聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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感想、誤字脱字報告大変助かっています!この先もよろしくお願いします。


21話 冒険者依頼(クエスト)クリア

遥か遠くでアイズは見た。あれは『宝玉の胎児』。『穢れた精霊』の分身……。『精霊の分身』の()だ。他のモンスターに寄生し、多くの魔石を喰らい、『穢れた精霊』へと()()()()()()()()

 

そして、その『宝玉の胎児(たね)』が()()()エレンに寄生しようとしていた。アイズとエレンとの距離は『ベヒーモス』亜種の咆哮でかなりの距離を離されてしまっていた。エレンは『宝玉の胎児(たね)』の突進を回避する事が出来ず、右腕で防いでいたが、それではダメだ。

 

エレンの右腕に取り付いた『宝玉の胎児(たね)』はその寄生の根を伸ばしていた。その姿を遥か遠くで見ていたアイズは【エアリエル】を最大出力で開放し、エレンの元に駆け付けようとするが、()()()()()()

 

 

「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ッッ!!!」

 

「ーーーえっ?」

 

 

エレンの右腕に寄生の根を伸ばしていた『宝玉の胎児(たね)』は突然()()()()()()()苦しみだし、やがて『宝玉の胎児(たね)』は灰となって消え去った。

 

 

「……何が?」

 

 

アイズには一体何が起こったのか理解できなかった。寄生されそうになったエレン本人も何が起こったのか理解できず、右腕を上下に振ったりしていた。しかし、アイズはハッとした。エレンを狙っているのはあの『宝玉の胎児(たね)()()()()()()()()。大火傷を負った黒い獣がゆっくりとエレンの方に向かっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「……何だったんだ?」

 

 

突然、女の悲鳴のような声が聞こえたと思ったら、緑色のでかい目玉の物体が飛んできて、思わず右腕で防いでしまった。そしたら、右腕全体に何やら根っこのようなものを伸ばし始め、一瞬……嫌な予感を感じたと思ったら突然青い炎に燃やされ、灰になって消えてしまった。

 

あの青い炎は間違いなくエレンの回復魔【聖なる火よ(セイクリッドフレア)】の炎だった。だが、エレンは【聖なる火よ(セイクリッドフレア)】を()()()()()()。突然の出来事に思考が追い付いていなかった。

 

実際はエレンは()()()()()()()、『宝玉の胎児(たね)』が()()()()だけだった。『宝玉の胎児(たね)』はエレンに寄生する為に寄生の根を伸ばした結果……エレンの中にあるヘスティアの聖火(ほのお)()()()()()()()()()

 

元々、『宝玉の胎児(たね)』の大本である『穢れた精霊』とってエレンの炎は劇毒そのものだが、正確に言えば、『ヘスティアの聖火(ほのお)』が劇毒なのだ。エレンの体はエレボスが『ヘスティアの神殿』から持ち出した『ヘスティア聖火(ほのお)』を自身の神威で形どり作り出したもの。エレンの体の中には『ヘスティアの聖火(ほのお)』が今もなお()()()()()()()()()だった。

 

エレンの回復魔法【聖なる火よ(セイクリッドフレア)】の()()()()()。エレンの中に寄生の根を伸ばした『宝玉の胎児(たね)』は『ヘスティアの聖火(ほのお)』に()()()()()となって燃えて消えてしまったのだ。

 

 

 

そう。ヘスティアの精霊(エレン・エウロギア)寄生する(穢す)ことは、『穢れた精霊』には()()()()()()

 

 

 

最も、エレンは『穢れた精霊』の事を詳しく知っている訳ではないし、『精霊』としての自覚は最近ぼちぼちと分かってきた感じではあるが、割と分かっていなかったりする。

 

 

「ん?」

 

 

エレンが右腕の状態を確認していると、突然辺りが暗くなった。エレンが放った魔剣の影響で漆黒の闇のような【猛毒の風】は止んでおり、何なら【黒い霧】に穴が開き、そこから太陽に光が入り込んでいた影響で割と明るい状況だった。

 

 

「ーーーあっ」

 

 

ふと顔を上げると、エレンを見下ろす巨大な顔と目があってしまった。暗く感じたのはエレンの周り周辺一帯を覆いかぶさるぐらいの黒い獣の顔が覆ったせいだった。そして、何より()()()()()。その巨大な顔の備わっている複数の眼全てがエレンの姿をハッキリと視認しており額には複数の青筋が浮かび上がっていた。

 

 

 

なお、このお怒り状態の『ベヒーモス』亜種に対したエレンの行動は……。

 

 

 

「ーーーてへぺろ☆」

 

 

『てへぺろ』だった。モンスター相手に『すいませんでしたぁー!!!』といった謝罪が通用するはずがないと考えたエレンは出来る限りのあざとい表情でちょっぴり舌を出して『ごめんなさーい!()()()()やり過ぎちゃいましたー!てへっ』と意味合いを込めた謝罪をした。これが(オス)なら『いいよーー!』と鼻を伸ばした表情で許してくれそうだが、『ベヒーモス』亜種の反応は……。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

殺意Maxの怒りの咆哮だった……。

 

 

 

***

 

 

 

「おいおい!?さっきの超巨大な炎の塊はなんだぁ!?」

 

「いや、【九魔姫(ナイン・ヘル)】か【千の魔法(サウザンド・エルフ)】のどっちかだろう?」

 

「「私ではありません(ない)!!!」」

 

 

一方【毒の霧】の外では超巨大な炎の塊が突然現れたことでちょっとしたパニック状態になっていた。轟音と共に超巨大な炎が突如として現れ、その炎が【黒雲】に穴を開け、そこから太陽の光が差し込んでいた。こんな馬鹿げた威力を出せるとしたら、大方都市最強の魔導士のリヴェリアかその弟子のレフィーヤの2人であるがその2人は自分ではない無いと否定した。

 

 

「ヴェル吉、あの炎はお主の魔剣ではないか?」

 

「……確かにあれは【焔翔(えんしょう)】の炎だが、あんな威力はでねぇぞ!?」

 

 

唯一、あの炎の正体に気づいたのは椿とヴェルフの2人だった。それでもあの威力はヴェルフが打った魔剣の威力を遥かに超えていた。2人は中で何が起こっているのかとても気になっていたが【毒の霧】の中から悲鳴のような声と巨大な地響きのような振動が響いていた。

 

 

「助けてくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!??」

 

「えっ!?エレンさん!?」

 

 

連合軍とは離れた場所で【黒い霧】の中から飛び出してきたのは回復魔法の炎を浴びている状態で全速力で()()()逃げるエレンの姿だった。そして、エレンの後を追いかけるように巨大な地響きがどんどん近付いてきて、その正体をを現した。

 

 

 

その正体とは……。

 

 

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!??』

 

 

 

()()()()『ベヒーモス』亜種だった……。

 

 

「何で首が無いのに生きるんですか!?ホント!マジで!誰か助けてー!!!

 

 

実際エレンが『ベヒーモス』亜種に襲われそうになった瞬間……どこからか『斬撃』が飛んできて『ベヒーモス』亜種の()()()()()()()()()()。それも切断された部分から大量の血を流しているが倒れることはなく、寧ろその場を離れようとするエレンを()()()()()()()()()。エレンは首が付いてないのに生きている『ベヒーモス』亜種にドン引きして全速力で逃げて今に至る……。

 

 

「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!」

 

 

今のエレンは大盾を失っているので【聖火の守護者(ウェスタ・ダイモーン)】の【ステイタス】強化が切れている状態。更にエレンは『敏捷』がそんなに高くない。必死に走って逃げるエレンだが、首の無い『ベヒーモス』亜種はエレンとの距離を確実に詰めていた。必死に逃げるエレンを黒い影が覆う。エレンの頭上を首の無い『ベヒーモス』亜種の巨大な脚がエレンを踏み潰そうとしていた。

 

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァッッ!!??」

 

「ちっ!」

 

 

エレンが踏み潰される寸での所でベートがエレンを回収。何とか踏み潰されずに済んだエレンだったが、首の無い『ベヒーモス』亜種は直ぐにエレンを抱えているベートを追いかけた。

 

 

「おいてめぇ!!一体何やらかしやがった!?」

 

「仲間から借りた魔剣であの『ベヒーモス』亜種をこんがり焼きましたー!!」

 

「犯人はてめぇかぁ!?」

 

「ベートさん何とかして下さいよ!?Lv.6なんですからあの首無し『ベヒーモス』亜種をちゃっちゃと倒してくださいよ!!!」

 

「うるせぇ!!振り落とすぞ、くそ雑魚が!!」

 

「はっはっはっ!誰がくそ雑魚だー!!道連れにしてやるぅ!!!」

 

「おいっ!?てめぇ!?離せぇ!?」

 

 

首根っこを捕まれ、引きずられた状態だったエレンだったが、ベートの『くそ雑魚』呼びにムカッとしたエレンはベートに体にピタッとくっついた。

 

 

「リヴェリア、魔導士部隊を連れて詠唱を始めろ!!魔法の一斉砲撃であの『ベヒーモス』亜種の注意をこちらに振り向かせる!!」

 

「承知した、お前たち私に付いてこい!!」

 

『はい!』

 

「ガレス、君はオッタルと一緒n『あやつなら居らんぞ、フィン』……は?」

 

「ラウルの報告だと『確認する事がある』と言って【毒の霧】の中に入っていったそうだぞ」

 

「……」

 

 

こんな非常事態に何やってるんだ?とフィンは率直に思った。確かのあの首のない理由を知りたいが時と場合を考えてほしい。フィンはピクピクと顔を引き攣らせながらもガレスと()()()()()()を命じた。

 

 

 

一方、アイズは……。

 

 

 

「グオオオオオオオォォォォォォッッ!!!」

 

「ふんっ!!!」

 

 

グシャ!!!

 

 

「……」

 

 

首を斬り落されてなお生きている『ベヒーモス』亜種の頭部を漆黒の鎧を着た大男が大剣で止めを刺していた。アイズはその光景をただ見ることしか出来なかった。

 

 

「(ガレスやリヴェリア、フィンより……強い)」

 

 

エレンを助けに入ろうとした瞬間……。突然『ベヒーモス』亜種の頭部が斬り落され唖然としていると、アイズの後ろから2振りの大剣を持った大男が現れた。1つは年季の入ったボロボロの大剣でもう1振りの大剣は着ている鎧と同じ真っ黒の大剣だった。

 

 

「(……ううん、違う。この人)」

 

 

アイズは漆黒の大男が現れた瞬間……『デスペレート』を()()()()()。無論その大男から敵意などは感じなかったが、冒険者としての本能でその大男を警戒していた。

 

 

「(……この人【猛者(おうじゃ)】より)」

 

 

アイズがそう思った瞬間、その人物が現れた。オッタルである。アイズが見たオッタルの表情は9階層の時の無表情とは違い、信じられないもの見たような顔をしていた。

 

 

「馬鹿な……何故、お前がここにいる」

 

「ん?何だ……ただの糞ガキか」

 

陸の王者(ベヒーモス)の戦いから一線を退き、死んだとまで噂されていたお前が……」

 

「勝手に殺すな、糞ガキ!……まぁ死に損ねたのは認める」

 

「何!?」

 

()()()()()に救われてなぁ。お陰で今まで以上に気分がいい」

 

「馬鹿な!?貴様は陸の王者(ベヒーモス)の肉を喰らい、その猛毒で体の内側から腐り、死にかけていたハズだ!!」

 

「いつの話をしている?今の俺は陸の王者(ベヒーモス)の猛毒に()()()()()()()ぞ」

 

「ありえん!?」

 

 

漆黒の鎧を着た大男から語られる内容を聞いたオッタルは信じられなかった。この男は陸の王者(ベヒーモス)の肉を喰らい【スキル】で上昇した【ステイタス】が決め手となり、陸の王者(ベヒーモス)を討ち取ることができたが、その代償に体の内側から陸の王者(ベヒーモス)の猛毒に侵され、戦闘不能状態に……。

 

『黒竜戦』には参加できなかったので戦死はしていないのはオッタルは知っていたが、いつ陸の王者(ベヒーモス)の猛毒で死んでもおかしくない状態だった。それが?今まで生きていて?更には陸の王者(ベヒーモス)の猛毒が無くなっている?オッタルは未だに亡霊に出会った感覚に襲われている。なお、そんなオッタルの心境を理解したのか大男が深いため息を吐いた。

 

 

「亡霊に見えるか?足は付いているぞ?それとも、悪夢に食い散らかされるのが所望か?」

 

 

大男はボロボロの方の大剣を黒い砂漠に突き立てると『構えろ』と口にした。オッタルはすぐに背負っている大剣を構え、目の前にいる大男を睨みつけた。

 

 

 

「『泥の味』が恋しいだろう?この俺が久しぶりに味合わせてやる」

 

 

 

遠く離れた場所では『ベヒーモス』亜種と冒険者達の戦いが繰り広げられているが、今ここでもう1つの戦いが巻き起ころうとしていた。

 

 

 

***

 

 

 

「魔導士部隊、撃て!!」

 

 

リヴェリアの掛け声に合わせて魔導士部隊が魔法攻撃を開始。様々な属性の魔法が首のない『ベヒーモス』亜種に着弾する。相手は超大型級を遥かに超える巨体なので全弾命中するが、首のない『ベヒーモス』亜種にはビクともしなかった。

 

 

「ダメですリヴェリア様!?コチラを見向きもしません!!」

 

「エレンの奴、一体何をやらかしたんだ!!!」

 

「リヴェリア!フィンからの指示だ。レフィーヤと一緒に魔法の準備をしとれ!アレは儂らが止める!!」

 

「分かった、レフィーヤ、召喚魔法(サモン・バースト)の準備だ!」

 

「は、はい!?」

 

 

ガレスの声掛けにリヴェリアはすぐに応え、レフィーヤに召喚魔法(サモン・バースト)の準備に移らせる。ガレスはフィンの指示で準していた部隊を引き連れ前に出た。相変わらず、エレンを連れているベートを狙っている『ベヒーモス』亜種を見て『本当にあの若造は面白いのぉ、ガハハハッ!』と笑い飛ばしていた。

 

 

「今じゃ!お前らぁぁ!!」

 

「【リスト・イオルム】」

 

「【ガーナ・アヴィムサ】

 

 

ガレスの掛け声に合わせてティオネやアーディなどの拘束魔法や異常魔法(アンチ・ステイタス)などを使える者が『ベヒーモス』亜種の動きを止めるべく各々の魔法を発動した。弱体化に弱体化を重ねる事でようやく動きを止めた『ベヒーモス』亜種をガレスを筆頭にしたドワーフ達が加工型超硬金属製(ディアルアダマンタイト)で作られた鎖で拘束し動きを止めた。

 

 

 

更に……。

 

 

 

「「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」」

 

 

リヴェリアやレフィーヤなど氷系魔法を使える者が『ベヒーモス』亜種を()()()にする。フィン達【ロキ・ファミリア】の目的は『ベヒーモス』亜種の()()()()。あの『ベヒーモス』亜種は()()()()()()、『ベヒーモスの心臓』が本体だと考えたフィンはあの『ベヒーモス』亜種の動きを完全に止め、フィンの『槍』で『ベヒーモスの心臓』を魔石ごと破壊しようと考えていた。

 

 

「すげぇ……」

 

「あのバカでけぇ巨体を凍り漬けにしやがった」

 

「いやまだだ!まだ動いてやがる!!」

 

 

多くの魔導士達の氷系魔法を食らってもまだ動こうとする首の無い『ベヒーモス』亜種が、体を覆っている氷の牢獄を破ろうとしていた。リヴェリアが再び魔法の準備をすべく動き出そうとした時、エレンが走り出していた。

 

ベートに投げ捨てられるように椿の所に放り投げられたエレンはヴェルフに()()()の魔剣を借りて、首の無い『ベヒーモス』亜種に向かって走っていた。【焔翔(えんしょう)】のあの威力は自身の【精霊の奇跡(スピリット・ミラクルム)】が原因なのでは?と思い、確認も兼ねての魔剣攻撃を実施。ついでに追い回してくれたお礼も兼ねて……。

 

 

「【白雪(しらゆき)】!」

 

 

エレンは【焔翔(えんしょう)】の時と同じように【白雪(しらゆき)】に全力の回復魔法の炎で包み、首の無い『ベヒーモス』亜種に向けて【白雪(しらゆき)】を振り落とした。【白雪(しらゆき)】は氷の魔剣。既に氷の牢獄に囚われている首のない『ベヒーモス』亜種をさらなる極寒の牢獄へと変え閉じ込めた。

 

エレンの放った【白雪(しらゆき)】の影響も相まって首の無い『ベヒーモス』亜種は氷山に閉じ込められているような状態となり、『黒い砂漠』と呼ばれる漆黒の世界に白銀の氷山が誕生した。

 

 

「【今ここに、女神の一槍(いっそう)を】!」

 

 

多くの冒険者達が白銀の氷山に見惚れている間に詠唱を完了させた『勇者』がいた。超長文詠唱ではあるが、Lv.および潜在値を含めた全アビリティ数値を魔法威力に加算させ、投槍による攻撃を放つ投槍魔法。

 

 

その名も……。

 

 

「【ティル・ナ・ノーグ】!!」

 

 

フィンが放った『勇者の一槍』は白銀の氷山に閉じ込められている首の無い『ベヒーモス』亜種の胴体を()()()。白銀の氷山には大きな風穴が空き、風穴を中心に罅が全身を走り、中にいた首の無い『ベヒーモス』亜種諸共砕け散った。【黒雲】は次第に薄れていき、太陽の光が差し込んでくる。

 

 

「……たお、した?」

 

「勝ったん……ですか……?」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

首の無い『ベヒーモス』亜種を閉じ込めていた白銀の氷山が完全に砕け落ちたのを確認した冒険者達が大きな歓声を上げる。かの三大冒険者依頼(クエスト)の1体……正確には【亜種】ではあるが、『ベヒーモス』を討伐することができたんだと、多くの冒険者達は武器や杖を掲げ、喜びを分かち合っていた。

 

 

 

一方……。

 

 

 

「この程度か……『都市最強』も堕ちたものだな」

 

「……」

 

「……嘘」

 

 

別の場所で行われていた『戦い』も決着がついた。『都市最強』と呼ばれた男が打ち倒され、漆黒の鎧を着た大男が見下ろしていた。アイズは2人の戦いを最後まで見ていたが、圧巻の戦いだった。オッタルは確かに強い……だが相手が()()()()()()()だけだ。

 

 

「Lv.……8」

 

 

アイズがそう呟く。相手の技量もそうだが、Lv.7を正面でここまで打ちのめす事ができるのはそれしか考えられなかった。漆黒の鎧を着た大男は突き刺していたボロボロの大剣を拾い上げ、その場を立ち去ろうとしたが……。

 

 

「……!!待って!?」

 

「何だ、娘?俺に何か用か?」

 

「あの、名前は……?」

 

 

アイズは知りたかった。Lv.8の実力を備えた冒険者を知らなかった。唯一知っているのは『学区』で教師をしている『現代の英雄』と呼ばれているドワーフの男ぐらいだった。

 

 

()()()、ただのザルドだ」

 

 

漆黒の鎧を着た大男は自身の名を伝えると2振りの大剣を持ってその場を立ち去った。アイズは作戦開始前にフィンとオッタルから【原種(オリジナル)】の話を聞いた際のザルドの名を聞いていた。それでもその戦いが原因で最早戦えない体になってしまい、もう死んでいるのでは?と話していた人物だった。

 

 

「【ゼウス・ファミリア】……」

 

 

かつて【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】が末席の時代だった時の『オラリオ』にいた【最強】の派閥の名。アイズはその派閥の名を口にするがとりあえずフィン達と合流するべく、ボロボロの状態で倒れているオッタルを担いで連合軍の所に向かった。

 

 

 

***

 

 

 

「おっかえりぃぃぃ、アーンド、レッツカーニバルやぁ!」

 

「おいおい、ロキ。ようやく帰ってきたと思ったら……どういうことだい?」

 

「どうなっとるって、見たら分かるやろうがー!祭りや祭り!」

 

 

連合軍が『ベヒーモス』亜種を討伐し、無事に『オラリオ』に帰還したが、待ち受けていたのは『グランド・デイ』の続きと勝利を祝う祭りだった。『ベヒーモス』亜種の討伐後、今回の騒動の発端知なった『ベヒーモスの心臓』の捜索が行われたが、フィンの【ティル・ナ・ノーグ】で魔石ごと破壊された残骸が発見された。

 

元々、『ベヒーモスの心臓』は同じような事が起こらないように破壊する予定だったが、かの三大冒険者依頼(クエスト)のドロップアイテムなので膨大な金になると思っていた冒険者達は大粒の涙を流していた。一方アイズがボロボロの【猛者(おうじゃ)】を運んで来た時は連合軍が大きな騒ぎが起き、アイズに何があったのか事情を聞いたフィン達は頭を大いに痛めていた。

 

その後アミッドやエレンなどの治療師(ヒーラー)達が連合軍を治療し、【デダウの村】で待っている神々と合流。何とか『オラリオ』に戻ってくる事が出来今に至る。

 

 

 

一方、エレンは……。

 

 

「ゴクゴクゴクーーーぷはぁー!お代わり!」

 

「ぬぅぅ、若造に負けいられるか!おい、『ドワーフの火酒』を持ってこい!樽でだ!」

 

「わっはっは!やっぱり祭りはこうでなくはな!手前にも『ドワーフの火酒』をくれ!」

 

「……」

 

 

急遽、開催された大飲み大会に参加していた。内容は酒をどれだけ飲めるかを競うものだったが、エレンはヴェルフと一緒に居たところを椿に捕まり、この大会に強制参加させられていた。本当ならさっさと寝たい所だったがアスフィからもらった眠気覚ましの回復薬(ポーション)の影響で眠気が一切来ないので、お酒の力を借りてさっさと寝ようと思っていた。

 

所が思わぬ誤算が起こった。エレンの【スキル】【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】がアルコールを『毒』判定してしまい、全く酔えない体になってしまっていたのだ。元々エレンは酒をそんなに飲む方ではなかったのであまり問題にはならなかったが、『ドワーフの火酒』をどんどん飲んでいるせいで酒豪だと勘違いされた。

 

ヴェルフが真っ先に潰れ、少しして椿、ガレスが酔いつぶれてしまった。一方のエレンは顔色を一切変えず、グビグビと『ドワーフの火酒』を飲み干し後ろの席には空になった大量の酒樽が積みあがっており、周りにいた多くの見物人達はドン引きしていた……。

 

 

「やぁエレン・エウロギア。まさか君がそんなに酒豪だとは思わなかったよ……隣、いいかい?」

 

「あ!フィンさんお疲れ様です」

 

 

エレンが『ドワーフの火酒』を飲んでいる最中に今回の冒険者依頼(クエスト)の指揮官を務めていた影響で【ギルド】に報告に向かっていたフィンが声を掛けてきた。何やら疲れ切った様子だったので『ドワーフの火酒』を差し出したら『やめておこうかな』と遠慮されてしまった。

 

 

「改めてお礼を言わせてくれ。君のお陰でこちらも結構助けられたよ、ありがとう」

 

「どういたしまして、()()もしっかりと頂きましたし……」

 

 

今回のエレンの報酬は前回の『前夜祭(イブ)』の時と同様に高級肉である。この世界では食用に牛や豚などを育てるやり方はあまり行われていない。殆どが狩猟でとれた野鳥や猪などの野生動物である。それでも【デメテル・ファミリア】などの【生産系ファミリア】が牛肉や豚肉を出したりしているが、その肉はこちらでは高級肉として扱われている。

 

 

「所でだいぶお疲れのようですが、大丈夫ですか?」

 

「はっはっはっ……。いや~、()()()()()()()()があってね」

 

「問題?」

 

「実は死んだと思った人物が生きていたって報告があってね」

 

「へぇ~。そんなことがあるんですn『名前は()()()って言ってね』……」

 

「アイズの話だとLv.8の実力だったらしい。しかも、オッタルを()()で叩きのめすぐらいの強さのね」

 

「……」

 

 

フィンが苦笑いを浮かべながら何があったのか話すが、エレンは目を背けて『ドワーフの火酒』を飲み干した。だってそのザルドを治したのはエレン(自身)だからだ。一応ヘスティアからアルフィアとザルドの2人が本物だと説明は受けており『バレたら色々と面倒な事が起きる!!』と口止めをされている。

 

叩きのめされたオッタルに関しては『オラリオ』に戻って速攻で『ダンジョン』に潜っていったらしい。Lv.8に【ランクアップ】していることに関しては前回の『アンタレス』討伐がきっかけだろうなぁとエレンは考えているが『まさかね……?』と()()1()()()()()を考えていた。

 

だが、残念ながらもう1人の存在も主神の女神と再会を果たしており、Lv.8へと【ランクアップ】を完了させ、更には不治の病が治り【才禍代償(ギア・ブレッシング)】の()()()()()()()()()()()()などの【スキル】の内容が変質などの前代未聞の事態が起きていることをエレンは知らない。

 

言ってしまえば、()()()()()()()()()()()()不治の病が治った影響で、その潜在能力(ポテンシャル)L()v().()()()()になっていた。

 

 

 

エレンは知らず知らずの内にトンデモナイ化け物を誕生させてしまっていた……。




ここまで読んでいただきありがとうございました。『ベヒーモスと言ったらザルドでしょ!』と思って少しですが、登場させてみました。

エレンの寄生されそうになった部分は、相性関連の影響で()()()()()()()。なので魔石を埋め込もうとしても失敗に終わります。

アルフィアとザルドに関してはエレンの回復魔法と『半精霊(エレン)の血』の影響で『ベヒーモスの猛毒』の完全浄化、『不治の病』の完治、【才禍代償(ギア・ブレッシング)】のデメリット効果が消滅などの変化が起きています。全てエレンのせいです……。



エレン
 【スキル】の影響で酔えない体になってしまった。そのせいで酒豪だと勘違いされてしまっている。

オッタル
 ザルドにボコボコにされたので『ダンジョン』にしばらく籠って鍛えなおしている。

アイズ
 『宝玉の胎児』に寄生されなかったエレンが気になっている。

フィン
 『ベヒーモス』亜種の件が片付いたと思ったら別の問題が起きた事に頭を抱えている。なお、原因(エレン)が隣にいる事に気づいていない。
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