ハイスクールDxD Lane Age   作:楓栞

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【注意事項】
・本作品は原作小説「ハイスクールDxD」1~25巻及び「真ハイスクールDxD」1~4巻の内容を基に構成しております。ネタバレを気にされる方は十分にご注意ください。
・本作品は原作小説のエロ要素を限りなく薄めシリアス要素が多めとなっております。残虐的表現、鬱要素等が含まれておりますで苦手な方はブラウザバックを推奨いたします。


7話

 「起きなさい」

 その一声とともにスパンと頭に衝撃を感じる。

 「んあ?」

 突然のことに間抜けな声を漏らして、瞼を持ち上げる。

 

 視界に映るのは古びた校舎。

 ああ、そうか。俺は黒瀬に連れられて今日校舎に来たんだっけか。

 それで、

「ーーッ!」

 

 すべてを思い出してガバッと体を起こす。

 頭の中のどんよりとした部分がクリアになっていく。

 後ろに飛び退こうとして椅子ごと盛大にひっくり返る。

 

「いってえ」

「まったく、何をしているの」

 呆れたように、その人ーー黒瀬瑠奈は言った。

「誰のせいだと思っていやがる」

 立ち上がって構える俺。

 

 一方の黒瀬はというと簡易ベッドから動いておらず、上半身は起こしているが今すぐに動きそうな様子はない。

「なによ、もとはと言えばあんたがキングの駒を盗みさえしなければこんなことなっていないわよ」

「そりゃ、確かに失くしたのは悪いって思っているけどいくらなんでも、じゃあ殺しますはおかしいだろうが」

「いまいち、話がかみ合ってないわね。状況、理解できている?」

 やれやれといった風に嘆息する黒瀬。

 

 この女言うに事欠いて平行線だと主張しやがる。再度、怒りの念が湧き上がってくるのを感じた。

「なによ、もう一度やろうっていうの?」

 俺がイライラしていることが表情に出ていたのだろうか。それに目敏く気付いたようだ。

 

「そのためにわざと煽ったんじゃないのか」

「違うわ。事実を言っただけ。まあ、やろうっていうなら引き受けてあげてもいいけど」

 一度負けた後だというのに、次は負けないという自信が言葉から見え隠れしている。

 実際、あんな搦め手じみた方法は二度と通用しないだろう。真正面から用意ドンで始めたら100回中、100回負けるのは間違いない。今回優位に立てたのはただの偶然だ。

 

 だが、そんな考えをおくびにも出すつもりはない。次もお前に勝てる、そんな張りぼての強がりでも、舐められないようにそれを前面に押し出すことで強気に出る。

 睨みあう俺たちだったが黒瀬は不意に視線を逸らした。

「こんなことしても不毛。そんなこともわからないのね」

 いちいち癪に障る物言いだが事実なので、俺もそれ以上は蒸し返さず矛を下げる。

「そうだな、お前みたいなやつ相手にする価値もないしな。じゃあ、俺は帰らせてもらうから」

 

 こいつが起きたのなら閉じ込められている原因を取り除くことができるだろう。恩に着せて暗に解除するようほのめかすことも忘れない。

「待ちなさい」

 黒瀬が俺を引き留めた。

「なんだ、これ以上まだなんかあるのか」

「もちろんあるに決まっているでしょう。あんたには話してもらわないといけないことがいくつもあるわ」

 

 ――少し熱くなりすぎていたかもしれない。黒瀬の顔を見たくないばかりにこの場を離れようしていたが、冷静に考えて今日の不可解な出来事について気になることがありすぎる。

「……俺もお前に聞きたいことがある」

「情報交換といったところかしらね。それと私をお前と呼ぶな、黒瀬様と言いなさない」

「いやだね」

「礼儀を知らないガキね」

「いいから、早く話を進めろ」

 憤懣やるかたなしといった様子だが、なんとかこらえたようで黒瀬は口を開いた。

 

「まずはあんたの正体について聞かせて。あんたは何者なの?」

「それさっきも聞いていたよな、何者もなにもない。俺は俺であってそれ以上でもそれ以下でもない」

「あんたの主観的な在り方についてなんて聞いてないわ。それとさっきじゃないわ、今から9時間47分3秒前よ」

「はあ? 9時間前?」

 

 黒瀬が携帯を取り出すと俺に向かって投げてきた。って俺のじゃねーか。

 電源を入れる。時刻は20時過ぎを示していた。マジだ。いつの間にこんな時間が過ぎていたんだ。

 というか、それよりもだ。旧校舎に電気は通ってない。蛍光灯の類は全くつかないはずなのに、昼間みたいに明るく周囲が見えるぞ!?

 一体全体どうなっているんだ?

 

 首をかしげる俺だったが、黒瀬がコホンと咳をついた。黒瀬がムッと眉を寄せて見ていることに気付いてハッと我に返る。

「ええと、主観的? な在り方じゃないって話だっけか。黒瀬は一体俺に何を聞きたいんだ?」

「はあ、わかりにくかったようだから、もう少しかみ砕いて言ってあげる。あなたの生物学的分類は何?」

「分類なんて言われてもな……。人間、としか言いようがないけど」

「嘘をついているように見えない。やっぱり、自覚がないのね」

 

 自覚? なにやら意味深なことを言っているようだが……。

 黒瀬って実はああみえて不思議ちゃんなのだろうか。

「今、あんた失礼なことを考えていたでしょ」

「さて、何のことかな」

 わかりやすくとぼけてみるがそれ以上黒瀬は追及しなかった。

 

「先にあんたの誤解を解いてあげましょうか。あんたもう人間じゃないわ」

 それは何気なく、明日の天気は~と言うようにごく自然と言い放たれた。

「今なんて?」

「だから、あんたはもう人間じゃないって言ったの。あんたは悪魔、転生悪魔よ」

「は? え、ああ? 悪魔? 悪魔って言うとあれか? 創作物に出てくる人間を誑かして魂なんかを取っていくアレ?」

「そうそれよ。厳密にいえば間違っているけど今はその認識でいいわ」

「いや、いやいやいや。悪魔? ナイナイ。そんなのありえないって」

 

 悪魔だって? いまどきそんなのありえないって。そりゃ昔はそういうのがいたって信じられていたかもしれないが……。

 科学が発展した今そんな存在はいないと証明されている。黒瀬の言う悪魔という存在はあまりに非科学的すぎる。

 

「今、あなたが何を考えているか当ててあげましょうか。悪魔なんていない、お伽話や伝承に出てくるだけの存在。そんな風に思っているでしょう」

「だったら?」

「じゃああなたがあの時見た背中の翼はなんていうの?」

「それは……」

 

 確かに、黒瀬と出会った時に俺の背中から蝙蝠みたいな翼が出てきた。

 あれに触ったときの感触、暖かさ。今でも手に残っていて思い出せる。

 嘘だと断じるにはあまりにリアルすぎた。だが、信じるというには実感が足りない。

 

「例えばお前が見せた幻覚による錯覚とか」

「あんたの都合のいいように私の存在を使わないでもらえる? 私はあんたに幻覚なんて見せてないわ」

「じゃあ、極限の状況に追い込まれた俺が見てしまった幻覚とか」

「――信じられないというのなら、もう一度出させてあげましょうか?」

「わかった信じる! 信じるからやめてくれ」

 

 いまいち納得はいかないがまたあんなのも見せられるなんて溜まったものではない。

 一旦黒瀬の言う悪魔がいるというこを認めるとしよう。

 しかし、気になるのは、俺がいつから悪魔になったということなのだが……。

 

「ま、他にも根拠はあるわ。例えばそうね、今は夜で真っ暗なはずなのにどうしてあんたは私がはっきりと見えていると思う?」

「どうしてって、お前が不思議な術で照らしているんじゃないのか?」

 確かに夜なのにこんなに明るいのは気になっていたところだった。てっきり、黒瀬の仕業かと思ったが違うのだろうか。

 

「外れ。単純な話よ。悪魔は夜目が利くの。他にも五感のみならず身体能力も人間のころとは比較にならないほど向上しているはずよ」

「ほう」

 黒瀬の言う言葉に惹かれて俺は早速その身体能力を試してみることにした。

 とりあえず、その場で飛び跳ねてみる。

 

 ゴツン。気軽に垂直跳びしたつもりだったが、思いのほか高く跳びあがってしまい天井へと頭を打ち付けてしまう。

「あんた馬鹿なの。いえ、馬鹿ね」

 頭をさする俺をみて珍妙な生物でも見るかのように言った。

 

「るせー」

 強く言い返せなかった。

 そんなことより、確かに黒瀬の言う通り身体能力が向上している。これが悪魔の力か。

「いっておくけど身体能力の向上なんて悪魔の力の一端に過ぎないから」

「え?」

「よく見ていなさい」

 そう言うと黒瀬は手を前に出して掌を天井に向ける。

 

 すると、掌に突然紫色の球体が出現した。俺を攻撃してきた飛び道具と一緒だ。

 いったいどんな手品を使ったらこんなことができるのか、黒瀬はそれをあっさりと公開した。

「これは魔力。悪魔だけが扱うことを許された超常の力よ」

 黒瀬がギュッと握りこむとそれだけで球体は消えた。

 

「あんたを閉じ込めていた力もその1つ。結界と呼ばれる……、なんて言えばわかるかしら。力場、ううん領域? いや障壁という方がしっくり来るかしら。そう、特別な障壁を私が作ったの」

 魔力、結界ね。本当に覚えることが多いな今日は。

 

「どう? これだけ言われたら流石に信じざるを得ないんじゃないかしら」

「そうだな、これだけ見せつけられたら少なくとも嘘だと断じることはできないな」

「あくまでも受け入れないのね。ま、いいけど。じゃあここからが本題。あんたいつから悪魔になったの?」

「わからない……。本当だ、嘘じゃない」

 

 まぎれもなく事実だ。今の今まで俺は悪魔としての自覚はなく過ごしてきた。

 普通の両親のもとの間に生まれた。そのはずだ。

 いや、まて。黒瀬はさっきなんて言った? いつ悪魔になった? 悪魔は生まれた時から悪魔じゃないのか?

 

「黒瀬、悪魔になったってどういう意味だ」

「そのままの意味よ。悪魔には3つの種類がある。1つは悪魔の両親から生まれた純血の悪魔。もう1つは悪魔とそれ以外の生物の間に生まれた混血。最後に悪魔以外の生物だったが後天的に悪魔になったもの。この場合だと転生悪魔と呼ばれるわ」

「つまり、俺の場合は混血か転生悪魔ってことか?」

「ええ、そうなるわ。おそらくだけどあなたは転生悪魔ね」

「なんで俺が転生悪魔ってわかるんだ?」

 

 混血って場合も考えられるし、生まれた時から悪魔という線もなくもないだろう。

「はあ、話がわき道にそれるから言いたくないけどどうせ言わざるを得ないわね。まずあんたが純血じゃない理由、それはあんたが神器所有者だからよ」

「神器所有者?」

 

 また、知らない言葉だ。そろそろ俺の頭はパンク寸前だぞ。

「神器というのはね、聖書に記された神がこの世界に残した奇跡の具現化したものよ。わかりやすく言うなら、そうねさっき私が出した魔力みたいな規格外な現象を起こすことのできる力よ」

「力……それが俺にあるっていうのか」

「そう、そして神器は人間にしか宿らないの。人間の血が混ざった混血や人間から転生した存在も例に漏れないわね」

「だから、俺が純血じゃないってわかったのか」

「その通り。まあ、先祖帰りって可能性もなくはないけどね。純血ではないとすると、混血か転生悪魔の二択になるけど混血なら生まれた時から悪魔としての力を有している。にもかかわらずこれまでその自覚を持たなかったとするならば、消去法で転生悪魔の可能性が高い。厳密にはさらに複数のケースも考えられるけど今回は仮定として転生悪魔として話を進めたほうがわかりやすいからとりあえずその方向で進めるわよ」

「わかった」

 

 正直、俺の理解の及ばない話ばかりが展開されて黒瀬の言うことの半分も理解しているか怪しいところだが。

「それでいつからあんたが悪魔になったかだけど、これは私の推測だけど昨日だったんじゃないかと思うわ」

「昨日? そんな最近に?」

 

 黒瀬がズボンのポケットに手を突っ込む。そうして取り出したのはチェスの駒が収められているケース。

 それを取り出した意味が分からず疑問を口にする。

 

「それがどうかしたっていうのか」

「これはただのチェスの駒じゃない。これの本当の名前は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)、悪魔や悪魔以外の存在を転生させて己の眷属にすることができるわ」

「悪魔に転生、そんなチェスの駒が……」

「どうして、チェスなのかという点は話す長くなるから省くわよ。おそらくあなたはこの中のキングの駒を取り込んだ。そして、悪魔に転生した」

「そうか、だから突然キングの駒がなくなったのか」

 あれほど探したのに見つからなかった理由がようやく氷解する。

 

「キングの駒が悪魔に転生させるなんて聞いたこともないけど。まったく前代未聞だわ」

「え?」

 今なんか聞き捨てならないことを言ったような。

「それはいいとして。ついでにあんたはどういう訳だか、それ以外の駒の所有権も奪った」

「奪った?」

 

 黒瀬がケースを開いて中を見せる。黒くくすんだ色のままで最初に見た時の鮮やかな藤色はやはりそこになかった。

「キングの駒は私のものではなかった。でもクイーン、ルーク、ビショップ、ナイト、それにポーンは私がキングとして登録されたときに下賜された私のものだった」

 でも、と黒瀬は続ける。

「今やこの駒は私の意思には沿わない。私を主とは認めない。いったいどうしてかしらね」

 

 黒瀬が横目で俺を見る。

 凍えるような冷たい瞳だ。その視線に気圧され俺は縮こまるしかなった。

「謝ればいいのか?」

「まさか。でも私の役に立ってもらうわ」

「どうやって?」

「決まっているでしょう。あんたは私の眷属になるの。仮の体裁だけどね」

「お前の下で働くってことか」

「光栄でしょ?」

「俺に拒否権は?」

「あるけど、大人しく従わないなら死ぬわよ」

「お前になんか殺せないさ」

「私相手ならそうかもね。でもお爺様、いえ、大公を前にしてはそうもいかない。すべてが明るみになればあんたも私もこの世界から痕跡1つ残さず消えることになる」

「おっかな!」

「オブラートに包んであげているだけ感謝しなさい」

 今のでオブラートとかどんだけバイオレンスなんだ悪魔社会!?

 

「わかったわかった、そういうことならお前の眷属でいい、それでいこう」

 半信半疑ではあるが悪魔になった以上は先輩悪魔である黒瀬との後ろ盾は確保したいところだ。悪魔の何たるかなんて全く知らないからな。

 無論、その言葉は決して軽々しく考えていいものではない。黒瀬がああいうからには相応の忠誠を求めてくることだろう。

 

 遜るなんて俺の柄ではない。が、これまでの黒瀬の言動、行動を鑑みるにこれ以上の譲歩は引き出せないとみるべきだ。

 ここが限界。引き際を見誤れば再び殺し合いが勃発し俺は死ぬ。

 口惜しいがとりあえずはそのポジションで満足すべき。そう判断の上で俺は承諾した。

 

「少しは物分かりのいいところがあるのね。これからは死なないようにお互いに手を取り合って協力していきましょ」

「お前が言うと冗談にしか聞こえないな」

 黒瀬の本性を知っているだけに悪い冗談にしか聞こえなかった。

 

「死にたいの?」

「ごめんなさい」

 気を取り直して問いかける。

 

「で、実際はどうすんだ?」

「ひとまずは私が王のふりをしてあんたには眷属ではなく従者のふりをしてもらうわ」

「なるほど役割を入れ替えるのか」

 

 実際に王であるのは俺だが、体裁上は黒瀬が王になると。

 王の風格があるのはどう見ても黒瀬なので詳しく調べさえしなければバレない、のか?

 そこら辺は黒瀬が何とかするだろう。当面は黒瀬の言うことにペコペコしとけば問題ないか。

 

「そういうこと。これから私の代わりに身を粉にして尽くしてもらうからそのつもりでね私の下僕さん」

 黒瀬がニヤリと不敵に笑った。

 

 

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