ウマ娘思春期ダービー!!   作:何もかんもダルい

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トレーナーだって人間なんだからガス抜きは要りますわよね。
そんなこと考えてたらなんか出来ました。


暴走する大人たち

 トレーナーという職業は多忙そうに見えるが、それでも波というものがある。忙しい時はどんだけやっても捌くべきタスクが舞い込んでくるし、暇なときは部屋で丸一日空眺めて終わるくらい暇なんてこともある。まぁ忙しいからって深夜残業なんて許さんけど。

 何のために雑事要員(アタシ)が徘徊してんだと思ってんだかね。どうでもいいタスクとかちったぁ任せなさいよ。アンタら独りで背負い込んだってしんどくなるだけだよ。ソースは今の生徒会長。

 

 閑話休題。要は思春期かつ人生ただ一度の大舞台目指して疾走する女の子とかいうハザードマーク付きそうなくらいの危険物を相手にしている以上はトレーナーだってストレスが溜まっちまうというもの。

 ストレスというとなんか誤解されがちだが、温度気圧の変化から事務作業の疲労まで体にかかる負荷は全部「ストレス」なのである。どう頑張ったって人間なんだから負荷が嵩めば睡眠じゃ帳消しできなくなっていつかぶっ倒れる。

 その前に新人を飲み会やら何やらに引き摺っていって本音を全部まとめて吐かせるのが先輩トレーナーの慣例であり、そして――――

 

「こんなに大きくなりました♡(131㎝→193㎝)」

「デカすぎんだろ……」

「血筋に竹でも混じってんのか」

「入学式の写真渡してきたと思ったらこれだよ」

「タマに申し訳ないとか思わんの?」

「このでけぇパピーちゃんがよ」

「うちのライスに謝れ」

「アストンマーチャンをよろしくお願いします」

 

 

 ライバルと敵は同義語ではないということを教える数少ない場である……はずだった。

 

 おかしいな、男女問わず酔っぱらった情けない大人たちの黄色い悲鳴が聞こえるはずだったのに。ブーイングしか聞こえないぞ? 敵か貴様ら??

 せっかく用意した渾身の一発芸は何故か盛大にスベり散らかしていた。

 

「というかタマトレとシャワトレは本人に謝るべき案件だろコラ。ちっちゃいもの倶楽部は可愛いだろうが」

「言ってる言ってるものすごい勢いで本人よりひどい事言ってる」

「よっ鋼の重戦車、人の地雷にも鈍い!」

「お前今アルダンのこと馬鹿にしたか???」

「してねーよ!? というか重戦車に反応すんな、お前が認めてんじゃねーか!」

「アルダンはガラスの重戦車だぁよ! 体格イイのにおしとやかなのが可愛いんだよコラ!!」

「何一つ言ってねぇって酒臭ッ!! こいつこの短時間でどんだけ飲んでんだ!」

「はーいお水飲みましょうねー」

 

 みんな酔っぱらっちゃって何言ってんのかもー滅茶苦茶である。他の面々はうちの担当()自慢で盛り上がっている。丁度いい感じのところで止めてやらんと訳の分からない勝負始まるんだよね。この間は野球拳でパンツ一丁になってた。ラヴズオンリーユーちゃんのトレーナーとかなぜかパジャマ持参した担当に持ち帰られてたけどアレ大丈夫だったのかしら。

 まぁウマ娘の方が力強いしだいじょぶか。トレーナーもデフォで理性がオリハルコンだし。()()()()()()間違いは起こらんべ。

 

 それにしても随分ハイペースで飲んでますなぁ皆の衆。今回のメンツは酒豪が勢ぞろいだからな、普段抑圧してる分が爆速で取り込まれていく。見てて気持ちいけどハラハラするね。

 カレンチャンのトレーナーとか見てみなよ。さっきから度数エグい通り越してグロいやつ一気飲みしてんのにほぼ素面だぞ。肝臓どうなってんだ。

 

「それにしてもウェルさん伸び幅エグいっすね。60㎝とか伸びすぎでしょ」

「入学して1年で伸びたよ」

「タケノコかよ」

「成長痛とか大丈夫だったのそれ」

「まっっっったく。たらふく飯食ってしこたま運動してたらもう縦にどんどん伸びちゃって中等部なのに学割利かなくなっちゃった」

「それでタッパ伸びたら世のアスリートは苦労してねーんだよな」

「身体測定では常勝無敗だぞ」

「無冠の怪物がなんか言ってんな」

「マックちゃんに謝れ」

「女の子ってのァちっとはムチムチしてるくらいが一番かわいいだろうがよオォン??」

 

 こいつら鍛える方向に目が肥えちまって女の子見る目が節穴と化してるんだよ。これがクソボケの正体です。アスリート鍛える人間としては間違っちゃいないんだけど少女の肢体を舐め回すように見て脳裏に浮かぶのが数値なのはマジで生物として何かが終わってるんだよな。そんなんだから業を煮やした担当に卒業と同時に掻っ攫われるんだぞ。ソースは私の元同室。退学して転校したはずだったのに電光石火の早業だったよ。エンコのマエストロって感じで左手薬指持ってった。

 

「でもさぁ、考えてみりゃトレーナーって一番将来の伴侶居なさそうな仕事よな」

「正気で言ってんのか?」

 

 爆弾発言かましたのはヴィルシーナのトレーナー。こいつこれでマジなのである。契約満了したらフツーにサヨナラする気でいるからな。正気か? サヨナラホームランされんのはお前の人生だぞ?

 

「いやだってそうだろ、ただでさえ割と忙しいし婚活なんてしてる暇ねーし。そんでもっていざデキてもすぐそばに女の子居る生活だからか向こうからあっさり縁切られるし」

「あーわかる。担当の子の写真見たいって言うから見せたらなんか引かれた」

「いやお前の場合はそうだろうよ専属レンズがよ」

 

 分かる分かるの大合唱。仕方ないね。皆年頃の男女だし彼氏彼女の一人くらい欲しいよね。

 でも気付いてんのかな。さっきから独特の耳鳴りしてるからなんか()()()()()んだよな。手際の良さ的にだいぶ手馴れてんだけど容疑者候補多すぎて絞り切れないんだよね

 

 新人トレーナーという存在は案外かなり若い。高卒から専門学校で2年、そしてライセンス獲得。平均年齢としてはだいたい21~23くらい。その位の男女がベテランの傍についてサブとして経験を積んだり、あるいはもうちょっと歳重ねると独り立ちして自分で担当を捕まえてみたり。

 ぶっちゃけた事を言ってしまえば、歳の差的に「ちょっと年上のお兄さん/お姉さん」と変わらないのである。だいたいが新任教師よりも余裕で若い。

 

 何が言いたいか分かるだろうか。

 そうだね、トレウマだね。

 

「というのは置いておくにしてもさ、親戚のお兄ちゃんお姉ちゃんっつってもギリ通る年齢(トシ)のが自分のこと親身に考えてくれて、おまけにそれが年跨いで続いたらどういうことになるか想像つかんのかね」

「だいぶ下世話な置物が横に配置されてんのはどうにかならんのか」

「止めなきゃとは思ってるんだけどやめられない止まらない」

「スナック菓子みたいに言わないでよ」

 

 失礼だな、半年は脳内で咀嚼するとも。一部はデジタル君に放流して夏と冬の宝に換えてもらっている。

 まーそれはそれとしてだ。

 

「ごめ、ちょいお手洗い」

「会計から逃げんなよ〜」

「そこまでセコくないですゥ~~~~」

 

 トイレへ行く————振りをして、個室でスマホのチャットアプリを起動。

 選んだグループ名は「学園女学生の集い」。

 

 ―――――全員集合。

 

 爆速で付いた既読は4、5、7……18ね。引っかかったねポニーちゃんたち。

 時刻は既に深夜、こんな時間に目をかっ開いてスマホに食いついてるおバカちゃんたちよ、もうちょっと大人の汚さを知るべきだったよ。

 記憶が正しければあの手の盗聴器はスマホで制御できる。つまり通知が届いて即反応()()()()()()子らは第一容疑者。

 そしてざっと見た中で宴会場にトレーナーが居たのは3名。ほい特定終了。

 

 たづなさん、出番です。呼び出し書類の配布オナシャス。

 

 ――――クロは3、お叱りはお任せを

 

 悪いね年頃の乙女たち。でもちょっとばかりおイタが過ぎたね。

 大好きだからこそ不安なのは分かるから全部聞き出したら軽く叱るだけに留めたげるよ。私は君たちの罪悪感を信じる。

 

 

「…………あれ? これヴ三姉妹じゃん」

 

 共謀かい君ら。




ネガマクスウェルのヒミツ
実は、フィジカル関連は走ること以外はだいたいできるので「無冠の怪物」というあだ名が付いている。
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