誤字報告、感想等、非常に助かっています。感想をもらうと投稿者の元気になれるので、ちょっとのことでもいいので、書いてくれるととても嬉しいです。時間ができたときに返信をします。
「【炎華】!!!」
アリーゼの炎を纏った一撃が『ラムトン』に叩き込まれる。付与魔法の炎の一点集中の『魔石』を狙った攻撃。『ラムトン』は悲鳴を上げる暇もなく絶命。『魔石』も砕かれその巨体は灰へと瞬時に変わっていった。
「ふぅ~、これで全部かしら?」
「追加の分も含めて、だがな」
「あ!輝夜、そっちは大丈夫だった?」
「こっちも片付いた。さすがに増援が来たときはゾッとしたが、何とかなったな」
アリーゼと輝夜が話している内容は、『ラムトン』を含めた『深層種』が12階層に出現した時の話だった。最初こそは問題なかったが、途中に新たに現れた『ラムトン』が5匹と追加の『深層のモンスター』の集団。
これには正義の眷属達は『ふざけるな!ダンジョンの馬鹿野郎っ!!!』と一同声を揃えて『ダンジョン』に罵声を飛ばしていた。そのあとは、どうにか追加の『モンスター』を全て撃破。ひとまずの休息を得ることができた。
「おーい、アリーゼ、輝夜! ほらぁ、回復薬だぞ」
「ライラ、状況は?」
「『モンスター』が現れる気配はねぇが、リオン辺りに警戒させてる。だけどさすがに在庫切れじゃねーか?」
「だと嬉しいのだがな……」
ここにきてようやく『モンスター』の襲撃が止んだ。いくら『ダンジョン』が無限に『モンスター』を生み出せるとはいえ、限度はある。あと来るとすれば、既に生まれている『モンスター』ぐらいだ。
「……『階層主』が出てきたりして?」
「おいおい、冗談は勘弁してくれよ、アリーゼ」
「そうでございますよ。団長様?いくら『深層』の『モンスター』がここまで来たからといって、『階層主』はさすがに……」
「うん!そうだよね!流石に『階層主』は無いよね!」
「「「アハハハハハ」」」
『いくら何でもさすがにないか!』と3人は高笑いをしていた。でも彼女達は忘れていた。彼女達がいる場所は『ダンジョン』。そこでは何が起こるか分からない未知の領域。神々でさえ、予想だにしない異常事態が起こる場所なのだ。
ボオォォォォォォォォォォォ!!!
「「「……」」」
『ラムトン』が掘った穴から蒼い炎が噴き出してきた。そして、聞こえてくるのは巨人の遠吠え。見覚えのある炎、聞き覚えのある鳴き声。彼女達は知らず知らずに神々が言う所の『フラグ』を建ててしまったのだ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアッ!!!」
「グァァァァァァァァッァァァァァァァッァァァッ!!!」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」」」
ここにきてまさかの『階層主』の同時出現。前代未聞の階主が一つの階層に2体出現する異常事態にアリーゼ、輝夜、ライラの3人は驚かずにはいられなかった。
現れたのは17階層の『迷宮の孤王』。階層主『ゴライアス』。Lv.4
そして、27階層の『迷宮の孤王』。階層主『アンフィス・バエナ』。Lv.5
さらに『下層』の希少種の『ヴォルティメリア』や『ブルードラゴン』まで出てくる始末。
「まさか、『階層主』まで来るとはね……」
「フィン、もしや……」
「あぁ、親指はまだ疼いている」
「……来るのか?」
「おそらくは……」
フィンとリヴェリアが自身の足元に目をやりながら何やら警戒をする。『ゴライアス』そして、『アンフィス・バエナ』。ここまできたら次に来る『階層主』が誰なのか容易に想像出来てしまう。
「……『ウダイオス』」
「『アンフィス・バエナ』だって、12階層まで来たんだ。なら、『ウダイオス』が来てもおかしくはない」
『アンフィス・バエナ』は水竜。文字通り、水の中を泳ぐ『モンスター』である。だが、この『アンフィス・バエナ』は竜種の頑丈さを利用し、地べたを這って12階層まで来ている。
なら、『ウダイオス』が来てもおかしくはない」とフィンは考えていた。実際、『ウダイオス』は『地上』を目指して、進行している。12階層に来るのも時間の問題だった。
だが……。
「こちらにも援軍が来たようだね!」
「何っ⁉」
フィンの視線の先にいるのは敵対派閥。本来なら潰しあう関係にいる派閥だが、ロキの説得により、一時の共闘関係。リヴェリアも話は聞いてはいたが、実現不可能だろうと思っていた所だった。
「まさか、本当に来てくれるとは思わなかったよ。オッタル」
「女神の御前を汚すわけにはいかない。それだけだ」
「君も来てくれるとはね、ヘディン」
「黙れ。私がここにいるのは女神の神意だ。貴様の為ではない!」
「……」
フィンの予想だと、オッタルのみだと考えていたが、嬉しい誤算が起きた。来たのは【猛者】オッタル。そして、【白妖の魔杖】ヘディン・セルランド。【黒妖の魔剣】ヘグニ・ラグナール。治療師【女神の黄金】ヘイズ・ベルベットが率いる『満たす煤者達』の姿だった。
「おい、オッタル!どこに行くつもりだ?」
「俺は下に行く。ここはお前達だけで十分だろう」
「チィッ!!」
【フレイヤ・ファミリア】の眷属達の殆どは超個人主義の集まり。女神フレイヤの寵愛を受ける為、日々同じ【ファミリア】同士で殺し合いをしている派閥。当然ながら協力して戦うなんて考えは存在しない集団である。
「……まぁいい。『ウダイオス』とその他を押し付ける手間が省けた。ヘグニ、お前は『アンフィス・バエナ』を殺れ」
「分かったよ、ヘディン」
「ヘイズ。お前は……」
「分かってますよー。【ロキ・ファミリア】を含めた者達の回復ですよね?」
「それでいい」
「了解でーす!」
階層主が同時に出現する異常事態が起きたが、それを相殺できる程の【フレイヤ・ファミリア】の到着で巻き返しを図る【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】。
***
「アァアァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!??」
『穢れた精霊』はエレンの炎に焼かれていた。ベルの『矢』による攻撃で体を動かすことができず、エレンを排除できずにいた。
何より……。
「(ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ!?)」
『穢れた精霊』は困惑していた。
「(ナンデ、貴方ガ『矢』ヲ使エルノ?)」
『矢』は選ばれた者でなければ、ベルのように『スキル』で『矢』を強化させたり、エレンのように『矢』に『魔法』を流し込むことはできない。
そう、エレンも矢に選ばれし者なのだ。
「こ、のぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
エレンは『矢』を通じて、水晶の中のアルテミスに直接『魔法』を流し込んでいた。回復魔法の最大出力。『矢』を拾う時に精神力回復薬で回復は済ませているが長くな持ちそうになかった。
それでも、アルテミスを閉じ込めている水晶は少しずつひび割れており、あと少しだった。
「【荒ベ、……天ノ、怒リ、……ヨ】」
「(超短文詠唱!?)」
ここに来てまさかのエレンと同じ、超短文詠唱の『魔法』。『穢れた精霊』はエレンを逃がさないように無数の触手を放ち、拘束すると『魔法』を開放した。
【放電!!!】
『穢れた精霊』が唱えたのは雷の付与魔法。当然捕まっているエレンは雷の付与魔法をモロに受けた。その威力は真っ暗の夜は明るく見えるぐらいの威力。
だが……。
「残念、でしたね……」
「!!??」
エレンはこの『魔法』を耐えていた。本来なら消し飛んでいたが、ここにきてエレンの炎による弱体化が効いている。それにエレンが行使しているのは回復魔法。雷で受けたダメージをエレンの回復魔法で癒し、相殺する。
いわば、我慢比べである。
「(くそぉっ、精神力がぁ……)」
それべも、エレンが圧倒的に不利だった。エレンはLv.1の冒険者。ヒューマンや亜人より、精神力を多く持っている『精霊』であっても『穢れた精霊』には遠く及ばなかった。
このままでは先にエレンが力尽きてしまう状況。端から見ても圧倒的にエレンが不利である状況にそれぞれが加勢に入ろうとした瞬間。月光に似た光の粒子がエレンに集まっていた。
「これは……」
「『魔力』の残滓?いや、違うな……まさか⁉」
「フム、『精霊』じゃのぉ。しかも、この『精霊』は……」
「……お前達」
エレンに集まっているのはアルテミスの『精霊の残滓』。その殆どは『アンタレス』の封印や、長い年月で力尽きてしまった者達。この『精霊の残滓』にはもはや『自我』と呼べるものがなかった。それでも創造主を助けたいと思う『気持ち』が『奇跡』を起こしていた。
「……すまない。私はお前達に過酷を押し付けてしまった」
アルテミスは『精霊の残滓』に謝罪する。過酷を押し付けてしまったことを。アルテミスが『アンタレス』の封印の為に送り込んだのは殆どが『上位精霊』。その殆どが『自我』を持っている。そんな『アルテミスの精霊』の人生を『アンタレス』の封印に使わせてしまったことを。そして、唯一の生き残りも、『穢れた精霊』に殺され、『力』を奪われてしまった。
「自分勝手なのは分かっている。都合がいい話なのは分かっている。私はお前達を殺してしまった。恨んでくれていい。許さなくていい。それでも……」
アルテミスは涙を流し、懇願する。『アルテミスの精霊』の人生を『アンタレス』の封印で消費させ、奪われた『力』で『アルテミスの精霊』を手にかけてしまったことを。恨まれて当然。許されなくて当然だとアルテミスが告げた。
それでも……。
「それでも、エレンを助けてほしい!!!」
「(はい。アルテミス様)」
ふと、そんな声が聞こえて気がした。『アルテミスの精霊』は、アルテミスを恨んでなどいない。だって、『アルテミスの精霊』はアルテミスが大好きなのだ。強くて、凛々しくて、優しい創造主が大好きだった。
そして、『アルテミスの精霊』は創造主と同じように『下界』を愛している。だから、『アンタレス』の封印で自分達が消えてしまうことになっても怖くはなかった。だって『下界』を守ることは『下界』を愛したアルテミスを守る事と同義なのだから。
「(力が……!?)」
エレンの体の中に、月光に似た光の粒子が入っていき、エレンも同じ光を発していた。エレンは自身の力の上昇を感じているが、詳しいことは分からなかった。ただ、この機会を逃さないように正真正銘、最後の力を注ぎ込んだ。
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
『矢』に最大限の『魔力』を流し込むエレン。『矢』が突き刺さった水晶は大きくひび割れていき、割れた箇所からはエレンの炎が漏れ出していた。
「ア……アァァ……アァァァァッッ!!!」
『穢れた精霊』は見た。アルテミスを閉じ込めている水晶が割れる瞬間。一瞬、エレンの炎と髪が青から赤色に変わっていた。
「アルテミス様!?」
水晶が砕け散った瞬間。中に閉じ込められていたアルテミスが解放され、エレンが瞬時にキャッチ。そのまま『穢れた精霊』から距離をとる。アルテミスの意識は戻らなかったが、寝息と心臓の鼓動が聞こえるので、救出には成功したようだった。
「ーーーあっ」
エレンは気づいてしまった。今のアルテミスは裸の状態。今までは追い回されたり、ぶん投げられたり、追い回されたりして余裕がなかったが、水晶の中のアルテミスは裸の状態だった。
そして、その裸の状態をエレンが抱きかかえている状態。既に色々と手遅れ感はあるが、エレンは自身が身に着けていたボロボロのコートをアルテミスに着せた。ボロボロの布一枚という薄すぎる防壁だが、無いよりはマシだろう……多分。
「ア……アァァ……ア」
「えっ?」
エレンが後ろを振り返ると全身が焼け焦げている『穢れた精霊』が目に映った。既に虫の息の状態。だが、エレンが気になっていたのはそこではなかった。
「『魔石』を砕いたはずなのに、なんで……?」
エレンはアルテミスを封じ込めている水晶が『魔石』であると推測していたが、それはアルテミスを救出する前の話。『穢れた精霊』の『魔石』は別に存在し、『穢れた精霊』の『魔石』と水晶を同調させることで、アルテミスの『力』を行使していた。
『穢れた精霊』はエレンが水晶を破壊する瞬間……。水晶との同調を切り、自身の『魔石』を守った。それでも、『力』を大きく失っている。それでも、もう精神力疲労寸前のエレンは『穢れた精霊』から距離を取ろうとした瞬間。
「アァァァァァァァァァァァァァァァッァァァッッ!!!」
「うおぉ!?」
突然、『穢れた精霊』から無数の触手が飛び出し、周囲の『モンスター』を貫いた。貫かれた『モンスター』は『魔石』を引き抜かれ、灰へと変わり、『魔石』は『穢れた精霊』に吸収された。
『強化種』
『モンスター』は『魔石』を取り込むことで能力を飛躍的に向上させる。【ステイタス】を更新させる冒険者のように。『穢れた精霊』はエレンによって弱体化された『力』を多くの『魔石』を取り込むことで取り戻そうとしていた。
女神を取り込んでいた『穢れた精霊』は推定Lv.10。そこにエレンの炎による弱体化と女神を失ったことで、推定Lv.5ぐらいまで落ちた力を推定Lv.8まで取り戻した。
「許サナイッ!! エレンッッッ!!!」
「やばっ⁉」
『モンスター』の『魔石』を取り込む為に放たれた触手が今度はエレンを襲う。視界を埋めつく程の規模の攻撃。エレンは回避が無理と判断し、『大盾』を掲げた。触手が『大盾』に衝突する瞬間。触手が福音と大剣によって粉砕された。
「「よくやった」」
「え?」
掲げていた『大盾』を下すと、エレンの前にはアルフィアとザルドが立っていた。2人は『穢れた精霊』から目をそらさず、後ろにいるエレンに声をかける。
「よく女神を救ったなぁ、エレン。誇っていいぞ」
「エレン、お前はその女神を連れて下がってろ」
「あ、はい」
2人の称賛を受けたエレンはアルテミスを抱きかかえ、その場を離れる。手持ちの精神力回復薬は全部使い果たしており、精神力疲労寸前の状態。体も疲労で限界だったが、今ここで回復魔法を使えば、精神力疲労で倒れることが感覚で分かっているエレンは重い足を必死に動かし、走っていた。
ゾッ……!?
走っているエレンの後方で凄まじい『魔力の波長』を感じた。反応は2つ。今まで感じたことのない超巨大な『魔力』の高ぶりにエレンはとっさに後ろを振り返った。
エレンの視界に映ったのは『怪物』と『魔女』が空気が歪んでしまうほどの『魔力』を塗り上げながら、『魔法』を歌っていた。
「【紅蓮ノ壁ヨ 業火ノ咆哮ヨ】」
「【禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】」
「【突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ 燃エル空燃エル大地燃エル海燃エル泉燃エル山燃エル命】」
「【神々の喇叭、精霊の竪琴、光の旋律、すなわち罪過の烙印】」
「【全テヲ焦土ト変エ怒リト嘆キノ号砲ヲ 我ガ愛セシ英雄ノ命ノ代償ヲ】」
「【箱庭に愛されし我が運命よーーー砕け散れ。私は貴様を憎んでいる】」
『超長文詠唱』。『穢れた精霊』とアルフィアが互いに自身の『魔法』を詠唱する。練り上げられる『魔力』の密度は凄まじい物であり、遠くにいるエレンがその規模に押しつぶされそうになるのを実感していた。
「(もしかして? アルフィアさんって今まで本気じゃなかったの!?)」
エレンの考えは的中している。アルフィアは【静寂の園】を解除している。これはアルフィアの二つ目の『魔法』。その内容は全身を『鎧』のように纏う『付与魔法』。360°どこから『魔法』を撃たれようが無効化できる反則級の『魔法』。
しかし、デメリットも存在する。それはこの『付与魔法』は『中』にも作用してしまうことだ。つまりこの『付与魔法』が発動している間はアルフィア自身の『魔法』も威力が著しく下がってしまう欠点がある。
逆に言えばこの『付与魔法』を解いた時こそ、アルフィアの真の力と言える。
「(でも、『穢れた精霊』の方が早い!)」
それでも『穢れた精霊』の方が詠唱速度が早かった。確かにアルフィアの詠唱速度も早い。それでも、『穢れた精霊』は魔法種族の『精霊』。そのスペックを最大限に利用し、『魔法』の詠唱を完了させようとしていた。
「【代行者ノ名ニオイテ命ジル 与エラレシ我ガ名ハ火精霊 炎ノ化身炎ノ女王ーーー】」
やはり、先に『魔法』を完成させたのは『穢れた精霊』だった。紡がれたのは炉の女神の精霊と同じ、火精霊の名を冠する『魔法』。『穢れた精霊』の手の平に出来た小さな炎を『穢れた精霊』はまるで、ロウソクの火を消すように息を吹きかけ、その名を唱えた。
「【ファイヤーストーム】!」
世界が紅に染まった。知れは暗闇の夜を忘れさせるかのような極大の炎嵐。
「(逃げられない……)」
エレンは察してしまった。あの『魔法』からは逃げられないと。津波と見間違うくらいの熱風。紅の熱波が濁流となっており、離れているエレンでさえも、逃げられないことを悟っていた。
「【父神よ、許せ。神々の晩餐をも平らげることを】!」
「えっ?ザルドさん!!??」
エレンは目を疑った。紅の熱風に立ちふさがる男の姿を。なんとザルドは一歩も動かずに、詠唱を行っている。
「【貪れ、煉獄の舌。喰らえ、灼熱の牙】! ---【レーア・アンブロシア】!!」
ザルドの大剣を、この世ものと思えぬ極大の焔が包む。エレンは思った。「無理だ」と。そんなエレンの考えを無視するかの如く、ザルドは大剣を構え、紅の熱風に向けて、大剣を振り下ろした。
「エッ」
『穢れた精霊』が放心状態となった。無理もない。だって斬れているのだ。巨大な蠍の体は斜めに斬られ、崩れ落ちる。幸い、『魔石』は無事なおかげで、灰にならずに済んでいる。
「エッ」
またしても、『穢れた精霊』は同じ言葉を口にする。だって、発動した【ファイヤーストーム】が斬られたのだ。灼熱の津波が真っ二つの斬られ、そのまま『穢れた精霊』を斬り裂いた。言葉にするのは簡単だが、それを受け入れることは『穢れた精霊』はできなかった。
『穢れた精霊』の時が止まった。自身の最大火力をさせる『魔法』を斬られ、霧散した。『覇者の一撃』。その一撃を受け、放心して、『魔女』の『魔法』を聞いた。
「【代償はここに。罪の証をもって万物を滅す】ーーー」
アルフィアの『魔法』が響き渡る。『穢れた精霊』の頭上にアルフィアの髪と同じ魔法円が出現し、そこから巨大な『鐘』が現れた。
「【哭け、聖鐘楼】!!」
思考が停止していた『穢れた精霊』が強制的に思考を再開させた。原因は『穢れた精霊』の頭上にある『鐘』から感じる魔力の臨界。鐘は次第に罅割れ、破砕する。
『穢れた精霊』の表情は一気に絶望に染まる。今から放たれるのは、海を支配していた『海の覇者』に止めを刺した『魔法』。それが今、解き放たれる。
「【ジェノス・アンジェラス】」
『破滅の咆哮』が『穢れた精霊』を包む。漆黒の甲殻が砕け散り、再生すら間に合わない破壊力。『穢れた精霊』に防ぐ方法も、逃げる暇も与えずに、『魔石』ごと巨大な蠍の体を『穢れた精霊』ごと消滅させたアルフィア。
『穢れた精霊』にいた場所には何も残っておらず、ただ『静寂』のみが存在していた。
「あ、あははは……」
遠くから『最強』と『最凶』の戦闘を見ていたエレンは乾いた笑いしか出てこなかった。ザルドとアルフィアからして見れば、『神の力』を失った『穢れた精霊』は大した敵ではなかった。最も、これはエレンが2人を癒し、全盛期に近い状態まで戻せたことが最も大きい要因なのは彼は知らない。
***
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」」」」」
場所は『オラリオ』。空高くにあった『アルテミスの矢』は霧散し、『ダンジョン』の暴走も止まった。多くの者がこの危機から逃れられた事を大いに喜びを分かち合っていた。
「借りができてしまったね」
「我々は女神の神意に従ったまでだ」
フィンは援軍としてきた【フレイヤ・ファミリア】に礼を言い、ヘディンが苛立ちの表情を浮かべながら返答し、美の女神の眷属達はその場を去っていった。
***
「『ダンジョン』の暴走は収まった。【ロキ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】。そして、【フレイヤ・ファミリア】の活躍もあって、都市の被害も最小限に留まった。」
ここは【ギルド】の地下に存在する『祈祷の間』。そこのは黒いローブを被った人物と1柱の神がいた。
「上空に集まった『神の力』の矢も霧散した。図らずも、『古のモンスター』を倒す結果となったわけか……」
黒いローブを被った人物が事態の状況を語る。彼は密かに情報を収集し、今回の事件の実態の把握に努めていた。
「ウラノス……女神アルテミスは?」
黒いローブの人物が1柱の神に問う。その神の名は神ウラノス。ここ『オラリオ』の『創設神』であり、【ギルド】の主神とも言える神物である。
「おそらくは……無事だ」
「何!?」
「『神の送還』は確認されていない。仮に消滅していたとしても、私がすぐに察知できる。だが、そのような気配は全くなかった」
「女神アルテミスの救出。貴方のような神ですら、方法がないと言っていたのに、一体どうやって……」
「……かの地で何が起こったのかは、今は知る術がない。ヘルメスの報告を待つしかあるまい」
『祈祷の間』で『エルソスの遺跡』で何か奇跡でも起きたのだろうと予想をしていた。ウラノスと黒いローブの人物。まぁ、ぶっちゃけ、精霊がひどい目に遭いながら、アルテミス救出に貢献していたことなんて知りもしなかった。