先生の活躍を見たいから頑張ったけど、なんかおもてたんと違う   作:goldMg

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びっくりいきなり大決戦ペロロジラ(市街地戦)

 

『状況の説明を』

 

「突如として巨大な怪獣? が現れました! 市街地を、建物を無視してまっすぐに進み続けています!」

 

『はあ?』

 

「ほ、本当なんです! この揺れはその歩行によって引き起こされているものです!」

 

 意味が分からなかったけど、上から見ればわかるとのことでヴァルキューレのヘリに乗せてもらった。

 

「あれです! あの気味の悪いのが怪獣です!」

 

『一体何が…………っ!?』

 

 そこにいたのは、確かに気味の悪い怪獣だった。

 

 白い卵型の身体が揺れ動く度、三指の足跡が残される。

 嘴の先から垂れた舌の大きさは10m以上あろうか。ぼたぼたと溢れた涎が後方に続いている。

 頭のてっぺんには黄色いトサカが雄々しく生え、カラダの真横には飛行に向いていなさそうな翼。

 そして、どこを見ているかわからない眼がギョロリと一対。

 

 大人気モモフレンズのマスコットキャラクターに酷似した巨大な怪獣の正体は──

 

『ペロロジラじゃねーか!!!』

 

「ペロロジラ!? あの怪獣の名前はそう呼ぶんですね!? あんな未知のモンスターの名前まで知っているなんて…………これがミニオントレーサー!」

 

 なぜこのタイミングで出現するのか、まるで意味が分からない。いや、ペロロジラそのものに意味がないのは間違いないけど……まあいいや。

 えーと、特殊装甲か。

 

『神秘属性の武器を──』

 

 そこで思い出した。

 神秘を操れる武器は極端に少ない。

 この前だって、モブちゃんと二人でやっとの思いで見つけたくらいだ。

 特性上、拳銃でも問題なく戦えるはずだけど──

 

「攻撃、来ます! 捕まってください!」

 

『……?』

 

 放たれたビームを見て違和感を感じた。

 その正体を分析する。

 

『────神秘攻撃か!』

 

「神秘というと……あの抜け駆けメスギツネがプレゼントしてもらったなどとほざいていた拳銃のことですか?」

 

『え? え? なんて?』

 

「ああいえ、夜長さんが()()()()贈呈してくださったあの拳銃が、神秘を帯びているという話でしたよね?」

 

『…………そうですね』

 

「どうすればよろしいですか?」

 

『うーん……まず、アイツの攻撃は神秘を帯びています』

 

「……すみません、敬語はヘリの音で声が聞こえづらいのでもっと軽い口調でお願いします」

 

 確かにそうかもしれない。

 もう少し声を張ろう。

 ……敬語が聞こえづらい? 

 

「いえ、そんなこと言ってません。時短のためです」

 

『……分かった。まず、アイツの攻撃は神秘を帯びている。だから特殊な装甲──例えば水着・浴衣・和服なんかを着ている子はダメージを受けやすい可能性がある。気をつけてくれ』

 

「戦場で水着や浴衣を……? …………いえ、わかりました! そのまま伝達します!」

 

『あと、あいつによく効くのは神秘の武器だ』

 

「それは……ほ、他の武器では倒せませんか? その……」

 

『分かってる。大丈夫、通常火器でも倒せはするから』

 

「ほっ……」

 

『でも、見ての通り体力が多い敵だ。時間がかかるのは間違いない』

 

「そ、れは……街への被害が拡大するのでは……」

 

『そう考えても良い』

 

「…………な、何か方法はありませんか?」

 

『……』

 

 増やせるものはなんだ? 

 

 ──武器。

 いいや、今からかき集めるのは現実的じゃない。

 マーケットに協力を仰ぐなんてのも論外。

 連邦生徒会長がいればそんなやり口もできたはずだけど。

 

 ──人員。

 ヴァルキューレの総員をこれに対処させるってのは、あまりにも穴が大きすぎる。

 計画的なものじゃない──と信じたい──とはいえ、アレに人員を回した結果として他の場所でアホが何かしないとも限らない。

 いや……俺はキヴォトスを! D.U.の治安を信じる! 絶対に何か起きる! なんならもう起きてる! 

 

 ──質。

 尾刃はイケる。

 他は……ミレニアムゥ? 

 エンジニア部とヴェリタス? 

 あの不健康不良児どもぉ? 

 CCならともかくさぁ……え〜? 

 いや、待て。アビドスは…………俺じゃダメだ! 親愛度が1もない! 

 最高戦力に至ってはキレさせた! 

 

「夜長さん?」

 

『…………』

 

 手札が足りない。

 まさか怪獣と遭遇するなんて思わなかった。

 しかも、こうしている間にもビルを……この音は? 

 

「別のヘリです! あれは──」

 

『ご覧ください! D.U.地区に突如として現れた巨大な怪生物です! 車を踏みつけ、アスファルトを踏み砕きながら進んでいます。ビルすらものともせずに……一体、何が目的なのでしょうか!』

 

 映像がビルのテレビに映し出された。

 あの下乳丸出しの服は! 

 

『こちらはクロノス報道部です!! 未だに何の対処もされていない怪獣を前にして、我々はどのように動けばよいのでしょうか!』

 

 見え……見え……くそ! プロがよ! 

 つーかなんの対処もされてないとか言うな。

 俺も仕事してないみたいだろ。

 そもそも、ヴァルキューレに関してはもう動いてるらしいからな。

 

『あっ! 足元で何かが動いています! ズームを! …………ヴァルキューレ警察学校の公安局所属の生徒たちのようですが、火力不足のようです! 撃った弾は巨大な体に弾き返されているように見えます!』

 

「え……あれで倒せるんですか?」

 

 もちろん、それじゃ無理だろう。

 ギミック的に倒せない……はず。

 

『どこかに、あれに似たチビっこいやつはいないか?』

 

 確か、名前は……ペロロミニオン? 

 

「聞いてみます! ────? ────! ──!? ────いるそうです!」

 

『それをぶっ飛ばせ!』

 

 質は数で補える筈だ。

 しかし、どうも事情が違ったらしい。

 暫く待つと焦った顔で報告が。

 

「数が多すぎて対処しきれないそうです! 今は局長の指示で局員も避難に回していると!」

 

『くそが!』

 

「っ!?」

 

『かなりまずいぞ!』

 

「えっと……」

 

『…………そうだ! 先生を呼ぶんだ!』

 

「先生? ですが先生は今、ミレニアムサイエンススクールに行っているという話で……」

 

『それでもだ!』

 

 でも、先生だけじゃダメだ。

 神秘で範囲攻撃が可能な……今、誰と知り合ってるんだ!? 

 

「大丈夫ですか?」

 

『大丈夫じゃない! ……いや、なんで俺!?』

 

「へっ!?」

 

 よく考えたらおかしいぞ!? 

 なんで俺がペロロジラの総力戦に呼ばれてるんだ! 

 普通に最初から先生を呼ぶのが筋じゃないのか! 

 モブちゃん運用はしてきたけど、ネームドはほぼ0だぞ! 

 少なくとも、近くにいそうな奴らだと尾刃とか各務とか……どちらかといえば後方型の奴らなら多少はあるけど……あとはパトロールの関係で宇沢と守月ぐらいか? 

 そうだ、あの二人なら──ここにいるわけがない! 

 まあここにいないのは仕方ないけど、守月……お前に至ってはチュートリアルの時(あの時)どこいたんだよ! 

 

『あーもう……宇沢ー! 俺だー! ユウジだー! 助けてくれー!』

 

 ヒーローは現れず、叫びは虚空に消えていった。

 

「ま、まさか打つ手がないとか……」

 

『はあ……ない事はない。だけど間をもたせないとな』

 

 まずは連絡だ。

 先生に連絡か……あー……

 

『はーい。いきなりどうし──』

 

『当たり前じゃねえからな!?』

 

『わあっ!?』

 

『なあ! 当たり前じゃねえからな!? この状況!』

 

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!』

 

『何で俺が呼び出されてんだ! なんでいきなり総力戦なんだよ! 俺だって何すりゃ良いかわかんねーよ! なんのシステムだコレ!』

 

『バイクはちゃんと弁償します! お金払います! ごめんなさい! 本当にごめんなさい! もうやりません!』

 

『テレビ見てねーのか!? シッテムの箱で情報収集してねーのか!?』

 

『い、今ちょっとアロnんんっシッテムの箱が調子悪くて……て、テレビ……ミドリ、これでニュース見て良い? ────な、なにこれ!?』

 

 本当にこの状況を知らなかったらしい。

 アロナちゃん? 

 キミ、まさかお昼寝してた? 

 ちょうど3時だもんね! 

 

『これなに!? これ……なにこれ!?』

 

『ペロロジラだ!』

 

『へ? ペロロ……って……ヒフミの好きな? あ、ヒフミっていうのはトリニティ総合学園の子で──』

 

『そのペロロだ!』

 

『……が、何!?』

 

『街を襲ってるんだよ!』

 

『!』

 

『先生! あんたの助けがいるんだ!』

 

『──分かった!』

 

『小鳥遊ホシノ──いや、アビドス全員を連れてきてくれ!』

 

『……分かってると思うけど、私ミレニアムにいるんだよ! ホシノ達呼びに行ったらヘリでも時間かかる! 街、なくなっちゃわない!?』

 

『いいから連れてこい! アリスもレールガン持ってたら一緒に! ……あ、やっぱアリスはいいや! なし! …………いいか! 大人のカードも無しだ!』

 

『え、なんでそれ……ちょ、ちょっと待っ──』

 

 ペロロミニオンは際限なく数を増やしている。

 ペロロジラが通ったところから現れて、獣人やロボット市民、建物を襲っていた。

 ビル上からでもそれがわかる。

 

「切ってしまって良かったんですか?」

 

『時間がない。下に降りる』

 

「……まさか、あの小さいのと戦うつもりですか?」

 

『装備はある』

 

 ヴァルキューレがどうだとしても、俺はちゃんと備えている。ブラックマーケットを探せば何だって出てくるもんだ。

 ヘリ飛ばしてる間に一旦事務所に戻して、オートで装備積んでもらった。

 多分、そろそろ戻ってきてくれるはずだ。

 時速300kmで飛ばしてるからな。

 それに……ただ撃つだけの脳筋と思われては困る。

 

 

 ──────

 

 

「──え?」

 

 信じられないものを見た。

 当たり前じゃねえからな!? って言われて、ニュースを見て、アビドス廃校対策委員会のみんなと再会して……それで、アヤネにヘリの操縦を任せて情報収集をしていた。

 ニュースを流しているのは例の如くクロノス報道部。

 

 そして今、画面に映し出されているのは──

 

『もう一体の怪獣が道を駆け抜けていきます! 最初に現れたのとは別の……しかし、どうやら怪獣同士は仲間ではないようですね! 最初の怪獣が2体目を追いかけています! ──あ! 2体目の怪獣が最初の怪獣の周りを遊泳しています! まるで挑発しているようです! ……攻撃しました! 爆発、爆発です! 一体目の顔周りが爆煙に包まれて見えません! …………2体目が煙の中から飛び出してきました! 後ろ向きに空中を浮遊しながら攻撃を続けています! ですが、最初の攻撃以外は下にいる小さいのを攻撃しているような……?』

 

「……どうなってるの?」

 

 ペロロジラ? の襲撃に対処するために何故かアビドスを呼んで来いって言われたけど──と言うか素直に従っちゃったけど、D.U.はさらに混乱に包まれているようだった。

 2体目の怪獣──強そうなドラゴンみたいなのが現れて、追いかけっこを始めたんだ。

 

「うへ〜、おじさん達この子らと戦うの? 無茶言うよね〜……」

 

「ねえ先生。これって、そもそも私たちがつく前に街メチャクチャじゃない?」

 

 セリカの言う通りだ。

 1体だけならともかく、2体も現れたらもうどうしようもない。

 ユウジに連絡した方がいい。

 だけど、さっきから連絡が繋がらなかった。

 

「先生、もちろん協力はしますけど……私たちがこの2体をどうにかできるとは思えません」

 

「……ノノミ、違う」

 

「シロコちゃん?」

 

「ここ、見て」

 

 シロコが指さしたのは画面の一点。

 2体目の怪獣のいる場所の地表付近だ。

 私には何もないように見えた。

 

「……これって!?」

 

 だけどノノミは何か見つけたらしい。

 同時に、クロノス放送部もソコに何かを見出したのかズームする。

 映し出されたのは一台のバイクだった。

 

『あれは……バイクでしょうか? バイクが怪獣から逃げています! 運転手はロボットですが……武器を構えて撃ちました! 小型を撃ち続けているようです! ……まさか、2体目の怪獣と協力しているのでしょうか!?』

 

 これって……

 

「ん、ユウジ」

 

「……あれ? 確かあの人って変なバイク持ってたわよね。なんだっけ……ライ…………」

 

「ライディングデュエル。きっと、2体目の怪獣は本物じゃなくてソリッドビジョンを展開してるんだと思う。それでペロロジラを誘導してるんじゃないかな」

 

「シロコ先輩、なんでそんなに詳しいの!?」

 

「教えてもらった」

 

 まさか、シロコもライディングデュエルに興味が!? 

 じゃあ今度、一緒にバイク借りて──私が壊したんだった……やばい、シロコにも怒られる……ただでさえアヤネがちょっと冷たかったのに……

 

「まさかシロコちゃんもカードゲーム興味あるの? おじさんにはちょっと難しそうだけど、若い子なら出来るのかなあ」

 

「ううん。教えてもらったのはカードゲームじゃなくて、ソリッドビジョンの方」

 

「そりっどびじょん?」

 

「前、ユウジとサンダースがニュースに出てた時はカードが空中に浮いてたでしょ、アレだよ」

 

「そ、そーだったっけ? あはは、おじさん歳だからよく覚えてないや……」

 

「そうだね。ちゃんとゲームをやる時は、カードに描かれたモンスターを立体映像として出すんだって」

 

 そうだね……? 

 

「そうだね……?」

 

「そうだね……?」

 

「シロコ先輩。今、そうだねって……」

 

「シロコ……ちゃん……?」

 

 シロコは全くもって飄々としていた。

 何なら、優しげな笑みを浮かべてすらいたような……

 

「歳なら仕方ないから。それで、立体映像を使って──」

 

「ま、待って……シロコちゃん……おじ──私は……」

 

「うん、大丈夫。歳なんだよね」

 

「「うぐううううう!」」

 

 なんでか分からないけど私にもダメージがああああ! 

 

「ちょっと! なんで先生までダメージ食らってるのよ! 2人ともしっかりして! ……ホシノ先輩!」

 

「セリカちゃん……おじさんはここまでみたい……がくっ」

 

「もう! ……先生!」

 

「あうあー^q^」

 

「赤ちゃんみたいになってる!?」

 

 あう? あうあうあ! だー! 

 

「アヤネ、急いだ方がいいかも。ユウジが焦ってるように見える」

 

「はい!」

 

 

 ──────

 

 

 気合を込めて──! 

 

『俺のターン、ドロー!』

 

(ガシャン)

 

 これが最後のマガジンだ。

 残念ながら、全てを解決するディスティニードローとはいかなかったけど問題ない。

 この銃の撃った弾はなんであれ爆発を引き起こすけど神秘を帯びてるっていう、なかなかお目にかかれない武器でもある。

 バイクに弾を詰め込めるだけ詰め込んでもらったから、撃つに連れて軽くなって速度も出せるようになった。

 

『体感かなり削ったけどなあ……』

 

 輝いてるミニオンを優先して狙ったから、誘爆でかなりのペロロミニオンを削れている。それすなわち、本体もダメージが入っているはずだ。

 

 だけど俺もバイクの神秘は剥がされた。

 とんでもなく追尾してくるビームで避けれんかったわ。

 倒すまでは豆腐バイク。ぶつかったらボンッ! 

 アシストAIも完全に沈黙してる。

 ……撃ちながら当たらないように操縦するの、普通にむずいねん! 

 

 さらにエグいのが、ミニオンの数が制限されてないこと。街のあちこちにペロロミニオンがいて、進行方向からもやってくる。

 ビジョンを狙ってくれる分には構わないけど、俺を狙ってくるとどうしても対処しないといけない。ダメージが本体にいくとはいえ、輝いてるやつとも限らないから厄介だ。

 

 しかも、倒さないと逃げ遅れた市民を襲いかねない。

 つっても俺が全部倒せるわけないから、尾刃にも輝いてるやつを集中攻撃しろって伝えてある。

 火力が足りません、なんて言われても知らん! 何とかするのがお前達の仕事だ! 

 

 ──気づいたら、ペロロジラのターゲッティングが取れていなかった。こちらについて来ずに空を見上げている。

 

『やっべ!』

 

 まさか屋上に取り残されたやつが──電話? 

 

『──お待たせ!』

 

 ヘリがビルの影から現れた。

 なんとまあカッコいい登場の仕方だこと。

 

『ちょうど弾切れだ』

 

 燃料は保っただろうけど、逃げに徹するしかなくなるところだった。

 

『ふう……あとは任せていい?』

 

『いやいやいやいや! なんかアドバイスとかないの?!』

 

『え? そうだな……ちゃんと後ろに下がって、全体攻撃がどんな感じかとか観察すればやれると思う』

 

『心構えみたいなのじゃなくて、もっと具体的なの!』

 

 アロナも付いてるんだし、弱点とか見つけられるっしょ。

 俺だって初見は訳わからなかったんだから、分からないなりに頑張れ。

 それに、アロナもさっきまで昼寝してたんだから元気だろ? 

 なんか後ろがうるさいけど。

 

『私が話すから! ──ん、どいて。セリカは言葉が強いからダメ──ユウジ、知ってるんだったらあいつの攻略ルート教えて』

 

 シロコか……事件解決した後、ソリッドビジョンのこと知りたいとか言って自転車で会いに来たんだよな。

 ビビったよマジで。

 会社バレしてんだもん。

 たまたま俺しかいなかったからよかったけど……あの時は本当に冷や汗かいた。

 

『私は生徒だからいいでしょ』

 

『俺は先生じゃないんだけどな……いやいいよ。そんな早く知りたいなら教えるよ』

 

『うん』

 

『…………先生は?』

 

『スピーカーにしてあるから大丈夫』

 

『……とりあえず、親鳥は狙っても意味ない。雛鳥を潰してけ。もっと言うと光ってるやつが一番いい』

 

『分かった。他には?』

 

『ビームは喰らうなってホシノに言ってくれ。喰らうと皮膚が柔らかくなる。盾で防いでもダメだ、遮蔽に完全に隠れないと喰らっちまう』

 

『ん、それで?』

 

『中継で見てたかもしれないけど、ミニオンを倒してくとペロロジラが一時的に動けなくなるタイミングが来る。そこで一気に畳み掛けろ』

 

『ん』

 

『後は……痛いのもあるだろうけどそこらへんは耐えてくれ。ほんじゃあ任せた』

 

 携帯をしまって、あとはのんびりと観察──といきたかったけど残念ながらそういうわけにもいかない。

 バイクの弱体が解けた。

 つまり、装甲バイクに戻ったというわけだ。

 

 街にはペロロミニオンがあちこちにいる。

 いずれ全て消えるとしても、今すぐに消すべきだ。

 

『──と、思ったんだけど……なんだありゃ』

 

 バイクで轢きまくっていたら変なのがいた。

 紙袋を被ったやつがペロロミニオンを縄で縛って引っ張っている。近くにあるバンに入れようとしているようだ。

 

「早く……早く持って帰らないと……倒されちゃう前に、見つかる前に、ペロロ様……ハア……ハア……」

 

『…………! …………!』

 

 ペロロミニオンは必死の表情で逃げようとしている。

 狂気というものは怪獣をも怯えさせるのか。

 

「言う事っ……聞いてっ……くださいっ…………!」

 

 とりあえず見なかったことにした。

 

 

 ──────

 

 

『──では、あの大怪獣を倒した部隊を率いた方に聞いてみましょう! 連邦生徒会 独立連邦捜査部シャーレの顧問、伊坂コハネ先生でーす!』

 

『あ、あはは……どもー……』

 

『コハネ先生! 怪獣を見事消滅させ、D.U.を壊滅の危機から救い出してくださいましたが──』

 

 テレビのスイッチが切られた。

 なんでなん。

 せっかくアーマーも脱いで、ソファーでのんびり出来ると思ってたのに。

 PMCにはテレビを見る資格もないって? 

 応接スペースなのに。

 テレビだってその為に設置されてるだろうに。

 

「──なんですか、あれは」

 

 テレビを消した犯人は腰に手を当てていた。

 口をへの字に曲げ、眉も逆ハの字。

 私は不機嫌ですと主張が激しい。

 可愛い顔立ちが台無しだワン。

 

「私は見たことも聞いたこともありませんでした。データベースにもありません。ではなぜ、アナタはあのペロロジラとかいう怪獣を知っていたんですか?」

 

 若干、取調べみたいな雰囲気が漂ってるのは気のせいだろう。俺が話す時は大抵こんなもんだ。

 

「重要参考人として話を聞いてるんです」

 

「客じゃないんかい」

 

 お疲れ〜つって帰ろうとしたら局員ちゃん達がミルクコーヒー飲みます? って聞いてくれたから飲むよ〜ってついてきただけなんだけど。

 アテクシ疲れてるの。

 午前中、病人の看護してきたから。

 

「それは看護師の仕事です!」

 

「そんな正論かまされても……」

 

「いいから答えてください。今後のためにも」

 

「……アレは伝説のペロロ様だ」

 

「ふざけないでください!」

 

「本当なのに……」

 

「一億歩譲って、伝説のペロロ様だとします」

 

 譲りすぎだろ。

 

「ペロロ様とは……ええと、モモフレンズ? というブランドの不人気マスコットキャラだそうではないですか! それが何故、動き出して街を襲うんですか!」

 

「俺が知ってるわけないじゃん、そんなの……」

 

「では……何故、戦い方を知っていたのですか」

 

 瞳が揺れている。

 迷いがある証拠だ。

 おおかた、俺が仕組んだんじゃないかって話が出たんだろう。

 

「……名前は……出してません」

 

「そりゃありがたい。まあ、アレだ。戦い方を知ってたのは外の世界でも同じようなことがあったからだよ」

 

「外の世界で……それは本当なんですね?」

 

「マジマジ」

 

 外側の更にもう一個外側の話だけどな。

 嘘発見器使われてもブレないぜ、これ。

 というか、マッチポンプしようとしたと思われてたってこと? 

 あんな露骨に? 

 

「よかった…………」

 

 掠れそうな声が聞こえたかと思うと、俺の両肩に手を載せてしゃがみ込んでしまった。

 つられて前屈みになる。

 さらに微かな声が聞こえた。

 

「あなたが犯人だったらどうしようかと……」

 

「ミルクコーヒー飲む?」

 

「……いただきます…………って飲み差しではないですか!」

 

 こんな至近距離で投げないでえ! 

 顔面がミルクコーヒーまみれに! 

 服がああ! 

 おい、どこいくねん! 

 ……副局長! おもしれーって顔で見てんじゃねえぞ! 

 

「おもしれー」

 

 口に出すな! 

 

「真面目な話、あの覆面なんちゃら団に功績ぜーんぶ持ってかれちゃったけどいーんすか?」

 

「あーね、うちが求めてんのはお金だよ。付随するものはむしろ余分だからありがたい」

 

「でも、もっと有名になった方が依頼の金額も高くなるんじゃないすか?」

 

「いーの。身の丈にあってるから」

 

 というか、それを言うなら公安局も似たようなものだ。

 

「うちはほら、お金儲けが目的じゃないっすから。名声も……プレッシャーが高くなるだけで何の得もないっすよね」

 

「じゃあ、俺もその理由を採用〜」

 

「ウケる」

 

「ところで……」

 

「はい」

 

「タオルくれない?」

 

「タオル……これでいいすか」

 

「そうそうコレ! ──いや雑巾じゃねえか!」

 

「じゃあこれなら?」

 

「おっ! マイクロファイバーがよく水を吸ってくれるな! ──これモップ!」

 

 嫌がらせやめろ! 

 

 

 ──────

 

 

 何はともあれ、総力戦は制圧された。

 アビドスのおかげだ。

 戦闘力極振り集団がいると本当に助かる。

 欠点は砂漠に住んでることだけだから、全員うちに就職しないか? 

 

 街への被害は相当だろうし、ヴァルキューレの忙しさも見ててエグい。

 さっきから固定電話鳴りやんでないし。

 あーいう時のためのSRTのはずなのになあ。

 俺も道路整理だけが良かった。

 まあいっか。

 あー大変そう。

 こっから街の復旧に向けて急ピッチで作業員雇うんだろうな……ヴァルキューレの管轄ですらないけど。

 

 帰ろっか。

 

「──見つけた! 見つけたよ! みんな! 見つけた!」

 

 なんか騒いでる奴がいるけど気のせいだろう。

 

「4号! 私に全部押し付けたすっとこどっこいを捕まえて!」

 

「ん、確保──わ」

 

 なんか腕を掴まれている気がするけど気のせいだろう。

 いたとしても女子1人……片腕で持ち上げてやる! 

 

「わ……わ……おもしろい」

 

『…………まだ覆面被ってたのか』

 

「顔バレ、なし」

 

『いいことだ』

 

 実際効果ある。

 俺も君たちに顔バレしてないからね。

 

「ほら! 1号と3号も動いて! アイツを早くヘリに詰めて!」

 

「あらほら」

 

「さっさ〜☆」

 

『ぬわー!』

 

 なんとも覆面水着団らしい。

 用意周到で卑劣な誘拐の手際で、あっという間にヘリの中に押し込まれた。

 しかし待って欲しい。

 俺は控えめに言って重量タイプだ。

 バイクを抜きにしても。

 だから──

 

「先生! 重量オーバーでヘリが飛びません!」

 

 こうなるよね。

 というわけで、俺はバイクで付いて行ってあげることにした。監視としてシロコ(2号)と2ケツだ。

 2号で良かった。

 これが他の3人の誰かだったら気まずすぎる。

 特にホシノ(1号)セリカ(4号)

 

「ソリッドビジョンは?」

 

 そんなワクワクした声で聞かれても、今使うわけにはいきません。目立つし、覆面水着団の正体がバレるからな。

 

「それは困る。じゃあアビドスでお願い」

 

『アビドスまで行かにゃならんのか!?』

 

「?」

 

『?』

 

「ユウジは私たちを呼び付けたのに、ユウジはアビドスに来てくれないの?」

 

『ぐっ……』

 

 この狼……レスバが強い! 

 

「──よーし! ここまで来れば、もう大丈夫だね!」

 

 連れて来られたのはアビドスの端っこ。

 砂漠に飲み込まれてはいないけど、ペロロジラ関連で追っかけてくるやつもいない。

 ヘリが目立つけど、アビドスの子達か……ってな感じにみんな素知らぬ雰囲気だ。

 普段からパトロールしてるんだもんな。

 

「ちょっと、なんで街見て頷いてるの」

 

『良い街だなって』

 

「何の話……」

 

『ところで俺を拉致した理由とは』

 

「色々あるよ! あと拉致はしてない!」

 

『色々ってのは?』

 

「あのペロロ様の正体もそうだし……アリスのことも! …………あとカードも……」

 

『え? ペロロジラのはゲマトリアに会ったんじゃないの? もしかして会ってないのか?』

 

「だーかーら! それも何で知ってるのって!」

 

 俺との通話を終えてヘリで屋上に降りたった直後、現れたらしい。崇高でも神秘でもない記号がうんたらの人ね。

 言葉遊びは好きじゃないけど、雰囲気は好きだよ。

 

『会ってるんじゃん。だったらそこで聞いたことが全部だよ』

 

「そうじゃなくて……!」

 

 ほら、対策委員会が困ってるじゃん。

 いきなり先生が発狂し出すからだよ! もー! 

 

「ユウジはあの首ナシと仲間なの?」

 

『一度も会ったことないし本物を見たこともないな。ただ、大怪獣が現れる時は物知りなゲマトリアが現れるって話を聞いたことがあった』

 

「ふーん……だってさ」

 

 シロコの素直なところは美徳だと思う。

 

 アリスのことは各務から聞いたってことにした。

 あとで口裏合わせてもらおう。

 白石でもいいけど、微妙に天然入ってるからな……

 

 大人のカードはクレカだと思ってる体にした。

 

「むぅ……」

 

 先生は俺の言い訳を不審そうにしながらも信じるしかない。

 気持ちはわかるけど、証拠不十分ってやつだ。

 それにしても、わざわざこんなところまで連れて来なくてもモモトークでよかったのになあ。

 

「モモトークで聞いても答えないでしょ!」

 

『うん』

 

 電子記録残したくないマン象。

 アナログが最強だ。

 

「でも……大変だったけど、みんなを守れてよかったね!」

 

『そうだな』

 

 良かったついでに、今度から俺じゃなくて真っ先に先生に連絡が行くように手配しとこう。

 尾刃によーく言っておかないと。

 俺みたいな場末の傭兵を使うんじゃなくて、シャーレに全部押し付けろって。

 七神リンは遠すぎて無理。

 

 …………いやアロナ仕事してよお! 

 

「ソリッドビジョン……使える……!」

 

 いきなり夜の中天にかっこいいモンスターが! 

 シロコ、あなた機械を使うのが上手いフレンズなのね! 

 空気を読まないフレンズでもある。

 

「これ、やっぱり欲しい」

 

 前も言ったけど、エンジニア部に頼めば再現してくれると思うけどなあ。

 結構高かったのは間違いない。

 アビドスの貧乏財布で買えるだろうか。

 

「銀行強盗で補充すれば問題ない、はず」

 

「ちょっとシロコ先輩! まだ強盗諦めてなかったの!?」

 

「シミュレーションはバッチリ。そこにソリッドビジョンを組み込めばさらに完璧。もう誰も私を止められない」

 

「私が止めるから!」

 

 ミステリオシロコの誕生を手伝ってしまったかもしれない。

 

『まちなさーい!』

 

『捕まえられるものなら──』

 

『私も混ぜてえー! ……うっ!? あ、足が攣った……!』

 

 バイクにもたれて、対策委員会と先生が楽しそうに追いかけっこをしているのを見るのに徹した。

 会社戻っても誰もいないし、あとは帰るしかないからなあ。

 ……俺も夕焼け空を背景に女の子と駆けっこしてえ〜。

 

『足の親指がああ!』

 

 ──昨日、ゲーム開発部はおそらくG.Bibleを手に入れているはずだ。その解析も依頼済みの筈。じゃあ……もう、何が起きるかわかるよね? 

 そして、俺が何をするかも。

 




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