黒見セリカ(憑依)は原作エアプ   作:ミカン

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第26話 黒見セリカ(憑依)と夕日に向かって(まだ昼)

 

『…封鎖地点の突破を確認。お疲れ様でした。この先は安全地帯です』

 

銀行から逃げて暫く、アヤネの封鎖地点突破の連絡を聞いた俺たちはようやく足を止めることができた。皆軽く肩で息をしていた。先生は両手を膝についている、どうやら喋ることすらキツいようだ。

 

"ふう…ふう…"

 

「やってやりましたね!強盗成功です!…先生、大丈夫ですか?これ水です」

 

"あ、ありがとう。大丈夫だけど、少し休ませて…"

 

『本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて…ふう…』

 

「それにしてもセリカちゃ~ん!笑わせないでよ~!急にクアトロフォルマッジなんて言うから笑っちゃったじゃ~ん!」

 

「すいませんホシノ先輩。なんとなくノリで言いたくなっちゃって…」

 

「だからってクアトロフォルマッジはないよ~!」

 

『あはは…そういえばシロコ先輩、集金記録は持って来ましたか?』

 

「う、うん…バッグの中に」

 

そういうとシロコ先輩はバッグを開ける。中には集金記録と…大量の現金があった。

 

「…へ!?なんじゃこりゃ!?シロコちゃん、現金盗んじゃったの!?」

 

「ち、違う…銀行の人が勘違いして勝手に…」

 

「おお、現金がこんなに…あ、書類はこれですね」

 

なんとなくお金を数える。合計で…大体1億円くらいあるだろうか。

 

「大体1億くらいありますね…」

 

「うへ、ホントに5分で1億稼いじゃったよ~」

 

「どうしますかこれ?とりあえず運びます?」

 

『ちょ、ちょっと待ってセリカちゃん!そのお金使うつもりなの!?』

 

「えっ、いや使わない!使わないけどこのままほっとく訳にはいかないじゃん!」

 

『そう?ならいいんだけど…どうしますかこれ?』

 

「このお金燃やして焼き芋でもする?それか札束風呂とか…」

 

「札束風呂するには少し少ないんじゃな~い?」

 

「じゃあやっぱり焼き芋するしか…あ!ピザ窯作ってピザ焼きますか!?1億円ピザ!」

 

「フフッ、ちょっと~!何度も思い出させないでよ~!」

 

「…あの、使うって選択肢はないんですか?犯罪者の資金ですし、燃やしたりするくらいなら私たちが正しい使い方をした方がいいと思います」

 

そうして1億円の処理について話し合っていると、ノノミ先輩から質問が飛んできた。まあノノミ先輩が言うことも一理ある。このままここに置いておいても誰かに持っていかれるし持っていくのは高確率で悪人だ。燃やしたり処分したりするくらいなら自分達で使った方がいいと思うのも当然だろう。だが…

 

「私的には使うのも吝かではないんですが…それはホシノ先輩が許さないんじゃないですか?」

 

「ん、私もそう思う。そうだよね、ホシノ先輩?」

 

「そうだね…私たちに必要なのは書類だけでお金じゃない。今回は悪人の犯罪資金だからいいとして、次はどうする?その次は?」

 

「まあ、十中八九また銀行強盗しよう!ってなりますよね。最初は仕方ないよねって思いながら。最終的には罪悪感も何もなく平気で」

 

俺も結構緊張してた賞金稼ぎも人への発砲もいつの間にか慣れていたし人の慣れは恐ろしいものだ。きっとそういうことを繰り返せば最終的には表の銀行すら平気で襲うようになってしまうだろう。

 

「セリカちゃんの言う通り。私としては、可愛い後輩がそうなっちゃうのは嫌だな~。こんな方法を使うくらいならノノミちゃんのゴールドカードだって使ってたし、セリカちゃんのカイザー襲撃も止めてないはずだよ」

 

「私もそう提案しましたが、ホシノ先輩が反対されて…」

 

「私もしょっちゅう阻止されてますからね」

 

「先輩の気持ち、わかります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう…そういうことですね?」

 

「うへ、そういうこと。だからこのお金は使わないよ。これは委員長としての命令」

 

「ん、委員長の命令なら」

 

「私は皆さんの事情をよく知りませんが…このお金を持っていると、何かのトラブルに巻き込まれるかもしれません」

 

「闇銀行から盗まれた金なんて横取りしてくださいって言ってるようなものですしね~やっぱ焼き芋かピザの燃料にしますか?」

 

「いや~流石に燃やすのはちょっと…というかセリカちゃんもしかしてお腹空いたの?さっきたい焼き10個くらい食べてなかった?」

 

「なんか銀行強盗したらお腹空いちゃって…」

 

「太るよ?」

 

「食べた以上に動いてるので大丈夫です!」

 

そうして暫く騒いでいると、アヤネから通信が入ってきた。

 

『待ってください!何者かがそちらに接近しています!』

 

その通信が入った瞬間、俺は目出し帽を被り直す。そのまま銃をスリングから下ろすと同時にセーフティーを外した。

 

「追手のマーケットガード!?」

 

「アヤネ、場所と数はわかる?」

 

『…いえ、敵意はない様子です。調べますね』

 

どうやら敵襲ではないようだ。俺は銃を肩にかけ直し、先生に話しかける。

 

「先生、もし戦闘になった時のために隠れておいて下さい」

 

"うん、わかった"

 

俺は先生を近場の木の陰まで移動させ、皆の元に戻る。そのままアヤネから通信が入るのを待った。

 

『…あれは便利屋のアルさん!?』

 

どうやらアルさんが追ってきていたようだ。少し待っていると曲がり角からアルさんが出てきた。息を切らしてるあたり、走って追いかけてきたみたいだ。シロコ先輩が目出し帽を被り銃を構える。それを見てアルさんは両手を突き出して敵意がないことを示して話し始めた。

 

「ま、待って!私は敵じゃないわ!」

 

…あ、便利屋の人達も来てる。

 

(どうする?撃退する?)

 

(戦う気のない相手を叩くのはちょっとねぇ)

 

(お知り合いですか?)

 

(ちょっとね~)

 

先輩達とヒフミさんがこそこそ話をしていると、アルさんがまた口を開いた。

 

「銀行の襲撃、見せて貰ったわ。ブラックマーケットの銀行をものの5分で攻略して見事に撤収…希にみるアウトローぶりだったわ」

 

銀行強盗にアウトローは関係あるのだろうか…?そんなことを考えていると突然アルさんがこっちを向いて話しかけてきた。

 

「特にあなた!」

 

「えっ私!?」

 

ヤバいなんかやらかしたか!?

 

「そう!あなたよ!あのマーケットガードにも全く臆せずに脅しをかけ、銃すら踏み砕き喧嘩を売るその姿!まさしく法律や規則に縛られずに自分を貫き通す本当の意味での自由な魂!そんなアウトローに私もなりたいから!良ければ名前を教えてくれないかしら!」

 

…どうやらあの脅しがアルさんの琴線に触れたらしい。

 

「チーム名でも個人の名前でもどちらでもいいわ!私が今日の勇姿を心に深く刻んでおけるように!」

 

(うへ…なんだか盛大に勘違いされてない?)

 

(う~ん、これ名乗ってもいいんですかね?)

 

「…はいっ!おっしゃることはよーくわかりましたっ!私達は…人呼んで覆面水着団!」

 

俺とホシノ先輩が返答に悩んでいると、ノノミ先輩が唐突に名乗りだした。どうやら名乗る方針で行くみたいだ。

 

「覆面水着団…!?超クール!カッコ良すぎるわ!」

 

(どっちかと言うとゆるふわ系な気がするんですけど)

 

(まあいいんじゃな~い?)

 

「普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の怪盗に変身するんです!そして私はクリスティーナだお♧」

 

あっ俺も名乗りたい!

 

「そして我はクアトロフォルマッジだ!」

 

「だお♧…それに我…!?キャラも立ってる!?」

 

「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に孤高に、我が道のごとく魔境を行く。これが私らのモットーだよ!」

 

「な、なんですってー!」

 

そうしてアルさんに名乗っていると、後ろからシロコ先輩が俺達に耳打ちしてきた。

 

(そろそろ撤退しよう。長居するとマーケットガードに見つかるかもしれない)

 

そう言うとノノミ先輩が少し頷くのが見えた。

 

「それじゃあこの辺で。アディオ~ス☆」

 

「行こう!夕日に向かって!」

 

その言葉と同時に皆が走りだす。俺は遠巻きに見ていた他の三人にも軽く手を振り、皆の後を追った。

 

「夕日、まだですけど…」

 

ヒフミのその言葉は誰にも届かず消えていった。

 


 

「…あれ?現金のバッグ、持ってきましたか?」

 

「え?…あっ、すいません!バッグ置いてきちゃいました!」

 

「うへ~いいんじゃないかな?どうせ燃やすか捨てるかするつもりだったんだし」

 

「うん、誰かに拾われると思う。」

 

「困ってる人が拾ってくれるといいですね☆」

 

「あはは…良いことしたって思いましょう。困ってる人が、あのお金で困り事を解決できると思えば…」




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