聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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ちょっと、早めの投稿です。

FGO……。最高でした!


15話 ユニコーン

「ヘルメス様~!ユニコーン捕獲してきました!」

 

「お疲れ~、エレン君」

 

「まさか、本当にユニコーンを捕獲してくるとは……」

 

「ユニコーンに()()()()()とは思ってなかったけどね……」

 

 

ユニコーンに乗ってヘルメスとアスフィの所まで戻ってきたエレン。とある()()()()一つを利用することで無事にユニコーンの捕獲?調教(テイム)?に成功。古い伝承とは、『地上に進出したユニコーンの群れはとある森の中で美しい()()()()()と戯れ、心を通い合わせた』という一節がある。エレンは『半精霊(ハーフ)』とはいえ『()()』。ヘルメスはこれを利用し、ユニコーンの捕獲を提案したのだ。

 

『えっ?伝承で少女なのに、エレンは男だけど大丈夫なの?』だって? そこはエレンのヘスティア似の顔立ちを利用……。()()()()()()()()()()()()といったごり押し戦法で解決した。なお、エレンは最後まで納得いっていなかった……。

 

 

「へぇ~、これがユニコーンかぁ~」

 

「か、神様!危ないので下がってください!」

 

「そうですよヘスティア様!『聖獣』でも『モンスター』です⁉危険過ぎます⁉」

 

「大丈夫大丈夫!ほらおいでー!」

 

 

近くの草むらで見ていたヘスティアがユニコーンに近づいていくのをベルとリリが止めるがヘスティアは『大丈夫大丈夫!』と言って、両手を広げて笑みを浮かべる。ユニコーンはヘスティアの声に反応すると視線をヘスティアに向け、少し観察するとヘスティアの方に近づき……。

 

 

ペロペロペロペロ

 

 

ヘスティアの顔を舐めていた……。

 

 

「こらこら、くすぐったいよ~。よしよし~」

 

 

ヘスティアはまんざらでもない表情でユニコーンを優しく受け入れ、頭を撫でる。ヘスティアは『精霊』ではないが、エレンの創造神(母親)であり処女神。ユニコーンが心を許す条件をクリアしているのだ。エレンもユニコーンの背中から下り、頭を撫でてあげると今度はエレンの顔を舐めるユニコーン。ベル達は『これが本当にモンスター?』と言いたげな表情で見守っていると……。

 

 

「「「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」

 

 

遠くの方からすごいスピードで近づいてくる女性達の姿が在った。ティオネ、ティオナ、レフィーヤ、そして少し後ろの方にアミッドを抱きかかえた状態で走ってくるアイズの姿だった。話を聞くとこのユニコーンはアイズ達が狙っていたユニコーンだったようだが、捕獲が上手くいかず、そんな時にエレンが現れユニコーンを持っていかれたという。

 

 

「……どうします?」

 

「う~ん、アイズちゃん達が狙っていたユニコーンだったとはね~」

 

「ここが『ダンジョン』なら、先客の彼女達の獲物ですが、ここは『オラリオ』郊外ですので……」

 

「っていうか、貴方なんでユニコーンに触れるのよ!そもそも、本当に『男』なの?ちょっと脱ぎなさいよ!」

 

「え?」

 

「うん、私達は全くダメだったのに……エレンはどんな方法を使ったの?」

 

「あ、あの」

 

「あ、貴方……、遠くから見ていましたが、回復魔法を使うとき『魔法円(マジックサークル)』が出ていませんでした!?もしかして、【ランクアップ】したんですか⁉」

 

「え、えーと」

 

 

エレンが本当に『男』なのか疑問に思う者、ユニコーンをどのような方法で手なずけたのか気になる者、『魔法円(マジックサークル)』が出ていることが気になってしょうがない者。ティオネ、ティオナ、レフィーヤがそれぞれエレンに問い詰める。ティオネに至っては女種族(アマゾネス)流……。言ってしまえば、強引に脱がして確認してやろうとしていた。

 

エレンもどのように説明したものかと考えているとユニコーンを撫でている手が止まり、それに気づいたユニコーンがエレンに『もっと撫でてー!』と頭を擦り付けなでなでの催促。それを見た道化の乙女たちはエレンに物凄い視線を向けていた。

 

 

「み、皆さん、一先ず落ち着きませんか?」

 

「あ、ベル」

 

「あ、アルゴノゥト君だ!」

 

「べ、ベル・クラネル⁉ どうして『オラリオ』の外にいるんですか⁉」

 

「え、えっと、冒険者依頼(クエスト)で、ちょっと『オラリオ』の外に……」

 

「えっと、もしかして『新月祭り』の?」

 

「はい」

 

「ベル・クラネル!今すぐあの人がユニコーンに触れるのか説明しなさい!今すぐに!」

 

「えっと、ヘスティア様(神様)の眷属……だから?」

 

「そんな訳ないでしょ!?それなら貴方だって触れる筈です!さっさとユニコーンに触ってきてください!そして、蹴り殺されてください!」

 

「なんでそうなるんですか⁉」

 

 

詰め寄られるエレンを助けるつもりが、巻き添えを食らってしまったベル。何ならティオネにも『行ってきなさい!』と命じられ、少しづつユニコーンに近づくと……。

 

 

「あ、触れました!とっても暖かいです!」

 

「は?」

 

「撫で心地がいいですね~。これが『モンスター』でなかったら、最高なのですが……」

 

「はぁ?」

 

「お、本当だ!『ラキア』で乗馬の経験はあるが、そこらの馬とは大違いだなぁ!」

 

はぁぁ?

 

「これは、癖になりますね、さらさらで真っ白な毛並み……『聖獣』と言われるのに納得がいきますね」

 

はぁぁぁ!!!

 

 

ベルだけに飽き足らず、リリ、ヴェルフ、アスフィもユニコーンに触ることができた。一方、ヘルメスは全力で嫌われ、何なら『角』で威嚇され隅っこで丸くなっている。レフィーヤは自分達が全く触ることができなかったユニコーンにベタベタ触るベル達を見て、全身から黒い炎が出ており、妖精とは別の何かに変わろうとしていた。

 

 

「ふ、ふーん、まぁ、貴方達が、触れるなら、私だって……」

 

 

レフィーヤはそう言いながら、ユニコーンを刺激しないようにゆっくりと手を伸ばした。別に女性である自分が触れなくて、男性であるあの万年発情白兎(ベル・クラネル)が触れる事実が気に入らないとかでは、決してないのだ。

 

 

べしっ

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 

レフィーヤが触ろうとした手をユニコーンは尻尾で払いのけた。レフィーヤの後ろで見ていたティオネ、ティオナ、アイズ、アミッドは思わず『あっ』と口に出てしまい、レフィーヤは涙を堪えながらプルプルと震えながらも、再びトライ。今度は『触りますね~』と告知しながら、手を伸ばした。さっきのはただの偶然……。そう自分に言い聞かせながら、ユニコーンに触ろうとするレフィーヤの手を……。

 

 

べしっ!!!

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 

再び尻尾で払われるレフィーヤの手。何なら、最初の時より威力は強い感じだった。4人は再び『あっ』と口から漏れ出てしまっていた。レフィーヤに至っては2度の拒絶で完全に心が折れてしまっていたが、そんな自分にお構いなしに触るベル・クラネルを見て、レフィーヤの綺麗な紺碧の瞳からは光が消え去っていた。その瞳には一切の光はなく、闇そのもの。『闇落ち妖精』とでも言うのか……そんな具合だった。

 

 

「ヘルメス様ー!『ユニコーンの角』!ゲットできましたよー!」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

レフィーヤが闇落ちしている最中、エレンはあっさりと『ユニコーンの角』をゲットしていた。エレンはユニコーンに『君の角を貰えないかな?』と()()()すると、『ユニコーン』は己の『角』をエレンの前に差し出し、エレンはアスフィの短剣を借りて『ユニコーンの角』を入手。現在、ヘスティアからお礼として食料袋から数本のニンジンを貰い、美味しそうに食べている。

 

 

 

闇落ちしたレフィーヤはあの『ユニコーン』と万年発情白兎(ベル・クラネル)を。ついでに、『ユニコーンの角』を入手しているエレンを仕留めるべく杖を構え……。

 

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。ーーー】」

 

 

全力の【広域攻撃魔法(ヒュゼレイド・ファラーリカ)】を詠唱し始めていた。

 

 

「ちょっと!レフィーヤ、やめなさい⁉」

 

「ダメだって、そんな魔法を放ったら、ユニコーンもアルゴノゥト君達も死んじゃうから!」

 

「放してください!!わ、私は、やらないといけないんですぅ!!今!ここで!!」

 

「だからやめなさい(だめだ)って!!」

 

「放してくださいぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 

レフィーヤはアマゾネスの姉妹に取り押さえられ、杖は没収。アイズにも『えっと、ダメだよ?』と追い打ちをくらい完全に撃沈。ヘルメスの隣に座り、しくしくと泣いていた……。

 

余談だが、ベル達がユニコーンに触ることができた理由はエレンが原因だった。ベル達にはここに来るまでに、『モンスター』との戦闘での疲れやダメージをエレンが癒したことよってベル達の体にはエレンの『魔力(におい)』が染みついていた。これによってユニコーンはベルたちを『精霊(エレン)の仲間』と認識したことで、触ることができたのだ。

 

この『魔力(におい)』は時間経過で簡単に消えてしまう物だが、『ユニコーン』の信頼を勝ち取るには十分だった。ヘルメスに至っては仮にエレンの『魔力(におい)』が付いていても余りにも胡散臭い存在を放つ神の為、結果的にユニコーンの信頼を勝ち取るのは不可能である。

 

 

「エレン・エウロギア様でよろしいでしょうか?」

 

「はい。えっと……」

 

「申し遅れました。【ディアンケヒト・ファミリア】の団長を務めております。アミッド・テアサナーレと申します。エレン様のことについてはアイズ様達よりお話を聞かせてもらっております。何でも、優秀な治療師(ヒーラー)だそうで」

 

「(都市最高の治療師(ヒーラー)……)」

 

「それで、その……エレン様も『ユニコーンの角』を狙っていらっしゃるのですか?」

 

「えっと、そう、なりますかね?元々は冒険者依頼(クエスト)帰りの途中にユニコーンを見つけた次第で、ヘルメス様が自分だとユニコーンを捕獲できると……」

 

「なるほど、そうだったのですか……」

 

「?」

 

「もし、よろしければ、『ユニコーンの角』を()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ?」

 

「もちろん、タダでとは言いません。そちらの言い値で、場合によっては万能薬(エリクサー)との物々などでも……」

 

「う、う~ん」

 

 

アミッドが持ち掛けたのは『ユニコーンの角』の買い取りである。エレン達も『ユニコーン角』を入手しても、使い道は大方換金になるので、この買い取りは()()だった。後日、【ディアンケヒト・ファミリア】で【ヘスティア・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】にそれぞれ、万能薬(エリクサー)を五本ずつの交換で話が纏まった。

 

【ディアンケヒト・ファミリア】製の万能薬(エリクサー)は1本50万ヴァリスする超高額の回復薬。主神のヘスティアの立ち合いの元、取引が終わると、1人の王族妖精(ハイエルフ)が馬に乗ってやってきた。

 

 

「ロキの言いつけでやってきたが、これはどういう状況だ?」

 

「あ、リヴェリア」

 

「え」

 

 

そこに現れたのは【ロキ・ファミリア】の副団長のリヴェリアだった。どうやら、主神のロキからアイズ達の冒険者依頼(クエスト)に手を貸してやれと言われここまで来たが、詳細は知らなかったようだった。アミッドから冒険者依頼(クエスト)の内容を聞いたリヴェリアは『なるほどな』と納得した。

 

 

「つまり、あとはこのユニコーンを群れに返せばいいのだな?」

 

「はい、お願いできますか?」

 

「無論だ、あとは私が……、ほぉ」

 

 

馬から降りたリヴェリアは慣れた手つきでユニコーンを撫でるとそのまま連れて行こうとするが、ユニコーンは一歩も動こうとしなかった。不思議に思ったリヴェリアがふと視線を後ろに向けると、エレンの近くから動こうとしなかった。アミッドの話で『ユニコーンの角』を入手したのはエレンだと聞いていたが、ここまで懐いているのは珍しいと内心エレンに感心を寄せていた。

 

 

「……すまないエレン。私と来てくれないか?」

 

「自分が、ですか?」

 

「理由は知らんが、その『ユニコーン』は君に随分懐いているようでな。私1人だと苦労しそうなので、少し手伝ってほしい」

 

「ごふぅっ!」

 

「えっ?」

 

 

リヴェリアからまさかのお誘いを受けるエレンに対し、しくしくと泣いていたレフィーヤがいきなり吐血するかのように倒れた。『ユニコーンだけに飽き足らず、リヴェリア様まで……』と、何やら呟いているが気のせいだろう。

 

ピクピクと痙攣しているレフィーヤをアマゾネスの姉妹が回収。エレンはリヴェリアと一緒にこのユニコーンを群れに返すために別行動をすることになった。向かう先は霊峰と呼ばれるアルヴ山脈。エレンはユニコーンにまたがり、馬に乗っているリヴェリアについていくようにユニコーンに指示を出して彼女の後を付いていった。本来馬に乗る時には『(くら)』と呼ばれる道具が必要だが、生憎エレンの分は無いことをリヴェリアが考慮し、ゆっくりと馬を走らせた。

 

 

 

***

 

 

 

「しかし、ユニコーンがここまで懐くのは珍しい……」

 

「え?」

 

「ここまで、心を許すユニコーンは珍しいと思ってな」

 

「リヴェリアさんだって、ユニコーンに触ったりできるじゃないですか?」

 

「私は故郷の森でユニコーンを一頭、飼っていてな。慣れたものだ」

 

「そっちの方が凄い気がするんですけど……」

 

 

エレン達が向かっている場所はアルヴ山脈。エルフが好む『アルヴの聖水』が湧き出る場所。エルフ達から見れば『聖地』と呼ばれている場所である。

 

 

「しかしアイズ達から聞いたんだが、エレンが魔法を行使しているときに『魔法円(マジックサークル)』が出ていると言っていたな?」

 

「はい、そうですけど……」

 

「……もしかして、【ランクアップ】しているのか?」

 

「いえ、【ランクアップ】はしていません。【魔導】が手に入る【レアスキル】が発現しただけです」

 

「……お前、さらっと、とんでもない事を言っているぞ」

 

「は、ははは……」

 

「全く、お前には毎度、驚かされてばかりだな……」

 

 

本来、【魔導】とは【ランクアップ】した際に『発展アビリティ』として入手ができるものである。【魔導】を持っている者は上位の魔導士の証であり、威力強化、効果範囲拡大、精神力効率化などの様々な補助をもたらす『魔法円(マジックサークル)』を入手できる。最も、今のエレンは範囲が手が触れられる程近くないと使えない回復魔法しかないので、精神力効率化ぐらいしか恩恵がなかった。

 

それでも、Lv.1で複数の『発展アビリティ』を持っているエレン。最早、真面目に考える自分が馬鹿馬鹿しく思えるリヴェリアだったが、エレンが開示した情報は()()()()()。『叩けば埃が出る』で済まされない規模の凝縮体である。最も、それを知るのは大分先の話である。

 

 

「しかし、『グランド・デイ』も近い、少し先を急ぐぞ」

 

「『グランド・デイ』?」

 

「むぅ、知らないのか?エレン」

 

「すみません……。初耳です」

 

「そうか、なら、少し説明してやろう」

 

 

馬を少し走らせながらリヴェリアが『グランド・デイ』が何なのかを説明した。『グランド・デイ』とはかつて『オラリオ』に君臨していた【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が『三大冒険者依頼(クエスト)』の1つ、『陸の王者(ベヒーモス)』を倒した偉大なる功績を称える祭日である。

 

 

「なるほど……」

 

「ちなみに『陸の王者(ベヒーモス)』に止めを刺したのは【ゼウス・ファミリア】のLv.7。【暴喰】の()()()だ」

 

「ん?」

 

 

リヴェリアが『陸の王者(ベヒーモス)』を討ち取った男の名を口にするが、エレンにとっては聞き覚えのある名前だった。何なら3日前に会っている。黒い鎧姿の上から、兎の刺繡に『暴喰』と書かれたエプロン姿が今も脳裏のこびりついている。

 

 

「……ちなみにどんな人なんですか?」

 

「ふむ、大柄の男でな。何でも、モンスターなどをを喰らってはそれを『アビリティ』の上昇に変える【レアスキル】を持っている奴だ」

 

「……」

 

 

だめだ、心当たりしかない。『穢れた精霊(ギルダブルル)』から逃げている最中、ザルドが『蠍型のモンスター』の鋏を喰っているのを見て『美味しいんですか?』と聞いて、『喰うか?』ともらったことがある。えっ?味はどうだったかって? くそまずかった……。

 

 

「……ブルル」

 

「ん?どうした?……ちょっと!?」

 

 

アルヴ山脈の奥の方に進んで行った辺りで、ユニコーンが何やら急に進路方向を変更した。エレンは何とかユニコーンを止めようとするが、リヴェリアが『行かせろ』と言って、制止させようとしたエレンを止める。

 

 

「どうやら、()()()()()()()()

 

「見つけたって、何を……あっ」

 

 

最早、獣道と言っても過言じゃない険しい道を強引に進むユニコーンだったが、辿り着いた場所を見て納得がいった。その場所は湖であり、そこには多くのユニコーンの姿があった。恐らくは同族の匂いを辿って、ここまで来たんだろう。

 

 

「よっこいしょ! もうはぐれちゃ駄目だぞ?」

 

「……」

 

「ん?どうした?」

 

 

ペロペロペロペロ

 

 

「わかった、わかったから!お礼のペロペロはいいって!」

 

 

ユニコーンはエレンにお礼をして、同族の元へと走って行った。ほかのユニコーン達も仲間の無事を喜んでいるようで、多くの仲間に囲まれながらも、森の奥へと進み、姿を消した。

 

 

「ユニコーンは群れに返した。これで、アミッドからの冒険者依頼(クエスト)は完了だな」

 

「そうですね、あとは【オラリオ】に戻るだけ……あっ」

 

「ん?どうした?エレン」

 

「いや、その……」

 

「あ~、行きはユニコーンに乗っていたからな……」

 

「はい……」

 

 

そう。ここまでエレンはユニコーンに乗ってきている。そして、ユニコーンを群れに返した影響でエレンは移動手段を失ってしまった。正確にはリヴェリアが乗っている馬が後1人分乗れそうだったが、彼女はエルフ、しかも、王族妖精(ハイエルフ)である。

 

エルフは認めた相手ではないと肌の接触を嫌うと担当アドバイザーのエイナから教えてもらっている。相手は王族妖精(ハイエルフ)なら尚更である。王族妖精(ハイエルフ)に無礼を働いたものは世界中のエルフから命を狙われるとエイナから王族妖精(ハイエルフ)を知らなかったエレンに対して、念押しで教育されている。*1

 

 

「……私に構わず、後ろに乗れ。エレン」

 

「えっ!で、でも……」

 

「ユニコーンがあれ程、君に心を許したんだ。問題ないだろう?……。それとも、私との乗馬は不服か?」

 

「滅相もございません⁉」

 

「よろしい」

 

 

結局エレンはリヴェリアの後ろに乗ることになった。もし、この状況をエルフに見られでもすれば、次の日にはエレンは()()()()()()()()()()()()()。無論、エレンはリヴェリアに変なことをするつもりもないし、そんな度胸もなかった。

 

帰り道はリヴェリアが手綱を握り、馬を走らせる。エレンは飛竜と同じ要領で馬に回復魔法を使い、馬が全速力で走れるように維持を続ける。エレン本人は()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「(やばい!?何か、何か考えろ⁉)」

 

 

エレンはアルテミスの膝枕の時と同様に、異性に対する耐性がそんなに高くない。会話は普通にできるが、今の状態はリヴェリア本人の許可があるとはいえ、振り落とされないようにリヴェリアの腰に腕を回し、抱き着いている状態だった。顔は真っ赤に染まってしまっており、心臓の鼓動も早まっている。

 

 

一方……。

 

 

「(大丈夫か……?)」

 

 

エレンの異常にリヴェリアはとっくに気づいていた。リヴェリア自身は長い間【ロキ・ファミリア】の副団長として、多くの団員達の面倒を見たりしてきており、主神のロキには『ママ』と呼ばれたりしている。そのおかげか、他のエルフに比べて種族や異性に対する偏見などは少ないタイプだった。それでも、肌を異性に見られると固まってしまったり、肌面積の多い水着を見て固まってしまうなどの部分もあるが、ある程度耐性を持っているエルフである。

 

そんなリヴェリアもLv.6の第一級冒険者。その五感は常人の域をとっくに超えており、エレンの異変をすぐに察知していた。『大方、異性に対する耐性が低いのだろう』と見抜いており、あえて指摘せず、そっとしている。リヴェリア自身もユニコーンがエレンに心を許しているように、何故かエレンに()()()()()()()()()()()()

 

18階層の時に団員たちを無償で『ポイズン。ウィルミス』の猛毒から救ってくれたり、その後の『魔法』の練習の際は積極的に質問をしたりして、エレン自身は勉強ができる分類ではないが、その性格をリヴェリアは買っていた。最も、一番の理由はエレンにアイズと()()()()()()()()()()()()()()

 

性格はとても似ても似つかない感じだが、()()()()()()()()()()自分が不思議に思えるリヴェリアだったが、エレンが話しかけてきたことで、このことは一先ず頭の隅に追いやることにした。

 

 

「どうした?エレン」

 

「あ、あの……先ほどの三大冒険者依頼(クエスト)のことなんですけど」

 

「あぁ、まだ話の途中だったな」

 

「は、はい。出来れば、続きが聞きたいと思って……」

 

「いいだろう。【オラリオ】までもう少し時間がかかる。ちょうどいい暇つぶしにはなるだろう」

 

 

エレンは中途半端に止まっていた三大冒険者依頼(クエスト)の話を聞いて気持ちの切り替えを図ろうとしていた。

 

 

「三大冒険者依頼(クエスト)ってことは『陸の王者(ベヒーモス)』のほかにあるってことですか?」

 

「あぁ、と言っても残りは『隻眼の黒竜』のみでな。『海の覇者(リヴァイアサン)』は既に討伐されている」

 

「へぇ、『海の覇者(リヴァイアサン)』か……」

 

「ちなみに、『海の覇者(リヴァイアサン)』に止めを刺したのは【ヘラ・ファミリア】の幹部……。Lv.7の【静寂】の()()()()()だ」

 

「……」

 

 

だめだ。又しても聞き覚えがある名前が聞こえてしまった。何なら3日前にボコボコにされたばかりだった。何なら、別れ際に()()()()()()()……。

 

 

 

***

 

 

 

「おい、エレン。話がある」

 

「いやです!!」

 

「ほぉ、私の話を聞かないつもりか?いい度胸だなぁ?」

 

「イダダダダダダダダッッ!!!」

 

 

出発間際にエレンは突然アルフィアに呼び出されたが、『いやです!!』と拒否するもアルフィアがエレンの顔を鷲掴みにして、無理やり話を始めた。

 

 

「ベルから聞いたんだが、今は廃教会に住んでいるそうだな?」

 

「はい……そうですけど」

 

「……そこは私の妹、ベルの母親が愛した場所でな」

 

「えっ?」

 

「まさか、メーテリア()が愛した場所が今はベル(息子)本拠(ホーム)になるとは、運命とは分からんな」

 

「え、なんか感動的な話……」

 

 

まさか、魔女(アルフィア)からこんな感動的は話が出てくるとは全く、これっぽっちも予想していなかったエレンは、何だか感動で涙が出そうだった。ベルの生みの親は既にいないのは、何となくではあるがベルから聞いてはいる。内容が内容だけに詳しい事は知らないが、まさかこんなドラマチックな事が起こるとは、人生何が起こるか分からないものだ。

 

 

「よって、今からお前に()()()()()。お前がどうなっていいから、ベルと廃教会を守れ」

 

「えっ?」

 

「何、そう難しいことではない。ベルが死なないように守って、廃教会も守る。簡単だろう」

 

「……」

 

「言っておくが、拒否権はないぞ。()()()()()()()

 

「……」

 

 

折角の感動的な話が台無しである。

 

 

 

***

 

 

 

ここまでが、3日前の話である。『えっ?了承したのかって?』。無論拒否した。『嫌です!!』とはっきりと口に出した。帰ってきたのは、言葉ではなく福音拳骨(ゴスペル・パンチ)だった。エレンはこれを回避したつもりが、()()()()()()()()()()()()()()()()。アルフィアはエレンに福音拳骨(ゴスペル・パンチ)を避けられて以降、改良を加え、ホーミング性能……。さらにこれを磨き上げ、『()()()()』を付与させることに成功。

 

ちなみに、この命令を遂行できなかった場合、エレンは同じ末路を辿ることになるらしい。まさしく、『女王』。ベルもよく今まで生きてこられたもんだと感心した。

 

 

「?どうしたエレン?震えているぞ?」

 

「イ、イヤ、チョットサムケガ……」

 

「そうか?」

 

「ち、ちなみに、その【静寂】って人はどんな人なんですか?」

 

「……簡単に言ってしまえば、暴君だな。彼女……。アルフィアの魔法は『音の魔法』でな。目で見ることもできないし、防ぐこともできない。しかも、超短文詠唱で連発してくる……」

 

「……」

 

「しかも、【静寂】と呼ばれる程の女でな。雑音が嫌いみたいで、相手が誰であろうと魔法を撃ちこんでは()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 

人違いだと信じて、否定できる判断材料が欲しいと思って聞いて見れば、確信に変わってしまった。なぁ、おかしくないか?ベルの育ての親、『最強』と『最凶』の幹部なんだが……。おかしい!おかしすぎる!そう思ったエレンだった。

 

エレンとリヴェリアが【オラリオ】に戻った頃は、すっかり夜になっていた。リヴェリアが乗っていた馬は商人に借りていた馬だったようで、【オラリオ】に入ってすぐに別れることになった。女神アルテミスの冒険者依頼(クエスト)を受けて、色んな事があったが無事に【オラリオ】に帰ってこれたエレンだった。

 

あとは本拠(ホーム)に帰って、休もうと思ったエレン。なんだか、最後の最後の特級クラスのやばいことを聞いた気がするが、疲れたエレンは考えるのをやめた。ぶっちゃけ、『眠い!』である。

 

 

 

なお、次の日には早朝から【ギルド】に呼び出しをくらうエレン。内容は『神ウラノスとの面会』である。

*1
異世界転生してまだ日が浅かった為、こっちの常識を知らなかったのが原因




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ちょっと書いてみたかったユニコーンについてに話でした。原作ではリヴェリアが『ユニコーンの角』を入手したり、『アルヴの霊峰』にユニコーンを連れて行っていましたが、エレンが入手、連れていく手伝いの流れにしてみました。

リヴェリアが感じている『エレンとアイズが似た雰囲気を感じる』は精霊繋がりです。

リヴェリアに関しては、あまり男性との関りがなかったので、漫画やゲームシナリオを読んで、独自解釈で書いています。


アイズ
 ユニコーンにあんなに懐かれている……すごい。でも、モンスターだし、何だか複雑……。

ティオネ
 エレンは女なのでは?と疑問に思っている。団長のフィンがエレンの回復魔法の事をとても褒めていた。エレンが女だったら標的にされていた……。

ティオナ
 ユニコーンに懐かれる理由が知りたい!ユニコーンをなでなでしたかった……。

レフィーヤ
 ユニコーンに振られたダメージが大きい……。しばらく引きずっていた。

リヴェリア
 エレンに触られて悪い気がしなかった。次にどんな成長を遂げるのか気になっている。

アミッド
 優秀な治療士……。良ければ、手伝いなどで来てほしい。えっ?本音は? 是非とも我が治療院に!
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