・本作品は原作小説「ハイスクールDxD」1~25巻及び「真ハイスクールDxD」1~4巻の内容を基に構成しております。ネタバレを気にされる方は十分にご注意ください。
・本作品は原作小説のエロ要素を限りなく薄めシリアス要素が多めとなっております。残虐的表現、鬱要素等が含まれておりますので苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。
廊下は6限の授業がちょうど終わったようで、人でごった返している。
これは通るのには難儀しそうだ。そう思っているとお嬢様は何を思ったのか堂々とその群衆の中に向かって突っ込んでいく。
廊下の端を歩くでもなく、ど真ん中をだ。
流石に無理があるだろうと思ったが、学生たちはお嬢様の存在に気が付くと次々に端へと寄って道を譲り始めた。
空いた道をお嬢様は進んでいく。頭は下げたりしない。声をかけもしない。さも当然の権利のように進むのだ。
俺はそれを見てそういえばこういう人だったと今更のように思い出す。
追いかけながら俺は前を歩くお嬢様の背中をジッと見た。
威風堂々とした態度。背中からでもそんな自信に満ちた雰囲気が感じられる。
正面から見ればもっとすごいだろう。なぜならあふれる雰囲気に美貌も加わるのだから。それときたら他の学生たちがお嬢様を見て颯爽と道を開けるぐらいだ。
好奇の視線にさらされながら、それでも泰然としながら悠々と廊下を歩く。
そして、視線を浴びるのは何もお嬢様だけではない。その後ろを歩く俺も当然のように見られる。お嬢様の少し後ろを歩く俺は大変目立っていた。ある意味お嬢様よりも。
俺は果たしてどうみられているのだろうか。
男性からは勘違いでなければ羨望も混じっているような気がする。数日前まで俺のそう思う人たちの1人に過ぎなかったというのに。随分と世界は変わってしまったものだ。懐かしむように思う。
お嬢様とこうしてお近づきになれたことは周りからすれば非常に幸運に見えたりするのだろうか。
目の前を往く女性の本性を知った今となっては代わってくれるのであれば喜んで代わってやるところだ。
そんな悲痛な思いを伝えることは叶わず、俺たちは校門へとついた。
校門の前には1台のリムジンカーが止まっていた。
まさか、あれはお嬢様のものか。
内心驚いていると、お嬢様はよどみなくリムジンカーへ向かう。リムジンカーのそばには執事と思わしき男性が控えており、お嬢様が近づくとドアを開けた。
慣れた様子で車内へと入る。俺は唖然として見ていることしかできなかったが、ボケっとしている俺にお嬢様は何をしているのと目で訴えてきた。
俺は我に返ると車内へと入った。俺が中に入ったことを確認すると執事はドアを閉めて運転席に乗り込むと発進させた。
「広い……」
広々とした車内、フカフカの椅子、空調が程よく効いていて3重の意味で快適だ。
感心していた俺は、しばらくお嬢様の視線に気づかなかった。
ようやくその視線に気づいた俺が見たのは、上京してきた田舎者同然の俺をせせら笑うお嬢様だった。
「初めて見たのでついはしゃいでしまいました。大変失礼を」
「遠慮することはないわ、どうぞ堪能して頂戴」
嫌味たっぷりな言葉に俺は苦い笑みを浮かべる。
「いえ、もう充分です」
「そう、それは残念」
それにしても、とお嬢様は言葉を続ける。
「意外に可愛らしいところもあるのね」
「HAHAHA、どうか一時の過ちと思って忘れていただきたい」
「それは無理。車内にカメラつけてあるから」
ああ、この野郎。未来永劫に渡っていじるつもりだ。
意外なところで弱みを見せてしまい歯噛みするが、間違っても悟られることのないよう無表情で構える。
「そんなことより、今から合うビショップってどんな人なんですか?」
人というか悪魔だが言葉の綾である。無理くりな話題転換だが幸いにもお嬢様は応じた。
「どんな? そうね……なんて言えばいいのかしら。私が眷属にしたわけではないからあまり詳しくは知らないのよね。押し付けられただけだし。ああ、そうだ初めに言っておくと転生悪魔の男よ」
「じゃあ、俺と同じか」
「そういうこと。案外馬が合うんじゃない」
俺と同じ境遇であると知り俄然興味が湧いてくる。果たしてどんな奴だろうかあるのが楽しみだ。
「そろそろつくわよ」
車だけあって着くのが早い。
俺は何気なく窓の向こうを見て度肝を抜かれた。
「あれが、そうなんですか?」
「そうだけど……。それがどうかしたの?」
「いえ、なんでもありません」
眼前に広がるのは視界に収まりきらないほどの豪邸だ。
俺の背丈を超えるほどの壁と隔たれており、壁の向こうには広大な庭。その奥にようやく屋敷が見えた。
日本にいるはずなのにそこだけまるで外国かのような錯覚すら覚える。
車は屋敷の前に据えられた門まで来ると、いつの間にか開け離れていた扉を通り抜けて建物へとめざして進む。
屋敷のすぐ前で車を止めると執事さんがドアを開けてくれる。俺は一礼してから降りた。
「でっけえ」
見ただけで圧倒されるほどの正しく豪邸と呼ぶにふさわしい建造物。降りた後、いやその前から俺は目の前の光景に釘付けだった。
「ちょっとボケっとしていないでさっさとどいてくれない?」
おっと、屋敷に目を奪われていたせいでお嬢様が車から降りられなかったようだ。
「すみません」
慌ててその場をどく。
「お嬢様ってちゃんとお嬢様なんですね……」
呆然としながら俺はそんなことをつぶやく。
「はぁ?」
あんた何を言っているのと言わんばかりにお嬢様が俺を見た。
「いや、そのままの意味なんですけど……。まあいいです。案内よろしくお願いします」
「……? わかったわ」
いまいち腑に落ちない様子だが、追及はされなかった。
お嬢様に案内されて恐る恐る中へと踏み入る。
中に入るとメイドさん達がいてこちらに向かって頭を深く下げた。
顔を上げてメイドさんたちはどの人もすごく美人さんだ。こんな人たちを従えているとは羨ましい限りだ。
「気にしなくていいわ、ただの使い魔だから」
使い魔? つまり人間でも悪魔でもないということか?
お嬢様は慣れた手つきで荷物をメイドさんに預けた。お嬢様が目で促してくるので俺もメイドさんに荷物を預ける。
「こっちよ」
屋敷の中はだいぶ広い。黒瀬の案内がなければ余裕で迷うだろう。
そして、1つの部屋の前にたどり着く。
お嬢様は何のためらいもなく扉を開ける。
「宗方? 入るわよ」
中に男が1人。デスクに向かってパソコンを操作っていうか思いっきりゲームしているな。
ヘッドフォンをつけて爆音を鳴らしているせいか俺たちが入ってきたことに気付いている様子はない。
お嬢様は男に近づくと、頭をぺしっと叩いた。男はビクッと体を震わせて振り向いた。
「ややっ、これは黒瀬様。どうもお世話になっております」
「そういうのいいから、今は……どうせ暇しているのでしょう。ついてきて仕事よ」
「おや、珍しいですね。んん? そちらの方は?」
「面倒だし先に自己紹介から済ませてしまいましょう。宗方」
その一声に応じて宗方と呼ばれた男性が一歩前に出る。
「初めまして、宗方一颯と言います。期限付きで黒瀬様の食客をやらせてもらってます。どうぞよしなに」
ツンツンの頭に、細目で眼鏡をかけている。服装は甚平とラフな格好だ。見たところ年は一緒ぐらいだろうか。
「どうも、いろいろあってお嬢様の従者をさせてもらっている月深結真と言います。よろしくお願いします」
普通そうな見た目だったので手堅く挨拶を行う。挨拶を終えると宗方さんはお嬢様に視線を向ける。
「従者を雇われるとは聞いておりませんでしたが、何かあったのですか?」
「宗方が気にするようなことではないわ」
言外に立ち入って来るなと拒否の意を示された宗方だが気を悪くした様子もなく話を切り替えた。
「それで、仕事とは月深さんの関することで?」
「察しがよくて助かるわ。そいつ、神器持っているみたいだから軽く手ほどきしてやって頂戴。それと戦い方も少し教えといて」
「それは構いませんが、私神器にそう詳しいわけではありませんよ」
「詳しくなくても構わないわ。それにアンタ相当出来る方でしょう?」
「黒瀬様には叶いませんよ。ふう、仕方ありませんね。どれたまには少しばかり働くとしましょうか」
「じゃあ、あとはよろしく」
「かしこまりました」
宗方が応えるとお嬢様はその場を後にした。
お嬢様が出て言ったことを確認すると宗方が俺を見た。
「さて、それでは早速やるとしますか」
「はあ、ええと。やるのは構わないんですけどここでやるんですか」
今いる部屋はおそらく宗方のために割り当てられた部屋だろう。事実ベッドがあり、デスクにはパソコンがある。
万が一壊してしまっては大変なはず。
「いえいえ、ここではやりませんよ。黒瀬様に貸与されたものも多いですし、壊すわけにはいけませんからね。このお屋敷は地下にまで広がっていましてね。そこの区画を使わせてもらうとしましょう」
地下、そんなところまで施工しているのか。改めてお嬢様はとんでもないことがわかる。
「ふふ、驚かれました?」
「そうですね。まさか黒瀬が本当にお嬢様が思っていなかったので」
「転生悪魔に最近になられてばかりですか?」
どこまで言っていいのかわからないが、お嬢様以外で協力し合えるかもしれない貴重な存在だ。
できれば信用を勝ち取りたいのでここはある程度素直に答えるべきだろう。
「仰る通り最近なったばかりです。お恥ずかしながらあまり悪魔の社会にも詳しくなくて……」
「なるほど。そういうことでしたら仕方ありませんね。歩きながらでよろしければお教えしましょうか」
しめた。まさかこんなところで話を聞けるとは。
「ぜひお願いします」
期せずして勉強会が始まった。