っても男と会えるんだったら払うだろうし。
アタシだってもし全財産を払って男と一日デートを出来るんだったら、喜んで差し出せる。でもそんな良い話はもちろん転がっているわけがない。転がっているとしたらほぼ100%の確率で詐欺なのだ。
どうせ詐欺ばっかりなんだったら付き合うのも面倒だし、しばらく放置してみることにした。
家に帰ってシャワーを浴びて、再度アプリを立ち上げてみると何人かの男らしき人たちから『いいね』が来ていた。
「どれもこれも似たものだし…」
一応、全員確認していくと…あるプロフィールの写真が目に留まった。
その写真に顔は映っていないけど、少しだけ足が映っていてその足は女性の足ではなく、男性の足のように見える。これがAIで作った写真の可能性も全然ある。でも、なぜか写真の相手とやり取りをしてみたいという気持ちが湧きあがって来る。
メッセージを送るのも数回であればまだ無料だし、一回ぐらい送ってみようかな。当たり障りのないメッセージを考えて送ってみた。
『よろしくね!!アタシはカエデだよ☆たくさんお話しようね☆』
それからしばらく見ていたけど、返信が来る気配がないのでアプリから一旦出ることにした。
その日は結局、動画サイトで好きな配信者を見たり、明日からのスケジュールを確認していたら自然と寝落ちをしていた。
目を覚まして今日のスケジュールを確認した後に、出会い系アプリからのお知らせで『新着メッセージが来ています』というものがあったので確認してみることにした。
『返信が遅くなってごめんなさい☆僕もカエデさんとたくさんお話したいです☆なので、これからもどうかお願いします☆』
なんか私のメッセージを真似てみたのかなぁ。詐欺の相手だったらもうちょっと上手い返しをしてくる気もするけど、最近は素人さを出すためにこんな感じの返信もするのかも。
一応、会話が続いた以上はこちらも返信する。
『返信ありがとね☆ユウさんって面白いね!』
返信がくるまでの間にアタシ相手に来ている仕事の連絡に返信していく。今日は午後から仕事が入っているので集合場所の確認をして、寝間着から着替える。
どうやら相手は起きているようで返信が来たようで通知がなった。
『そんなに面白い人間ではないと思いますよ。でも、カエデさんからそんな風に言ってもらえると嬉しいです!』
なんか…顔も見えないけど、純粋そうな相手。
これで相手が女で詐欺目的だった時が最悪だし、この辺りでしっかりと相手が男なのか確かめる必要がある。
これからする質問はかなり失礼だから相手が男だったら気分を害してメッセージでのやり取りが終わる可能性もあるけど、それでも確かめなければいけない。これからもやり取りを継続していく上で。
アタシは覚悟を決めてお願いをしてみることにした。
『ユウくんって褒めてくれるからカエデ嬉しい☆ それでユウくんって写真送れたら服のまんまでいいからお願いできないかな?できたら顔も映っているとありがたい☆』
自分で送っておいてこんなことを思うのはあれだけど、これでちゃんと写真を送ってくれるような男だとちょっと心配になる。この世界はあわよくば男を襲おうとする女ばっかりだ。そしてそれを知っているからこそ、男は女に近付こうとは思わない。
ここで写真を送ってくれるということは危機管理能力がかなり低いし、女を信頼し過ぎている気がする。
それから少しして…写真が送られてきた。『これでどうですかね』というメッセージと共に。
「…か、かわいいし…男だ」
その写真は正真正銘男だった。
ちょっと可愛いらしい顔立ちだけど、服の隙間から見える肌は男性だ。それにこの写真はアタシがお願いしてくれたから撮ってくれたわけだし、実質アタシのためだけにユウくんが撮ってくれた写真というわけだ。
「そ、そんなの…まじで興奮する!」
相手は正真正銘男だった。この出会い系アプリにも本物の男がいるということだ。たぶん、アタシはかなり運がいい方だとは思う。昨日のアイドル仲間の言葉を考えれば普通は詐欺ばっかりのところ。どうやらアタシはその詐欺の波をかき分けて、本物の男という宝に行き着いたわけだよね。
この不慣れな自撮りな感じを含めて…可愛い。
アタシは写真をスマホに保存をして、しばらく眺めているとまだやり取りの途中であったことを思い出した。
急いでアプリを立ち上げて返信しようとしたものの、どういえばいいのか悩んでしまう。変にここからガッツいているように見られると、引かれるかもしれない。ここは淡泊な感じで返信をするのが一番良いはず。
『とっても可愛いですね』
送り終わると、これからのことを考える。ユウくんとどんな風に仲を深めていくかというもの。男とメッセージを送り合えるなんて機会はもうこないと言っても良いかもしれない。このチャンスを見す見す逃すようなことは絶対にできない。
絶対に逃すことなく、手に入れる。
そして最終的にユウくんと会えたら本当に嬉しい。それにユウくんはちょっと世間知らずなところがあるのかもしれない。しっかりとアタシが守ってあげないと。
『ありがとうございます!』
ユウくんからの返信が嬉しくて飛び跳ねてしまった。相手が詐欺の女じゃなくて、男であんな可愛い子だと分かったら興奮しないなんて無理だ。
それから、興奮のし過ぎて鼻血が出てしまったりしてしまったけど、アタシは問題ない。
これからもユウくんと――――