聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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12話 聖火の炎

「ちっ⁉ 数が多すぎる!!」

 

 

ザルドはアルフィアに押し付けられた『モンスター』の大軍をひたすらに駆除していた。大剣で薙ぎ払い。時には喰らい、【スキル】で自己強化をしていた。それでも『詠唱』している『穢れた精霊』には近づけず、『長文詠唱』が完了しようとしていた。

 

 

「【(アタ)エラレシ()()地精霊(ノーム) 大地(ダイチ)化身(ケシン) 大地(ダイチ)女王(オウ)】」

 

 

「また『魔法』かぁ!?」

 

 

後方火力(アルフィア)がいないせいで、一向に前に進むことができない。ザルドがエレンの回復魔法を受け、調子がいいことを話した途端、アルフィアがどっかに行ってしまったのだ。そうすべてはアルフィアのせい。アルフィアのせいである。

 

 

「ん?」

 

 

そんなことを考えているザルドは何やら空気を切り裂くような轟音が聞こえた。

 

 

「【メテオ・s、ぐふっ⁉」

 

「あっ」

 

 

ザルドは見てしまった。自身を癒してくれたエレン()が処女神が自分の眷属となんかいい雰囲気だった状態を頭突きでめちゃくちゃにしたような光景……。『穢れた精霊』とぶつかり、大爆発に巻き込まれた。正確には完成直前の『長文詠唱』が暴走……。魔力暴発(イグニス・ファトゥス)で『穢れた精霊』が内側から大爆発がおき、エレンも巻き込まれた。

 

 

「ふむ、うまくいったか……」

 

「……」

 

 

気づいたら、アルフィアがザルドの近くにいた。アルフィアはなんか一仕事終えたような雰囲気を出しており、ザルドは言葉を失っていた。いくらあの【ヘラ・ファミリア】の()()()()()()()()()()()()だが、治療師(ヒーラー)を階層主級の『モンスター』にぶん投げるのはどうなんだか……。

 

 

「お、お前っ⁉ 治療師(ヒーラー)をぶん投げる馬鹿がどこにいる!!」

 

「おい、馬鹿とは何だ? 私がまるで暴力女みたいな物言いだなぁ」

 

「実際、そんな感じだろうがぁ!!」

 

「【ゴスペル(黙れ)】!!」

 

「ぐはぁっ⁉」

 

 

【ヘラ・ファミリア】はかつて『オラリオ』で『最凶』と言われた存在。最強最悪(クレイジーサイコ)超絶残虐破壊衝動女(ハイパーウルトラヒステリー)と呼ばれている女神ヘラの【ファミリア】。

 

時には、浮気の罰で地下室に監禁して己の血で『愛の反省文(ラブレター)』を書かせたり、山奥で三日三晩木に吊るして『ふたりきりの時間(ハイキングデート)』を愉しんだりとか、色々あったのだ……。

 

アルフィアはその【ヘラ・ファミリア】の団員で唯一の、もはや絶滅危惧種並みの比較的『常識人?』枠なのだ。口より手が出てしまったり、手より『魔法』が出てしまったり、少しでも気に入らなかったらぶっ飛ばされたりするなどあるが、()()【ヘラ・ファミリア』の中では希少種(レア・モンスター)並みの『常識人?』枠なのだ。

 

そして、ザルドは『最強』と言われた存在【ゼウス・ファミリア】の団員。ゼウスの名は90%セクハラや覗きで有名だが、『最強』の名に恥じない超実力【ファミリア】。ザルドは、たまに『モンスター』を生で喰ったりする以外は常識人である。主神のゼウスやベルの父のやらかしを毎度、尻拭いをする羽目になっている苦労人でもあった。

 

 

「私はあの女神を救う手助けの手間を省いてやったにすぎん」

 

「……どういう意味だ?」

 

「あの女神を救うにはエレンの力がいるらしい」

 

「何っ⁉」

 

「そして、エレンの回復魔法は手に触れられるほど近づかないといけない。私は()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 

果たしてアルフィアがエレンにやった行為は本当に手伝いになるのだろうか?少なくともザルドの中ではそれを否定したが、そんなことをすれは再び『魔法』が飛んでくるのでグッと堪えた。

 

 

 

***

 

 

 

「……い、痛い」

 

 

エレンはやや無事だった。『大盾』を装備していたお陰で【ウェスタ・ダイモーン(スキル)】が発動。効果で発現した『堅守』、『魔防』、『ステータス』強化。『精霊』としての『魔法耐性』。これらのガチガチのバフ盛りのお陰でエレンは魔力暴発(イグニス・ファトゥス)から助かっていた……。

 

 

むにゃ

 

 

「ん?」

 

 

何やら右手にやわらかい物がある。そして、視線を下にやると()()()()()()()()()。本来ならラッキースケベを喜ぶ所なのだろうが、あいにくエレンにそんな余裕はなかった。エレンと目が合った存在は待ち望んだ相手が目の前にいることに何より喜んで、彼の名を呼んだ。

 

 

「アッ、エレン♪」

 

「ぎゃぁああああああああああああああああっっ⁉」

 

 

なんとエレンが触っていたのは『穢れた精霊』の胸だった。しかも姿が女神アルテミスの姿だ。大の恋愛アンチと言われている彼女の胸を間接的に触れられる。まさかの偉業をたたき出していた。

 

 

「ニガサナイ!!」

 

「ッッッ!?」

 

 

とっさにその場を離れようとするエレンを『穢れた精霊』は逃がさなかった。エレンの両手を自身の両手で捕まえ、エレンを()()()()()()。エレンは絶対絶命のピンチに助けを求めて叫んだ。

 

 

 

なお、帰ってきた言葉は……。

 

 

 

「「アルテミスがエレン()を押し倒したぞぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」」

 

 

 

遠くの方からヘルメスとベルの祖父のごみのような返答が返ってきた。確かに第3者目線だとそんな風に見えるのかもしれない。恋愛撲滅委員長のアルテミス(彼女)が男を押し倒す場面を誰が予想できることか。だが、状況を考えてほしい。現に2人の悲鳴のような声が響いている。

 

 

「アハッ、捕マエタ♪」

 

「(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイッッ⁉)」

 

 

ぶっちゃけエレン大ピンチ。両手の拘束はびくともしない。足も気づいたら()()()()()()みたいな物体に捕まっており、身動きが一切できない状態。っていうか段々足全体を包もうとしているのか這い上がってきている状態だった。

 

 

「(あと、できることは()()()()()使()()()()()()……ん?)」

 

 

必死にこの危機を脱する為、色々と方法がないか考えていると、この事態の元凶(アルフィア)が言っていた言葉が脳裏に出てきた。『回復魔法で救えばいい』。なぜかこの瞬間、この言葉が出てきた。理屈はない。道理はない。でもこのままでは喰われると思ったエレンはヤケクソになりながら……。

 

 

 

「セ、セイクリッドフレアァァァァァァァァァッ!!」

 

 

回復魔法を『穢れた精霊』に対して行使した。『モンスター』に対しての回復魔法の行使。本来なら相手を回復させてしまう自殺行為だが……。

 

 

「イ、嫌ッ、嫌ッッァァァァッァァァァァァァァァァァ⁉」

 

「へっ?」

 

 

なんと『穢れた精霊』がエレンの回復魔法を受け、()()()()()()。【セイクリッドフレア】の青い炎が『穢れた精霊』を包み、全身を燃やしているのだ。『穢れた精霊』は何とか炎を振り払おうとするが、青い炎は全く消える気配を感じさせなかった。

 

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

「ちょっ⁉」

 

 

この隙を見逃さず、アルフィアは上半身の人型に向けて音の魔法を叩き込んだ。『穢れた精霊』は木っ端微塵に吹き飛び、ついでにエレンも吹き飛ばされた。そんなエレンをザルドが空中でキャッチ。態勢の立て直しの為、『穢れた精霊』から距離を離した。

 

 

「……無事か?」

 

「ひ、ひどい目に遭いました」

 

「……だろうなぁ」

 

 

本当にひどい目に遭った。捕まった時は死を覚悟してしまった。しかも、姿が女神アルテミスの姿なので、なんだかいけない気持ちになったり、ならなかったり……。なお、エレンがこんなひどい目に遭う羽目にあった元凶(アルフィア)は……。

 

 

「……やはり、あの程度では死なないか」

 

 

全くの無関心である。ぶっちゃけ、『ふざけろっ!!』である。それに、エレンを拘束していた『穢れた精霊』をアルフィアは魔法で粉々にしたんだ。エレンはてっきり倒したのかと思ったら違ったらしい。下半身の蠍の部分からまるで生えてくるような感じで再生する『穢れた精霊』。

 

エレンが離れた影響で青い炎は消えている。それでも、焼かれた部分はまだ焦げている状態だった。

 

 

ユ、許サナイ……」

 

「あ、あの……」

 

許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ

 

「ワァー、アルフィアサンネラワレテルーー、タイヘンダー」(棒読み)*1

 

()()()!!!」

 

「やっぱりこうなったーーーーーっ!!!」

 

 

嫌な予感を感じ、アルフィアに擦りつけをしようとするエレンだったが、失敗に終わってしまった。当然、擦りつけようとするエレンをアルフィアは見逃すはずがなく、エレンの顔を鷲掴み。ギシギシとなってはいけない音がなり、『精霊』の悲鳴が響いていた。

 

 

 

***

 

 

 

「「「「……」」」

 

「エレン君がピンチの時に、なーにが『アルテミスが男を押し倒した』だぁ?この変態の中の変態がぁぁぁぁぁ!!」

 

「この非常事態に何興奮しているんですか?馬鹿ですか?馬鹿なんですよね?救いようのない馬鹿なんですよね?もういっそくたばってください!!」

 

「恥を知れ⁉ この豚ども!?」

 

「「す、すみませんでしたー!!」」

 

「「「……」」」

 

 

ベル、リリ、ヴェルフの3人は『何を見せられてるんだ?』と思った。ヘスティア、アスフィ、アルテミスの3人がヘルメスとベルの祖父を袋叩きにしていた。アルテミスに至ってはヘスティアが持っていた『矢』で叩きのめしていた。

 

 

「み、皆さん⁉ 早くエレンさんを助けないと……」

 

「「「あっ」」」

 

「忘れてたんですかぁ⁉」

 

「何やってんだよ……」

 

 

どうやらヘルメスとゼウス(豚共)の制裁ですっかりエレンのことを忘れていたようだ。遠くでは『穢れた精霊』がエレンを全力で追いかけ回しているのだ。ようなく落ち着きを取り戻した彼女達は、ヘルメスとゼウス(豚共)の制裁の制裁を一旦中止。事態の解決にシフトした。

 

 

「ここにいたか、ベル」

 

「へっ、ア、アルフィアお義母さん⁉ どうしてここに?」

 

「休憩だ」

 

「へっ?」

 

「? なんだその顔は。私が何かおかしなことを言っているか? ん?」

 

「いえ! アルフィアお義母さんは何にも間違っていません!!」

 

「よろしい」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 

戦闘中だったアルフィアがいつの間にかベル達所に戻ってきていた。ベルが尋ねるとまさかの()()。これに『何か文句でもあるのか?』と言いたげな表情をするアルフィアに対し、ベルはすかさず肯定。ベルは身をもって知っている。ここで彼女(アルフィア)の行動を指摘すれば、福音拳骨(ゴスペル・パンチ)が飛んでくることを。

 

なお、遠くではエレンの悲鳴が聞こえるがアルフィアはその悲鳴を聞き流し、精神力回復薬(マジック・ポーション)で回復を済ませる。

 

 

「神アルテミス。『穢れた精霊(アレ)』にはその『槍』は通用するのか?」

 

「……おそらく、あの『穢れた精霊』は今も『私』を取り込んでいる。『アンタレス』の時より、効果は低いと思うが、通用するはずだ」

 

「ふむ」

 

「……もしかして、アルフィアお義母さんでも無理そう?」

 

「『無理』、と言うより『効いていない』の方が正しいな。『穢れた精霊(アレ)』には私やザルドがいくら攻撃を叩き込んでもダメージになっていない」

 

「そんなの、一体どうすれば……」

 

「唯一エレンの『魔法』は効いているようだが、『穢れた精霊(アレ)』はエレンを警戒して、近づくことができん。また手助けし(ぶん投げ)てやってもいいが、同じ手は2度と通用しないだろう」

 

「やめて!エレンさんが死んじゃうからヤメテ!!」

 

 

再びエレンをぶん投げようと考えるアルフィアに必死に『やめて⁉』と懇願するベル。今の『穢れた精霊』……またの名を『ギルタブルル』は神の力(アルカナム)を宿す『モンスター』。いくらザルドとアルフィアの強力な攻撃を加えようと損傷は与えられてもダメージにはなっていなかった。

 

 

「ベル」

 

「は、はい⁉」

 

「お前は『槍』を使って『穢れた精霊(アレ)』の注意を引け」

 

「は、はい」

 

「ほかの奴はベルを死ぬ気で守れ。いいな?」

 

「「はい⁉」」

 

 

回復を済ませたアルフィアは再び『ギルタブルル』に向けて行動を開始した。とはいえベルはLv.2の冒険者。ただ『槍』を投擲するだけでは注意を引けないと考えたベルは【スキル】の発動に踏み込んだ。

 

 

「(あの時と同じように……)」

 

 

18階層の『黒いゴライアス』と戦った時を思い出す。あの大鐘楼をもう一度。あの英雄の一撃をもう一度。意識を深く集中させるベル。すると、ベルの体を白い光が包み、再び大鐘楼の音色が響いた。

 

 

 

***

 

 

 

エレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレン

 

「ブチギレすぎでしょ⁉」

 

絶対ニ許サナイ!絶対ニ穢ガス!絶対ニ汚ス!絶対ニ喰ベル!絶対ニ奪ウ!絶対ニ殺ス!

 

「ハハハッ、良かったなぁ、エレン。これが『モテ期』ってやつじゃないか?」

 

「嫌ですよ!こんな『モテ期』は!!」

 

 

ザルドとエレンの2人は再び、『ギルタブルル』に追い回されていた。エレンの回復魔法の炎を浴びてからの『ギルタブルル』はそれはもうブチギレていた。気づいたらアルフィアはいなくなっており、後方支援が無くなり逃げる羽目になっていた。

 

 

「おいエレン!お前のあの炎であの女神の救出は出来そうか?」

 

「恐らくは……」

 

「……ちなみにどのぐらい足止めにをすればいい」

 

「……5分ぐらい?」

 

「厳しいなぁ……」

 

 

エレンの回復魔法【聖なる火よ(セイクリッドフレア)】は特性は2つ。1つは炉の女神としてのヘスティア由来の炎。家庭を守り、孤児を救い、癒しを与える炎。傷や体力、病を癒す『癒しの炎』。もう1つは呪詛(カース)を含んだ状態異常を『聖火』で焼き払う『浄化の炎』。

 

そして、『ギルタブルル』を焼き払ったのは2つ目の『浄化の炎』。『穢れた精霊』の()()。それは『不滅の聖火(ほのお)』を司るヘスティアの『精霊』。エレンだからこそ、実現可能な現象。相手の特性を無視し、無条件に『聖火』で焼き払おうとする、『不滅の聖火(ほのお)』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。『穢れた精霊』にとってエレンは『天敵』()()()()()()()……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穢れた精霊(ギルダブルル)』が怒り狂っているのはこれが原因。『神の力(アルカナム)』による防御性能の()()()()。『不滅の聖火(ほのお)』による()()。それによる全能力の()()。何より、取り込んだ『アルテミス(女神)』の()()()()()()

 

エレンの炎(あれ)を浴び続けたら、せっかく取り込んだ『アルテミス(女神)』が解放されることを恐れた『穢れた精霊(ギルダブルル)』は早急にエレンを排除しようと躍起になっていた。

 

 

ゴーン、ゴーン、ゴーン

 

 

「「「!!!」」」

 

 

エレン、ザルド……そして、『穢れた精霊(ギルダブルル)』の耳に聞こえるのは大鐘楼の音色。『槍』を持ち、白い光に包まれる少年。力強い大鐘楼の音色が響き渡り、『槍』が黄金に輝き、神聖文字(ヒエログリフ)が浮かび上がっていた。

 

 

「……『オリオン』」

 

 

取り込んだ『女神』の情報で『槍』の正体に気付いた『穢れた精霊(ギルダブルル)』が呟いた。同じ『精霊』であるエレンに気を取られていたが、本来なら最も警戒しなければならいない『神殺しの矢』の存在。もう1つの『天敵』を。

 

 

「ーーーーっっっ!!!」

 

 

穢れた精霊(ギルダブルル)』は困惑した。どちらを先に潰すべきか。エレンを警戒しないといけないが、当然『オリオン()』も警戒しないといけない。『天敵』となる存在が同時に2つも出現したことにより、『穢れた精霊(ギルダブルル)』は生まれて初めて()()()()()()

 

 

「余所見とは、随分余裕だなぁ?」

 

「エッ?」

 

 

この隙を見逃さず、ザルドは『穢れた精霊(ギルダブルル)』に大剣を振りかざす、ダメージを与えられなくても、()()()()()()()()()()()()。大剣の一撃が『穢れた精霊(ギルダブルル)』の背後に直撃。甲殻は大きく損傷し、バランスを崩した『穢れた精霊(ギルダブルル)』は転倒した。

 

 

「お前は少し大人しくしていろ」

 

「エッ?」

 

 

間を置かずに今度はアルフィアの『魔法』が叩き込まれる。超短文詠唱なのをいいことに大量の『魔法』が叩き込まれる。その光景は降り注ぐ豪雨のごとく。それでも、『穢れた精霊(ギルダブルル)』はエレンと同じ『精霊』。魔力耐性の高さを利用し、強引に音の豪雨を突破。目の前にいるアルフィアを潰そうと襲いかかるが……。

 

 

「【炸響(ルギオ)】」

 

 

アルフィアが『穢れた精霊(ギルダブルル)』に打ち込んだ『魔法』が炸裂した。これは『スペルキー』。その場に残っている魔力を起動させることで起きる『二段構えの砲撃』。それが()()()()()し、『穢れた精霊(ギルダブルル)』の全身を()()()()()

 

 

「……やはり、エレンの『魔法』が最も効果的か」

 

 

砕かれた体を再生させる『穢れた精霊(ギルダブルル)』を見てアルフィアが呟いた。ひび割れた殻は元通りになるが、最初に比べると()()。エレンの炎に焼かれた影響で再生スピードに時間が掛かっているようだった。

 

 

「隙は作ってやったぞ」

 

「ーーー!!!」

 

 

アルフィアが呟きと同時に『穢れた精霊(ギルダブルル)』に()()()()()()()。『穢れた精霊(ギルダブルル)』が凍てつく。またアレが来る。触れる者の排除に移ろうとする前に、触れている者が『魔法』を行使した。

 

 

「【セイクリッドフレア】!!」

 

「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ⁉」

 

 

再び『穢れた精霊(ギルダブルル)』をエレンの炎が覆いつくす。それに今回のはエレンの()()()()。これまでやったことのない回復魔法の()()()()は最初の回復魔法を遥かに超える出力だった。一瞬で『穢れた精霊(ギルダブルル)』の全身を包み、絶叫を上げた。

 

これにより、『穢れた精霊(ギルダブルル)』のヘイトは完全にエレンの方に向けられ、ベルの方には代わりに大量の『モンスター』が流れ込んだ。

 

 

 

***

 

 

 

 

「絶対に【リトル・ルーキー(ベル・クラネル)】を守り向きますよ!!!」

 

「「「「「おうっ!!!」」」」」

 

「おらぁっっ!!」

 

「こんのぉっ!!」

 

 

ベルの畜力(チャージ)が終わるまでの間、【ヘルメス・ファミリア】の総動員、ヴェルフ、リリが多くの『モンスター』からベルを守っていた。【ヘルメス・ファミリア】は主に大型の蠍型モンスターを。ヴェルフとリリは極彩色の植物モンスターをヴェルフが打った魔剣で迎え撃っていた。

 

 

「(英雄に、憧れていた……)」

 

 

畜力(チャージ)を続けている時、ベルはアルテミスとの会話を思い出していた。

 

 

「(どんな怪物もやっつけて……たくさんの人達を笑顔にして)」

 

 

それは2人で湖での会話。ベルは英雄に憧れている話。どんなに強大な怪物もやっつけて、多くの人々を笑顔にできるそんな英雄に……。

 

 

「(悲劇のヒロインなんて、どこにもいない)」

 

 

何より、涙を流すヒロインを救える英雄に憧れていた。アルゴノゥトのように……。

 

 

「(みんなを救える……()()()()()()()()()()()())」

 

 

しかし、現実は残酷だった。『穢れた精霊(ギルダブルル)』が現れ、アルテミスの姿をした『モンスター』が現れた。そして、アルテミスから明かされた真実。ベルの目の前にいる彼女は本物では無いこと。このままでは『穢れた精霊(ギルダブルル)』によって、『下界』は滅ぼされてしまうこと。

 

何より、『穢れた精霊(ギルダブルル)』を倒すには、ベルが引き抜いた『槍』。通称『(オリオン)』で取り込まれたアルテミスごと射抜かないといけないということを。ベルではアルテミスを助けることはできない。出来ることは囚われの身のアルテミスを()()、解放してあげるぐらいだ。

 

ベルはこの事実を否定したかった。今のベルは()()()()()()()()()()()()()()。英雄の階段に足をかけてすらいない少年だった。そんな彼は自分が女神を手にかけないといけない事実に目をそらしたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主神のヘスティアからの情報。エレンならアルテミスを救える可能性があることを。

 

 

「(最大畜力(フル・チャージ)!)」

 

「!!!」

 

 

ベルの畜力(チャージ)が完了し、『(オリオン)』を握りしめ走り出した。『穢れた精霊(ギルダブルル)』はすぐに感じとった。あれは脅威だっ!そう感じた『穢れた精霊(ギルダブルル)』は矛先をエレンからベルに替え、『詠唱』を始めた。

 

 

暗闇(クラヤミ)ヲ照ラスノハ月の光 降リ注グハ女神ノ(ナミダ) 代行者タル我ガ名ハ月精霊(セレーネー) (ツキ)ノ化身 (ツキ)女王(オウ)】」

 

 

『高速詠唱』。その『詠唱』の速さは、エレン、ザルド、アルフィアの介入を許さない速度。『穢れた精霊(ギルダブルル)』は『魔法』を『月』からではなく、『直接自身』で放つように『魔法』を構築。その姿は狩猟を司る女神アルテミスそのものだった。

 

 

「【月の涙(ムーン・アロー)】!!!」

 

「うわあああああああっっ!」

 

 

穢れた精霊(ギルダブルル)』の『矢』と、ベルの『(オリオン)』の衝突。結果は()()。衝突しあうお互いの『矢』によって周囲には凄まじい衝撃波が起こっていた。

 

 

 

「ア、アァァ、ァァァァ」

 

 

だが、拮抗していたのも最初だけ……。エレンの炎を2度も浴びた『穢れた精霊(ギルダブルル)』は大きく弱体化。次第に『穢れた精霊(ギルダブルル)』の『矢』は罅が走り、砕け散った……。

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

 

 

ベルは『穢れた精霊(ギルダブルル)』の『矢』が砕け散った瞬間……『(オリオン)』を投擲。『穢れた精霊(ギルダブルル)』は胸部に捕えているアルテミスを守る為、瞬時に胸部の口を閉じたが、それではベルの『(オリオン)』を防ぐことは、当然できなかった。

 

(オリオン)』は胸部の口を瞬時に破壊し、その衝撃は『穢れた精霊(ギルダブルル)』にも伝わり、全身を砕いた。

 

 

「ーーーァァァ」

 

 

穢れた精霊(ギルダブルル)』は全身を砕かれ、動けずにいた。エレンの炎の影響で碌に再生もできない状態が続いている。

 

 

「ア、アァァ」

 

 

そして、そんな『穢れた精霊(ギルダブルル)』に近づく者がいた。その者は先程ベルが投擲した『(オリオン)』を握りしめており、ゆっくりと『穢れた精霊(ギルダブルル)』に近づいていた。

 

 

「イヤァ、イヤァ、イヤァ……」

 

ザァ、ザァ、ザァ

 

「オ願イ、来ナイデェ、イヤァ……」

 

コン、コン、コン

 

「オ願イ、許シテェ、オ願イィ……」

 

「う~ん?どうしようか……」

 

 

近づいている者はエレンだった。エレンは『(オリオン)』を握りしめ、『穢れた精霊(ギルダブルル)』に近づき、胸部の口が破壊されたことで剝き出しになっているアルテミスが囚われている水晶に近づいていた。

 

穢れた精霊(ギルダブルル)』はすっかり、エレンの炎を恐れてしまっており、なんなら涙まで流しながら命乞いをしていた。その光景はまるでこれから強姦にあう女性が男に命乞いをするかの如く。それに姿があの女神アルテミスと同じなのだ。この光景を見てしまったら、さすがのエレンも手を下すことも……。

 

 

 

「んなわけないだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 

 

できてしまった。

 

 

 

 

エレンは命乞いをする『穢れた精霊(ギルダブルル)』に対して、思いっきり『(オリオン)』を水晶に突き刺し、『詠唱』した。

 

 

「【セイクリッドフレア】!!!」

*1
アルフィアに擦り付けようとしている。




ここまで読んでいただきありがとうございました。


聖火ならやっぱり浄化でしょ!とおもった投稿主による『穢れた精霊』特攻を持つエレンでした。といっても回復魔法なのでダメージはありません。

全ステータスのダウン、再生能力の低下、聖火による浄化。主にこんな感じでしょうか。浴びれば浴びるほど、長ければ長いほど効果が増し、重ねがけが可能です。

悲劇やシリアス系をうまく書けなかったので、ギャグ系みたいな感じで書いてみました。


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