聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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これからも頑張って投稿していくので、よろしくお願いします。


18話 大剣闘祭

「なぁ、エレイン、じゃなくて、エレン君。ほ、本当に行くのかい?」

 

「……はい。ヘスティア様」

 

「無茶です⁉エレイン、じゃなくて、エレン様⁉あの数を相手にするのは、無謀すぎます!!」

 

「……止めないでくれ、リリ。それに、これは倒すためじゃないんだ」

 

「じゃあ、エレイン、じゃなくて、エレン。お前は何の為に戦うんだ?」

 

「……これは倒す物語じゃない。救う物語だ。()()()()を……」

 

「「「「エレイン、じゃなくて、エレン」」」

 

「……あの、いいですか?」

 

「「「?」」」

 

「絶対わざとですよね!?さっきからエレインエレインって!エ・レ・ンです!?」

 

「「「いやだって、その格好……」」」

 

()()()()んです!?服が!?これも全部あのアリーゼとベルのせいだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

場所は【闘技場】。エレイン、じゃなくて、エレン達がここにいるのには()()があった。それは『美女コンテスト』に強制参加されたエレンがさっさとこのメイド服から解放されたい一心で控え室に着替えを取りに向かった所だった。イスカとノインも話だと控え室のロッカーの中に服が閉まってある。との事だったのでさっさと着替えたいとエレンの頭の中はそれでいっぱいの状態だった。

 

だがしかし、ロッカーの中は空っぽであり、エレンが来ていた服が綺麗さっぱり無くなっており、もぬけの殻の状態。正確には1枚の置手紙が残されていた。

 

 

 エレン(エレインちゃん)へ

 

この手紙を読んでいるってことはエレインちゃんを卒業しようとしているわね!

駄目よ!そんなの勿体ないわ!えっ?関係ない?さっさと服返せって?あー!酷いわぁ!せっかくイスカが綺麗にしてくれたのに!罰として今日1日はエレインちゃんとして過ごす事!ヘスティア様が言っていたわ!『可愛いは正義だって!』バチコーン☆

 

 

エレン『イラッ☆』として、手紙をビリビリに破いて誓った!『絶対に服を取り戻すと!!!』と。イスカとアスタの2人の話だとアリーゼはこの後行われる【闘技場】で行われる『大剣闘祭』に出場する予定だと。

 

 

「……ちょうどいい。あの兎野郎(ベル)のことだ、大方、高レベル冒険者同士の戦いが見られると聞いたら、真っ先に見行きそうだし……」

 

 

そう。今ベルとは逸れている状況だった。正確に言えば、女装させられそうになったエレンはベルを生贄(身代わり)にしようとしたが逃げられた。何なら逃げる時には……。

 

 

「嫌だぁぁぁぁぁっ!!!()()女装は嫌だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

と。言っていた。

実はベルは7歳の頃から、アルフィアの手によって()()()に女装をさせられているのだ。その名も『ベル子ちゃん計画』。事の発端はベルの祖父ことゼウスが『ベルって、本当にメーテリア似じゃね?何なら女子(おなご)の服とか着せたら似合うんじゃね?』と発言した事が全ての始まりだった。

 

最初こそはあのくそ爺の事だから、適当に言っているのだろうと思っていたアルフィアだったが、抱き枕にしているロリベルを見て『いや、いけそうか?』と思い、近くの村人からもう使っていない小さい少女用の服を拝借。寝ているロリベルに試しに着せてみれば、まさしくメーテリア(ベルの母親)だった。

 

そこからはもうアルフィアは止まらなかった。たまに来る商人から少女用の服を見つければ購入し、昔のメーテリアを思い返しては()()()()()()()()()()()()してはベルに着せたりしていた。ベルも最初こそは従順だったが、大きくなるに連れて段々反抗的に……。ぶっちゃけ、恥ずかしくなったのだ。

 

最初は家の中限定だったが、次第に家の外、最終的には村の買い出しに女装姿で連れ出されていた。さらには魔女(アルフィア)は住んでいる村なだけあってか、村人の適応力は相当の物だった。

 

 

「おぉ、ベル!()()()女の子の日か?」

 

 

とか。

 

 

「あらあら、ベル子ちゃん。こんにちは。今日はいい天気だねぇ」

 

 

とか。

 

 

「ベル子ちゃん!この服は着てみて!!アルフィアさんと同じドレスを作ってみたの。『ぺあるっく』だったかしら?とにかく着てみて!」

 

 

などといった感じで村人までベル子ちゃん扱いでよく可愛がられていた。唯一の味方はザルド伯父さんだけだった。えっ?ベルの祖父(ゼウス)は?だって?事の発端はベルの祖父(ゼウス)の発言なので除外されているのだ。

 

そして、この前のアルテミスの冒険者依頼(クエスト)でアルフィアと再会した時も女装させられた。正確にはエレンがアルテミスに膝枕をされている時だが、なぜか持ち歩いていたベル子ちゃん専用の新作を持ち歩いていた。だがベルは『今までのような着せ替え人形のようにはならない!!』と言ってアルフィアの新作。『村娘衣装』から全力で逃げていた。

 

 

 

だが、この時のベルは真に理解していなかった。()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を。

 

 

 

今もなお、ベルはアルフィアがかつての『最凶』の【ファミリア】に所属していた事を知らない。アルフィアのLv.7の元冒険者。さらにはこの時のアルフィアはエレンが回復魔法で癒した後の状態で元気ピンピンの状態。速攻でアルフィアに捕まり、服をひん剥かれ、あっという間に『村娘』のベル子ちゃんに大変身。さらには商人から白い長髪の『カツラ』を入手しており、さらに『ベル子ちゃん計画』に磨きがかかっていた。

 

この事からベルにとって女装はトラウマみたいな感じになっており、さらにはこの時の『ベル子ちゃん』を主神のヘスティアやエレンに見られていた。ヘスティアに至っては、それはもう『ベル子ちゃん』はヘスティアに大いに刺さり、これが原因でエレンが女装をさせられるきっかけになったのであった。

 

エレンがベルを生贄(身代わり)にしようとしたのも、ベルが女装経験者ゆえの行動であった。確かにアルフィアに無理やり女装させられ可哀そうだとは思った。だが、エレンが犠牲になる必要性はない。そして、兎は生贄にされるもの。ゆえにエレンの生贄(身代わり)行為は正当な行為である。(ゆえに罰が当たった)

 

これらの事を纏めると、このエレンが女装させられたのは大まかに言えば、ベルのせいだと言える。『えっ?流石にベルが可哀そうだって?』こっちは未だにメイド服を着ているのだ!何なら、大勢の男たち(豚ども)のこの姿を見られたのだ。可哀そうで言えばエレンの方が今は上。エレンはアリーゼから服を取り返す為に、そして、ベルをひっ捕らえる為に、多くの人で溢れかえる【闘技場】に突撃するエレンであった。

 

 

 

***

 

 

 

「グハァッ⁉」

 

「うんうん!なんかちょっと対人戦に慣れている感じなのが気になるけど、大満足!」

 

「つ、強い!これが、Lv.5」

 

 

なんとベルは【闘技場】でアリーゼと戦っていた。ベルはエレンに生贄にされそうになるのを一瞬で察知し、逃走。その後【闘技場】で上級冒険者同士の戦いを見られる!との話を聞き、【闘技場】を訪れていた。その後、『美女コンテスト』に参加していたレフィーヤとばったりと遭遇。その後は何やかんやあって、【闘技場】の中に落ちてしまい周囲の観客からは飛び込み参加と勘違いされ、逃げられない状況になってしまった状況。

 

さらにはエレンの服を勝手に持って行ったアリーゼから『え?ベルが飛び入り参加しているって⁉何処何処!!』と元々『大剣闘祭』に出場していたアリーゼと戦うことになった。無論、彼女のLv.5の第一級冒険者。何ならもうすぐLv.6になるのでは?と噂されている人物である。ベルはボコボコの状態にされていた。勿論加減済みの力で!アリーゼ曰はく『え?加減はちゃんとしたのかって?勿論ちゃんとしたわ!私はどこぞの戦闘狂(バトルジャンキー)とは違ってできる女よ!バチコーン☆!』との事。剣の姫がくしゃみをしていた。

 

 

ちょんちょん

 

 

「何よ!私は兎ちゃんと遊びので忙しいの!後にして!

 

 

ちょんちょん

 

 

「もー!私で出来る女で人気者なのは認めるけど、後にして!今はベルと遊ぶので……」

 

 

ちょんちょん

 

 

「だーかーらー!今は忙しい!って、言って、る、で、しょ?」

 

 

にこっ♪

 

 

「……」

 

 

先ほどからアリーゼの肩を叩く人物がいた。アリーゼは『今は忙いーの!後にして!』と言うが、余りのもしつこいので面と向かって言ってやろう!と思い振り返ると、青髪のメイドがいた。さらに付け加えるのなら、巨大なノコギリを連想させる大剣を持っていた。これはメイドが【闘技場】に飛び入り参加する際に近くにいた冒険者に『貸ーしーてー♪』(ロリ姿の万能の天才風)とお願いして貸してもらった物である。

 

青髪のメイドは大剣を大きく持ち上げ、満面に笑みを浮かべた。それはもう笑っていた。目の前に宿敵がいるのだ!アリーゼに至っては顔が真っ青な状態。ベルに至ってはぷるぷると震えていた……。

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!アリーゼ・ローヴェルゥゥゥゥゥッ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

アリーゼは生死をかけた逃走劇の始まりである……。

 

 

「逃げるな卑怯者!!逃げるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「逃げるでしょ!!普通!?誰だってそんな『ヒューマン絶対コロスマン』みたいな大剣で迫られたら絶対逃げるに決まってるでしょ!!」

 

「誰のせいでこんな状況になっていると思っている!!罪を償えぇ!!あと服返せぇ!!!」

 

「似合ってるからいいじゃない!!!エレインちゃん☆」

 

コロス

 

「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

【闘技場】の中心で今もなお、【猛者】が【剣姫】と【凶狼】の2人を相手にしている一方で逃走劇が繰り広げられていた。突然、物騒な大剣を持った青髪のメイドが【闘技場】に乱入。【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】を追い回している状況に会場は大盛り上がり!出場している冒険者達は『ぽか~ん』と唖然としていた。

 

そう!何を隠そう【闘技場】に乱入した青髪のメイドの正体はエレインちゃんことエレンである。最初こそは【闘技場】に乱入する気などさらさらなかったが、ベルとの模擬戦を楽しそうにしているアリーゼを見て殺意が爆発。今に至るのであった。何ならエレンの髪色と同じ青い魔法円(マジック・サークル)を展開。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ガハハハッ。なんじゃ、面白そうなことをしとるのぉ!」

 

「あっ!おじ様!」

 

「えっ!【重傑(エルガルム)】!?」

 

 

エレンがアリーゼを追いかけていると、エレンの前に【ロキ・ファミリア】のLv.6。ガレスが立ち塞がった。だが、エレンは止まれない。『今ここで止まれば大切な()を取り戻すことができない!!』と思ったエレンは立ち塞がるガレスに向けて大剣を振り下ろしたが……。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ガッシャーーーーッ!

 

 

「は?」

 

 

ガレスはエレンが振り落とした大剣を拳で迎え撃ち、()()()()!エレンは原型を失った大剣を見て唖然として、観客席の方からは『俺の相棒がぁぁぁぁぁ!!』と悲鳴のような声が聞こえた。さらにガレスはエレンに向かって『もう終わりか?』と挑発。だが、今のエレンは丸腰の状態。今まで使っていた大盾は椿に預けているので手元にない状態だった。絶対絶命のピンチに()()が起きた。

 

 

「エレインちゃ~ん!俺の武器を使ってくれー!」

 

「エレインちゃ~ん!俺のとっておきの『魔剣』だ!【重傑(エルガルム)】なんてぶっばしてくれぇ!!」

 

「エレインちゃ~ん!万能薬(エリクサー)だー!使ってくれぇ!」

 

『エ~レ~イ~ン! エ~レ~イ~ン! エ~レ~イ~ン!』

 

「なんじゃ、これは……?」

 

 

プルプルプルッ

 

 

そう!『美女コンテスト』に参加していたレフィーヤやエレンが【闘技場】にいるように、その時の観客も全員ではないが【闘技場】を訪れていた。そして、観客の行っていたのは『投げ銭』ならぬ『投げ支援』だった。会場は『エレインコール』が響き渡り、ガレスは何が起こっているか分からず、エレンは顔を真っ赤にしていた。

 

 

「あー!もうー!どうにでもなれー!」

 

「ガハハハッ!よく分らんが、これで少しは楽しめるか?」

 

「てか、何で邪魔するんですか!?こっちは貴方の後ろに用があるんですけど!?」

 

「おじ様助けて!?あのメイドさんに捕まったら、私酷い目に遭うわ!!間違いなく!!」

 

「別に?大した事はしませんよ?」

 

「えっ?本当に!!」

 

「ダイジョウブ、ダイジョウブ……、ワタシ……、ウソ……、ツカナイカラ……、ゼッタイコロス

 

「全く大したことあるじゃない!!おじ様助けて⁉私お嫁にいけないとかそんなレベルの話じゃないわ!!最早生きていけないレベルの話よ⁉あれ!!」

 

「誰が生かすと言ったぁぁぁぁぁ!!!息の根を止めるに決まってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「お願いだから許してぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「……」

 

 

ガレスは思った『戦う相手を間違えたかのぅ?』と。元々はメイド姿だったがエレンと分かったガレスは昨日リヴェリアとレフィーヤが話していた『【エレンがおかしな【スキル】を手に入れている。なんか【魔導】を手に入れている。【ランクアップ】もしていないのに……』と。レフィーヤに至っては『あの人はロキが言う『ヘンタイ』です!!間違いありません!!』と言っていた。

 

まぁ要するに、身内が気になっているエレン(相手)に興味があるのだ。ただの治療師(ヒーラー)なのか、それとも違う何かなのか。ガレスは気になっていた所だった。なのでこの機会を逃す理由がなく。エレンの妨害をして、エレンの真価を確かめようとした。

 

一方のエレンは観客から投げ込まれた剣、大剣、双剣、槍、ハンマー、更には魔剣による火炎攻撃など様々な武器でガレスに全力の攻撃を加えるが、ガレスは一歩も動かずに全てを真っ正面から迎え撃ち、粉砕し叩き潰した。何なら頭に叩き込んだハンマーが粉々に砕け散る意味不明の頑丈さ。エレンはこの全ての武器を使いこなせる様な才能などはなく、全くのド素人。故に『変な小細工は無駄』と判断。()()が来るのをひたすら待っていた。

 

 

「(きた!!!)」

 

「(大盾?)」

 

 

エレンは【闘技場】に大盾が投げ込まれた直後、すぐに回収してガレスに殴り掛かった。ガレスはリヴェリアからの話で大盾を装備している間に『堅守』、『魔防』、『盾術』の3つの『発展アビリティ』が発現する【スキル】を持っていることを聞いている。だが、どの『発展アビリティ』も戦闘能力を飛躍させるものではなく、どちらかといえば『壁役』で活躍する内容だった。

 

ゆえにガレスはこれまでと同じように武器を叩き潰す為にエレンの攻撃を防ぎ、大盾を叩き壊そうとしていた。

 

 

 

だが……。

 

 

 

「ぬぅぅぅっ!!!」

 

「おじ様⁉」

 

 

エレンの盾の突撃(シールドバッシュ)を受け止めたガレスは()()()()()()()に少しではあるが後方に押し出された。これにはガレスは勿論、アリーゼや【闘技場】内の冒険者や観客は騒然。エレンは『どうだ!見たか!!』と言いたげな表情でガレスに再び攻撃を加えるべく、さらに大剣を拾い上げ、ガレスに斬りかかった。

 

 

「(予想以上の威力……。少なくともLv.1の最上位……いや、下手をすれば、Lv.2かぁ?)」

 

 

ガレスはエレンの盾の突撃(シールドバッシュ)の威力を冷静に分析して、エレンの実力を計算していた。ガレスは【ロキ・ファミリア】の中でもフィンとリヴェリアと同じ最古参。これまで多くの団員達を鍛えており、その膨大な経験を生かして、エレンの突然の変化の()()()()()()()()

 

 

()()()おったなぁ?若僧ぉっ!!【スキル】の一部をぉっ!!!」

 

 

そう。エレンはリヴェリアに【スキル】【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】の最後の効果。『盾の装備時、全アビリティ能力超高補正』の部分を()()()()()()のだ。当初は『発展アビリティ』の内容を知りたかった為、リヴェリアに内容を教えていたが、『全アビリティ能力超高補正』と書かれた内容に冒険者歴が一か月の素人冒険者のエレンでもやばい内容だと思い、()()()()()のだ。

 

そして、ガレスは仲間のリヴェリアからの情報を完全に信じ切っており、さらには、ここまでのエレンとの戦闘で『強さはそこまで高くはないなぁ…』とエレンの事を()()()()()()()()ことが原因でエレンに『駆け引き』の部分で一本取られる状況になったのだ。

 

完全に一本取られたガレスは大いに燃えていた。まさか、『ちょっと突いてみようかな?』と思った相手に出し抜かれたことで完全に火が付いたガレスはエレンの攻撃を()()()()()()()の拳で迎え撃とうとしていた。それこそ遠くで見ていたフィンが『あっ』と思わず口から言葉が零れてしまうぐらいであり、ガレスの拳をLv.1(エレン)がまともに受ければ、()()()()()ぐらいの威力だった。

 

 

「面白れぇことやってるじゃねぇか?」

 

「はっ?」(ぐしゃっ)

 

 

ガレスの拳がエレンにぶつかりそうになる瞬間……。エレンはガレスの視界から()()()。正確にはガレスの拳がエレンにぶつかる瞬間に【猛者】と戦っていた筈のベートが()()。エレンを思いっきり蹴り飛ばし、【闘技場】の壁に向けてぶっ飛ばしたのだ。

 

 

「ぬぅ?何をする、ベート!?せっかくの戦いを邪魔するつもりか!?」

 

「何、雑魚に熱くなってんだ?ジジイ。あのままだったら、あの雑魚はきたねぇミンチになってたぞ?」

 

「ぬぅぅっ⁉」

 

「いや、君も熱くなりすぎだよ?ベート」

 

「……何だ?フィン、文句でもあるのか?」

 

「いや、君。さっき思いっきりエレン・エウロギアの腕を砕いてたじゃないか?」

 

「……」

 

「それに、Lv.1の彼をあの威力で吹き飛ばしたんだ。君もガレスと同罪だと思うけど?」

 

「……」

 

 

これにはベートも『やべぇ~』と内心焦っていた。ついさっきまでオッタルと戦っていた影響かエレンを蹴り飛ばす時は加減なんて()()()()()()()()()。これには強くなる事ばかりしか、考えていないアイズとオッタルの2人が()()()()()()()ぐらいドン引きしていた。一番近くにいたベルとレフィーヤの近くの壁に激突。大きな土煙が上がっていた……。

 

 

「えっ?ベート、さん。殺したん……ですか?……え?」

 

 

とか。

 

 

「……それが貴様のやり方か?【凶狼(ヴァナルガンド)】」

 

 

とか言って、ドン引きしていた。一応、安否確認として【象神の杖(アンクーシャ)】と【万能者(ペルセウス)】が駆けつけてはいるが、状況は絶望的。一方、観客席の方では……。

 

 

「え?……エレイン……ちゃん、えっ?」

 

 

とか。

 

 

「おい、あのメイド姿の女の子は何処に行った?」

 

 

とか。

 

 

「……おい、なんであそこに【凶狼(ヴァナルガンド)】がいるんだ?さっきまで【猛者(おうじゃ)】とやりやってなかったか?」

 

 

と言った感じの混乱状態だった。ベートがエレンを蹴り飛ばし、エレンが壁に激突した瞬間までにかかった時間は0().()0()0()5()()。この時間は例え上級冒険者でも目で追うことは難しく、実際にLv.2のベルとLv.3のレフィーヤは何が起こったのか理解できずに、棒立ち状態である。

 

 

 

一方、エレンは……。

 

 

「あのクソオオカミがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「「い、生きてたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 

なんとエレンは()()()()()だった。だが、メイド服はボロボロの状態であり、エレンの周りは赤い液体が飛び散った悲惨な状況になっていた。この状況を見た、アスフィとシャクティの表情は真っ蒼になった。エレンは無傷の状態()()()のではない。無傷の状態に()()()のだと。

 

エレンはベートに蹴り飛ばされた時も、壁に激突した瞬間も、ずっと回復魔法を()()()()()()()()()()()。これによってエレンは()()()()()()()()()()を繰り返した状態を繰り返し、今の状態に至ったのだとアスフィとシャクティは瞬時に理解した。

 

エレンに至っては一瞬の出来事だったが状況を見て理解した。あのクソ狼(ベート)クソ狼に邪魔をされたと。いくらアルフィアの福音拳骨(ゴスペル・パンチ)を躱した経験を持つエレンでもあの不意打ち紛いな蹴りを回避するのは無茶である。

 

さらにいくら【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】で『堅守』による物理攻撃による耐性や【ステイタス】を超向上させている状態とはいえ、()()()()()()()。さらにはエレンの回復魔法では失った血液を取り戻すことはできないので、今のエレンは重度の貧血状態。だが、『それがどうした!!!』と言わんばかりにエレンはベートの蹴りでダメになった大盾を捨て、新たな大盾を拾い上げ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

このエレンの行動はただの()()()()()()()()()()だ。暗黒物質(ダークマター)を喰わされ死にかけたり、女装させられたり、多くの男ども(豚ども)の視線を浴びたり、ガレスに邪魔をされたり、ベートに横やりを入れられ、壁まで吹っ飛ばされたりするなど散々な目に遭ったエレンの溜まりに溜まったストレスが()()

 

『あのクソ狼に一発ぶん殴ってやるぅぅぅ!!!』と叫びながらベートに向かって突撃。ベートに至っては『吠えるじゃねーか!!』と迎撃準備に入る始末。アスフィとシャクティは『嘘だろう!?』と驚いていた。いくら頭に血が上っている状態とはいえ、相手はLv.6。自殺行為に等しいエレンを止めるべくアスフィとシャクティがエレンを止めようと動き出すが、エレンを止めたのは()()()()()だった。

 

 

「や~!エレン。流石にその自殺行為は見過ごせないなぁ」

 

「げぇっ!?フィンさん!?」

 

「ベートは手加減をするような性格じゃないし、()()()にはベートの相手は身が重すぎる。お詫びって訳じゃないけど……」

 

 

フィンは槍を構えて『付き合うよ?』とエレンの正面に立ち塞がった。フィンの後ろでは『おいフィン!!邪魔すんじゃねぇ!!』と叫んでいるベートを『ちょっとは大人しくしておれぇ!!』とガレスが止めていた。エレンに至っては又しても邪魔をされフラストレーション(ストレス)が溜まる一方。だからエレンはフィンに()()()()()()()()()()にした。

 

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

「ハハハッ!そう来なくては、ね!」

 

 

エレンは全力の盾の突撃(シールドバッシュ)を叩きつけるがフィンは余裕の笑みを浮かべながらエレンの攻撃を捌く。防ぐのではなく、反撃するのではなく、エレンの攻撃を冷静に分析して、当たる直前に躱す、弾くを繰り返した。フィンは今のエレンを説得で止めるのは効果が薄いと判断し、暴れさせることで、エレンを止めようと考えていたが、ここでちょっとした()()()()()()

 

 

「(う~ん、これはちょっと誤算だったかな?)」

 

 

フィンはエレンの攻撃を捌きながら違和感を()()()()()。今のエレンは()()でフィンを攻撃していた。だが、エレンが()()()()()()()()()()()()()()()。エレンは大盾に加えて、長剣を拾い上げており、フィンを攻撃する手数を増やしていた。無論装備する武器が増えれば、体に掛かる負担は大きくなり体力は大きく消費される。

 

付け加えれば、エレンは熟練の冒険者などではない。大盾の扱いや、長剣の扱いに慣れておらず、()()()()()()()()。動きに無駄が多いということはさらに、体力の消耗も凄まじいものであり、Lv.1の実力を考えれば、既に体力を使い果たしていてもおかしくはない。

 

「(リヴェリアの話だと、彼は【ランクアップ】は()()()()()と言っていた。しかし、ガレスを大盾で初めて攻撃したあの一撃は最低Lv.1最上位に位置するぐらいの威力だった。状況を鑑みるに大盾を装備することで【ステイタス】を上昇させる【スキル】の習得……いや、()()()()()のか。だが、問題は()()じゃない)」

 

 

フィンは()()()()()()()()()()()()()()エレンを見て、冷や汗を流していた。リヴェリアの話だと、エレンの魔法は付与魔法(エンチャント)などではない()()()()()()()()だと。それはエレン本人が魔法を行使している間は発動し、()使()()()()()と消えてしまう在り来たりな魔法だと。

 

本来『魔法』とは発動の失敗や魔力の暴発を防ぐ為、()()()()()()()()。これは魔法の()使()()()()()()()()()。しかし、目の前の存在は回復魔法を行使し続けた状態でフィンに攻撃を続けていたのだ。

 

 

「(僕はリヴェリアみたいに魔法に詳しい訳じゃないけど、()()()の反応を見るに間違いないかな?)」

 

 

フィンはリヴェリアの弟子であるレフィーヤと体調不良で欠席しているリューの代わりとして出場している、アリーゼと同じ派閥に所属している【アストレア・ファミリア】の魔導士の2人。リャーナとセルティの表情を見て()()()()。何なら、エレンを信じられない物を見たような表情であり、レフィーヤに至っては『ヘンタイです……。あの人、本当にヘンタイです!』と呟いていた。

 

 

「(エレン・エウロギアは『平行詠唱』を習得している。しかもリヴェリアと同じレベル……いや、下手をすれば彼女以上……?)」

 

 

全くもって厄介極まりない。エレンは常に体力を回復させながら()()()()()()()()()()()()。さらには【魔導】を習得しているので精神力(マインド)の効率化を可能にしながら、全癒魔法を超短文詠唱の特徴『精神力(マインド)の消費が少ない』特性を最大限に利用していた。

 

確かにエレンのような超短文詠唱は扱う魔力の規模はとても小さい。魔力とは規模が大きければその分魔法の威力が上がるがその分扱いが難しくなる。ゆえにエレンの場合だと『平行詠唱』の習得はレフィーヤなどの後衛魔導士よりも習得はしやすい方ではある。だが、エレンは()()()()()()()

 

エレンは『精霊』としてのエルフを超える魔法種族(マジック・ユーザー)の性質とヘスティア由来の炎から来ている魔法の相性を最大限に利用し、魔力暴走(イグニスファスト)の危険を()()()()()の状態で運用している。これは魔導士からして見れば『ふざけるなぁ!』と罵声が飛んでくるような内容だ。

 

もし、エレンが近接戦闘などを第一級冒険者並みの実力を身に着けたらと考えるとゾッとする。今のエレンは近接戦闘が全くの初心者レベルなので脅威ではないが、魔導士の観点で見れば『平行詠唱』を習得している時点で脅威だろう。

 

 

 

だが……。

 

 

 

ドサッーー!

 

 

「どうやら()()()()()()()?」

 

「き、気持ち、悪い……」

 

「確かに君の回復魔法の性能は凄まじい。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。君は回復魔法で一時凌ぎをしていたみたいだけど、ここまでみたいだね!」

 

 

攻撃を続けていたエレンが()()()()()()、観客は騒然とした。観客はフィンの攻撃でエレンが倒されたと思ったのか、大ブーイングが起きていた。だが、実際はフィンは()()()()()()()。フィンはエレンの本来の目的『体力切れ』を狙った先方から『貧血による戦闘不能』へと切り替えていた。エレンは重度の貧血状態で動きまくった影響で失神寸前の状態に。

 

さらにエレンが倒れたタイミングでロイマンが大会の終了を宣言。これ以上の戦闘行為は『【ギルド】からのペナルティの対象とする!!』と通告。ベートやアイズといった戦いがたがりが、一同に不満を漏らすが、ロイマンが大会を強制終了させることで、『大剣闘会』は幕を閉じた。

 

 

 

***

 

 

 

その後、『闘技場』からボロボロのベルと重度の貧血状態で碌に歩けず、アリーゼに背負ってもらっていたエレンを見たヘスティアはそれはもう驚いた。ベルは『試練』と答えたが、エレンにとっては『ただの地獄』と言いたかったが、貧血状態で碌に頭が回らず、答えることができなかった。流石にこの状態の2人をそのままに状態にはして置けなかったので、今日の前夜祭(イヴ)はここまでとなった。(エレンの服はちゃんと返してもらった)

 

なお、本拠(ホーム)に戻る途中でフィンに出会ったベル達は『エレンへのお詫び』として高級肉を送られた。これにはヘスティアは『ナニコレ?』とフィンに尋ねるが、『ン~。強いて言えば、18階層のお礼と『大剣闘会』のお詫び』と伝えるがヘスティアは『お肉……(ジュルリ…)』と半分ほど話が頭の中に入っていなかった。

 

本拠(ホーム)に戻ったベル達は早速フィンから貰った高級肉を使い『焼肉パーティ』を開催。貧血状態で動けないエレンは主神のヘスティアによる『あーん』で食べさせてもらった。翌日には大量のレバーを食べた影響で貧血はやや回復したが、代償に朝から凄まじい胃もたれに襲われることになった……。

 

 

 

***

 

 

 

「……想像を超えたことが起きる?」

 

 

場所は()()()黒い砂漠。怪しげの一団が何やら不穏なやり取りをしていた。鎖で縛っているモンスターの近くで何やら採掘道具を持ち、()()()()()()()()のか、周りには掘り返された跡が無数に存在していた。

 

 

「そりゃ、具体的にはどういうことなんだよ。神の野郎から聞いてんだろう?ちゃんと説明しやがれ」

 

「まぁ見てろって……」

 

「ん?お、おい……何してんだっ!?苦労して見つけたやつを……!」

 

「うるせえっての……()()なんだよ。面白えことを起こすには、な?」

 

「ーグギィ……ッ……!」

 

「ちっ、()()()()()()()()()かぁ?それに、()()()()()()()()()()を持ってろといい。神の野郎は何を考えてんだか……」

 

 

一人の男は掘り起こした()()を鎖で拘束しているモンスターに喰わせ、もう一人の男は()()()()()()()()を握りしめていた。宝玉の中には()()()()()()()()ものが眠っているように封じ込められていた。

 

 

「ーードックン」

 

「な、なんだ今のは……?」

 

「ーードックンーードックン」

 

「お、おい……なんか様子が……?」

 

「ビビってんじゃねぇよ、これからが面白く……?」

 

「いつの間に、こんな暗くーーーいや、黒……く?」

 

 

掘り起こした()()をモンスターに喰わせると()()()()()()。何処からか()()()()()()鼓動が聞こえ、辺りが黒く染まっていった。

 

 

「ーードックンーードックンーードックン」




ここまで読んでいただきありがとうございました。

『大剣闘会』に関しての話でした。エレンの戦闘は師となる人物が現状いないので、我流染みた戦い方になっています。


エレン
 本当に酷い目にあった。貧血で調子が悪かったがヘスティアに大量のレバーを食わされた影響でやや回復。胃もたれした……。

ベル
 アルフィアに7歳の頃から女装をさせられている。Lv.2になったので逃げきれると思ったら、あっさりと捕まった……。

ヘスティア
 ベル子ちゃんを見てしまった影響でエレンに女装をさせた主神。なお、本神(ほんにん)は『大満足♪』との事。

アルフィア
 ベル子ちゃんの服を作るのが最近の趣味。(お気に入りは自身と同じ『白いドレス』と『町娘衣装』)

フィン
 エレンが『平行詠唱』を扱える事に驚いた。(なお、贈り物の高級肉はベートの財布から出した。)後日、エレンに地獄の回復作業を依頼した。

ガレス
 ただのお人好し治療師(ヒーラー)と思っていたら、一本取られて火が付いた。今度会ったら相撲を取ろうと考えている。

リヴェリア
 フィンとガレスからエレンが『平行詠唱』を扱える事を聞いて『はぁ⁉』と驚きを隠せなかった。

ベート
 ガレスに邪魔されて不完全燃焼中。夜寝に行く鐘がなくなり、更に悪化したもよう。

レフィーヤ
 エレンが『平行詠唱』を扱える事にドン引きしている。

アリーゼ
 命の危機を感じた(ガチで)でも、エレインちゃんが可愛かったのは事実!

観客(豚ども)
 『エレインちゃ~ん!』。なお、投げ込まれた武器の3分の2は無事だが、残りは全てガレスに破壊され、相棒を失って泣き崩れた冒険者が多数いたとか。
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