聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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23話 アマゾネス

 ザルドは【メレン】に向かっていた。ザルドが住んでいた家は現在ヘラが居座っている状況であり、とても居られる状況ではなくなったからである。

 

 ちなみに、主神のゼウスはヘラに差し出した。今まで散々アルフィアにセクハラをして、その巻き添えを受けた仕返しである。さらば、ゼウス。お前は多分いい主神だった?

 

 しかし、住む所を失ったザルドはどうしたもんかと考えていると腹が減った。ならば飯を食おうと思い至った。久しぶりに魚が食いたいと思ったザルドは海がある【メレン】を目指した。

 

 道中、外で繁殖したモンスターで腹を満たしながら【メレン】を目指したザルドだったが、到着した頃にはすっかり夜になっていた。町の屋台で適当に飯を食ったザルドは店の者にどこか宿屋がないか尋ねるが、生憎どこの宿屋も満室らしいとのこと。

 

 少し、離れた別荘なら部屋が空いているらしいが、1()()()()()が占領しているらしく、ほかの宿泊客を追い出してしまったらしいとの事。ザルドは『アルフィアかよ!?』とツッコミを入れそうになったが、ほかに行く当てがなかったのでその別荘に向かうことにした。

 

 代金を払い、その別荘に向かったザルド。酒のつまみで巨黒魚(ドドバス)を購入し、店の者が教えてくれた別荘に向かった。店の者は『やめておいた方がいい!!』と忠告していたがザルドはLv.8の冒険者である。

 

 ()()()相手は実力で黙らせることができると自負していたザルドは特に心配など全くしていなかった。アルフィア?あの女はヘラに会うために別行動をしている。それに世界は広い。こんな短期間に再会するハズがないと高を括っていた。(フラグ)

 

 

「……あそこか」

 

 

 町から離れた場所に建てられた別荘。あの大きさなら結構な人数泊まることが出来そうなのに1人占めするとは……全く困った者がいたものだとザルドは深いため息を出した。

 

 

「ごはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 ザルドが別荘に入ろうと扉に手をかけた瞬間。目の前の扉が()()かと一緒に吹き飛んできた。当然、扉の前にいたザルドは避けることが出来ずに直撃を受け、後方に吹き飛ばされた。

 

 

「い、痛い……」

 

「……お前、エレンか?」

 

「……ザルドさん?どうしてここに……」

 

「……久々に、魚が食いたくなってなぁ。お前の方はどうした?」

 

「神ニョルズの冒険者依頼(クエスト)を受けて、【メレン】に来ています」

 

「そうか……。所で、エレン。お前に聞きたいことがあるんだが……」

 

「何ですか?」

 

「……いるのか?()()()が」

 

「……はい。いました、あの()()が」

 

「「……」」

 

 

 まさかの再会に2人は何とも言えない表情をしていた。さらにはあのアルフィア(魔女)がこの別荘を占領しているというのだ。だが、背に腹は代えられない。外はすっかり暗くなり、雨が降り始めていた。2人は覚悟を決めて再びアルフィア(魔女)の占領している別荘に足を踏み入れるのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「ほぉ~?()()別荘に泊めてほしいと」

 

「ここ、【メレン】が所持している別荘なんじゃないのか……?」

 

「何を言っている。ここは()()()()()()だぞ」

 

「「……」」

 

 

 何ということでしょうか。【メレン】が所持している別荘がアルフィア(魔女)の手に落ちてしまったらしい。一体どんな神経をすれば、別荘を奪い取るなどの()()()()が思いつくのだろうか?

 

 

「……おい貴様。私が野蛮な女だと考えているな?」

 

「(ギクッ!!!)」

 

 

 エレンが心の中で思っている内容がなぜかアルフィアに筒抜けだった。エレンは急いで弁解しようとしたが、アルフィアはエレンの顔を既に鷲掴みにしていた。

 

 

「何か言い残すことはあるか?」

 

「この巨黒魚(ドドバス)を差し上げますのでどうかーーーア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!」

 

 

 又しても同じように巨黒魚(ドドバス)で許してもらおうとしたが、ダメだった。一応、巨黒魚(ドドバス)は魚の中でも高級魚にあたるのだが、アルフィアからして見れば、関係ないらしい。

 

 エレンは再び、アルフィアの手によって頭を握り潰されそうになりながらも、何とか宿泊の許可をもらうことができたエレンとザルドの2人だった。その日はエレンが持ち込んだ巨黒魚(ドドバス)をザルドがおいしく調理してくれたおかげで、おいしい魚料理を味わうことができたのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 次の日

 エレンは先日と同じように【ニョルズ・ファミリア】の護衛として海に出ていた。ちょっと違う点があるとすれば、ザルドも参加している所だろうか。

 

 Lv.8の冒険者(ザルド)が乗っている船だ。万が一にあの食人花が出ても大丈夫だろうと、高を括っていたのだが……。

 

 

『クォォォォォォォォォォォォォ!!!』

 

「何あれ?」

 

「ほぉ?『クラーケン』かぁ……。外で繁殖した個体の中でも最上位……Lv.2って所か?雑魚だな」

 

「普通の大物ですけど……」

 

 

 船に乗ってある程度沖に出た所でまさかの大物の登場である。外で繁殖したモンスターは胸の中にある『魔石』を分け与えることで数を増やしているのだが、その分強さは低くなっていく特徴がある。

 

 しかし、このクラーケンは、他のモンスターの魔石を取り込んだ『強化種』。昨日エレンが倒した食人花はLv.3の強さだが、あの時は口の中にある剝き出しの魔石を破壊したことで討伐に成功しただけだ。

 

 しかし、このクラーケンは魔石を取り込んだ強化種。さらに魔石は分厚い体の中にある。今のエレンの装備は弓のみ。とてもあの分厚い体を貫通する程の威力は出せない……。

 

 

のだが……。

 

 

「ふんっ!」

 

『クォォォォォォォォォォォォォ!?』

 

 

 この船にはLv.8の冒険者(ザルド)が乗っているのが運の尽きだった。()()()()()()()で討伐。本来なら多くの負傷者……下手すると死人が出るほどの相手であるクラーケンの撃退に成功した船は、今日も無事に港に戻ることができた。

 

 

「ザルドさん……そのクラーケンの足は美味しいんですか?」

 

「美味いぞ。喰ってみろ」

 

「……いただきます。あっ、美味しい!」

 

「だろ。外で繁殖したモンスターは割といけるぞ。その影響で採れるドロップアイテムもあるしな」

 

「そういえば……」

 

 

 ザルドの話でエレンはナァーザが作ったと話していた二属性回復薬(デュアル・ポーション)は外で繁殖した『ブラッドサウルス』の卵を使っていると聞いたことがあった。そんな事を考えながらザルドが焼いたクラーケンの醬油焼きを味わっていると……。

 

 

「ねーねー!何食べてるのー?」

 

「さか、な?でしょうか?」

 

「あ、ティオネさん」

 

 

 昨日に引き続き【ロキ・ファミリア】のメンバーとバッタリ会ったエレン。どうやら、昨日現れた食人花のことを聞き込みをしていたみたいだったようだが……。

 

 

「……なんだ?」

 

『(じゅるり)』

 

「……食いたいのか?」

 

食べたい(はい)!』

 

 

 如何やら、ザルドが作ったクラーケンの醬油焼きの匂いに釣られてきたみたいらしい……。【ロキ・ファミリア】の女性陣はザルドが焼いたクラーケンの醬油焼きに釘付けである。

 

 ザルドは慣れた手つきでクラーケンの足を食べやすい大きさに切り、炭火で焼きながら醬油で味付けをした。ただそれだけなのに、炭火で焼かれたクラーケンの足と醤油の焼ける匂いが食欲をそそる香りを放っていた。

 

 

「ほら、焼けたぞ。熱いから気をつけて食えよ」

 

『いただきまーす!』

 

 

 ザルドが焼いたクラーケンの醤油焼きを美味しそうに食べる【ロキ・ファミリア】の女性陣。中には野菜などを好むエルフも含まれていたが、美味しそうに食べていた。

 

 

「あ、エレンだ」

 

「ん?」

 

 

 その後、漁で捕れた魚の搬入を手伝っているとアイズとレフィーヤの2人もやってきた。2人も昨日の食人花のことを聞いて回っている最中だったようで、ここまで辿り着いたようだった。

 

 

「ねぇ、エレン。何食べてるの……?」

 

「醤油焼き(クラーケン)です……食べます?」

 

「えっ?いいんですか!ちょっとお腹空いてたんです!」

 

()()()さん!!醤油焼き(クラーケン)二人分追加で!」

 

「あいよ」

 

 

 『ジルド』とはザルドの偽名である。この町にはザルドを知っている【ロキ・ファミリア】がいるので、その対策である。

 

 何でも、バレても特段問題はないようだが、()()()()()()()()になるらしい。とのことだった。

 

ジルド(ザルド)が追加で焼いた醤油焼き(クラーケン)を美味しそうに食べるアイズとレフィーヤだったが、念の為に、エレンに知っていることがないか、聞き込みを始めた。

 

 

「ねぇ……エレンは今日も海に出ていたの?」

 

「ん?はい、護衛目的でロッドさん達と一緒に出ていましたけど……」

 

「今日は大丈夫だったんですか?その、昨日の食人花に襲われたりとか……」

 

「今日は見てないですね……。一応、他の漁師の人達は初めて見たいですよ?あっ、でも……」

 

「「でも?」」

 

「確か、6()()()()()()に変なモンスターが現れたって話は聞きましたよ」

 

「「変なモンスター?」」

 

「はい、何でもその場に居合わせた【アルテミス・ファミリア】が殲滅したって話ですよ」

 

「そのモンスターが、食人花?」

 

「そこまでは……。話してくれた人も、聞いた話だったって事で詳しくは……」

 

「他に何か言っていませんでしたか?何でもいいんで……」

 

「え~と、確か~~~。あっ!なんか、()()()()()()()()()()()()()所を隙をついて仕留めたって言っていましたね!」

 

「「!!」」

 

 

 エレンがもたらした情報は、まさしくアイズ達が求めている食人花の特徴に合致する内容だった。食人花は『穢れた精霊』から生まれ落ちた『精霊の触手(モンスター)』。

 

 寄生した『宝玉の胎児』を『穢れた精霊』へと成長させる為に多くの魔石を取り込み、本体に持ち帰ろうとする習性をもっている。その影響で食人花の個体差は激しいが強い個体でLv.4クラスの大物も存在した。

 

 

「エレン・エウロギア……。いえ、エレンさん!!他に何か情報はありませんか!?何でもいいので何か教えてください!!」

 

「えっ?何ですか、急に……。自分、ここに来て2日目の人間ですよ?そんなに【メレン】に詳しい訳でも……」

 

「お願い、エレン。何でもいいから……」

 

「えぇぇ……」

 

 

 いきなり何か情報がないか尋ねられるが、エレンはここの人間ではない。今日まで見た光景を必死に思い出しながら、何かないかと思っていると『あっ!』と又しても何か思い出したかのようにロッドの腰につけている袋を指さした。

 

 

「あの『魔法の粉』とかどうですか?ここの漁師や船乗りなんかはみんな持っている物みたいですけど……」

 

「「『魔法の粉』?」」

 

「何でも、海に撒くと()()()()()()()()()()()()()()みたいですよ?それでも完全にとは言えないですけどね」

 

「「……」」

 

 

 エレンが次に話した内容は『魔法の粉』と呼ばれる道具(アイテム)の存在だった。エレンが言うように殆どの漁師たちの腰に着けており、エレンはロッドの許可をもらって中身を見せた。

 

 一応、『匂いに注意してくださいね』と警告を入れたが、袋を開けた瞬間……。もの凄い匂いを空気中に飛び散り、アイズ達は急いで鼻を覆ったが、それでもすごい匂いだった。

 

 

「うぅぅっ!?」

 

「何ですか、これ!?」

 

「凄い匂いですよね、『魔法の粉(これ)』。まぁ、ナァーザさんが作り出した物に比べたら()()()()ですけど……」

 

「それって、この間の18階層に避難して来た時に使った道具(アイテム)のこと?」

 

「はい」

 

 

 エレンとアイズが話しているのはナァーザが偶々作り出した道具(アイテム)。『強臭袋(モルブル)』の事である。強烈な刺激臭を放ち、モンスターを遠ざけることができる道具(アイテム)

 

 デメリットは、使用者にもこの臭いの影響を受けてしまうという点である。この『強臭袋(モルブル)』を作り出した張本人(ナァーザ)もその臭いにやられて酷い目に遭ったとエレンは聞いている。

 

 しかし、この『魔法の粉』は『強臭袋(モルブル)』に比べたらそこまで()()()()()()()。さらに水中では臭いが薄くなってしまう影響があるので、エレンは()()()()()()()()で本当に効果が出ているのか、不思議に思っていたのだ。

 

 

「ロッドさん、この『魔法の粉』は【メレン】で作られているんですか?」

 

「いや?この粉は『オラリオ』の発明って聞いたぜ?」

 

「『オラリオ』の発明?」

 

「ほら、いるじゃねえか。とんでもねぇ、ハザザウス?カキセルスだの……」

 

「【万能者(ペルセウス)】?」

 

「それそれ。そいつが作ったんじゃねえのか?」

 

「「「う~ん」」」

 

 

 確かに【万能者(ペルセウス)】の二つ名を持つアスフィなら作らなくもないかも知れないが、『なぜ、【メレン】だけに出回っている?』といった疑問が浮かび上がる。

 

 仮に、この『魔法の粉』の効果が本物なら『オラリオ』でも大いに役立つ道具(アイテム)である。『ダンジョン』探索において、モンスターの脅威を一時的の減らせるのは冒険者にとって、ありがたい道具(アイテム)になる。

 

 さらにエレンはこの『魔法の粉』に()()()()が混ぜられていることに気づいていた。正確にはジルド(ザルド)が知らせてくれた内容である。

 

エレンはこの情報をアイズ達に伝えていると、獣人の漁師の少年が息を切らしながら、こちらに走ってきた。

 

 

「ロッド、大変だ!?大通りでアマゾネス達が騒ぎを起こしてっ、マーク達が捕まっている!」

 

 

 その声を聞いたロッドや他の漁師たちが騒然とした。相手は昨日この港に来た【カーリー・ファミリア】。『ダンジョン』がない、外の世界でLv.6の姉妹2人がいるアマゾネスだけの【ファミリア】である。

 

 さらに近くにいたティオネがいないことに気づいたアイズ達が急いで騒ぎが起きている場所に走り出していった。

 

 

「何だ?なんの騒ぎだ……」

 

「何でも【カーリー・ファミリア】のアマゾネス達が暴れているみたいです」

 

「カーリーかぁ。ジジイが話していた事があったな……。確か同族同士で『儀式』と称して殺し合いをしている【ファミリア】だと」

 

「……それって比喩表現ですか?」

 

「いや、本当らしいぞ?あのヘラも一目置いていたと聞いたぞ」

 

「……道理で、Lv.6が2人も生まれるわけだ」

 

「……本当か?」

 

「昨日、リヴェリアさんから聞いた話ですけどね。他のアマゾネスの人達もとても強そうでしたけど……」

 

「ほぉ~」

 

「ん?」

 

 

 エレンが『【カーリー・ファミリア(あそこ)】にはLv.6が2人いる』とザルドの目つきが()()()()。『オラリオ』に多くの上級冒険者がいるのは『ダンジョン』があるからである。

 

 下に進めば進むほどモンスターの強さと戦闘回数が増加する場所で『冒険』を繰り返せば、冒険者次第ではあるが、レベルは自然と上がる環境が『オラリオ』に存在する。

 

 その逆……『ダンジョン』が存在しない外の世界では【ランクアップ】を果たした者はとても少ない……。1つの町に1人存在すれば大抵の外で繁殖したモンスターを返り討ちにできるので、とても重宝される。

 

 それでも、Lv.2が限度。大国であれば、将軍でLv.3が数人存在する程度である。Lv.5を超え、Lv.6に上り詰めた【カーリー・ファミリア】のアマゾネスの姉妹にザルドは()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()、お前も来い。エレン」

 

「Lv.1の治療師(ヒーラー)なのですが?」

 

「だからだ。怪我人がいるかもしれん。なら治療師(ヒーラー)の出番だろ?」

 

「なるほど」

 

 

 ザルドは【カーリー・ファミリア】のLv.6がどの程度の強さなのか()()をしに。エレンは怪我人がいた場合の治療師(ヒーラー)として現場に向かうことになった。

 

 

 

***

 

 

 

「(子供!?)

 

 

 アイズとティオナが現場に到着した頃にはティオネと【カーリー・ファミリア】所属。Lv.6のアルガナと肉弾戦を始めていた。Lv.6同士の戦闘に周囲は既にパニック状態になっていた。

 

 さらに町の中心で戦闘を始めてしまった影響で1人のヒューマンの少女が逃げ遅れているのに、ようやくティオネが気付いた状況だった。

 

 

「(アルガナ!?)」

 

 

 さらに、悪いことにアルガナが真上からティオナに向けて拳を叩き込もうとした。ティオナはぎりぎりで回避できたが、回避すると自身の背後にいるヒューマンの少女が無事では済まない。

 

 

「───っ!!」

 

 

 ティオネは直撃覚悟でアルガナの攻撃を受け止めようとしたが、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「喧嘩に野暮は厳禁だが、これは洒落にならんぞ?」

 

「「!?」」

 

 

 ティオナの降りかかるアルガナの拳を割り込んできたザルドが左腕で()()受け止めていた。アルガナは自身の拳を軽々と受け止められたことに驚きザルドから距離をとった。

 

 ザルドはアルガナの反応速度に『悪くないなぁ』と反応しながらも、右腕で抱えていたエレンを下した。

 

 

「エレン、その子を連れて離れていろ」

 

「喜んで!」

 

 

 エレンはザルドから指示を受けると、ヒューマンの少女を抱きかかえると、急いでその場から離れた。

 

 

「お前、邪魔、するなぁ!!」

 

 

 ティオナとの戦いを邪魔され、怒り狂ったアルガナの拳がザルドの胴体に命中。その衝撃で周囲に物凄い衝撃波が発生した。その威力は同じレベルの冒険者でも直撃を受ければ、無事では済まない威力だったが……。

 

 

「───は?」

 

「悪くない一撃だったぞ」

 

『!!!』

 

 

 ()()()()で攻撃を受けたザルドは()()()()()。この事実に拳を繰り出しアルガナ本人やアマゾネスの集団、アイズやティオネ達は驚きを隠せなかった。

 

 

 さらにザルドが『お返し』を繰り出そうと拳を握りしめた瞬間……。

 

 

「そこまでじゃ」

 

「むぅ?」

 

 

 アルガナの顔にザルドの拳が衝突する瞬間、神威がこめられた声が投げかけられた。

 

 

「すまんなぁ大男。こやつらが興奮しておるのじゃ」

 

「誰だ、お前は?」

 

「妾はカーリー。アルガナ達の主神(おや)じゃ」

 

 

 現れたのは【カーリー・ファミリア】の主神カーリー。後ろには眷属と思われるアマゾネスを引き連れているが、ザルドは顔色変えずにカーリーの方に視線を向けた。

 

 

「やりすぎだ。ここはお前らの国じゃない。主神(おや)ならしっかりと眷属()の手綱を握っておけ」

 

「うむ、承知したぞ。お前達、戻るぞ」

 

 

 多くのアマゾネス達がカーリーの指示に従い、主神の後を追うように去っていった。それでも、アルガナなどの一部のアマゾネス達が不服そうにするが、カーリーの神威の込められた言葉に従うように去っていった。

 

 

「カーリー!!なぜ邪魔をしたぁ!!」

 

「……何を言っておる?妾はお主を助けてやったのだぞ?」

 

「私が負けていたとでも!?」

 

「あぁ、負けていたぞ、アルガナ」

 

「何ぃ!?」

 

「あれは、『化け物』だ……。アルガナの攻撃が効いていなかった。それにあの一撃でアルガナは殺されていた……」

 

「───ッ!!??」

 

 

 アルガナがカーリーに怒りをぶつけるが、カーリーは冷や汗をかきながら、どこか興奮するように答えた。

 

 バーチェはアルガナは負けていたと答え、さらにカーリーが介入しなければ、殺されていたと答え、その体は震えていた。*1

 

 

「……くっくっ、()()()()()はあのような者がおる【ファミリア】を攻めるつもりとはのぉ~」

 

 

 カーリーはこの後、()()()()()と待ち合わせをしていた。内容はある女神の派閥を攻め落とすための打ち合わせである。

 

 興奮で体を震わせながらも、約束の時間までまだあるので、寝泊りしている宿に向かっていった。大男の覇気に命の危機を感じたカーリーだったが、それが彼女にとっては何よりの興奮していた。

 

 

 

だが……。

 

 

 

「あれが【猛者(おうじゃ)】かぁ~。ゾクゾクさせてくれる~」

 

 

 

 カーリーは()()()()()()()()。『テルスキュラ』はほぼ封鎖された場所のため、得られる情報が限られたいる。中には『テルスキュラ』にたどり着くころには話の内容が変わっていることも珍しくない。

 

 『テルスキュラ』での【猛者(おうじゃ)】は『Lv.7の大男』として伝わっている。その為、今回止めに入ったザルドをオッタルと()()()()()()()

 

 

 

***

 

 

 

「帰ってきたか、エレン」

 

「いや、なに先に帰ってるんですか?」

 

「ロキが来てたんだ。あの女神に捕まったら色々と面倒なことになる」

 

 

 ザルドがあの騒動を終わらせた後、ロキがこちら側に来ていることに気づいたザルドはさっそうと姿をくらました。ちなみに怪我人の治療をしていたエレンは当然置いて行かれた……。

 

 エレンは【ロキ・ファミリア】のメンバー達と一緒に壊れた建物の後片付けを手伝ったりしたが、あの大男が何者かティオネ達に鬼詰めされたが、何とか口を割らずに戻ってくることができたエレンだった。

 

 その日の夜もザルドが作った魚料理にありつけたエレンだったが、明日には『オラリオ』に戻らないといけないことをザルドとアルフィアに伝えた。

 

 

「もう『オラリオ』に戻るのか?」

 

「元々、ちょっとした休暇感覚で来ていますので、それにニョルズ様からの冒険者依頼(クエスト)は終わっていますし……」

 

「そもそもベルはどうした?」

 

「許可が下りなかったんですよ……。ベルはLv.2の上級冒険者ですし、世界最速兎(レコードホルダー)としての影響もあって、最終的にダメでした」

 

 

 今回、エレンだけ来ているのは【ギルド】からの外出許可が下りなかったからである。【ギルド】の規定で他国に『ダンジョン』で鍛えられた冒険者が流出しないようにするための措置である。

 

 さらに主神のヘスティアはいわゆる『神質』としての役割もあるので、めったに『オラリオ』の外に出ることはできない。

 

 さらに今回の冒険者依頼(クエスト)は怪我などの治療を目的にした内容だったので、比較的手続きが簡単だったエレン1人のみの外出になっていたのだ。

 

 

「だが、丁度よかっかもしれんな……」

 

「?」

 

「あのアマゾネスの連中……カーリーと言ったか?多分、また仕掛けてくるぞ」

 

「えっ?」

 

「あのような連中は性懲りもなく何度もやってくるものだ。次は今日みたいな『暇つぶし』程度では済まんだろう……」

 

「えぇぇ……」

 

 

 ザルドの見立てだとあの【カーリー・ファミリア】の連中がまた騒ぎを起こすかもしれない。とのことらしい。今度は今日以上に暴れる可能性があるとの事。

 

 まぁ、最も【カーリー・ファミリア】のアマゾネス以上にやばい女がこの【メレン】にいるが……。

 

 

「……ところで、ザルドさん」

 

「ん?なんだ……?」

 

「なんで、アルフィアさん……。()()()()()()()なんですか?」

 

「知らん、扉を開けた瞬間、俺は魔法を食らったぞ」

 

「自分もなんですけど……」

 

「「……」」

 

 

 そう。なぜか帰ってきた後、アルフィアの機嫌が非常に悪かったのだ。

 具体的には先ほど2人が言ったとおりに帰ってきた瞬間……理不尽に魔法を放つぐらい機嫌が悪かったのだ。

 

 今も、ソファーでくつろいでいるが、明らかに不機嫌である……。

 

 

「……もしかして、ベルが居ないからですか?」

 

「分からん」

 

「えぇぇ」

 

ゴスペル(五月蠅い)

 

「「ごふっ!!」」

 

 

 アルフィアに聞こえないように小声で話していたが、彼女には聞こえていたらしい。

 別荘の中にも関わらず、魔法をぶっ放しザルドとエレンを吹き飛ばしていた。

 

 

「何だ、お前ら。私は何か文句でもあるのか?」

 

「今、一つ。増えましたけど……」

 

「ほぉ?」

 

「……なんで、そんなに不機嫌なんですか?朝はそうじゃなかったですよね?」

 

「……」

 

 

 瓦礫の中から這い出てきたエレンが近くで見下ろしているアルフィアに尋ねる。

 朝のアルフィアはこんなに不機嫌ではなかった。それなにのここまで不機嫌になったアルフィアが単純にエレンは気になっていた。

 

 

「───()()

 

「匂い?」

 

「あぁ、この町は男を誑かそうとする甘ったるい匂いが染みついたアマゾネスで満ちている。それが理由だ」

 

「……ちなみに、自分とザルドさんが魔法で吹っ飛ばされたのは」

 

「イライラしたからやった。それだけだが?」

 

「……」

 

 

 ただの八つ当たりである。エレンはそう言いたかったが、また魔法が飛んでくるのでグッと堪えた。

 しかし、アルフィアの発言に()()()()()()エレンは瓦礫から出てきたザルドに尋ねた。

 

 

「ザルドさん。さっきのアルフィアさんの話、聞きました?」

 

「……あぁ、聞いたぞ。それがどうした?」

 

「今日会った【カーリー・ファミリア】のアマゾネスの人達ってそんな匂いしてました?全然気づかなかったんですけど……」

 

「いや、そんな匂いはしなかったぞ……。おい、アルフィア。その甘ったるい匂いって『麝香(じゃこう)』か?」

 

「そうだ」

 

「じゃこう?」

 

 

 聞きなれない単語にエレンは首を傾げる。ザルドの説明で麝香(じゃこう)は歓楽街で()()が使う香水であると。

 

 

「確かに、俺も気になっていた所だ。このぐらいの町なら娼館の1つ、2つありそうだが、麝香(じゃこう)を使っている奴の匂いが()()()()

 

「あの、娼婦って……」

 

「当然、アマゾネスが一般的に思いつくな。ほかの種族の娼婦も当然いるが、ダントツでアマゾネスの方が数は多い」

 

「でも、【カーリー・ファミリア】のアマゾネス達は麝香(じゃこう)()()()()()()()()

 

「だが、この町には麝香(じゃこう)()()()多くアマゾネスがいる」

 

「「……?」」

 

 

 ザルドとエレンは顔を見合わせながら困惑する。ただの偶然なのか?それとも何かあるのか?

 どれだけ考えても答えなんて出てこないので、2人は瓦礫の後片付けをしていた。

 

 因みにアルフィアはいつの間にか風呂に入っていた……。

*1
『テルスキュラ』では、『負け』=『死』と解釈されている設定です




ここまで読んでいただきありがとうございました。

ザルドの登場でした。Lv.8になって少々強化し過ぎたかな?と思いましたがあの男なら大丈夫だろうと思ってアルガナ(Lv.6)の攻撃が効かなかった。といった内容を採用しました。

ザルドが作ったクラーケンの醬油焼きですがエレンが『クラーケン』と言っていないので【ロキ・ファミリア】の女性陣は食べている食材の中身に気づいていません。(当然アイズも)


エレン
 【メレン】で護衛で海に出ているが、本人は休暇を割と楽しんでいた。そして、ちゃっかり重要な情報を出しているが、本人は全く気付いていない。

アイズ
 醤油焼き(クラーケン)の味を美味しそうに食べていた。本人曰く『じゃが丸君に合いそう』とのこと。

ザルド
 Lv.8の理不尽な強さの見せつけた男。それでも本人曰くアルフィアには勝てないとのこと。さらに長年アマゾネスを関りを持っていなかったため、アマゾネスの()()()()()を忘れている。

アルフィア
 Lv.8へと【ランクアップ】を完了させ、不治の病(弱点)が無くなったザルド以上の怪物。なお、アルフィアは【メレン】に麝香(じゃこう)の匂いが蔓延しているので、()()()()()()()()

ロキ
 息切れしながら現場に到着したが既に事態が終息しており、無駄足をさせられている。アイズ達からの報告で『ザルド』の存在を匂わせているが、確定に至っていない段階。
なお、エレンがもたらした情報で、原作より早く『事態の全容』に辿り着いています。
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