ハイスクールDxD Lane Age   作:楓栞

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【注意事項】
・本作品は原作小説「ハイスクールDxD」1~25巻及び「真ハイスクールDxD」1~4巻の内容を基に構成しております。ネタバレを気にされる方は十分にご注意ください。
・本作品は原作小説のエロ要素を限りなく薄めシリアス要素が多めとなっております。残虐的表現、鬱要素等が含まれておりますで苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。


4話

辛くも教室を抜け出した俺は本館に続く渡り廊下へ向かった。

 黒瀬がこんな無茶をできるのは周囲の目が無いせいだと思ったからだ。

 衆目の前では黒瀬も大胆な手段をとれない。それは裏を返せば無関係な人達を巻き込むことに他ならないが今の俺はそんなところまで思考が及んでいなかった。

 

 気付かぬままに、渡り廊下と到着する。チラリと背後を見る。黒瀬の姿はない。

 どうやら追いつかれる前に逃げられそうだ。そう安堵し渡り廊下を進もうとした、がーー。

「あれ?」

 進んだ。ちゃんと本館に向かって歩いたはずなのに、今自分が立っている場所は旧校舎だった。

 

 背後を見る。そこには真新しい内装の本館が確かにある。

 もう一度、渡り廊下を進む。渡り廊下と本館の境を超えたことを視界にきちんと収める。

 なのに。

「なんだよ、どうなってんだよ?」

 

 俺が立っていたのは旧校舎だった。渡り廊下を背にして目の前には薄暗い空間が広がっている。

 進む。越える。何度繰り返しても本館に辿り着けない。

「早くしろよ! じゃないと、じゃないとーー!」

 

 コツン、コツン。旧校舎側の廊下から音が鳴る。

 規則正しく一定のリズムで刻まれるその音が俺を心胆から恐怖で震わせる。

 足がプルプルと震えてしっかりと立てない。

 

 そうだ、と思いつく。俺のポケットにはスマホがあるじゃないか。なんで早く思い至らなかったのか。自分を責めつつも親友であり最も頼りになる匠を呼び出そうとスマホに電源を入れて驚愕した。

「圏外? そんな馬鹿な」

 スマホは無慈悲にもそう告げていた。駄目元で駆けてみるもやはりつながらない。

 

 かくなる上は。

「誰かあああ!!! 助けてくれええええええ!!!」

 喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。

「無駄よ」

 

 そうこうしているうちに、気づけば背後から聞こえていた足音は鳴り止む。

 もう歩く必要が無くなったからだ。

「旧校舎一帯には人避けの結界を張ってある。電波は繋がらないしいくら声を出そうと誰にも届かない。そんなことに気付かないなんてとんだ無能ね」

 黒瀬だ。悠々と歩いて追いついてきた。

 

 相変わらず何を言っているか意味不明だが、なんとなく助けはこないということはわかった。

「手間を取らせないでもらえる?」

 例の通り、黒瀬が右手を突き出す。

 

 来る、それを直感し身を投げ出すように右に横っ飛びする。

 何かが、俺の真横を通り過ぎていく。なんとか当たらずには済んだが攻撃を避けることに集中しすぎて体勢が崩れてしまう。

 黒瀬は無防備な俺にしっかり照準をとらえていた。再び空間がブレる。

 

 なんとか躱そうと試みるも体勢を立て直すことができず、今度ばかりは躱すことができなかった。

 直撃。同時に衝撃を受ける。当たっただけで肉体は簡単に吹き飛ばされ、廊下の壁へ強かに背中を打ち据えた。

 肺の空気が強制的に絞り出され視界が一瞬ブラックアウトする。

 

 内臓のすべてを直接拳で殴りつけられたかのような痛み。だが、俺に喘ぐ余裕はない。

 涙に濡れて朧げになる目の前で黒瀬が構えを取っていたのが見えたからだ。

 今度食らったら死ななくても間違いなく行動不能になる。

 

 絶対に食らう訳にはいかない。歯を食いしばり立ち上がると何も考えずに転がる。

 ドゥン。空気が波打ち、先ほどまでいた場所に当たる。

 荒く息を吐きながらも、足を止めることなく攻撃と攻撃のわずかな間を縫って黒瀬の脇を通り抜けて階下へ続く階段へと向かう。

 

「チッ」

 背後から舌打ちが聞こえてきたが気にせず駆け降りる。

 黒瀬が言っていた結界とやらが下にもあったらどうしようかと思ったが、特に何事もなく降りることができ杞憂に終わった。

 

 先ほどいた場所が2階だったので現在俺がいるのは1階だ。やはり薄暗く人の気配は感じられない。

 背後を気にしつつ、廊下の窓を開ける。外から脱出できないか確かめるためだ。

 

「やっぱり出られないか……」

 黒瀬がそんな詰めの甘いことはせず、窓は開くもの外から出ることは叶わなかった。恐る恐る手を出してみたところ見えない壁がそこにあり力を入れたところで崩れそうにもなかった。

 

 何が何だかわからないが恐らくはこの状態はあいつ、黒瀬が引き起こしたものであり、彼女をどうにかしないと出られないってわけだ。

 馬鹿げた推論だとは思う。一学生に過ぎない黒瀬が何でそんなことが出来るのか。あまりに手が込みすぎている。個人でどうこうできるようなことではない。

 大学側がグルになって俺を騙そうとしている、という方が全然信じられる。でも、ドッキリ大成功なんて看板を持った誰かは一向に表れる気配はない。

 

 それに黒瀬が俺に向けてきたは殺意は紛れもなく本物だ。とても冗談で済ませられるようなものではない。自分の肌で感じたことだからこの点に関してはどうあっても間違いようがない。

 そして、黒瀬には例のケースという動機が明確にある。だとするなら今回の件は黒瀬個人によるものと見てもおかしくはない。奴が言っていた悪魔というのも関係することなのだろうか。

 思考が徐々に脱線していることを自覚した。生きるか死ぬかの場面でそんなことを考えている場合じゃない。問題はこれからどうするかだ。

 

 この場合における俺が取り得る行動は3つに分けられるだろう。

 

 1つ、逃走。2階よりも上に行って脱出の糸口を見つける。1階も2階も完璧に探したわけではないが3階や4階なら脱出の可能性を見つけられるかもしれない。

 仮に見つからなくても黒瀬から距離を取れるし、最悪黒瀬と互いの体力をかけた持久戦に持ち込める。

 

 2つ、隠れる。4階あるうちの旧校舎のどこかで見つかりにくそうなところにあたりを付けて潜伏する。見つかるまでの時間が長くなればなるほどに黒瀬の気力や体力を削れるし、外部からの助けが来る可能性が高まってくる。現実的な一手と言える。

 

 3つ、これが3つある中で一番最悪な方法だろう。内容は単純で黒瀬と戦って無力化する。言ってしまえばそれだけだが、そもそもそんなことができるのならとっくに俺の足元で黒瀬は泡を吹いていることだろう。実際はその真逆で、俺がそうなりかねないのだが。果たして如何にして黒瀬があんな不可思議な力を使っているのかまるで見当もつかないが、対処法がない以上は手の出しようがない。よって戦闘はありえない。

 

 実質2択なわけだが……。さて、どうしたものか。

 逃走するにしろ、隠れるにしろ役に立つ道具があれば何かの助けになるかもしれない。そう思い周囲を見渡す。

 

 今、俺がいる場所はただの講義用のための教室であり、使い古された椅子やテーブルが置いてけぼりになっているだけで、見渡してみても利用できるものはなさそうだ。

 

 次に持ち物、といっても教科書や筆記用具が入っていたリュックは当の昔に投げ捨てており、持っているものなんてスマホや財布ぐらいだ。

 

 スマホといえば……再び電源を入れてみる。

 少しばかり期待してみるが、依然変わらず圏外のままだ。黒瀬の言う通りこの旧校舎においては使えないとみるべきだろうか。

 正直、黒瀬の言うこと全てが正しいようで腹が立つ。

 まぁ、実際に使えておらず使用の可否を検証したくともそんな時間はない。

 今使えていないのならばこれ以上黒瀬の言動の真偽を確かめても無駄だろう。

 

 ついでに今置かれている現状も整理して行こう。

 

 今、俺は旧校舎一階にいる。

 黒瀬の仕業で理屈はわからないが、その旧校舎からでることができない。

 ただし、1階と2階からは出られなかっただけでもしかしたらそれ以外の場所からなら出られる可能性がある。

 

 ちなみに旧校舎は4階建てであり、1階には講義用の教室。2階には講堂のみで教室はない。

 3階は1階と同じく講義用の教室があり、4階は教授用の研究室がいくつかある。俺がいるのは1階に5つある教室の内ちょうど真ん中にある教室だ。

 黒瀬から逃げ始めてまだ1階と2階にしか行けていない。他の階ならばあるいは脱出の芽があるかもしれない。

 

 無論なんの保証もない推測だ。

 というかあいつのこれまで言動とやり口を見るに3階だけ出られるようにしているなんて考えられない。

 よしんば脱出できたとしても何らかの罠が張られている可能性もある。むしろ、そっちの方が高い気がする。

 

 とするならば逃走よりも隠れるほうが生存の確率はあるだろうか。

 だが、見つかってしまえば袋の鼠である。隠れるのは少しリスクがあると言わざるを得ない。ここは消去法で逃走に決まりだ。

 

 教室の天井を見て、耳をそばたてる。音はしないがやってくるのは時間の問題だろう。

 黒瀬が近づいてくれば足音で分かる。

 しかし、それも確実ではない。これまで黒瀬は足音を立てて歩いていた。靴を履いている以上大なり小なり足音は立つが、それも靴を履いているからだ。

 例えば靴を脱いでさえしまえば音が立つこともない。黒瀬がそこまでするかはわからないが、足音に関してはおまけに程度に捉えておくとしよう。

 

 できれば目視でその姿を捉えたいが下手に顔を覗かせて逆に捕捉されるのも厄介だ。

 それにリスクを冒してまであえて黒瀬がどこいるかを確認する必要性を俺は感じてはいなかった。

 これはあくまでもただの勘だが黒瀬にはあまり焦りのようなものが見えないように思う。

 絶対的強者故の余裕なのかまではわからないが、急いで追いかけようとまではしないだろう。これまた多分だが。

 

 

 俺は立ち上がると最後に教室全体を一瞥し行動を開始した。

 いや、しようとして思い至った。絶対的窮地を切り抜ける最後の可能性を。

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