ハイスクールDxD Lane Age   作:楓栞

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31話

 朝。それは学生、社会人の一部ないしは多くのものにとって迎えてほしくない時間帯の1つである。

 そこに更に付け加えるのであれば、悪魔にとっても抗いたがい時間なのだ。

 それが冬の朝となればなおさらである。

 

 悪魔になって早数週間。初めのころよりは大分慣れはしたものの窓から差し込む光は未だ肌を焼き焦がさんと錯覚しそうになるほど強烈に感じる瞬間がある。

 それでも悪魔兼学生である俺には大学に向かわねばならないという使命があり、その使命を実行するためには温い布団から脱出しなければならないというミッションを五分をかけて完遂すると、朝の支度を整える。

 

 階下に降りるとそこにはお嬢様がいて、テーブルに朝ご飯を並べていた。

 父や母もそれを手伝い、ときに談笑しながら流れる時間はなんと微笑ましいことか。

 丁度良く4人そろった俺たちはお嬢様の作った極上の朝ご飯を堪能した。

 

 父は食後のコーヒーを楽しんだ後、出社し、そのあとを追うように俺とお嬢様も母に見送られながら家を出た。

 背後にドアが閉まる音を確認した俺は、

「っておかしいだろ!」

 全力で叫んだ。

 

「我が王よ。失礼ながら早朝から叫ばれるのは遠慮為されたほうが良いかと。所謂近所迷惑となってしまいますので」

「あ、すみません。ってそうじゃないんだよ!」

「王よ、何を取り乱しているのですか。まさか、何か異変でもっ!?」

 

 即座にお嬢様は身構え油断なくあたりを見回している。

 どうにも当の本人が原因であるとわかっていないようだ。

 

 「いや、その、なんでお嬢様がここに?」

「何故、と言われましても私は王のクイーンなのでお傍にいるだけです」

 躊躇いもなく堂々と言われるものだから咄嗟になるほどと頷きかけたが実のところあまり理由になっていないことに寸でで気づいた俺は苦言を呈する。

 「前にも言いましたけど、別にそんなに気を使っていただけなくても大丈夫なので。毎回ご飯作ってもらうのも申し訳ないですし……」

「気を遣うのもお食事を作るのも下僕として当然のことです。我が王がお気に病むことではありません。それともご迷惑でしたでしょうか……」

 

 目を伏せいかにも申し訳なさそうなオーラを醸し出すお嬢様に俺は逆に申し訳なく思うが、しかし、ここで退くわけにはいかない。

 やはり、ここはガツンと言わねばズルズルと今の状況を引きずることになる。

 さあ言うぞ、今度こそ俺は言う。言ってやるんだ。

 息を呑んで口を開いた。

 

「俺は……弱い人間だ、いや、悪魔か」

 お嬢様に用意してもらった快適な車の中、車窓から明日の方を向いて俺は呟く。

 

「はい? 何か仰られました?」

「ああ、いや、なんでも」

 心配そうに尋ねてくるお嬢様にぞんざいに返す。

 

 結局俺は断ることができなかった。キッパリと断りを入れようとしてどっちつかずな言葉となり、最終的にはお嬢様に押し切られてしまった。

 俺ってこんなに押しに弱い人間もとい悪魔だったかなぁと内心首を傾げる。

 

 そんな風に考えていたらいつの間にか大学についていて、また機会もあるだろうとようやく頭を切り替える。

 いつもならここでそれぞれの教室に向かうところなのだが、今日はちょっと違った。

 淀みなく、自身とともに大地を踏みしめるお嬢様の足がピタリと止まる。

 

「お兄様……」

 呆然と呟き一点を見つめるお嬢様。

「お兄様……?」

 

 なんだって? と思い俺もまた同じ方へ視線を向ける。そこには見慣れぬ人物が立っていた。

 オブラートに包んで表現するのなら恰幅の良い男性が、美人の女性に囲まれていた。

 視線の先には男が1人しかいないのだから彼こそがお嬢様の言うお兄様というやつになる。

 

「あちらの方は兄君なのですか?」

「ええ、あちらの方はルイ・クロセル様。大公の実子に当たりまして正式な後継者に当たられます。一応戸籍上では私の兄になります」

「へぇ」

 

 本当にあれが? 自分の目を疑わずにはいられない。

 なるほど、大変羽振りのよさそうな人物ではある。以下にも貴族らしいと言えよう。

 

 だけど、と俺は隣のお嬢様を見る。これが赤の他人のお貴族様なら何とも思わなかっただろうが、毅然としていながら裏では努力を惜しまない姿を知っている黒瀬瑠奈の兄と言われても俺にはとても信じられなかった。

 

 お嬢様の兄、ルイ・クロセルはお嬢様に気付くとこちらに顔を向けた。

「瑠奈か」

「ご機嫌麗しゅう、お兄様」

「フン、まだ生きていたか」

「はい、おかげさまで」

「心にもないことを」

 

 鼻を鳴らすお嬢様の兄。そこには侮蔑の色がありありと浮かんでいた。

「それは?」

 今度は俺に視線を向けた。

 

「こ……ちらは私の、下僕です」

 やや詰まりながらもお嬢様はそう答えた。

 

「眷属か?」

「いえ、ただの小間使いです」

「だろうな、覇気の欠片も感じられん。おい、お前」

「はい」

 呼ばれ、一歩前に出る。

 

「これを私の教室まで運んでおけ」

 ルイ・クロセルが地に置かれた鞄を顎で示す。

 

「お兄様、それは……」

「構いません、お嬢様」

 きっとお嬢様のことだから俺を慮って抗議しようとしてくれたのだろう。

 今後のことを考えるのであれば事を荒立てたくない。穏便に済むのであればこれくらいの雑用は何ということはない。

 

「謹んでお手伝いさせていただきます」

「なかなかどうして躾がなっているな、瑠奈よ」

「はい、ありがとうございます」

 

 若干ではあるが不服そうにしているのが言葉に表れていた。

「おい、お前ら」

 ルイ・クロセルが周りの女性たちに声をかける。

 

「えー、なになに」「どしたー?」「お話終わった?」

「お前らの鞄をそこのやつが運んでくれるらしいぞ」

「ふーん、じゃあ僕ちゃんよろしく~」

 

 女性たちが続々と持っていた手提げ鞄を預けてくる。

 1つ1つは重くないが数が集まればそれなりである。悪魔じゃなかったらとても持ち運べなかっただろう。

 

「ではな、頼むぞ」

 そう言ってルイ・クロセルは女性らを連れてどこかへ行ってしまった。

 授業まであまりないというのに、どこで何をするのやら。

 

「我が王、申し訳ございません」

「謝らないでください、これくらいなんてことありませんよ」

「そのような雑務、我が王がなさることはありません。今から使い魔を呼びますから……」

「待っていたら授業始まっちゃいますよ。俺は大丈夫ですから任せてください」

「ならせめて代わりに……」

「そんなことさせたら本末転倒ですよ」

 

 万が一にでも人目に触れて雑用をするお嬢様が噂になろうものならそれこそ惨事である。

「表向きは俺が下僕で、お嬢様が王様ですよ。じゃあ、また後程」

 強引に言葉を切り荷を運ぶためルイ・クロセルが指定した教室に向かった。

 

 

「ふぅむ、そういえばこれどこに置けばいいんだろうなこれ」

 荷を抱えてようやく教室にたどり着く。

 たどり着いたのはいいんだが、よくよく考えるとどこに置いといたらいいのかまでは聞いてなかった。

 

 そこらの机にでも置いとけばそれで済むだろうか。

 中に入ると、既に授業を受ける生徒で大分埋まっていた。

 余計に困ったことになった。これでは置き場に困ってしまう。

 

 どうしたものかと思っていると、気づく。後方という一番生徒が集まるところにすっぽりと空いているスペースがある。

 まるで誰かがそこを予約しているかのように。多分そういうことなんだろう。

 

「ねえ、ちょっと」

 背後、声をかけられた。振り向くと上級生とみられる女性が立っていた。

 入り口で立ち止まっている俺が邪魔だったんだろう。すぐさま道を開けた。

 

「あ、すみません」

「それ、ルイ様の?」

「え? はい、そうです」

「どうりで……」

「なにか?」

「なんでも。荷物ならそこにおいて」

 

 さっき確認した後方の空いているスペースを指さす。

 やはりルイ・クロセル専用のスペースらしい。

 予約制なんてないのに定位置になっていることから見るに相当な影響力を持っているようだ。

 

「はい、ありがとうございます」

 言われた通り荷を置く。これにて任務完了だ。

「君もそうなの?」

 先ほどの女性に聞かれる。

 

「そう、とは?」

 女性はノートを取り出すとページの端に書き込み始めた。書き終えると俺にそれを見せてきた。

 俺は目を見開く。

 書かれていたのは幾何学模様の紋章。クロセル家の紋章だった。

 

「あなたは一体……」

「その反応から察するに君もそうなんだね」

「じゃあ、あなたも?」

「そうね、その通り」

 

 意外だった。こんなにも身近に悪魔がいたなんて。

「忠告してあげるけどあまりクロセル様には関わらない方がいいわ」

「……随分とはっきり言われるのですね」

「回りくどいのは苦手なの。いい? 私は忠告したから」

 

 まだ聞きたいことがあったのだけれども先輩はそれきり教科書に視線を落としたまま顔を上げなかった。これ以上は関わりたくないという意思表示なのだろう。

 一礼して仕方なく教室を出た。

 

 

 

 放課後。授業を終えた俺は家に帰る、ということはせず大学のとある教室に足を運んでいた。

 ドアを開けて直後。

「それでは第1回、初めての会議を行いたいと思います!」

 

 バンと長机をわざとらしく叩いて國坂がそう言ったのが聞こえた。

 それから教室の中にいた人たちの視線が國坂から俺へと注がれる。

 

「わりっ、遅れた。」

「遅い遅い遅ーい! 遅いよつくみん!」

「だから悪かったって、ちょっと教授に頼まれごとされてさ」

「だったら遅れるっていうチャットぐらい頂戴よ」

 

 頬を膨らませてムスッとする國坂。

 これは宥めるのに時間を喰いそうだと思った矢先、國坂を制する声が割って入った。

 

「やめろ國坂」

 匠である。先んじて集合していた匠は腕を組み半眼で國坂を見る。

 

「でもさぁ……」

「時間は有限なんだ。わざわざ全員集めて意気込むのはわかるがさっさと本題に入ってくれ」

「むぅ、でもでも」

「國坂」

 

 ドスの利いた声に國坂はようやく諦めたようですごすごと元居た位置に戻った。

 匠に感謝のアイコンタクトを送りつつ、ようやく教室の様子を見渡す。

 俺が今いる場所は新館から少し離れた実習棟。

 

 元は手芸サークルだとかが使っていた空き教室のようで、対して部員もいなかったのか用具は机に椅子、それと小物だけは入りそうな棚が配置されているだけのこじんまりとした教室だ。

 

 そこに國坂、匠、それからお嬢様に御供さんと俺を加えて5人。

 たったの5人でありながら随分と狭く感じるものである。

 匠の左隣の席が空いていたのでとりあえずそこに腰を下ろす。

 

 机を挟んで体面には御供さん。俺から見て右斜めにお嬢様。お嬢様の体面が匠で國坂はというと長机の短い辺の部分に位置付けている。

 上から見るとコの字の形で座っているという訳だ。

 

 改めて全員を見て俺は思う。

「それにしても随分と異色な組み合わせだな」

「それには俺も同感だ。まさかあの翡翠姫と対面することになるとはな……」

 

 今回この5人が集まったのは互助サークル、発足して以来初の会議だからだ。

 何を隠そう俺、お嬢様、御供さんもまたサークルメンバーなのだ。

 というのも以前俺は國坂に随分とお世話になったことがあり、その経緯から借りを返すためにも俺は國坂に協力することにした。

 

 それが互助サークルの入部であり、その活動参加という訳だ。

 また、俺がサークル参加することをどこからか聞きつけたお嬢様もまた、恩人の手助けがしたいということで参加の申し出を行った。

 

 御供さんに関しては先の一件から時折國坂の手伝いをしており、実質サークルメンバーも同然であるため(と國坂は言い張っている)、この場に来てもらっている。

 周りに合わせるために制服ではなく私服ではあるが初めて訪れるキャンパスに委縮しているのか所在なさげにしている。

 

 可哀想ではあるがこれも國坂と関わってしまったがゆえの宿命。

 一緒に頑張ろうと内心でエールを送った。

 

 最後に匠についてだが最早説明もいらないだろう。一言で言えば本人の意思が顧みられることなく強引に参加させられている。

 さて、そういう訳で部員5人全員。この場に集まったわけで部長である國坂による活動方針やらが説明される(はず)なのだが。

 

「じゃあ今から互助サークル、初めてのお仕事を発表するわ」

「会議はどこ行ったんだよ」

「シャラップよ匠」

「あの、今からですか?」

 

 恐る恐る手を挙げて発言したのは御供さんだ。

「そうよ」

「部長。この場合互助サークルの定義、その在り方についてから説明するものではないでしょうか」

 

 今度発言したのはお嬢様が。

 お嬢様の勇気溢れる発言に対して國坂は、

「何それめんどい!」

 真っ向から否定してみせた。

 

 マズイと直感し、俺は即座に防御態勢を取り、お嬢様を盗み見た。

 そして、お嬢様は國坂さんを見ながら石像のように固まっていた。

 

 その様子は宇宙を背景にした猫のように、脳が理解を拒んでいるかのようだった。

 恐れていた事態にならなかったことに安堵しながらもやはりこうなったかと頭を抱えた。

 

 「お嬢様、國坂はああいうやつなんです。なんというか直感だけで生きているというか、とにかく野性的な人間なんです」

「そこ、今私の悪口言ったでしょ!」

「違います、部長のことめっちゃ褒めてました!」

「ならばよし!」

 

 いいのかよと小声でいう匠を他所に俺はお嬢様に声をかけ続けた。

 しかし、奔放な國坂の振る舞いにかなりショックを受けているのか遠い目をしたままだ。

 その一方で國坂は言葉を続ける。

 

「という訳で質問は以上ね、じゃ、早速今日のお仕事はこれよ」

 國坂は自身のカバンに手を突っ込んで漁り始めると、とあるものを取り出した。

 

「トランプ?」

 それを見た御供さんが眉を顰める。

 

「ええ、そう。トランプよ、トランプと言ったあれよね、つくみん?」

「ああ、あれだな。わかるわかる」

 ここで合わせないと國坂はなんでわからないのと詰め寄ってくる。

 適当でもいいからなんか言っておけの精神である。

 

「ふぅん? じゃあ言ってみて」

 おぅふ。まさかの質問である。だが、このくらいで固まる俺ではない。

「トランプと言ったらあれだよな、なぁ匠?」

 

 必殺、他人(主に匠)に振る。

 困ったときは他人を巻き込むに限る。対國坂対策の鉄板である。

 デメリットは生贄(主に匠)にしたてめぇこの野郎という殺意に満ちた視線をあびることになるという点と次に似たようなことが起きた時に同じ目に合わされるということだ。

 

 俺の作戦に見事にまで巻き込まれた匠は虚を突かれたせいか反論も出来ぬまま、國坂に隙を許した。

「どうなの、匠?」

「あ、ああ。わかるわかる、つまりあれだろ? あれと言えば御供さん? だっけ。あれなら詳しいよね?」

 

 おお、なんたる外道。

 自らが助かるためにあろうことか御供さんに話を振ってみせた。

 

「え、えっと。あの、その……」

 突然に話を振られ明らかに戸惑う御供さん。

 おろおろとしだす様子にこれはさすがに可哀想だと判断し口を挟む。

 

「御供さんが困ってるだろ、匠」

「元はと言えばおませのせいだろうが……!」

「人のせいにするな」

「この野郎いけしゃあしゃあと……」

「はいはい、喧嘩しないの。まったくいつまで経っても子供なんだから」

「「お前が言うなっ!!」」

「あーあー」

 

 耳を手で塞いで聞こえていないふりをする國坂に青筋を立てる匠。

 きっと俺も同様の表情をしていることだろう。

 國坂は向き直ると手を打ち合わせて言った。

 

「さて、じゃあ答え合わせしましょう。トランプで遊ぶのであればもちろんアレに決まっているよね。この場に集まった皆ならきっと揃うはずよ。せーのでいくよ、せーの!」

 

「ババ抜き」「大富豪」「し、神経衰弱」「ジジ抜き」

 三者三葉ならぬ四者四葉。見事なまでにバラバラである。

 

「何よ何よ。すっごいバラバラじゃない!」

 目くじらを立てる國坂。

 

「トランプと言ったら大富豪でしょうに!」

「ババ抜きは定番中の定番だと思うが」

「いや、ジジ抜きだろう」

「し、神経衰弱」

「結真、お前は昔から逆張りが好きだよな」

「お前は遊びがないんだよ匠」

「ババ抜きのほうが面白い」

「いーや、ジジ抜きだね」

「し、神経衰弱」

 

 と、黙って成り行きを見ていた國坂が突如として俺と匠の頭を捕まえると強引に手繰り寄せた。

「だぁー!」

 鼓膜が破れるじゃないかという音量が耳元で炸裂する。

 

「うるっさっ…………」

「わかった。こうしましょう。全部のゲームをやるの、それで公平よ」

「それはいいんだが、なんでトランプをやることになったんだ?」

「なぜって、それは國坂が……なんでだ?」

 

 互助サークルというからには誰かを助けるということなのだろう。

 なら國坂主導のもとどう動いていくかというところの話が重要になると思うのだが。

 

「えっと、なんでいきなりトランプなんか言い出したんだ?」

「決まっているでしょう、アイスフレークよ!」

「アイスブレイクな」

「決まっているでしょう、アイスブレイクよ!」

 

 匠の指摘に言い直した國坂はトランプをシャッフルし始める。

 早速始めようというのだろう。

 それ以上何も言おうとせず誰もやるとも言っていないのに準備を進める。

 このままでは本当にトランプをやることになるのでとりあえず俺は質問を飛ばすことにした。

 

「理由を聞いていもいいか?」

「理由? トランプの理由ね。皆と仲良くなりたいからよ」

「自己紹介からとかじゃないんだな」

「こういう方がわかりやすいでしょ。さ、始めるよ。まずはババ抜きね」

 

 俺たちはため息を吐くと、配られた手札を手に取った。

 一度やると決めたら國坂は絶対に曲げない。昔からこうなのだ。

 いつも無茶な提案をしてくれてそれに俺や匠がいつもそれに巻き込まれる。

 

 お決まりのパターンではあるが、怒る気がしないのは何故なんだろう。

 考えても無駄だなと苦笑し、現実に意識を移す。

 いち早く立ち直った俺たちに追従するように御供さんがトランプを手に取り、それから隣でいまだ固まったままのお嬢様を揺り動かして正気に返す。

 

 我に返ったお嬢様はまったく状況を理解できなかったが持ち前の処理能力をいかんなく発揮しとりあえずババ抜きをすることにしたようだ。

 こうして俺たち最初の仕事が幕を開けた。

 

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