最強アルちゃん概念   作:Nikich

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その二「アビドス襲撃編」

キヴォトスを代表する大企業、カイザーコーポレーションが経営する企業の一つ――カイザーPMC本社ビル。

その社長室で、トップことPMC理事はギリ、と拳を握った。

 

プレジデントが言っていた“宝探し”を邪魔するアビドス高校を沈めるため、ヘルメット団に依頼した。だが結果は惨憺たるもの。主力戦車まで貸し出したにも関わらず、計画は失敗に終わった。

 

「やはり格下のチンピラではこの程度か」

 

舌打ちをしながら、理事は思案する。

もっと力がありながらも、こちらとの繋がりが露見しない団体を探さねばならない。

 

(そんな都合のいい連中…いるはずが――)

そう思いかけて、はっとした。

 

…いる。

力は十分、いやキヴォトス最強格。フットワークも軽く、金もプロ傭兵に比べれば格安で済む会社が。

 

理事はにやりと邪悪な笑みを浮かべ、部下を呼んだ。

 

「何なりとご命令を」

「……“便利屋68”に依頼をつなげ。アビドス高校を襲撃しろとな」

 

☆

 

「みんな〜!依頼が入ったわよ〜!」

先程まで電話を繋いでいたアルは喜び勇んで事務所に入った。

 

「どうしたの〜?アルちゃんがそんなに喜ぶってことはただの猫探しとかじゃなさそうだし」

「…私は猫探しでも良かったんだけど」

「ア、アル様のご命令ならなんなりと…!」

 

三者三様の反応を示す社員たちにドヤ顔を見せながら依頼内容を説明する。

 

「え〜と確か依頼内容が…アビドス高校の襲撃。そして金額が…」

相手から出された成功報酬の金額を聞いて全員思わず硬直した。

 

「社長…騙されたりしてない?」

思わずそっとカヨコが告げる。それほどまでに今回の報酬は規格外だった。

 

「私達も認められてきたってことよ!」

たいして疑いもせずに語るアルを見て思わずカヨコはため息をついた。

「それで、これからどうするの?私達アビドス高校のこと何も知らないけど…」

 

「とりあえずアビドス襲撃の人数を増やすために傭兵を雇おうと思うわ。お金はなくなっちゃうけど…」

それを聞いて3人全員押し黙った。

ハルカがそっと発言する。

 

「…アル様がいらっしゃるなら傭兵なんて雇わなくてもいいんじゃないですか?」

それはアルを除いた便利屋全員の心境を代弁していた。

しかし、

 

「人を従えてこそアウトローよ!」

 

そう言って笑うアルを見て何も言えなくなってしまうのだった

 

☆

 

そしてできる限りの数の傭兵を雇った結果

 

「こ、ここで一番安いメニューってお、おいくらですか?」

「…だからわざわざ傭兵なんて雇わなくてもいいって言ったのに」

 

彼女たちは限りなく一文無しに近い状態になっていた。

お腹はすでにぐぅとなっているのだが手元には600円しかない。

手持ちの金額で食べられるメニューを探し回ってすでにヘトヘトになっていた。

 

「はい!当店オススメの柴崎ラーメンが580円になります!」

「じゃあここにします…!」

 

やっとのことで600円以内でまともなものを食べられる場所を見つけた。

一杯のラーメンを4人で分け合う形になるが背に腹は変えられない。

そう思い諦めていたのだが…

 

「お待ちどおさま!」

 

ダンッと音を立てて置かれたラーメンは、どう見ても一人前の量ではなかった。

下手すればこの4人でも食べ切れるか怪しい。

 

「お、オーダーミスとかじゃないんですか…?」

「なーに、ちょっと手元が狂っちまってな」

「た、大将…!」

 

アルが思わず涙ぐみながらラーメンを啜り始める。はしゃぎながらラーメンを分け合う彼女たちは、じっと見ている一人の存在には気づかなかった

 

☆

 

元々はセリカちゃんのバイト先に遊びに来ただけのはずだった。

ちょっとセリカちゃんをからかいながらラーメンを啜っていると、お客さんが4人入ってきた。

どうやらお金がないらしく、600円で食べられるメニューが無いか聞いている。

それだけならラーメン屋のよくある一幕だ。大して気にしなかっただろう。

 

だが赤髪の子が私の目を引いた。敵対しているわけでもないのに本能が警鐘を鳴らしている。

間違いない。——私と同じ「こちら側」だ。

他の3人も結構強そうだったけどあの子は別格だった。そっと先生に耳打ちする。

 

「先生」

”ん?どうしたの?”

「さっき入ってきたお客さん達の赤髪の子…相当強いよ。おじさんでも戦って勝てるかはちょっと分からない」

”え?いい子そうに見えるけど…”

「おじさんもそんなに悪い子には見えないけどね〜。ま…覚えておいたほうがいいかも」

 

ノノミと楽しそうに話す様子をちらりと流し見る。

私以外にあの子の強さに気付いた人は居なさそうだった。

隠すのが上手いのか、あれが素なのか。それは分からなかったが、どうも嫌な予感がした。

 

☆

 

「お仕事、上手くいきますように!」

「私もあなた達の学校の復興、応援してるわよ〜!じゃあね!」

 

ちょっと苦労したが特盛ラーメンも食べ終わり、満腹になりながら便利屋たちは帰路についていた。

 

「ふう…いい人たちだったわね」

「…社長。あの子達の制服気づいた?…アビドスだよ、あいつら」

「…なななな、な、なんですってーーーーーー!?」

 

アルの絶叫が、アビドスに響きわたった。

反応に笑っているムツキを見ながらアルは苦悩する

ラーメンの恩を仇で返すのは心苦しい、だがこちらも仕事だし雇った傭兵の事もある。

 

覚悟を決めた。

 

今、アビドスに、ゲヘナ最強の牙が向いた

 

☆

 

数時間後、またしても便利屋と対策委員会は相対していた。

だがさっきのラーメン屋とは違う、敵対状態である。

 

「誰かと思ったらあんたたちだったのね!ラーメン特盛で奢ってあげたのにこの恩知らず!」

「ま、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事なんでね」

 

そんなやり取りを聞きながら、ホシノは静かに赤髪の子…アルと呼ばれていた子の動きを注視した。嫌な予感が最悪の形で当たったことに思わず顔をしかめる。

威厳があるようには見えなかったが、スナイパーライフルという長物を担ぐ姿は何か得も知れぬ雰囲気を醸し出していた。

 

「ん、…力付くで口を割らせる」

「総員、攻撃!」

 

そして、張り詰めていた空気が弾けた

その瞬間

 

「ッ…!」

 

目にも止まらぬ早さで弾丸が飛んできた。

 

咄嗟に盾で受けたが手が痺れて動きが鈍る。

その隙を逃さずライフルとは思えないスピードで連射してきた。

 

必死にすべて受け止めるがじわじわと後ろに下がっていく。

瞬間盾で受けた弾が爆(・)発(・)し(・)た(・)。一瞬体勢が崩れた瞬間に弾丸を叩き込まれる。

 

「グッ…!」

「ホシノ先輩!?」

 

思わず2,3歩後ずさった。腹に当たったようで吐き気が込み上げる。

並の攻撃ではダメージどころか揺るぎもしないホシノがこの有り様なのだ。

他の後輩を狙わせるわけにはいかなかった。

 

だがこのまま遠距離で戦うのは相手の独壇場だ。

ならば——詰める。

 

ドンと砂埃を上げながら目にも止まらぬ早さで詰め寄る。

相手が反応する前に一気にショットガンのフルマガジンを叩き込んだ。

フルオートの連射力、そしてホシノの膂力による火力。並の相手なら今のでまず間違いなく沈んでいただろう。

一瞬気を抜いたその時だった。

 

「…え?」

 

相手の銃口が顔面に迫ってきていた。避ける間も無くお返しとばかりに叩き込まれる。

強烈な衝撃に数メートルふっとばされた。

 

「ゴッ…アガッ…」

 

猛烈な痛みに思わずあえぐ。何だ今の衝撃は。明らかにただの銃とは思えない。

だが休む暇を与えず脳天に追撃が迫っていた。

間一髪でホシノが避け、地面に銃床が叩きつけられる。

 

「フン!…痛ったあ!」

 

思わず手をさすりちょっと可愛らしい声を出すアルだったが、そんな仕草とは裏腹に地面にはクレーターができていた。

 

思わずゾッとする。

あんな物を当てられたらとてもではないがたまったものじゃない。それを片手で振り回すあの子はどうなっているのか。おそらく力はノノミ以上だろう。

しかし——

 

(…面白くなってきた!)

 

久しぶりの自分と同等の相手に、血が沸き立っているのもまた事実だった。

そのまま追撃にかかってきたアルを片手持ちのハンドガンで牽制し、もう片方の手でショットガンのリロードを終わらせ間髪入れずぶっ放す。

 

常人ならまずできる訳が無い神業だった。

何かを思い出すようにそっと髪ゴムを取り出し、髪を一つに結ぶ。

 

「あれ、昔の写真の…」

思わずシロコが呟いた瞬間、空気が変わった。ビリビリとした威圧感があたりを包む。

 

——”暁のホルス”が、目を覚ました。

 

☆

 

ホシノが臨戦体勢になっていたころ、アルは

 

(な、なんなのよこの人…!)

 

——白目をむいていた

 

至近距離で渾身の一撃をぶち当ててなお立ち上がってきたホシノを見てアルは自分の目を疑った。いくらキヴォトス人といえど大半はこの時点で気絶しているだろう。なんでピンピンしているのだろうか。

 

焦って追撃を放とうとしたらショットガンを片手リロードしながらハンドガンをぶっ放すという人間離れした技術を披露され、しかも何かのスイッチが入ったのか先程までとは明らかに質が違う威圧感を叩き込まれた。

 

今も見た目だけはカッコつけているが正直泣きそうだ。

だが心中で泣き言を言いながらも戦況判断は正確だった。

 

(おそらくもう遠距離では戦えないわね…)

 

アルの弾丸の恐ろしさはもうホシノには分かっているだろう。近距離で短期決戦を仕掛けてくるはずだ。本来スナイパーには不利な近距離戦、だがアルには関係ない。

 

(正直この戦い方はあんまりしたくないんだけど…ハードボイルドっぽくないし)

 

ガチャと音を立てながら引き金ではなく銃口の方を持ち、ホシノに向けて構える。

一瞬の見合いの後、ゴッと轟音を立てて二人の姿が重なった。

 

「アルちゃんだっけ?とんでもない戦い方するね…!」

「あなたに言われたくないわよ…!」

 

アルの近距離戦、その戦い方は非常にシンプル。

銃(・)床(・)で(・)ひ(・)た(・)す(・)ら(・)殴(・)り(・)つ(・)け(・)る(・)、ただそれだけである。

スナイパーとは思えない戦い方だったが、アルの膂力と耐久力を用いて10kgを超える銃で殴られるというのはそれだけで脅威だった。

 

盾を駆使しながらショットガンとハンドガンを間髪入れず撃つホシノと、隙を見て銃弾を打ち込みながら1mはある銃を振り回すアル。

二人の戦いは徐々にスピードを増していき、もはや常人の目では追えないものになっていった。

 

☆

 

「…社長相手にあんなにやれる人がヒナ以外にいるんだ」

「私もあんなホシノ先輩始めてみた…私が挑んだときはあんな戦いしてなかったのに」

 

カヨコとシロコが呆然としながら呟いた。

最初の方こそ真面目に戦っていたが、途中から傭兵含めた全員がホシノとアルの戦いを見物していた。最強格同士の戦いなど滅多に見られるものではないのだから仕方のないことだった。

 

始まった近距離戦はほぼ互角に見えた。ショットガンを打ち込まれたらアルが銃床で防ぎ、ホシノが打ち込まれたら盾で応戦する。

だがどちらも限界が近づいていた。どちらかの一撃が決まったらおそらく倒れるだろう。

 

そしてついにその時がやってきた。

疲れからか一瞬ホシノの動きが鈍り盾の設置が遅れる。その隙を逃すアルではない。

ホシノの腹に銃口を押し当てる。さすがのホシノも今一発入れられたらしばらく立つことはできないだろう。

 

だがそれこそが、アルが不安定な体勢になることがホシノの狙いだった。

アルの耐久力では生半可な一撃では通用しない。だが、今なら。

ホシノはアルの口(・)の(・)中(・)に(・)ショットガンを突っ込んだ。

驚愕の色を顔に浮かべるアルだがもう引き返せない。

 

ショットガンとライフルの銃声が響き渡った。

硝煙と砂埃があたりを染め上げる。

 

「先輩!」

「アルちゃん!」

 

ムツキとアヤネ達の声が交差した。

砂埃が晴れた時、立っていたのは…

 

「グッ、ア…」

「オエッ…」

 

どちらでもなかった。

ホシノはアルに腹をぶち抜かれ、アルはホシノに口内にショットガンを打ち込まれて倒れていた。

 

慌てて便利屋と対策委員会の面々が駆け寄るが両者命に別状はない。アルは体内に銃弾を浴びせられた形になるが、流石にホシノが手加減したのか柔らかいゴム弾になっていた。

まあそれでも常人なら死んでいてもおかしくないのだが…

 

思わず両者ほっと息をつきかけたところで思い出した。まだ戦いは終わっていない。

銃を構え合い戦闘に移ろうとしたときだった。

 

「うわー!」

「ごめんなさーい!」

「やってられるかあんなバケモン!」

「ちょ、ちょっと皆!?」

 

便利屋が雇っていた傭兵があんなバケモノやってられるかとばかりに一目散に逃げ出した。

あとに残ったのは気絶したホシノとアル、そして、便利屋と対策委員会のみ。

 

「…撤収しよっか」

「あっ!?ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

その便利屋もムツキがそういうと同時に持ち前の逃げ足の速さで撤退した。

ちゃっかりアルは引きずられているがまあアルなら大丈夫だろうと負の信頼が働いている。

残された対策委員会の面々と先生は呆然と立ち尽くしていた。

 

「何だったのかしら…」

 

セリカの呟きはその場の全員の心境を代弁していた。

 

翌日

アルたちは成功報酬をもらいそこね、ホシノはしつこくシロコに勝負をねだられたのはまた別の話である。

 




ifアビドスを書こうと思ったらほぼ原作になってもうた…
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