聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか 作:フェイト・
遥か遠くでアイズは見た。あれは『宝玉の胎児』。『穢れた精霊』の分身……。『精霊の分身』の
そして、その『
エレンの右腕に取り付いた『
「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ッッ!!!」
「ーーーえっ?」
エレンの右腕に寄生の根を伸ばしていた『
「……何が?」
アイズには一体何が起こったのか理解できなかった。寄生されそうになったエレン本人も何が起こったのか理解できず、右腕を上下に振ったりしていた。しかし、アイズはハッとした。エレンを狙っているのはあの『
***
「……何だったんだ?」
突然、女の悲鳴のような声が聞こえたと思ったら、緑色のでかい目玉の物体が飛んできて、思わず右腕で防いでしまった。そしたら、右腕全体に何やら根っこのようなものを伸ばし始め、一瞬……嫌な予感を感じたと思ったら突然青い炎に燃やされ、灰になって消えてしまった。
あの青い炎は間違いなくエレンの回復魔【
実際はエレンは
元々、『
エレンの回復魔法【
そう。
最も、エレンは『穢れた精霊』の事を詳しく知っている訳ではないし、『精霊』としての自覚は最近ぼちぼちと分かってきた感じではあるが、割と分かっていなかったりする。
「ん?」
エレンが右腕の状態を確認していると、突然辺りが暗くなった。エレンが放った魔剣の影響で漆黒の闇のような【猛毒の風】は止んでおり、何なら【黒い霧】に穴が開き、そこから太陽に光が入り込んでいた影響で割と明るい状況だった。
「ーーーあっ」
ふと顔を上げると、エレンを見下ろす巨大な顔と目があってしまった。暗く感じたのはエレンの周り周辺一帯を覆いかぶさるぐらいの黒い獣の顔が覆ったせいだった。そして、何より
なお、このお怒り状態の『ベヒーモス』亜種に対したエレンの行動は……。
「ーーーてへぺろ☆」
『てへぺろ』だった。モンスター相手に『すいませんでしたぁー!!!』といった謝罪が通用するはずがないと考えたエレンは出来る限りのあざとい表情でちょっぴり舌を出して『ごめんなさーい!
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
殺意Maxの怒りの咆哮だった……。
***
「おいおい!?さっきの超巨大な炎の塊はなんだぁ!?」
「いや、【
「「私では
一方【毒の霧】の外では超巨大な炎の塊が突然現れたことでちょっとしたパニック状態になっていた。轟音と共に超巨大な炎が突如として現れ、その炎が【黒雲】に穴を開け、そこから太陽の光が差し込んでいた。こんな馬鹿げた威力を出せるとしたら、大方都市最強の魔導士のリヴェリアかその弟子のレフィーヤの2人であるがその2人は自分ではない無いと否定した。
「ヴェル吉、あの炎はお主の魔剣ではないか?」
「……確かにあれは【
唯一、あの炎の正体に気づいたのは椿とヴェルフの2人だった。それでもあの威力はヴェルフが打った魔剣の威力を遥かに超えていた。2人は中で何が起こっているのかとても気になっていたが【毒の霧】の中から悲鳴のような声と巨大な地響きのような振動が響いていた。
「助けてくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!??」
「えっ!?エレンさん!?」
連合軍とは離れた場所で【黒い霧】の中から飛び出してきたのは回復魔法の炎を浴びている状態で全速力で
その正体とは……。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!??』
「何で首が無いのに生きるんですか!?ホント!マジで!誰か助けてー!!!
実際エレンが『ベヒーモス』亜種に襲われそうになった瞬間……どこからか『斬撃』が飛んできて『ベヒーモス』亜種の
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!」
今のエレンは大盾を失っているので【
「ギャァァァァァァァァァァァァァッッ!!??」
「ちっ!」
エレンが踏み潰される寸での所でベートがエレンを回収。何とか踏み潰されずに済んだエレンだったが、首の無い『ベヒーモス』亜種は直ぐにエレンを抱えているベートを追いかけた。
「おいてめぇ!!一体何やらかしやがった!?」
「仲間から借りた魔剣であの『ベヒーモス』亜種をこんがり焼きましたー!!」
「犯人はてめぇかぁ!?」
「ベートさん何とかして下さいよ!?Lv.6なんですからあの首無し『ベヒーモス』亜種をちゃっちゃと倒してくださいよ!!!」
「うるせぇ!!振り落とすぞ、くそ雑魚が!!」
「はっはっはっ!誰がくそ雑魚だー!!道連れにしてやるぅ!!!」
「おいっ!?てめぇ!?離せぇ!?」
首根っこを捕まれ、引きずられた状態だったエレンだったが、ベートの『くそ雑魚』呼びにムカッとしたエレンはベートに体にピタッとくっついた。
「リヴェリア、魔導士部隊を連れて詠唱を始めろ!!魔法の一斉砲撃であの『ベヒーモス』亜種の注意をこちらに振り向かせる!!」
「承知した、お前たち私に付いてこい!!」
『はい!』
「ガレス、君はオッタルと一緒n『あやつなら居らんぞ、フィン』……は?」
「ラウルの報告だと『確認する事がある』と言って【毒の霧】の中に入っていったそうだぞ」
「……」
こんな非常事態に何やってるんだ?とフィンは率直に思った。確かのあの首のない理由を知りたいが時と場合を考えてほしい。フィンはピクピクと顔を引き攣らせながらもガレスと
一方、アイズは……。
「グオオオオオオオォォォォォォッッ!!!」
「ふんっ!!!」
グシャ!!!
「……」
首を斬り落されてなお生きている『ベヒーモス』亜種の頭部を漆黒の鎧を着た大男が大剣で止めを刺していた。アイズはその光景をただ見ることしか出来なかった。
「(ガレスやリヴェリア、フィンより……強い)」
エレンを助けに入ろうとした瞬間……。突然『ベヒーモス』亜種の頭部が斬り落され唖然としていると、アイズの後ろから2振りの大剣を持った大男が現れた。1つは年季の入ったボロボロの大剣でもう1振りの大剣は着ている鎧と同じ真っ黒の大剣だった。
「(……ううん、違う。この人)」
アイズは漆黒の大男が現れた瞬間……『デスペレート』を
「(……この人【
アイズがそう思った瞬間、その人物が現れた。オッタルである。アイズが見たオッタルの表情は9階層の時の無表情とは違い、信じられないもの見たような顔をしていた。
「馬鹿な……何故、お前がここにいる」
「ん?何だ……ただの糞ガキか」
「
「勝手に殺すな、糞ガキ!……まぁ死に損ねたのは認める」
「何!?」
「
「馬鹿な!?貴様は
「いつの話をしている?今の俺は
「ありえん!?」
漆黒の鎧を着た大男から語られる内容を聞いたオッタルは信じられなかった。この男は
『黒竜戦』には参加できなかったので戦死はしていないのはオッタルは知っていたが、いつ
「亡霊に見えるか?足は付いているぞ?それとも、悪夢に食い散らかされるのが所望か?」
大男はボロボロの方の大剣を黒い砂漠に突き立てると『構えろ』と口にした。オッタルはすぐに背負っている大剣を構え、目の前にいる大男を睨みつけた。
「『泥の味』が恋しいだろう?この俺が久しぶりに味合わせてやる」
遠く離れた場所では『ベヒーモス』亜種と冒険者達の戦いが繰り広げられているが、今ここでもう1つの戦いが巻き起ころうとしていた。
***
「魔導士部隊、撃て!!」
リヴェリアの掛け声に合わせて魔導士部隊が魔法攻撃を開始。様々な属性の魔法が首のない『ベヒーモス』亜種に着弾する。相手は超大型級を遥かに超える巨体なので全弾命中するが、首のない『ベヒーモス』亜種にはビクともしなかった。
「ダメですリヴェリア様!?コチラを見向きもしません!!」
「エレンの奴、一体何をやらかしたんだ!!!」
「リヴェリア!フィンからの指示だ。レフィーヤと一緒に魔法の準備をしとれ!アレは儂らが止める!!」
「分かった、レフィーヤ、
「は、はい!?」
ガレスの声掛けにリヴェリアはすぐに応え、レフィーヤに
「今じゃ!お前らぁぁ!!」
「【リスト・イオルム】」
「【ガーナ・アヴィムサ】
ガレスの掛け声に合わせてティオネやアーディなどの拘束魔法や
更に……。
「「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」」
リヴェリアやレフィーヤなど氷系魔法を使える者が『ベヒーモス』亜種を
「すげぇ……」
「あのバカでけぇ巨体を凍り漬けにしやがった」
「いやまだだ!まだ動いてやがる!!」
多くの魔導士達の氷系魔法を食らってもまだ動こうとする首の無い『ベヒーモス』亜種が、体を覆っている氷の牢獄を破ろうとしていた。リヴェリアが再び魔法の準備をすべく動き出そうとした時、エレンが走り出していた。
ベートに投げ捨てられるように椿の所に放り投げられたエレンはヴェルフに
「【
エレンは【
エレンの放った【
「【今ここに、女神の
多くの冒険者達が白銀の氷山に見惚れている間に詠唱を完了させた『勇者』がいた。超長文詠唱ではあるが、Lv.および潜在値を含めた全アビリティ数値を魔法威力に加算させ、投槍による攻撃を放つ投槍魔法。
その名も……。
「【ティル・ナ・ノーグ】!!」
フィンが放った『勇者の一槍』は白銀の氷山に閉じ込められている首の無い『ベヒーモス』亜種の胴体を
「……たお、した?」
「勝ったん……ですか……?」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
首の無い『ベヒーモス』亜種を閉じ込めていた白銀の氷山が完全に砕け落ちたのを確認した冒険者達が大きな歓声を上げる。かの三大
一方……。
「この程度か……『都市最強』も堕ちたものだな」
「……」
「……嘘」
別の場所で行われていた『戦い』も決着がついた。『都市最強』と呼ばれた男が打ち倒され、漆黒の鎧を着た大男が見下ろしていた。アイズは2人の戦いを最後まで見ていたが、圧巻の戦いだった。オッタルは確かに強い……だが相手が
「Lv.……8」
アイズがそう呟く。相手の技量もそうだが、Lv.7を正面でここまで打ちのめす事ができるのはそれしか考えられなかった。漆黒の鎧を着た大男は突き刺していたボロボロの大剣を拾い上げ、その場を立ち去ろうとしたが……。
「……!!待って!?」
「何だ、娘?俺に何か用か?」
「あの、名前は……?」
アイズは知りたかった。Lv.8の実力を備えた冒険者を知らなかった。唯一知っているのは『学区』で教師をしている『現代の英雄』と呼ばれているドワーフの男ぐらいだった。
「
漆黒の鎧を着た大男は自身の名を伝えると2振りの大剣を持ってその場を立ち去った。アイズは作戦開始前にフィンとオッタルから【
「【ゼウス・ファミリア】……」
かつて【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】が末席の時代だった時の『オラリオ』にいた【最強】の派閥の名。アイズはその派閥の名を口にするがとりあえずフィン達と合流するべく、ボロボロの状態で倒れているオッタルを担いで連合軍の所に向かった。
***
「おっかえりぃぃぃ、アーンド、レッツカーニバルやぁ!」
「おいおい、ロキ。ようやく帰ってきたと思ったら……どういうことだい?」
「どうなっとるって、見たら分かるやろうがー!祭りや祭り!」
連合軍が『ベヒーモス』亜種を討伐し、無事に『オラリオ』に帰還したが、待ち受けていたのは『グランド・デイ』の続きと勝利を祝う祭りだった。『ベヒーモス』亜種の討伐後、今回の騒動の発端知なった『ベヒーモスの心臓』の捜索が行われたが、フィンの【ティル・ナ・ノーグ】で魔石ごと破壊された残骸が発見された。
元々、『ベヒーモスの心臓』は同じような事が起こらないように破壊する予定だったが、かの三大
その後アミッドやエレンなどの
一方、エレンは……。
「ゴクゴクゴクーーーぷはぁー!お代わり!」
「ぬぅぅ、若造に負けいられるか!おい、『ドワーフの火酒』を持ってこい!樽でだ!」
「わっはっは!やっぱり祭りはこうでなくはな!手前にも『ドワーフの火酒』をくれ!」
「……」
急遽、開催された大飲み大会に参加していた。内容は酒をどれだけ飲めるかを競うものだったが、エレンはヴェルフと一緒に居たところを椿に捕まり、この大会に強制参加させられていた。本当ならさっさと寝たい所だったがアスフィからもらった眠気覚ましの
所が思わぬ誤算が起こった。エレンの【スキル】【
ヴェルフが真っ先に潰れ、少しして椿、ガレスが酔いつぶれてしまった。一方のエレンは顔色を一切変えず、グビグビと『ドワーフの火酒』を飲み干し後ろの席には空になった大量の酒樽が積みあがっており、周りにいた多くの見物人達はドン引きしていた……。
「やぁエレン・エウロギア。まさか君がそんなに酒豪だとは思わなかったよ……隣、いいかい?」
「あ!フィンさんお疲れ様です」
エレンが『ドワーフの火酒』を飲んでいる最中に今回の
「改めてお礼を言わせてくれ。君のお陰でこちらも結構助けられたよ、ありがとう」
「どういたしまして、
今回のエレンの報酬は前回の『
「所でだいぶお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「はっはっはっ……。いや~、
「問題?」
「実は死んだと思った人物が生きていたって報告があってね」
「へぇ~。そんなことがあるんですn『名前は
「アイズの話だとLv.8の実力だったらしい。しかも、オッタルを
「……」
フィンが苦笑いを浮かべながら何があったのか話すが、エレンは目を背けて『ドワーフの火酒』を飲み干した。だってそのザルドを治したのは
叩きのめされたオッタルに関しては『オラリオ』に戻って速攻で『ダンジョン』に潜っていったらしい。Lv.8に【ランクアップ】していることに関しては前回の『アンタレス』討伐がきっかけだろうなぁとエレンは考えているが『まさかね……?』と
だが、残念ながらもう1人の存在も主神の女神と再会を果たしており、Lv.8へと【ランクアップ】を完了させ、更には不治の病が治り【
言ってしまえば、
エレンは知らず知らずの内にトンデモナイ化け物を誕生させてしまっていた……。
ここまで読んでいただきありがとうございました。『ベヒーモスと言ったらザルドでしょ!』と思って少しですが、登場させてみました。
エレンの寄生されそうになった部分は、相性関連の影響で
アルフィアとザルドに関してはエレンの回復魔法と『
エレン
【スキル】の影響で酔えない体になってしまった。そのせいで酒豪だと勘違いされてしまっている。
オッタル
ザルドにボコボコにされたので『ダンジョン』にしばらく籠って鍛えなおしている。
アイズ
『宝玉の胎児』に寄生されなかったエレンが気になっている。
フィン
『ベヒーモス』亜種の件が片付いたと思ったら別の問題が起きた事に頭を抱えている。なお、原因(エレン)が隣にいる事に気づいていない。