聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

20 / 38
20話 反撃開始

「目標補足!方角な南南東、数3!うち1つは西に転進!」

 

「各個撃破する!ガレス!先頭を叩け!」

 

「おう!」

 

「アキ、部隊を連れてけ!西は任せた、行け!」

 

「はい!」

 

「魔導士部隊は詠唱を開始!砲撃はガレスの接敵に合わせる!」

 

「3,2,1ーーーてぇぇぇっ!!」

 

 

場所はオラリオ郊外。今回の『元凶』を討伐するべく、オラリオの総力を出して、今回の討伐作戦に参加している。そして、いま行っているのは【デダインの村】に向けての行進。そして、2つの『大型竜巻』の排除。無論、道中全ての【黒い竜巻】の各個撃破も含まれている。

 

 

「後続はクルスの小隊に続け!突撃ぃぃぃぃ!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 

フィンはアキからの報告を受け、すぐに対応を指示。ガレスに先頭を走らせ、後続部隊の詠唱で【黒い竜巻】の暴風の鎧の大部分を剥がし、ガレスの大斧で中にいる黒いモンスターごと叩き斬り、もう1つの竜巻はクルスと呼ばれるLv.4の冒険者の小隊で撃破。西の方角に向かった竜巻はアキが敏捷の高い冒険者のパーティを連れ、撃破に成功していた。

 

 

「す、すごい……もう竜巻を3つも……」

 

「都市最大派閥の名は伊達じゃないということですね……。個々の力もそうですが、指揮系統、連携も桁違いです」

 

()()……出番なんてないんじゃあ……?」

 

「それならそれで、リリは望むところですが?……まぁ、1名。馬車馬の如く働いている治療師(ヒーラー)がいますが……」

 

「それは……そうだけど……」

 

 

ベルとリリの視線の先には青い炎で包まれながら、大地を全力疾走しながら先ほど【黒い竜巻】と戦闘を行っていた冒険者達を癒している者がいた。無論、ここには【黒い竜巻】以外にも野生のモンスターが多くいる。そのモンスターの撃退しながら、かつ部隊の進行を遅らせないためにも、1人の治療師(ヒーラー)が奮闘を繰り広げていた。

 

 

「なぁ、【ロキ・ファミリア】にあんな治療師(ヒーラー)いたか?」

 

「さぁ?てか、なんか燃えてないか?あの治療師(ヒーラー)

 

「おい、見ろよあの目!完全に死んでやがるぞ!?【万能者(ペルセウス)】と同じ目をしてやがるぅ!!」

 

「ホントだぜ!!あの目……間違いねぇ!!【万能者(ペルセウス)】と同じ目だ!!目に光が宿ってねぇ!!」

 

「……」

 

「ん?なんだ、アスフィ?」

 

「いえ、どこかの()()()()()使()()()()のせいで、ひどい風評被害で出ているだけです」

 

「むぅ?そいつは聞捨てならないなぁ。大事な子どもをそんな風に扱うなんて、主神()の顔が見てみたいもんだぜ!はははっ!」

 

 

遠くの方では何やら哀れみの視線や会話が聞こえてくるが、そんな事を気にする余裕はこの治療師(ヒーラー)には存在しなかった。ガレスの回復、クルスの小隊の回復、アキの連れた部隊の回復。さらには後方の部隊の回復など多忙を極めていた。

 

そう。多くの冒険者達が話している人物はエレンである。今回の進軍が開始される前に【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)で言われた()()()とは、行進する部隊の回復支援である。これは以前エレンが飛竜達を回復させ、飛行時間を延ばしたりして移動時間の短縮を成功させたやり方と同じだ。

 

多くの冒険者達をエレンの回復魔法で()()()()にして、()()で【黒い竜巻】の排除に向かってもらっている状況である。これにより予定以上のスピードで行進する事ができた。その後は、広い範囲に散らばっている【黒い竜巻】の排除に部隊を3つに分けることになり、フィンは残りの2つの部隊にエレン以外の治療師(ヒーラー)をそれぞれ振り分け、フィンの部隊を()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

リヴェリアも回復魔法は使えるが、リヴェリアには回復以外の攻撃や防御、さらに後方指揮をしたりと忙しいそうだ。だからと言って回復を自分1人で回そうと考える思考はどうかしてるんじゃね?と思いながらこの事態を引き起こした『元凶』を一発ぶん殴ってやると誓ったエレンであった。

 

 

「……フィン、本当に良かったのか?」

 

「ン?どうしたんだい?リヴェリア」

 

「アレじゃアレ、流石にLv.1の治療師(ヒーラー)にこの部隊全員の回復は厳しいじゃろう」

 

「とは言っても、広範囲に散った【黒い竜巻】を対処する為に部隊を3つに分ける必要があったんだ。リーネ達を含めた治療師(ヒーラー)には他の部隊の回復を命じているし、ここは彼に頑張ってもらうしかないさ」

 

「……前に少しでも好印象を持ってもらって、【ロキ・ファミリア(こちら側)】に来て欲しいとか言っていなかったか?」

 

「はっはっはっ!まぁ、後でお礼はするさ」

 

 

なお、気づいたらベルとリリが居なくなっている状況にエレンが気づいたのはベルがヘルメスからの指名で別動隊として離れた後であり、エレンは取り残される結果になった。

 

 

 

***

 

 

 

「……風」

 

「あれが報告にあった【大型竜巻】か。ようやく視認できるところまできた」

 

「この距離であの大きさ……よっぽどのもんじゃのぅ」

 

「アレが人里に直撃したらと考えると、ぞっとするな」

 

「ああ、だが想定していたよりエレン・エウロギアの活躍で部隊の進行速度は速い。これなら被害が出る前に【大型竜巻】に到達できる」

 

 

遠くに見えるのは今回の第一目標の【大型竜巻】。ここに来るまでに倒してきたどの【黒い竜巻】よりも大きく、街の1つ、2つは簡単に破壊できそうな規模のものだった。

 

 

「しかし、近くで見ると予想以上に巨大ですね……。どう対応しますか、団長?」

 

「……」

 

「団長?」

 

「……ん?ああ、すまない。【大型竜巻】の規模は想定の範囲内だ。まずは魔導士をーー『みんな!伏せて!』」

 

 

フィンがアキに指示を出そうとした瞬間。最前列にいたアイズが突然大声を上げた。多くの者ははアイズの声に反応して地面に伏せることができたが、最後列の部隊の者にはアイズの声が届かず、そこにはエレンも含まれており、前方の【大型竜巻】から吹き荒れる黒い風を浴びていた。

 

 

「……今のは」

 

「【毒の風】……だな。後続の部隊がy、……」

 

「ン?どうした、リヴェリア。何かあったのかい?」

 

 

リヴェリアが話を途中でやめたことに疑問を思ったフィンが尋ねるがリヴェリアの視線の先にいる後続部隊。多くの者が先程の【毒の風】を浴びた影響で倒れて身動きが取れない状況だが、()()()()()が立っていた。これには倒れた者の救助の為に来たクルス達が『いや何でアンタは無事なんだよ!?』と一同声を上げている状況が繰り広げられていた。

 

 

「……アキはエレン・エウロギアに倒れた者の治療をお願いしてきてくれ。彼の回復魔法なら解毒もできる」

 

「わ、わかりました」

 

「……あいつは回復魔法で凌いだのか?」

 

「どうじゃか?見た感じからして回復魔法を使っている様子はなかったぞ?」

 

「【スキル】……かな?」

 

「「……」」

 

 

 

『オラリオ』出発前……。

 

 

 

「はい、エレン君。【ステイタス】の更新は終わったよ!」

 

「ありがとうございいます。ヘスティア様。ベルは?」

 

「ベル君は先に終わってるよ」

 

「分かりました。どうでした?【ステイタス】の伸びは?」

 

「……見ればわかるよ」

 

「……うわぁ」

 

 

 

エレン

レベル1

力  :H 130→140

耐久 :E 300→400

器用 :I 75 →85

敏捷 :H 110→125

魔力 :SS 800→1050

 

魔導 :I

 

◾️魔法

聖なる火よ(セイクリッドフレア)

・回復魔法

・速攻魔法

 

【】

 

【】

 

《スキル》

 

聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)

 

・盾の装備時、発展アビリティ『盾士』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『堅守』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、発展アビリティ『魔防』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・盾の装備時、全アビリティ能力超高補正

 

 

精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)

 

・【発展アビリティ】【魔導】の習得

 

・精霊の血の発現

 

・【聖なる火よ(セイクリッドフレア)】を受けた対象が『精霊』、『精霊由来の魔法』、『精霊の血を引くもの』、『精霊の力が込められているもの』だった場合、能力の大幅な上昇。

 

 

月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)

 

・状態異常、精神汚染、及び呪詛(カース)の無効化

 

・弓の装備時、発展アビリティ『射手』の一時発現。補正効果はLv.に依存

 

・月光を浴びている間、全アビリティ能力超高補正

 

 

 

「「ナニコレ?」」

 

 

ヘスティアから受け取った【ステイタス】の写しを見た反応が『ナニコレ?』である。まぁ、無理もないだろう。『魔力』は上限の999を超え、SSの表示に。さらには内容が分からなかった【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の内容が一部判明した。

 

 

「……エレン君?この『耐久』の上昇は何だい?100も上がっているんだけど?」

 

「……成長期、ですかね?」

 

「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

「それよりヘスティア様!?SSって何ですか?上限はSの999だと聞いているんですけど……」

 

「……エレン君は精霊でもあるんだ。『魔力』の伸びがいいのは納得できたけど、上限を突破しちゃったかぁ」

 

「……突破しちゃったって、そんな事あるんですか?」

 

「あるみたいだよ。ボクもとても驚いたけど……」

 

「……マジですか?誰なんですか?そんな化け物染みた人物は、一度でもいいから会ってm『ベル君だよ』……はぁ!?」

 

「エレン君も知っているベル君だよ。あの子はちょっとした【スキル】で【ステイタス】の伸びがいいんだ」

 

「……」

 

「……ここだけの話。ベル君も同じでLv.1の最終【ステイタス】が『敏捷』が上限を超えていたんだ」

 

「……はぁぁ!?」

 

 

この時、エレンがベルが【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】の存在を知る瞬間であった……。

 

 

 

***

 

 

 

「【セイクリッドフレア】!」

 

「あ、温かい……」

 

「これで全員ですかね?」

 

「えぇ、助かったわ。所で貴方は大丈夫なの?あの【毒の風】を浴びて何ともないの?」

 

「【スキル】で毒が効かないんです」

 

「どんな【スキル】よ!?」

 

 

嘘ではない。【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の効果で毒などの状態異常が効かないバカみたいな内容が判明したのだ。普通は『発展アビリティ』で『耐異常』を獲得し、さらに熟練度を上げ、ランクを上げないといけない。

 

しかし、エレンのこの【スキル】は『耐異常』の()()()()()()。ヘスティアの見立てだと、貞潔を司り、三大処女神と呼ばれるアルテミスの神威の高さがそのまま反映されたのでは?との事だった。

 

 

「毒にやられた者達の容体は?」

 

「あっ、リヴェリア!ねぇ聞いてよ!この自称治療師(ヒーラー)。毒が効かないんだって!」

 

「自称治療師(ヒーラー)!?」

 

「……そ、そうか(エレンから距離を取った)」

 

「リヴェリアさん!?何で距離を取るんですか!!結構傷つくんですけど!?」

 

「す、すまない。わ、悪気はないんだ……。悪気は……」

 

「私、レフィーヤが貴方のことを『変態』呼びしていた理由……やっとわかったわ」

 

「変態!!??」

 

 

何かドン引きされ距離を取られたり、変態呼ばわりされたりとかされるエレン。周囲の【ロキ・ファミリア】の冒険者達も同様の反応だった。まぁ無理もない。只でさえ出鱈目な回復魔法を使えるのに毒(状態異常)が効かないんだ。

 

そんな会話をしている途中に部隊の後方から凄まじい突風が吹き荒れてきた。後方に見えるのは【超大型竜巻】先程アイズ達が倒した【大型竜巻】の数倍以上の大きさ。何よりあの大きさの竜巻を見落とすハズがない。まるで()()()()()()()()()かのように、突然と現れた。

 

 

「馬鹿な……。あれほどの存在をなぜ見落としていた!」

 

「……もしかして、あの竜巻って自由に()()()()()()()()できるんじゃ……」

 

「そんなのモンスターの範疇を超えているわよ!?」

 

「アキ。あの【超大型竜巻】の進路は!?」

 

「えっと、方角は北西……予測進路は……ま、まだ避難していない村々が!」

 

「!」

 

「総員!あの【超大型竜巻】に向かって進め!足の速い者はアイズとガレスに続け!」

 

 

フィンはすぐにあの【超大型竜巻】を目標に部隊を動かし、足の速い者を先に向かわせた。この部隊の唯一のLv.1のエレンは自身に回復魔法を行使しながら後を追った。【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】の【ステイタス】強化で何とか食らいついていた。しかし、ある程度走った所で()()()()()()

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ……!?」

 

「なんだ、こりゃあ……!?」

 

「ぎゃああああああ……!!」

 

「団長!?部隊の中で倒れる者が続出!被害……止まりません!?」

 

「エレンは!?」

 

「エレン・エウロギアは毒の症状は出ていないようです。現在、負傷者に回復魔法を施していますが、回復魔法をやめた瞬間にまた毒状態になってしまい……」

 

「準備していた解毒剤は!?」

 

「駄目です!?効果ありません!!現状、エレン・エウロギアの回復魔法でしか解毒できません!!」

 

「リヴェリア、詠唱を始めろ!防御魔法、第二階位!できる限りの者に付与しろ!急げ!!」

 

 

先程の【毒の風】とは異なる漆黒の風……もはや【猛毒の風】と言うべき風が部隊を蹂躙していた。倒れた者の中には『耐異常』のアビリティを持つ上級冒険者もいるが、この【猛毒の風】を浴び、行動不能状態に陥っていた。

 

エレンは【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の効果でこの【猛毒の風】の中でも平気だったが、負傷者の治療に難色を示していた。エレンの回復魔法ではこの猛毒は解毒できても、()()()()()()()()。さらには【猛毒の風】は絶えず吹き荒れており、猛毒をバラまいていた。

 

これではエレンが回復魔法をやめた瞬間に猛毒を受けてしまい、また倒れてしまう悪循環に陥っていた。フィンはリヴェリアに防御魔法で【猛毒の風】から部隊の者を守るように指示を出し、アイズには【エアリエル】を最大展開で先行させた。

 

 

「エレン、負傷者の容体は!?」

 

「リヴェリアさん……。『耐異常』を持っていない人達が重症ですが、もう大丈夫です」

 

「『耐異常』持ちでもアビリティI評価の者はこの【猛毒の風】の中では無理だな」

 

 

現在、リヴェリアの防御魔法、第二階位。【ヴェール・ブレス】で部隊の全員に施され【猛毒の風】の被害から守られている状況である。本来の『耐異常』のアビリティI評価は多少の毒なら行動不能にはならないが、この【猛毒の風】の威力は()()()()()()

 

 

「……出鱈目ですね、この【猛毒の風】は」

 

「……そうだな(エレンから距離を取った)」

 

「だから何で距離を取るんですか!?【スキル】で毒(状態異常)が()()()()()()ですから!!」

 

「何が()()()()()()だ!!貴様の方がよっぽど出鱈目じゃないか!!」

 

 

エレンは『【猛毒の風(アレ)】ヤバいですね~』と呟くがリヴェリアは『お前がなぁ!!!』とついツッコミを入れそうになるのを必死に堪えたが、ドン引きたした表情で距離を取った。これにはエレンは『ちょっとした【スキル】で毒(状態異常)が効かないだけ!!』と説明するがリヴェリアは『十分おかしいだろうがぁ!!!』と反論。これには周りにいた者達もリヴェリアに同意。何ならアキと同じくエレンを『変態』呼ばわりしていた。

 

 

 

***

 

 

 

「これは……」

 

大鐘楼(グランドベル)の音色……?」

 

「ああ、響いている。そしてーー」

 

「ーー歌っている!」

 

「……ベルの、【スキル】……」

 

 

リヴェリアの防護魔法とエレンの回復魔法のおかげで、何とか態勢を立て直した部隊は再び【超大型竜巻】に向けて走り出していた。ただし、約1名あの【猛毒の風】の中でピンピンしていただけで、周りから変態呼ばわりされ、心に傷を負っている者が存在するが気にしてはいけない。

 

現在、目標の【超大型竜巻】は()から『巨大な火柱』が出現した影響で竜巻の勢いは弱まり、何処からか()()()()()が響いていた。エレンはこの鐘の音が18階層の時に『黒いゴライアス』とエルソスの遺跡の『ギルタブルル』の時に聞こえた大鐘楼(グランドベル)の音色と同じだった事から、ベルの【スキル】だとすぐに分かった。

 

すると、僅かに残っていた竜巻の()から白い光のような魔力の塊が()()。その影響か【超巨大竜巻】は力なく霧散し、空は綺麗な青空が広がった。【超巨大竜巻】が消滅した影響で周囲からは歓声が広がった。それでも、【猛毒の風】がもたらした被害は甚大であり、エレンは周囲に倒れている冒険者達の治療にあたった。

 

 

「動ける人はここに!自分の回復魔法なら解毒ができます!!」

 

「おい、誰か手を貸してくれ!」

 

「負傷者の搬送急げ!!」

 

 

エレンは【猛毒の風】の被害を受けた冒険者達の治療をしまくった。しかし、治療した者の中にどっかの飲食店の店員の姿があったのだが気のせいだろうか?無論、運び込まれた者の中にはベルも含まれており、ひどい負傷だった。

 

エレンの回復魔法で解毒と怪我の治療は出来たが、ベルの【英雄願望(アルゴノゥト)】の反動で重度の精神疲労(マインドダウン)状態だった。エレンの回復魔法では精神力(マインド)は回復できないので、ベルは他の冒険者に運んでもらうことになった。

 

エレンの回復魔法のお陰で意識が戻ってこなかった者以外は全員全快状態になり、そのまま『デダインの村』を目指した。『デダインの村』に到着するまでの間も絶えず、【黒い竜巻】が発生していたが【大型竜巻】や【超大型竜巻】のような大物はおらず、全て【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者達の手によって倒され、エレンはベート達が全力で戦えるように常に回復作業に明け暮れていた。

 

 

 

***

 

 

 

『デダインの村』

そこはかつて、()()()モンスターを討伐する為の拠点として活用された村であり、今は村人1人もいない無人の村である。だが、その村には『オラリオ』から来た多くの冒険者達で溢れかえってきた。如何やら、南側に向かっていた部隊が先に到着している様子で、多くのテントが立てられていた。

 

本来ならちょっとは休みたいもんだが、エレンは優秀な治療師(ヒーラー)。先程の【猛毒の風】の影響で多くの冒険者達が運び込まれているテントに速攻で案内された。如何やら別働隊も被害に遭っているようで解毒剤が効かないらしい。

 

他の治療師(ヒーラー)でも完全な解毒には至れず、アミッドは後から来る後方部隊にいる為、到着にはまだまだ時間がかかる。要するにエレンが休む暇は存在しなかった。エレンは絶えず回復魔法を行使し続けた。ある程度時間が経った頃、アミッドを含めた後方部隊が到着。ようやく一息できるかと思ったエレンだったが、現実は甘くなかった。

 

 

「えっ?もうしばらく1人で頑張ってほしい……」

 

「はい。私はこの後、リヴェリア様から教えてもらった『猛毒』専用の特効薬の製作をすることになり……」

 

「……」

 

「……そういう訳ですので……その……もうしばらく頑張ってください」

 

「……」

 

 

何でも今回の『元凶』は、かつて倒されたハズののモンスター『陸の王者』……【ベヒーモス】の()()()()()。正確には【亜種】なのだそうだが、【ベヒーモス】の猛毒は万物を殺す毒……。その『猛毒』専用の特効薬の製作は難しいそうでアミッドを含めた多くの薬師が製作にあたることになったそうだ。

 

他の治療師(ヒーラー)もこの猛毒を解毒できる者が存在しなかったようで、エレン1人で頑張って解毒するしかないらしい。絶対一発ぶん殴ってやると再び決心したエレンだった。治療が完了したのはすでに日付が変わっており、外は真っ暗の状態。それでも、ベヒーモス戦に向けての準備の為に、武器や防具を整備する鍛冶師や『猛毒』専用の特効薬の製作に動く薬師は作業に没頭していた。

 

 

「……眠い」

 

 

2徹目に突入し睡魔が襲ってくる。流石に睡眠を取らないとヤバいなと思ったエレンは用意してもらった寝袋に入り、夢の世界に入ろうとした瞬間……。

 

 

「おーい!エレンはおるかー?」

 

 

椿の声(幻聴)が聞こえた。どうやら、働きすぎて幻聴が聞こえたらしい。エレンは聞こえていないフリをしてさっさと夢の世界に猛ダッシュした。一方の椿は『おらんのか?』と呟きながらテントの中に入ってきて辺りを見渡すと、寝袋に包まっているエレンを見つけ『お!おったおった!』と探し者を見つけると寝袋に入っているエレンを持ち上げた。

 

 

「主神様がお主を呼んでおるのだ。一緒にこい」

 

 

夢の世界がどんどん離れていく感覚を感じたエレンは大粒の涙を流した。エレンの意識がどんなにダッシュで追いつこうとしても、夢の世界に辿り着くことはなく、気が付くと神ヘファイストスと老神のいる部屋に連れてこられた。

 

 

「主神様、エレンを連れてきたぞ」

 

「「……」」

 

 

寝袋に包まった芋虫状態で椿に担がれているエレンを見た2柱は何とも言えない表情をしていた。エレンの表情は明らかに『さっき寝たばかりの状態をたたき起こされた不機嫌状態』であり、呼び出したヘファイストスからは『ごめんなさいね……本当に』と謝罪された。

 

 

「……それで、自分に何か御用ですか?」

 

「ええ、貴方にやってほしい事があるの」

 

「回復ですか?」

 

「う~ん、確かに回復もやってほしいけど、それとはちょっと違うかな」

 

「?」

 

「ヘファイストス、その者は?」

 

「あぁ、紹介がまだだったわね。紹介するわ。この子はエレン。ヘスティアの眷属よ、ゴブニュ」

 

「ゴブニュ……【ゴブニュ・ファミリア】の主神ですか?」

 

「お主も名は聞いたことはあろう?手前らと同じ同列の【ファミリア】の主神様だ」

 

「……先に言っておきますけど、鍛冶はできませんよ?」

 

「分かっているわ。貴方にはこの素材に絶えず魔力を流しほしいの」

 

「?」

 

 

ヘファイストスから渡されたのは『壊れた腕輪』と『ボロボロのケープ』だった。さらに椿から降ろされたエレンを椿とゴブニュに聞こえないように離れた場所に移動し、ヘファイストスが事情を説明した。

 

 

「実はこの2つの素材を使って、『対ベヒーモス装備』を作る事になってね。この素材に貴方の魔力……『精霊の魔力』を付与させたいの」

 

「……ヘファイストス様。自分にそんな加護のような力は無いんですけど……」

 

「大丈夫。この2つには元々『精霊の加護』が付いている物なの。今は壊れて殆ど残っていないけど、貴方が魔力を注いでもらったら、ある程度は復活できると思うの……お願いできないかしら?」

 

 

ヘファイストスの目的はこの2つの素材を使って『対ベヒーモス装備』の制作。そして、エレンはその装備の性能を上げるための『精霊の加護』の復活。精霊の力を持つエレンの魔力を注ぐ込み、可能な限り加護の力を取り戻す事。

 

 

「魔力を注ぎ込むのはいいですけど……その……大丈夫なんですか……バレたりとか」

 

「まぁ、ゴブニュは何かしら気づくとは思うけど……そこは私が何とかするわ」

 

「分かりました。やれるだけの事はやってみます」

 

「お願いね、あとで精神力回復薬(マジック・ポーション)を持ってこさせるから」

 

「……(あれ?)」

 

 

何か気づいたら追加労働を引き受けてしまったエレン。とは言え、『対ベヒーモス装備』は必須装備。話だとこの装備は【剣姫】が装備する予定で【猛毒の風】を突破。ベヒーモスの角を破壊してもらい、猛毒と暴風の発生を阻止する予定らしい。

 

そんな重要装備の制作の為に必死に2つの素材に魔力を注ぎまくった。途中でアスフィが精神力回復薬(マジック・ポーション)と眠気覚ましの回復薬(ポーション)の差し入れてくれてとても助かった。『対ベヒーモス装備』はエレンが魔力を注ぎ込んだおかげで、なんと『精霊の加護』が()()()()『対ベヒーモス装備』を作り出すことができたが、外はすっかりと明るくなっており……エレンは又しても寝る事が出来なかった。

 

 

 

***

 

 

 

翌朝、決戦当日となった今日、シャクティの声掛けで多くの冒険者が集結していた。その後フィンと【対ベヒーモス装備』を身に纏った鎧姿のアイズが登場。この装備にはエレンも一枚嚙んでいるせいで魔力を帯びており、魔法種族(マジックユーザー)のエルフ達はその装備を見て、魔力を帯びている鎧が珍しいのか『おぉ~!』と声を漏らしていた。

 

その後はシャクティに代わりフィンが軽い演説をした後、連合軍は『元凶』がいる【黒雲】を目指して進行した。道中も多くのモンスターや【黒い竜巻】が襲ってくるが【ロキ】、【アストレア】、【ガネーシャ】、【猛者(おうじゃ)】が中心に返り討ちに目的地を目指した。

 

 

「ーーーようやく、ここまで辿り着いた」

 

 

部隊の先頭にいたフィンが呟いた。目の前に広がるのは夜を連想させるような漆黒の世界の入り口。この異質な光景を目の前にして怯み始める冒険者が多々出始めたが、ここでフィンが最後の演説を始めた。多くの冒険者を奮い立たせ、その闘志に火を付けた。

 

その後は治療師(ヒーラー)による連合軍の回復が行われ、全快の状態で【黒雲】の中に突入した。だが、【黒雲】の中は()()()()()()。【黒雲】の中は【毒の風】などは吹き荒れてはいなかったが、一帯が()()()()()()()()()()。その後のフィン達の説明でここは『黒の砂漠』……別名『死の灰の砂漠』と呼ばれる『ベヒーモス』が討伐された事で発生した『灰』で出来た呪われた大地だ。

 

 

「敵、接近!方角は……()()()!!」

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

気が付くと連合軍を取り囲むように【黒い竜巻】の中にいたモンスターが大量に迫っていた。このモンスターは【竜巻】纏っておらず、『黒の砂漠』と同じ漆黒の体がカモフラージュの役割を果たしてしまい、索敵が遅れてしまった。さらにはどの個体も今までの個体より一回り大きく、強さも段違い。強さは推定Lv.4クラスだった。

 

 

 

それでも……。

 

 

 

「蹴散らすだけだァ!」

 

「腕が鳴るね!」

 

「そうそう、こーいうのでいいのよ、こーいうので!」

 

「フフーン!【竜巻】を纏っていない分こっちの方が楽でいいわ!」

 

「……アリーゼ、アレはアレで厄介なのですが」

 

「何です?細腕の妖精様には荷が重すぎますか?でしたら後ろに下がってもらっても構いませんよ?」

 

「……!!、いいでしょう!!私の方が貴方より剣の腕が上だと証明して差し上げましょう!!」

 

「ぶわああああああああああああかめ!!糞雑魚妖精の貴様が剣の腕で勝とうなんざ出来んわぁ!!」

 

「く、くそざこ!?」

 

「まーた始まったぜ……って、おい!?てめーら2人で突っ走るんじゃねー!!!」

 

「リオーン、輝夜ー!待ってよー!」

 

『……』

 

 

ベートとティオネ、ティオナが真っ先に飛び出し、それに続いてアリーゼも飛び出していった。リューと輝夜は何方があの黒いモンスターを多く討ち取れるかの勝負をすることになり、ライラとアーディが2人の後を追いかけていった。

 

第一級冒険者達は臆することなく、黒いモンスターの大軍を蹂躙していった。最もあの黒いモンスターの最大の武器はあの【黒い竜巻】であり、それを纏っていない状態はただのデカいモンスターである。それでも、黒いモンスターは大軍。第一級冒険者達が多くの数を相手にしているが、それでも相当な数だった。

 

 

「斬っても斬っても切りがないっす!?」

 

「それも今だけだ。ここはダンジョンでない。無限ではない以上、限りはある!」

 

「じゃあ、そろそろこっちも1枚目の切札(カード)を切るとするかな?有言実行だーーーオッタル」

 

「……いいだろう」

 

 

フィンが使った切札(カード)は『オッタル』。昨夜の答え合わせの場でオッタルが協力を受諾している。オッタルは装備している大剣で黒いモンスターの大軍を()()()()()させ、連合軍の進む道を切り開いていった。

 

それでも黒いモンスターの大群は押し押せてくるがここで連合軍の()()()()()()()。近接戦闘の得意な者や壁役の冒険者達が黒いモンスターを押しとどめ、後衛の魔導士部隊が魔法攻撃で黒いモンスターを殲滅。そして、傷ついた者達を治療師(ヒーラー)達が全快状態にし、再び戦場に送り出す。バラバラの派閥同士が互いを助け合いに黒いモンスターの大軍を押し返していった。

 

連合軍が順調に進軍を進めていたが、()()()()()が部隊の進行を止めた。

 

 

ジュウウウゥゥゥゥッッ!!」

 

 

「ぐううっ!?がっ、あああぁぁっ!」

 

「ベル!?」

 

「全員止まれ!!ーーー『毒』だ!」

 

 

部隊の先頭付近にいたベルを含めた数人が『毒』を受けた。『毒』を受けた部分は、()()()()()()()()症状も今までの毒とは比べる程にもならなかった。毒を受けた者はエレンとアミッドの回復魔法や専用の解毒薬で直ぐに治療され、大事には至らなかった。

 

さらには付近には()()()()()が灰に埋まっており、そこでフィンやオッタルを含めた数人が今回の事件の全貌を説明した。今回の事件はどこかの神に唆された眷属達が、かの【陸の王者(ベヒーモス)】のドロップアイテムを掘り起こし、別のモンスターに取り込ませたのではないか、と。

 

実際に、【陸の王者(ベヒーモス)】を討伐された際は砕けた大量の魔石は発見されたが、【陸の王者(ベヒーモス)】のドロップアイテムは()()()()()()()()()()()。それを誰かが掘り起こし、別のモンスターに取り込ませ、強化種でも作り出そうとしたのではないかと。

 

だが、掘り起こされたのは『ベヒーモスの()()』であり『生きていた』としたら……取り込んだモンスターを乗っ取る……いや、その『巨獣の心臓(ドロップアイテム)』こそがモンスターを()()()()()()復活したのではないか?これが神々と答え合わせの結果だった。

 

 

「(ん?)」

 

 

フィン達の説明を受けてエレンは疑問に思った。『心臓』ではないが『ベヒーモス』と根源を同じとする『アンタレスの甲殻』をヘファイストスや椿に渡してあるが大丈夫なのか?と思ったエレンは椿の方を見ると、椿は『全く、お主はトンデモナイ物を渡してくれたなぁ!』と背中をバシバシと叩かれた。

 

 

「お主が渡した甲殻は固すぎて悪戦苦闘しておるわ!」

 

「……無理そうですか?」

 

「何を言っておる。手前は鍛冶師だ。必ず物にしてみせる。とは言え、時間は掛かる。もうしばらく待て」

 

「分かりました、よろしくお願いします」

 

「ふむ、任された!」

 

 

椿とそんな会話が行われている間にフィンがアイズがこの【毒の霧】の向こうにいる『元凶』の猛毒の風を発生させる器官。『角』の破壊を行い、猛毒と風の発生を停止させる事を説明した。フィン達はこの場に留まり、他の黒いモンスターの討伐を行いながら、アイズが『角』の破壊を完了させるまで持久戦を行いとの事。

 

そして、今回の角の破壊作戦は()()()()()で行う。エレンは【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の効果で毒を無効化でき、風精霊(シルフ)の護布を装備しているので回復魔法を自身に行使している間は【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】の効果で性能が向上し、暴風の中でもある程度は動くことはできるが、それでもLv.1の治療師(ヒーラー)。流石に他派閥の者を死地に送り出す事は出来なかったので、今回の作戦には組み込んでいなかった。

 

 

「じゃあ……行ってくるね」

 

 

そう言うとアイズは風の付与魔法(エンチャント)を纏い、【毒の霧】の中に入っていった。アイズが【毒の霧】の中に侵入したのを感知したのか、黒いモンスターの集団が再び襲い掛かってきた。フィン達はこれを迎撃し、アイズが必ずやり遂げてくれると信じて戦い続けた。

 

 

 

***

 

 

 

「風が全然消えねぇ……まさか【剣姫(けんき)】のやつ……」

 

「縁起でもねぇこというんじゃねぇっ!もし【剣姫(けんき)】がやられたら、なんもできねえんだぞ!?」

 

 

アイズが【毒の霧】の中に入ってから()()()が経過し、連合軍の中から不安の声が続出し始めていた。一向に数が減らない黒いモンスターを相手に疲弊し始め、弱音を吐き始めた。フィン達がそれを鼓舞する事で何とか崩壊を阻止しているが時間の問題だった。

 

 

「アイズさぁんっ!」

 

「アイズさぁ~~~~~~~~~~~んっ!!」

 

 

黒いモンスターと戦いながらベルとレフィーヤがアイズに声援を飛ばしていた。それでも【毒の霧】の中から返事が返ってくることはない。何とか展開を動かさないといけない状況。エレンは『やっぱり、行くしかないか~』と深く息を吐きながら、高等精神力回復薬(ハイ・マジックポーション)精神力(マインド)の回復をしながら【毒の霧】の方を見ていた。

 

 

「リリ、ヴェルフ。ちょっと行ってくる」

 

「エレン様!?行くって何処に……まさか!?」

 

「【剣姫(けんき)】の手伝いにいってくる」

 

「……おいおい、大丈夫何か?」

 

「毒は【スキル】で無効にできるし、装備も回復魔法を全開にしていたら、溶解は防げると思う」

 

「……なら【焔翔(えんしょう)】を持っていけ、役に立つはずだ」

 

「サンキュー!ヴェルフ!!」

 

 

エレンはヴェルフから【焔翔(えんしょう)】を受け取ると、そのまま回復魔法を全開にして、【毒の霧】の中に突っ込んだ。【毒の霧】の中は猛烈な毒と風が吹き荒れている状況であり、魔法と【スキル】を発動しているエレンでも満足に動くことはできなかった。

 

それでも回復魔法のごり押しで『中心』を目指した。僅かではあるが戦闘が行われている音がする方に進んだ。音のする方に進んだエレンは暴風の中ではっきりと確認することはできないがとてつもなく巨大なモンスターの姿を確認。そして、そのモンスターに絶えず攻撃を続けている風を纏った剣の姫の姿も確認できた。

 

 

「アイズさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

「……えっ?エレン!?」

 

 

エレンは出来うる限りの大声でアイズに声をかけた。アイズもこの暴風の中でもLv.6の【ステイタス】で強化された五感でエレンの声を拾うことができた。アイズもここにほかの人がいることにとても驚いてはいたが、一旦エレンの所に下がったアイズ。エレンは回復魔法の炎を纏わせた大盾で猛毒の風を可能な限り防ぎ、アイズに専用の解毒剤と万能薬(エリクサー)高等精神力回復薬(ハイ・マジックポーション)を渡し、回復できる環境を作り出した。

 

エレンは回復魔法【聖なる火よ(セイクリッド・フレア)】は1人しか回復ができない魔法。現在、エレンは自身の【スキル】の発動や猛毒による装備の損傷を防ぐ目的で自身に発動している最中だ。ここでアイズに回復魔法を使ってしまうと、エレンを包んでいる回復魔法の炎が消えてしまい、【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】の上昇効果が消えてしまったり、大盾や風精霊(シルフ)の護布がこの猛毒の風での装備の損失が起きてしまうなどの事態が起きてしまう。

 

さらに大盾を失えば、【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】の力も失ってしまう負の連鎖が起きてしまう。ゆえにエレンは回復魔法ではなく、道具(アイテム)での回復を選んだ。エレンからもらった道具(アイテム)で回復を済ませたアイズと情報を交換し合った。

 

 

「アイズさん、そっちはどんな感じですか?」

 

「……ダメ、あと少し、届かない」

 

「この猛毒の風が無くなれば、『角』の破壊はできそうですか?」

 

「……うん、できるよ。でも、どうするの?」

 

「これを使います」

 

「……魔剣?」

 

「はい、この魔剣であの『ベヒーモス』亜種を攻撃します。この魔剣なら完全ではなくても、この猛毒の風を弱めることができるかと……」

 

「……分かった。お願い、エレン」

 

 

エレンの提案はヴェルフから預かった魔剣【焔翔(えんしょう)】を使ってあの【ベヒーモス】亜種を攻撃。厄介な猛毒の風を弱める作戦だった。幸いな事にあの【ベヒーモス】亜種はエレンを()()()()、アイズに注意を向いている。大方、エレンは大した敵ではなく、自身をを傷つけるアイズを警戒しておるのだろう。

 

アイズには魔剣の攻撃に巻き込まれないように距離を取ってもらっている。エレンは背中に背負っていた魔剣【焔翔(えんしょう)】を装備して、大きく振りかぶった。エレンの考えでは18階層の『黒いゴライアス』を攻撃した魔剣と()()だと思っていた。

 

だが、誤算があった。エレンは【焔翔(えんしょう)】が猛毒の風で溶かされないように【聖なる火よ(セイクリッド・フレア)】の()()()()()()()。そして、ヴェルフは精霊の血を引く一族『クロッゾ』の家系。 ヴェルフの作る魔剣は()()()()()()()()()()()()ものであり、エレンの【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】の()()()()()()()()()()()

 

 

「は?」

 

 

エレンが放った魔剣【焔翔(えんしょう)】の威力は18階層でヴェルフが使った【火月(かづき)】の威力を大きく上回っており、【ベヒーモス】亜種の巨体を軽く包み込む規模の威力だった。【焔翔(えんしょう)】の炎は猛毒の風を焼き消し、暗闇の空間に穴をあけ空いた穴から太陽の光が差し込んでいた。

 

実際、エレンの【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】による能力上昇には()()()()()。エレンの回復魔法【聖なる火よ(セイクリッド・フレア)】の出力に応じて【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】の効果対象の能力上昇率が()()()()。エレンは【聖なる火よ(セイクリッド・フレア)】を最大出力で出していたのでこの火力に至ったが、その威力は59階層で使用したリヴェリアの【レア・ラーヴァテイン】と()()()()()()である。

 

 

「……すごい!!」

 

 

アイズは素直にそう思った。エレンの放った魔剣の一撃で猛毒の風は()()()()()状況。アイズはこの瞬間を見逃さずエアリエルを最大出力で解放。【ベヒーモス】亜種の『角』に向けて必殺の一撃を繰り出した。

 

 

「【リル・ラファーガ!!!】」

 

 

アイズの一撃が【ベヒーモス】亜種の『角』を破壊した。『角』を破壊された【ベヒーモス】亜種は大きな咆哮を上げ、もの凄い衝撃波が発生した。エレンは装備している大盾で咄嗟に防ごうとするが、もの凄い威力の衝撃波に椿に応急処置してもらった大盾が耐え切れず、砕け散ってしまった。

 

大盾を失えば、【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】の効果は消えてしまうので、エレンは咆哮の衝撃波で吹き飛ばされてしまった。衝撃波の影響で【焔翔(えんしょう)】は破壊され、風精霊(シルフ)の護布はボロボロになってしまった。何より、衝撃波を諸に喰らったエレンは一瞬気絶してしまい、【聖なる火よ(セイクリッド・フレア)】が()()()()()()()()()

 

無論、エレンはすぐに意識を取り戻したが、()()()()()()()。エレンが吹き飛ばせれた場所は1人の死体が埋まっていた。そして、その死体を風除けにした機会を伺っていた(おんな)の胎児がいた。彼女は元々、【ベヒーモス】のドロップアイテムを取り込んだモンスターに寄生させる予定のものだったが、【ベヒーモス】亜種の誕生という異常事態(イレギュラー)のせいで、寄生する機会を失っていた。

 

さらに、【猛毒の風】が吹き荒れる状況に(おんな)の胎児は何もできず、死体を風除けにして死滅を逃れていた。それでも、この状況がいつまで続くか分からず、(おんな)の胎児は焦っていた。

 

 

 

だが、()()()()()()()

 

 

 

アリア(アイズ)』が来た。さらには『同胞(エレン)』も来た。だが、外は【猛毒の風】が吹き荒れていたので()()()。そしたら、どうだ?『同胞(エレン)』の放った魔剣で厄介な【猛毒の風】は消え、さらには自分の近くに飛ばされてきた。又とないチャンスだった。

 

 

「ーーーァァァァアアアアアアアアァッ!!」

 

「!?」

 

 

エレンは突然後ろから女の叫び声のような声が聞こえ、後ろを振り向くが、視界に映ったのは不気味な眼球を持った緑色の物体だった。前回の『アリア(アイズ)』の時はLv.5の【ステイタス】で回避することができたが、エレンはどうだ?

 

 

 

結論……()()()()()()()()

 

 

「うおっ!!!」

 

 

前夜祭(イブ)』の時のベートの不意打ち同様にエレンは回避することができなかった。(おんな)の胎児はふり向いたエレンの左顔に張り付こうとしたが、エレンはとっさに右腕で()()()()()がそれは()()()()()()(おんな)の胎児の寄生に必要な条件は()()()()()。当然、エレンの右腕に張り付いている(おんな)の胎児はその条件を()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おんな)の胎児は不気味は笑みを浮かべ、エレンを乗っ取るために()()。エレンの右腕に根を伸ばし……寄生を開始した。




ここまで読んでいただきありがとうございました。


エレンは『精霊』の側面を持っているもで『魔力』の伸びが良く、『魔力』のみですが上限を突破できます。

月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の1つ目の効果ですが、これでエレンには毒などのあらゆる状態異常が効かなくなりました。無論、『魅了』も聞かなくなったので、どっかの美の女神の魅了も効きません。

『クロッゾの魔剣』は【精霊の軌跡(スピリット・ミラクルム)】の効果の効果対象です。さらには『対ベヒーモス装備』に備わっている『精霊の加護』を復活させたのと同じ理由ですが、本来失うハズの力をエレンの回復魔法で()()()()()ことができます。要するにエレンに『クロッゾの魔剣』を装備させたら、回復魔法が消えない限り壊れず、威力補正が乗った『攻城兵器』が完成します!


エレン
 2徹目に入ったが、アスフィから、もらった眠気覚ましの回復薬(ポーション)で何とか頑張っている。エレンの命運はいかに!

椿
 エレンが渡した『アンタレスの甲殻』に悪戦苦闘中。それが逆に彼女の職人魂に火をつけてしまった。

ヘファイストス
 『対ベヒーモス装備』の制作にエレンの協力を要請。装備に備わっていた『精霊の加護』が完全復活したのは予想外だった。

ゴブニュ
 エレンが魔力を注ぎ込んだ影響で、正体に薄々感づいているが、黙っている。

アイズ
 エレンがこの来たことにとても驚いた。そして、エレンにあの『宝玉の胎児』が取り付いたのをLv.6で強化された視力で確認。とても焦っていた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。