先生の活躍を見たいから頑張ったけど、なんかおもてたんと違う 作:goldMg
窓から除くお日様の光。
どこにいても変わらない。
どんな場所でも同じように……とはいかないけど、そこに必ずある。
ちょうど良い気温で、いつまでも眠っていられる気分だけど……任された仕事はちゃんとやらないと。
すごく寝やすい布団だった。
私が使っているベッドよりもずっと……布団のはずなのに……さすが高級旅館!
畳んで、隅っこに寄せて。
朝ごはんはビュッフェ形式だから寝巻きのままうつらうつら食べていたら、街の方から爆発音がして一気に目が覚めた。
慌てて食べ終わって駆けつけると魑魅一座が。
だけど今日は私一人だけ。
どうしようか考えて──
「ははは! 朝早くだから先生もいないな!」
「お祭り運営委員会もな! こっちもイズナ殿はいないけど……誰もいなけりゃ関係ない! やっちまうぞ! ──うっ!?」
(ドサッ)
「…………え? ……お、おい、どうした!?」
「待て! こいつ…………死んでる……!?」
殺してない。
ちょっと頭を叩いて気絶させただけ。
それでも──私にもできることがある。
「うっ!!」
(バタン)
「ぐあっ!?」
「なんだ!? 何が起こって…………ま、まさかイズナのやつが言ってた雷電忍者か!?」
あの名前は可愛くないけど、イズナちゃんのつけてくれた名前がそれだって言うなら……そう振る舞うだけ。
「ニン、ニン……」
「ひっ!? ……た、退却! 退却ぅぅう!」
半分くらいハッタリだけど、なんとか退却させることができた。
「あー怖かった……あ」
透明マントを脱いで座っていたら道の向こうからコハネちゃんが走ってくるのが見えた。昨夜のうちに作っておいた布袋を被ると、なんだかよく分からない顔で近付いてくる。
困ってるようにも見えるような……?
「ウツツの会社の人って……みんな特徴的だよね」
『確かに』
「……あの二人だけじゃないよ?」
私の会社の従業員は3人で……サンダースさんとユウジさんの二人を除いたら──
『私?!』
「そうだね」
『納得いかないよ……』
あの二人と並べられるのはすごく不満がある。
確かに今は、目出しの頭巾をかぶってて不審者っぽい見た目かもしれないけど……それでも、あの二人と一緒にされるほどではない。
「あの……この方が?」
そういえば、見知らぬ顔が3人。
──ミモリ
──カエデ
──ツバキ
修行部っていうところに所属している子達だった。
みんなイズナちゃんとは少し違うけど、やっぱり和服様式の学生服に身を包んでいる。
派手に、可憐に、美しく、を心情にしているらしい。
「よろしくねウツツさん! 先生から話は聞いてるよ!」
『よろしく! カエデちゃん達は、コハネちゃんとどうやって知り合ったの?』
昨日は百花繚乱──が不在で頼れないから、陰陽部を頼ろうと言う話だったはず。良いとかダメとかじゃなくて、修行部とはどういうわけで?
「それはですね──」
陰陽部は諸事情? で手が空いてなくて、同じく魑魅一座に困っていた修行部を紹介されたらしい。
それなら納得がいく。
でも、そうすると今度は困ったことが一つ。
人が増えすぎて、魑魅一座も警戒しちゃうんじゃないかな。
「実はね? 昨日すでに出会してて、イズナちゃんともまた戦ったんだ」
「3倍になってた?」
「あー……うん、準備はしてたかな」
どうやら、問題なく対応することができたみたい。
完全にコハネちゃんのことを敵だと認めていたようだけど……今日は花火の日だ。
それまでにイズナちゃんも含めて魑魅一座をなんとかしないと。
「そうだね。シズコやフィーナ、ウミカ達の大切なお祭り……絶対に成功させないとね!」
──あ、そういえば。
「え? 私たちがすれ違ったって……ごめん、どこだろう。パトロールしてる時にだったら怪しそうな人は覚えて──うん、覚えてるはず」
なんで私の顔をじっと見つめたのか少しだけ気になったけど、覚えてないのも無理はない。
「あの忍者の子を匿って隠れてた時に名前を聞いた……なるほどね!」
ところで、私は全くなんだけど、みんなは今回の件について解決の目処は立っているのかな。ユウジさんの意見は置いといて。
──噂として、誰か雇い主がいて魑魅一座を統率するようになった。つまり昨日、魑魅一座と戦った時にポロッと言ってたご要望通りにっていうのは、そういうことなのかな?
「イズナも雇い主からの依頼って何度も繰り返してたし、そういうことなんだと思う。もちろん確証はないけどね」
それなら、次に出交わした時に聞こう。
イズナちゃんならきっと答えてくれるはず。
「ところでウツツちゃん、本当に私たちのこと手伝ってくれるの?」
旅かに社長からの業務命令として、お祭りを楽しんでこい! みたいなことは言われてたけど、何も全部が全部街を見て回って観光してばっかりの必要もない。それに、なんだかんだで昨日も付き合えたのは半日だけだし、今日は最後まで一緒にいる所存です!
「そういうことなら、頼もうかな!」
『まっかせて!』
というわけで、パトロールに繰り出した。
昨夜も、アジトを突き止めるためにパトロールをしたけど網に引っ掛からなかったらしい。それなら、朝、私が戦っていた子達に聞いてみるべきだったのかも……でも、それ以上のことは思いつかなかった。
『こんな時は……ごめんね、ちょっと電話するから先に行ってて欲しいな!』
「分かった!」
全員で一緒にいたけど、修行部は迷子を見つけたりして修行開始! って飛び出しちゃった。シズコちゃんも花火のことで呼び出されて、流石にクライマックスに関わることは放って置けないということで離脱。
フィーナちゃんも不良達をやっつけに行っちゃった。
残されたのは私とコハネちゃんだけだった。
道の直線──視界から外れないように見つつ、電話をする。
『うぃ、どうした?』
「あの……ご相談が……」
どうやったらアジトを見つけ出せるか。
この人なら手法にも間違いなく詳しい。
そういう仕事をいくつも受けてきたから。
私は紙面上、文面上、口頭でしか知らないけど。
『──そうか。そういうタイミングか』
「え?」
『ああ、こっちの話。それでアジトね……先生は一緒にいるのか?』
「はい。電話するからちょっとだけ離れてますけど……あ、イズナちゃんだ」
コソコソと物陰から物陰へ移っているようだけど、逆に目立っていた。コハネちゃんから話しかけている。
『イズナか……』
「もしかして知ってるんですか?!」
『うんにゃ、実際に見たことはない。それよりも、透明マントは持ってるな?』
「はい」
『もう被っておいてくれ』
「なんでですか?」
『はあ……まずは被れって。そしたら──』
──────
『理由も教えてくれないんだから……もう……』
私はなぜか、コハネちゃんとイズナちゃんの二人をこっそりとつけ回していた。モモトークにはすでに、ちょっと野暮用ができたから先に行ってて欲しいと送ってある。
なんでこんなスパイみたいなことをしているか。
全部、ユウジさんがやれって言いました。
透明になって先生を尾けろって。私はユウジさんみたいに女の子を追いかけ回すような変態じゃないのに……聞いちゃった手前やらないわけにもいかないし、これなら相談しない方が良かったかも。
それにしても二人は楽しそうだ。
昨日、3人で最初にお祭りを回った時みたいに美味しいものを食べている。
いいな、いいな、わたしも一緒に食べたいな。
アドバイスなんか聞かなきゃ一緒に食べられたかな。
だけど、意外と真面目なトーンのアドバイスだったから……やらないわけにもいかない。
そうしたら、一座が現れてコハネちゃんを連れ去ってしまった。イズナちゃんがいなくなった直後、まるで狙ったみたいに。
『…………』
こっそりと付いていくと、途中でイズナちゃんも陰から追っているのが分かった。透明な状態で話しかけるわけにもいかないから、二人で別々にコハネちゃんを追ったけど……向かった先は町外れの廃屋。
「先生をこんなところに連れてきたということは……きっとあそこに……!」
イズナちゃんは天井裏に登った。
わたしはそこまで身軽じゃないし、一度見失ったらきっと見つけ出せない。
さっきまでと同じで歩いてついて行くことにした……んだけど、建物が古い。
一座が歩く時はキィキィ鳴るし、コハネちゃんが歩くとギィギィ鳴るし、私のときは慎重に進まないとギシギシ鳴る。
これはわたしが重いんじゃなくて、持ってるものとか身長とかそういうののせい!
──慣れない歩き方と、普段使わないマントの使用。踏んづけてお尻から床に。
(メギメギィィ!)
「なんだ!?」
「今、すごい音がしたぞ!」
「あそこ見ろ! 穴だ! 2つ……なんだ?」
(バキバキ、ギシギシ)
「うわあ!? 何かがいるぞ!」
(ギシギシ)
「幽霊か!?」
「──もしかして幽霊があそこから這い上がってきたんじゃないか!? その時にケツが引っかかったんだ!」
「デカケツの幽霊!」
「デカケツゴーストだ!」
「早く行くぞ!」
『…………』
(ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ)
「ひぃぃい! お、追いかけてくる!」
「くそ! 先生なんか誘拐するからこんなことになってるんだ!」
「建物が古いからだろ! 怨念だ! 早く引き渡して外に出るぞ!」
建物の奥で待ち受けていたのは──
「また会えて嬉しいよ、先生」
「……商店街の会長の、ニャン天丸?」
衝撃的すぎて言葉も出なかった。
だって、本当にそうだとは思わない。
当てずっぽうの言葉が当たるとこんな気分になるんだ。
「ふん、ワシの本当の名は──」
「そんなことどうでも良い! もうそいつ連れてきたからいいよな!?」
「なんだお主ら、いきなり……」
「出たんだよ!」
「出た? ネズミか? それともゴキブリか?」
「幽霊が!」
「何を馬鹿なことを言っとるんだ」
「本当だって! デカケツの幽霊がいたんだ! 私たちみんなソイツに追いかけられて急いで来たんだ!」
「では出してみろ。どこにいる? そのデカケツの幽霊とやらは。…………何もいないではないか」
「い、いや! 確かにいたんだって! ギシギシって!」
「……儂がこんなことを言うのもなんだが、うら若き乙女が何を言っているのかね?」
「はあ!? 意味わかんねーよ!」
「まあいい……先生よ。儂の真の名はニャテ・マサムニェ。路地裏の独眼竜とは儂のことよ」
突然、ニャテ・マサムニェの目が光る。
「この片目しかない老耄の前であれば小賢しい真似をできる隙があると思ったか? だがそうはいかん。これは預からせてもらうぞ」
「あ……」
コハネちゃんのスマホを没収して余裕綽々のマサムニェが、桜花祭を邪魔する理由。それは……
「お金?」
子供──学生が運営のお金を握っているのが気に入らないと、そう語った。邪魔をして、シズコちゃん達をお祭り運営委員会から追放して、そして彼自身が実権を握る。
それこそが、邪魔をした目的だった。
それに……イズナちゃんのことも。
全てはお遊びだった。
言葉で弄して、良いように働かせて、忍者になるっていう夢も馬鹿にして……魑魅一座と一緒に、笑い物にした。
だから、コハネちゃんがそうであるように、わたしも──
「一つ言わせてもらうけど、忍者っていうのは──」
『チェストォォォォォォオオオ!!』
(メキメキメキィィイ!)
「ぐあああああああああっあああああ!?」
「──こうやって! カッコよく人を救うものなんだよ!」
「うぐっ…………な、なにが……床が抜けたのか!? なんだ、何が乗っている! 重くて動けん……!」
『重いってなんですか! えいっ!』
(メギィィ!)
「腰が! 腰が! ぐっ……魑魅一座! 何をぼーっと見ておる! 現れたのはこいつ一人! やってしまえ! でなければ報酬も──」
(メキメキバキィ!)
「なっ……今度はなんだ!」
「わ、わかんないっす! 突然天井が崩れてきて!」
黒く影を纏い、塵埃の中から現れた者。
「──真の主君の窮地を救う為! 偉大な先達に恥じない後輩である為! 今、ここに参りました!」
「イズナ! なぜ天井に!?」
「すべてを聞きました……すべてを見ました……あなたの目的、私が真にお支えするべきお方の姿、真の忍者の勇姿!」
「貴様、裏切るつもりか!」
今のうちに先生の前に……
「先生──いいえ、主殿! これよりイズナは、すべてを真の主君たる主殿に捧げ、主殿のために戦います!」
『私も戦うよ〜』
「はいっ! 誰よりも陰に潜み、窮地とみるや危険を顧みずに飛び込む姿! 真の忍者たるや何者かと学ばせていただきました! あなたはやはり、ハイパー忍者 ジャガーノート様と同じく伝説の忍者の一族だったのですね!」
『なにそれ?!』
「明かせぬ事とは分かってます! ですので──せめて、背中をお預けください!」
『よ、よくわからないけど……援護は任せて! ニンニン!』
「いざっ!」
──────
「う、ぐぅっ!」
『多すぎるよー!』
クラスターグレネード。
焼夷爆弾。
閃光爆弾。
臭気爆弾。
ペイント爆弾。
色々貰ってたのに、もうない!
「……ふ、ふざけんな! こっちのセリフだ! どんだけ持ってきてんだよ!」
「鼻がメチャクチャだ! 服も汚くなっちゃったよ!」
あまりにも数が多かった。
コハネちゃんの指示のおかげで何とかもたせているけど、イズナちゃんも限界だ。
街で暴れていた魑魅一座も全部こっちに来させたらしいから、まだまだ敵の数は尽きない。
「忍者と主人ごっこはもう終わりにして、諦めたらどうだ? これまでの働きもあるからな、今なら許してやろう!」
「イズナは……イズナは……! イズナの夢を信じてくれた人達の為に──二人の為に戦うだけです! それこそが、イズナの忍道だから!」
「ふん……では、悪役らしく言わせてもらおう! やってしまえ! 魑魅一座!」
押し寄せる弾幕。
イズナちゃんも倒れ込んだから、二人を庇っているけど背中がすごく痛くてすごい。
もう切り札を切るしかないと胸元を探ったその時、気配を感じた。
「──忍者たち! よく頑張った! あとは私たちに任せて!」
『この声は……!』
お祭り運営委員会、修行部が助けに来てくれた。
どうやらコハネちゃんも誘拐される事は予想していたみたいで、あらかじめモモトークを送っていたらしい。
「私は漫画のやられ役じゃないからね! 捕まる前に送っといた!」
「生意気な……イズナがおぬしを見つけ、魑魅一座に攫われるところまで全て読んでいたということか!」
でも、場所まではわからない。
どうやって特定したのか。
「だって、街の人に怪しい人がいなかったか聞いたら会長と魑魅一座が商店街の裏路地を通って廃墟に入っていくのを見たって言ってたから……」
なんともお粗末な話だった。それこそ、前々から同じように出入りをしていたに決まってる。
最初から街の人に聞くのが早かったってことだよね。
「でも……今日、ちゃんと聞き込みをするまではまさか会長がそうだなんて思ってもいませんでしたから」
「ぐっ……ええい! 仕方あるまい! こんな時のために用意しておいたものを見せてやろう!」
続々と集まる魑魅一座。
私たちを取り囲むように並んでいる子達は相当な数だ。
本当に全員を集めたのかもしれない。
でも──
「こっちには先生がいるから! それに……そういうしょうもないことをする奴らは負けるって決まってるのよ!」
「大人しくオナワになるデス!」
そこからはグシャグシャ〜って……みんな、すごい強かった。
コハネちゃんの指示のおかげもあるんだろうけど、あっという間に制圧した。
「くそ……くそっ! ワシが数年かけて築き上げた計画をこうも雑に……だが、認めん! 決して認めんぞ、わしの使い得る資金をすべて使ったこの計画が、こんな程度で終わると思うな!」
「ま、まさか……まだ来るの!?」
無傷じゃない。
無消耗じゃない。
いつかは力尽きる。
私とイズナちゃんは正直、すでに結構疲れてる。
だから、この調子で延々と増援が来たら──
「あ、実はその件なんだけど……実は元々来るはずだった子たちがほとんどやっぱりパスって……」
「お祭り楽しもう! ってなったらしいんすよ。だから、もうこれ以上はほとんど来ないっす」
それは、なんとも呆気ない幕切れだった。
シズコちゃんの、腰の入ったとても良いパンチだった。
でもそれで終わりじゃない。
魑魅一座の中には依頼うんうぬんじゃなくてただ暴れたい子もいた。
修行部のみんなはその子たちを捕まえに行って──
「イズナ!」
『イズナちゃん! こっちこっち!』
展望台の人混みの中でもイズナちゃんは簡単に見つけられた。華やかな雰囲気が、そこに一輪だけ咲いていたから。
「あっ! せんせ……主殿! ウツツ殿!」
「おぐっ!」
「イズナは、見晴らしのいい場所を見つけておきましたので! あちら──あっ!? も、もう塞がれて……ああっ! どんどん人でいっぱいに!? もうさっきの場所に戻れません!」
どこにいても変わらないから、今いる場所が一番いい。
イズナちゃんとコハネちゃんを前に立たせて、ちょっとだけ身長の高い私が後ろ。
「あ、始まりました!」
話には聞いていた、ミレニアムの技術を用いた空中投影による花火の再現。
音も、その光景も、本物となんら遜色ない。
それどころか、普通じゃ見られないような花火まで現れてみんな大興奮だった。
思い思いにスマホを取り出して写真を撮ったり、動画に映したりしている。
私も、後で2人に見せるために撮っていた。
「……あ、あの…………」
「なあに?」
「お祭りの最中……イズナ、色々とご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」
「ええ? 全然迷惑じゃなかったよ?」
「で、でも……」
「誰かに味方する以上は、敵対したくなくても敵対する時だってある。忍者なら尚更ね? それに……お祭り、一緒に楽しんだでしょ?」
「…………」
「あれくらいならバッチこいだよ! むしろ、もっと忍者としての力を見たいな!」
「イズナは……イズナは……」
「それじゃあ……忍者から見てどうだった? ウツツちゃん」
『うん! 忍者採点はぁ〜……100点でした! ニンニン! 忍者にくら〜い顔は似合わないから! もっと明るく笑お?』
「──!」
花火を背負って、イズナちゃんは口を開いた。
「イズナ、決めました!」
「うん」
「イズナは、これから先生……主殿に忠誠を誓います! 応援してくれた主殿の為にも修行を頑張りますので、これからもよろしくお願いしますね!」
「そ、そっか……」
「ニンニン! えへへっ……いつか、必ずウツツ殿やハイパー忍者ジャガーノート様にも負けない忍者になってみせます!」
『少なくとも私よりはよっぽど忍者になってると思うけど……頑張ってね!』
──────
「──というわけでした!」
「そうか…………楽しかったか?」
「はい!」
「それは良かった」
「本当に、なんで来なかったんですか? 楽しかったんですよ? 一緒ならもっと楽しめたのに……」
「…………」
「昔、何かあったんですか?」
「さあな」
「もう……」
「……あ、そういえば俺の名前とか出してないよな?」
「はい……だって言われてたし……」
「流石うちの事務員だ!」
なんでそんなに喜ぶのかな。
もしかして、昔悪いことしたの?
「ところで、ハイパー忍者ジャガーノートって聞いたことありますか?」
「…………え?」
「イズナちゃんが言ってたんですけど、調べても出てこなくて……」
「わからないデス」
即答だった。
やっぱり知らないかあ。
インターネットで調べても何も出てこないし、今度またイズナちゃんに聞いてみようかな。
でも、今はひとまず──
「本当に報告書作らなきゃダメですかあ……?」
「会社のお金で行ったんだから、わがまま言うな」
「はあい……サンダースさんはいつ戻ってくるんですか?」
いつまでもいないと、書類が溜まってく一方で安心して眠れないよ。
(バゴォン!)
「ひゃあっ!」
待ってましたと言わんばかりに、入り口が勢いよく開かれた。扉の蝶番が吹き飛んで、私たちの方に突っ込んできている。
ユウジさんが受け止めてくれなきゃ、怪我していたかもしれない。
『──待たせたな!』
「サンダースさん!?」
『いやあ、あの馬鹿どもと格闘すること一ヶ月弱……やっと自由の身になったぜ!』
以前のボディーに比べて綺麗になった。
やっぱり新しくしたからかな。
でも、ペイントが少し派手な気がする。
『これはヴェリタスの嬢ちゃんだな。まあ、消せばいいんだ! それよりも……味覚ユニットがついたぞ!』
「おー!」
(ぱちぱちぱち)
「ご飯食べられるってことですか?」
『そうだ! 見たかユウジ! ……おい!』
見ていなかった。
テレビを見ていた。
『てめえこっち見ろや!』
「…………」
『あ? 何見て──』
真剣な表情でテレビを見つめている視線の先。
パグ獣人のニュースキャスターが話している。
『──エデン条約の調印が正式になされるという声明。立ち消えになったと思われていたソレがまさか再び結ばれようとは……いかがお考えですか?』
「──五つ目の、古則」
そう、ポツリと呟いた。