聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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FGO最高! FGO最高! FGO最高!

年末年始休暇中なので、早い投稿です。出来れば後1本出せたらいいなぁ。


グランド・デイ
16話 前夜祭


「ヘスティア様! 起きてください~!」

 

「むにゃむにゃ、もう食べられないよ……」

 

「駄目だこりゃ」

 

 

ベル達が女神アルテミスの冒険者依頼(クエスト)から帰ってきた次の日の朝。ベルとエレンは主神のヘスティアを起こすのに難儀していた。ヘスティアは朝がとても苦手だった。なお、ヘスティアを起こしている理由は、エレンが【ギルド】……もとい、神ウラノスに()()()()()()からだった。

 

本来ならエレン1人で行こうと思っていたが、ヘスティアが『ボクも行く!』と言ってこの状況である。最悪、ヘスティアを置いていこうと思ったが、後が怖かったので頑張って起こしている。何度声をかけても、揺さぶっても起きる気配が全くなかったヘスティア。

 

 

「……仕方ない、()()()()を使うか」

 

「えっ?最終手段!?そんなのがあるんですか?」

 

「うん、とりあえず、ベルは向こうで待っていてくれ」

 

「え?」

 

「……すまないベル。こればかりは、譲れないんだ」

 

「え、ちょっ、エレンさん!?」

 

 

エレンは強引にベルをヘスティアが寝ている地下室から追い出し、教会に繋がる階段の方に追いやった。これには深い理由はない。あるとすれば、()()()()()()()()だけだ。Lv.2のベルに聞かれないように追いやったエレンは寝ているヘスティアを見て、深呼吸……。()()要望とは違うが、創造神(ヘスティア)の望みを叶えて上げようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてください……()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサッ!

 

 

「ーーーーーーーーえっ?」

 

「……」

 

 

『起きてたんですか?』とついツッコミそうになりそうな勢いで起き上がるヘスティア。エレンと同じ青い眼を大きく見開き、エレンを凝視する。一方のエレンはダメ元の『お母様呼び』がここまで効果覿面なのに驚いている。元々は『ママ呼び』をご所望だったが、さすがにそれはキツイ。エレンは『主神』と『創造神(母親)』の2つの意味合いを合わせて、『お母様』呼びにすることにした。

 

 

「もう一回……」

 

「え?」

 

「もう一回、言って……」

 

「……」

 

 

どうやら、ヘスティアにはとても刺さったらしい。『お母様呼び』もお代わりを求められた。流石に面と向かって言うのは恥ずかしいが、創造神(母親)のお願いを無下にする訳にもいかないので、エレンはお代りの要望に応えることにした。

 

 

「おはようございます。ヘスティアお母様」

 

「わぁーーーーーーい!!!」

 

「ぶふっ⁉」

 

「おはよう、おはよう!ボクの可愛い精霊(子供)!」

 

「……」

 

 

2度目の『お母様呼び』が嬉しかったのかベッドからエレンに向けてダイブするヘスティア。エレンは突然ダイブしてくるヘスティアをキャッチするが、その場に倒れこんでしまった。ヘスティアは倒れこんだエレンに抱き着いて、頭をなでなで……。やや違うが念願の母親呼びが叶ってご満悦だった。

 

そんなご満悦だったヘスティアだったが、エレンの『お母様呼び』による()()()()()()が掛り、怒涛の速さで準備を終わらせるヘスティア。その速さは正に()()。外で待っているベルと合流。ベルが『何か良いことでもあったんですか?』と聞くが『フフフ、秘密さ♪』と上機嫌のヘスティアだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

「ふふふ~ん♪」

 

「う、嬉しそうですね、神様……」

 

「まぁ、あれだ……何か良いことがあったんだろう……」

 

 

【ギルド】に向かっている途中、ヘスティアは上機嫌だった。エレンからのサプライズ(お母様呼び)がよっぽど嬉しいのだろう。

 

 

「しかし、まだ朝なのもう店の準備が始まっているんですねぇ」

 

「今日は『前夜祭(イヴ)』とはいえ、『グランド・デイ』。稼ぎ時なんだろう」

 

「リリとヴェルフは【ギルド】で合流する予定です」

 

「ん?了解、なら、さっさと要件を済ませるか!」

 

「でも、【ギルド】……。ウラノス様はエレンさんになんの用が……?」

 

「……まぁ、大方予想は付くけど」

 

「え?そうなんですか!?」

 

 

大方、アルテミスから受けた冒険者依頼(クエスト)が原因なのでは?とエレンは予想していた。だが、エレンは思った『休ませてほしい』と。昨日帰ってきた者を朝から呼び出すなんて酷くね?せっかくの()()なんだし、遊び日なのだ!こんな事で貴重な時間を消費してはいけない日なのだ。

 

今日は『グランド・デイ』前の『前夜祭(イヴ)』。祭りとは必然的にお財布の紐が緩んでしまう行事。恐らくは『グランド・デイ』特別商品などと言って、割高の商品で溢れてるんじゃとエレンが思っていると、あっという間に【ギルド】に到着。中では『グランド・デイ』の影響か、多くのギルド職員が慌ただしく動き回っている状況であった。

 

 

「う、うわぁ……」

 

「すごい状況ですね」

 

「職員の人達が、こんなに……」

 

「……どうします?」

 

「う~ん、手紙には『話は通してある』と書かれていたけど……」

 

「お、お待ちしておりました、神ヘスティア」

 

「ん?」

 

 

エレン達が【ギルド】の入り口で立ち尽くしていると、1人のエルフ?の中年男性が汗だくで走ってきた。

 

 

「え~と、君は……」

 

「わ、私は、ここ、『ギルド長』を務めております、ロイマン、マ、マルディールと、申します……」

 

「あ、うん、よろしく」

 

「「……」」

 

 

ヘスティアの前に現れたのは何とギルド長だった。だが、なんと言うか、細長い耳をしているのでエルフなのだろうが、本当にあのエルフなのか思わず疑ってしまうベルとエレン。エルフとは容姿端麗で有名な種族だ。だが、目の前の人物はその()()()()()()恰好であった。

 

背は低く、顔や腹は大きく弛んでおり、そのせいか全身汗だく状態。ベルに至っては『これが、エルフ……?、リューさん達と、同じ?』と大きくショックを受けている。耐えろ!耐えるんだ!ベル。

 

 

「ゴホン、君は知っていると思うけど、ボク達はウラノスに呼ばれたんだ。案内してくれるかな?」

 

「しょ、承知しました。こちらになります」

 

「ベル君は……。少し外で待っててくれ」

 

「……ワカリ、マシタ、神様」

 

「「……」」

 

 

そう言うとベルはフラフラとした足取りで【ギルド】の外に出て行った。大方、憧れの妖精(エルフ)とはかけ離れた存在を目にしてしまった為、心に受けたダメージがデカいのだろう。いくらエレンのチート回復魔法でも、心に負った傷は癒せない。ベル、小さな絶望の積み重ねが人を大人に成長させるものだ。強く生きろ。

 

その後、ギルド長ロイマンの案内でギルドの奥深くにある階段に案内されたエレンとヘスティア。ロイマンの案内はどうやらここまでのようで、ヘスティアとエレンは階段を下りて行った。階段は地下深くまで続いており、相当の深さだった。

 

そして、階段を下りた先に見えたのは巨大な石の玉座。その神座には1柱の神が座っていた。その神から感じる神威は今までの神々とは大きく異なる雰囲気があり、エレンはその今までの神々とは別格の存在であると肌で感じ、思わず体が固まってしまった。

 

ヘスティアはエレンの手を握ると『大丈夫だよ』と声を掛け、手を繋いだ状態で、石の玉座に近づいて行った。

 

 

「久しぶりだな、ヘスティア」

 

「やぁ、ウラノス……そっか、前に会ってから、もう千年は経っているのか」

 

 

淡々と声を発するウラノスに対して、ヘスティアは物怖じすることなく旧知に接するように応じる。この2人は『天界』ではちょっとした知神(ちじん)のようなもので、よく会っていた間柄だった。

 

 

「……その者がヘルメスが言っていたヘスティアの精霊か?」

 

「えっ?」

 

「あぁ、ボ・ク・の可愛い精霊(子供)♪ エレン君だよ!」

 

「えっ、ちょっ、ヘスティア様!?」

 

「大丈夫だよ、エレン君。ヘルメスからはウラノスに報告も兼ねてエレン君のことも報告しないといけないって相談されていたんだ」

 

「え?そうなんですか」

 

「あぁ、さすがに今回の件は流石に大きくてね、ヘルメスは全て話しておいた方がいいって、相談を持ち掛けられていたんだ」

 

「な、なるほど……」

 

「大丈夫!ウラノスは口が堅くて、優しい神だから!」

 

「(優しい神様……)」

 

 

ヘスティアはウラノスは信用できる神!なんやら優しい神だと言うが、エレンはウラノスがどちらかといえば、巍然たる不動の王のように感じて、頭が混乱していた。

 

 

「ヘルメスが言っていたが、エレン・エウロギア。アルテミスを救ったのはお主で間違いないか?」

 

「えっと、はい。そうです。あ!でも、倒したのは自分じゃありませんので……」

 

「……嘘はない。ヘルメスからの報告は本当であったか」

 

「なんだい?ウラノス、ボ・ク・のエレン君が嘘でも言っているというかい?」

 

「考えてみろ、ヘスティア。私は彼女……。女神の残滓(アルテミス)から事の顛末を聞き、アルテミスの救出は()()()だと判断した。彼女は選ばれし『矢』の持ち主の手によって解放され、長い年月をかけ、生まれ変わる時を待つ運命だと思っていた」

 

「……」

 

「だが、実際はどうだ?アルテミスは無事に救われ、『アルテミスの矢(アルカナム)』による地上消滅の危機の回避、これを一人の青年……。しかも、半分はヘスティアの精霊ときた。これを一気にヘルメスが報告してきたのだ。疑うのは無理もないと思うが?」

 

「そりゃ、そうだけどさ……」

 

 

ウラノスは大きくため息を吐きながら自身の心境を語り、ヘスティアは可愛い子供を疑われて不服そうに顔を膨らませていた。

 

 

「……とは言え、結果的にはアルテミスは救われ、『下界』の滅亡を回避することができた。お主には礼を言うぞ。エレン・エウロギア」

 

「え、いえ、どうも……」

 

 

まさか、『オラリオ』の創設神からお礼を言われるとは思わず、困惑してしまった。だって相手は石椅子に座っているとはいえ、大体2mぐらいありそうなの体の大きい神様だ。ちょっとビビッてしまっている自分がいるんだ。

 

 

「それでだ、ここに来てもらったのは()()()()()()()()

 

「「渡す物?」」

 

()()()()

 

「あぁ、準備はできてるぞ、ウラノス」

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 

いつの間にか、エレンとヘスティアの後ろに立っている黒衣を着た人物が立っていた。2人は互いを抱きしめて悲鳴を上げ、黒衣を着た人物から全力で距離をとった。2人の息ぴったりの行動にウラノスは『確かに親子だな』と思わず、言葉が漏れ出てしまっていた。

 

 

「……エレン・エウロギア。君に贈り物だ」

 

「えっ?、自分に、ですか?」

 

 

そう言って黒衣の人物から受け取ったのは年季が入ってそうな『大盾』と『一冊の本』だった。

 

 

「えっ、ちょっ⁉ ウ、ウラノス!?この盾は分からないけど、この本は『魔導書(グリモア)』じゃないか!!」

 

魔導書(グリモア)?」

 

魔導書(グリモア)は、そうだなぁ、簡単に言ってしまえば()()()()()()()()だ。一度読んでしまえば、二度とこの魔導書(グリモア)を使うことが出来ないが、読めば魔法が発現する代物だ」

 

「……それって、結構な代物なんじゃ?」

 

「あぁ、例えるなら、【へファイストス・ファミリア】の一級品装備と同等、あるいはそれ以上だ……」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉」

 

 

『フェルズ』と名乗る黒衣の人物から受け取った魔導書(グリモア)の説明を受けたエレンは思わず魔導書(グリモア)を落としそうになった。【へファイストス・ファミリア】の一級品装備となるとどんなに安くても、一億ヴァリス以上の代物だ。エレンは魔導書(グリモア)を無くさないように必死に握りしめるがエレンは気づいていない、魔導書(グリモア)より、『大盾』の方が、それ以上の価値を秘めている『大盾』であることを……。

 

 

 

***

 

 

 

「大丈夫かい?エレン君?」

 

「はい、自分には『恩恵』があるので問題ないです、ヘスティア様の方こそ、手が震えていますが?」

 

「だ、だって、この魔導書(グリモア)は最低一億ヴァリスはする代物なんだぜ、もし、無くしてしまった時には……」

 

「あの、()()()()()()()()なるんでしょうね……」

 

 

ウラノスからの贈り物を受け取ったエレンとヘスティアは地上に待たせているベルと合流するべくもと来た道を進んでいた。階段を登り切った所にギルド長のロイマンが待っており、ウラノスから貰った『大盾』を見た途端、()()()()()()()()()()()()。ロイマンは、ほかのギルド職員によって回収されたが、泡を吹いているロイマンを見たエルフのギルド職員達から()()()お礼を言われ、エレンはとても困惑した。

 

 

そして、今のエレンは修理に出そうと思っていた『大盾』に加えて、ウラノス貰った『大盾』も持っている状況。今はヘスティアの提案で、バベルに店を構えている【ヘファイストス・ファミリア】の店に向かっている。何でも、ヘファイストスならこの大盾を整備できるとの話だったので、エレンが使っていた大盾の修理と合わせてお願いできないか聞きに行っている最中である。

 

ベルはまだダメージが癒えていない様子だったので、店の前で待ってもらっている。『グランド・デイ』の準備の為か、店には多くの従業員が開店準備に取り掛かっていた。ヘスティアはここでバイトしており、慣れた様子で『店長!ヘファイストスはいるかい?』とドワーフの店長に声をかけていた。

 

ドワーフの店長から『ヘファイストス様なら奥にいますぜぇ』と教えてもらい、店の奥に進んだ。奥の方には一つの扉があり、ヘスティアがノックすると、部屋の中から『入っていいぞ』と声が聞こえてきた。

 

 

「やっほー!ヘファイストス、お願いが、あれ?ヘファイストスは?」

 

「なんだ?エレンとその主神様か」

 

「お久しぶりです、椿さん」

 

「おお、久しいなぁエレン。どうだ?手前の打った盾の調子は?」

 

「え~と、その事で、相談があって来たんですけど……」

 

「?」

 

 

エレンは椿に貰ったボロボロの大盾を椿に渡した。ボロボロの大盾を見た椿は『は?』と鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。椿がエレンに渡したのは希少な鉱石『アダマンタイト』を大量に使った大盾。しかも、椿は最上級鍛冶師(マスター・スミス)で知られた鍛冶師。実際エレンが使っていた大盾の価値は5000万ヴァリスはする業物だった。

 

そんな業物を1週間足らずでここまでボロボロにしてくれたエレンをどうしてやろうかと椿は思いながら、エレンから大盾を受け取って状況を確認した。

 

 

「……魔法よる損傷かぁ、しかも一撃でここまで……一体何と戦ってきた?」

 

「えっ、そこまで分かるんですか?」

 

「手前は鍛冶師だぞ?このぐらいできて当然だ!」

 

「「(絶対違う気がする……)」」

 

 

大盾の状況を見た椿は、すぐに損傷具合から原因を突き止めた。さすが最上級鍛冶師(マスター・スミス)と言うべきか、椿はさらに大盾を観察……。何やらブツブツと言いながら、観察を続けると。

 

 

「無理だな、さすがに損傷が酷すぎる。手前でも修復は不可能だ」

 

「ヘファイストスでも無理そうかい?」

 

「さすがに主神様でもこの損傷は無理だろうな」

 

「所で、そのヘファイストス様は何方に?」

 

「ん?、あぁ、主神様は()()()()だ」

 

「「着替え中?」」

 

「椿?貴方誰と話して、って、ヘスティアじゃない、あと、隣の子は?もしかして、その子がエレン?」

 

 

エレンとヘスティアの言葉がハマっていると部屋の奥の方から1柱の女神がやってきた。目の前に現れた女神は右眼に眼帯をしており、顔立ちはカッコイイ女性……麗人という表現にぴったりな女神だとエレンは思った。ただ、エレンが思ったのは……。

 

 

「やぁ、お邪魔してるぜぇ、ヘファイストス。それにしても、赤いドレスなんか着てどうしたんだい?」

 

「知らないわよそんなの。椿が似合うから着てくれって頼まれたのよ」

 

「似合っておるぞ!主神様。()()()()()()()()()()()!」

 

「? さっき何か言いました?椿さん?」

 

「いや、気のせいじゃないか」

 

「?」

 

 

そう。今のヘファイストスは赤いドレス姿。武器、防具を売る店には場違いな格好に見えるが、恐らくは眷属達が主神に送るプレゼント的なアレなのだろう……。多分。

 

 

「それで、ここ来たのは何か、よ、う、……が」

 

「ん?どうしたんだい?ヘファイストス、鳩が豆鉄砲を食ったようような顔になっているぜ」

 

「……」

 

 

ヘファイストスはエレンの持っているウラノスからもらった大盾を見て固まってしまった。無理もない。その大盾はかつて『最強』と謡われた【ファミリア】の遺産。今は『オラリオ』にはおらず、【ロキ・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】の両派閥がその遺産を引き取ろうとしたが、【ギルド】……。ウラノスがそれを拒否。今もなお、交渉は続いてはいるがウラノスが首を縦に振らなかった代物だった。

 

 

「エレン!!!貴方どこから盗んできたの!?今すぐ返してきなさい!!!」

 

「え?」

 

「いい?見なかった事にしてあげるから、元あった場所に戻してきなさい!!」

 

「あ、あの~」

 

「特にロキとフレイヤに見つかってはダメよ!!命が危ないわよ!!」

 

「なんで⁉」

 

 

突然、盗人扱いを受けるエレンだったが、ヘファイストスはエレンの肩を掴み必死に説得を繰り返す。エレンも必死に『盗んだものではない、神ウラノスから貰った』と説明するが、ヘファイストスは『そんな筈ないでしょう!?ロキとフレイヤがどれ程説得しても渡さなかった代物よ!!』と聞く耳を持たなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()』。これは転生者であり、精霊でもあるエレンも例外ではないが、今のヘファイストスは取り乱している状況であり、エレンが嘘をついていないことに気づいていなかった。主神の大きな怒鳴り声に近い声を聴き、多くの【ヘファイストス・ファミリア】の団員達が部屋に押し寄せる状況。

 

椿は団員達に『問題ない、散れ散れ』と押し寄せてくる団員達を追い返し、ヘスティアの必死の説得と、事の顛末を伝える事でようやく落ち着きを取り戻すヘファイストス。エレンに至ってはヘファイストスに肩を上下に揺らされまくった影響で、目が回ってしまっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「落ち着いたかい?ヘファイストス?」

 

「えぇ、ごめんなさい、取り乱してしまって……。ごめんなさいね、エレン」

 

「い、いえ、お気になさらず……」

 

「はっはっはっ、しかし、取り乱す主神様を見られるとは、エレン。お主、将来大物になるぞ!」

 

 

ヘファイストスは他の団員に用意してもらったコーヒーを飲みながら、エレンに謝罪し、椿は取り乱す主神の姿を見て大いに笑い。エレンに『大物になれるぞ!』と太鼓判を押した。ぶっちゃけ、既に片足を突っ込んでいる状態だが、まぁ大丈夫だろう。エレンとヘスティアが持ってきた大盾は『アルテミスを救ってくれたお礼としてウラノスからもらった物』ということで、ヘファイストスに納得してもらった。

 

 

「まぁ、事情は分かったわ。この大盾はこっちで預かっておくわ。このままの状態だと碌に使えないでしょうし」

 

「うん、お願いするよ!ヘファイストス。ところで……」

 

「ん?何かしら?ヘスティア」

 

「この盾って、何?」

 

 

ガシャーン!

 

 

「「えっ?」」

 

 

ヘスティアの質問を聞きヘファイストスは持っていたコーヒーの入っていたカップを落としてしまった。そう、エレンとヘスティアはこの大盾の事を()()()()()()()()()()。ウラノスも『ヘファイストスに聞けば分かる』と説明をぶん投げており、ヘスティアも『うん!分かった!』とあっさり了承してしまう始末。あまりの早い会話のやり取りにエレンとフェルズの入り込む暇もなかった。例えるなら『この俺でも見逃してしまうねぇ』といった所だろうか。

 

椿は現物を見たことが無かった為、気づくのが遅れたが『あれかぁ~』とヘファイストスが取り乱した理由に納得していた。ヘファイストスは割れたカップを片付けると部屋の外の団員に『ごめんなさいね、新しいのもらえる?』とコーヒーのお代わりを頼んだ。

 

エレンとヘスティアは余りの無知っぷりに怒ったヘファイストスが床に正座させ、説明……。いや、説教染みた感じで大盾の事を説明した。

 

 

「いい!! この盾は【ゼウス・ファミリア】の遺産なの!! ロキとフレイヤの所が喉から手が出る程欲しがっている代物なの!! 分かる? とても貴重な物なの!! それを……それを貴方達はぁぁぁっっ!!!」

 

「「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 

ヘファイストスから怒りに炎が湧き出ており、エレンとヘスティアは正座している状態で全力の『土下座』を繰り出していた。エレンとヘスティアの一糸乱れぬ動きでシンクロする土下座を見た椿は『親子か!?』とツッコミを入れ、大いに笑い、コーヒーのお代わりを持ってきた団員は『ナニコレ?』と宇宙猫状態。カオスの状況が広がっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「これで説明は終わり! この盾はこっちで整備してあげるから心配しないで。あっ!お金のことは心配しなくていいから。これはアルテミスを救ってくれた私からのお礼だから、いい?」

 

「「はい、……ありがとうございます」」

 

 

ヘファイストスの長い説明(説教)が終わり、正座から解放されたエレンとヘスティア。2人は正座の影響で足が痺れており、エレンが回復魔法で足の痺れを取ろうとしたら、ヘファイストスから回復禁止を言い渡されてしまい、2人は足の痺れに苦しんでいた。

 

 

「ただ、これにはちょっとした()()があってね……」

 

「……も、問題、ですか……?」

 

()()か?主神様」

 

「えぇ、今手元には『オリハルコン』が無くてね、代わりになりそうな素材さえあれば、どうにか出来るんだけど……」

 

「オリハルコン?」

 

 

オリハルコンとは超硬金属(アダマンタイト)を超える最硬精製金属(マスター・インゴット)。ウラノスからもらった大盾はその殆ど『オリハルコン』で構成せれている。そして、この『オリハルコン』は錬金術師の手によって作られる人工物質であり、『ダンジョン』などで採れるものではないのだ。

 

超硬金属(アダマンタイト)で補強しようものなら、全体の強度に影響を及ぼす恐れがある為、素材選びが重要だった。ヘファイストスがエレンとヘスティアに説明すると、エレンが『これ、使えませんか?』とカバンから大きな袋を1つ取り出しヘファイストスに渡した。

 

元々は、エレンの使っていた大盾の修理に利用できないかと思って持ってきていた()()()()()()()()()()()。最初はヴェルフに大盾の修理を依頼しようと考えていたが、ヴェルフが『すまん、この素材は今の俺じゃあ無理だ』と断られてしまった物だった。

 

 

「ちょっと見せて、これ……何かしら?椿、貴方は分かる?」

 

「手前も初めて見る素材だなぁ。モンスターのドロップアイテムか?」

 

「あぁ、アルテミスから貰ったやつか~」

 

「ねぇエレン、これは何よ?」

 

「ん?それですか?()()()()()()()()()()()()()()ですけど?」

 

 

ぶふぅうううううううーーーッ⁉

 

 

ヘファイストスはコーヒーを飲みながらエレンが渡した素材を見ながらヘスティアに何の素材なのかを尋ねるとまさかのモンスターの名だった。『災厄の蠍』と呼ばれる『力ある古のモンスター』。力は劣るとはいえ、三大冒険者依頼(クエスト)のモンスターと根源を同じにするモンスターである。

 

正確にはエレンが渡した素材は、アンタレスが穢れた精霊に寄生された事で誕生した『女神を喰らった蠍(ギルダブルル)』をエレンが回復魔法で浄化して入手することができた『ギルタブルルの甲殻』である。その素材はエレンが浄化させた影響で真っ白な甲殻になってしまったが、素材としては()()()()()()。オリハルコンの代わりには十分なものだった。

 

一方、ヘファイストスはまさかのモンスターの名がエレンの口から出てきたことに驚き、口から熱々のコーヒーを噴き出してしまった。さらにはヘファイストスの正面に座っていた()()()()()()()()。熱々のコーヒーがエレンの目にかかってしまい『目がぁぁぁ、目がぁぁぁっ!!!』とのたうち回っていた。

 

ヘスティアは目にコーヒーがかかってしまったエレンを助けるべきか、コーヒーを噴き出した影響で変な所に入った影響で、何度も咳き込んでいるヘファイストスの方に行くべきか悩んでしまいオロオロ状態に。椿に至っては『エレン……お主……最高だ!』と腹を抱えて大いに笑っており、最後の方は笑いすぎて息が出来ていなかった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回から『グランド・デイ』編に突入です。頑張れエレン!君に休む暇は無いw



ヘスティア
 エレンに『お母様呼び』されて朝から超ご機嫌。たまに起きているのに寝ているふりをして、エレンに『お母様呼び』で起こしてもらっている。

ベル
 ロイマンの姿を見て心に深い傷を負っている状況。致命傷である。

エレン
 朝からひどい目に遭っているが、まだ序の口であることは彼はまだ知らない。

ロイマン
 ウラノスが渡した大盾の正体に気づいて、泡を吹いて倒れてしまった。

ギルド職員のエルフ達
 ざまあみろ!豚野郎w エレンに感謝している

ヘファイストス
 朝から疲労困憊の様子。(どっかの神友と精霊のせい……)

椿
 朝から笑いすぎて息が出来なかった。エレンの事が気に入った!
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