聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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25話 最凶の女

「やれやれ、まさかこんなところまで出張とは……。【ロキ・ファミリア】も人使いが荒い」

 

 

 【メレン】にある【ギルド支部】では、1人の黒衣を来た人物が眠っている支部長(ルバート)の近くに置いてあった資料を確認しながら呟いていた。

 

 

【ロキ・ファミリア】(彼ら)がこちらに向かってきているようだが……()()()()()()()()

 

 

 黒衣を来た人物の名はフェルズ。

 

 【ギルド】の主神、ウラノスの右腕であり、エレンに【ゼウス・ファミリアの遺産】(大盾)魔導書(グリモア)を渡した者である。

 

 最も、【ゼウス・ファミリアの遺産】(大盾)は、現在神ヘファイストスや椿の手によって()()されており、魔導書(グリモア)はあまりにも高額な物のためエレンが使うのを躊躇ってしまい、廃教会(ホーム)の地下室に保管されている。

 

 

「話には聞いていたが、かつての英雄達が戻ってくるとは……」

 

 

 フェルズは1つの宝玉を見つめながら呟いた。

 

 その宝玉には【メレン】の上空を飛んでいる使い魔のフクロウの視覚が映り込むように細工を施しているものである。

 

 そして、その宝玉に映り込んでいる人影が2つ……いや、()()

 

 1つの人影は大剣を装備した大男。多くのアマゾネス達がその大男を仕留めるために立ち向かっているが、まったく相手になっていなかった。

 

 装備している大剣を軽く振るうだけで多くのアマゾネス達が薙ぎ払われ、仮に武器が突き刺さっても()()()()()()()()()()()現象に多くのアマゾネス達は絶句していた。

 

 2つ目の人影はフードを深くかぶった女。魔法で多くのアマゾネス達を吹き飛ばしており、いきなり現れた食人花を瞬時に壊滅させた魔導士。

 

 3つ目の人影は……あれだ、()()()だ。

 

 先ほどの女の魔導士に引きずり回されており、時折り女の魔導士に殴られているような場面が映り込んでいた。

 

 

「【暴喰】はLv.8か。【静寂】は……L()v().()()なのか……?」

 

 

 使い魔のフクロウからの視覚情報を元に2人のレベルを分析するフェルズ。

 

 前回のアンタレスの討伐に参加していたのは神へルメスからの報告で把握していたが、アルフィアだけが()()()()()ことにフェルズは違和感を覚えていた。

 

 元々、アルフィアは『才禍の怪物』と多くの冒険者に恐れられるほど、才能に愛された女。

 

 しかし、『不治の病』が彼女の足枷となり満足に戦えない体になっているのは知っていたが、()()()()()()()がその足枷から解放してしまっている。

 

 さらに、その足枷が()()()()()()()()()()()があり、現在()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「全く……。あの精霊は、とんでもない化け物(英雄)を作り出したものだ……」

 

 

 

***

 

 

 

「……これは、一体どういう事だ……?」

 

 

 ロキからの命令で今回の食人花の密輸に関わっていた支部長(ルバート)の捕縛を終えたリヴェリアはアイズ達と合流するべく、外に出た直後だった。

 

 町の住人を【ミョルズ・ファミリア】の漁師達が避難させた影響で無人のハズの町には多くのアマゾネスが()()()()()

 

 地面に倒れている者。建物の壁に埋まっている者。毒でも食らったかのように悶えている者。

 

 それに、建物の中にいたリヴェリアでもはっきりと聞こえた鐘の音。現場に残留した魔力の跡。何より倒れているアマゾネス達が、かつて『最凶』と呼ばれた女神の眷属に『洗礼』と称してボコボコにされた自分達と同じようだとリヴェリアは感じた。

 

 

「……ザルド、ではないな」

 

 

 ロキとの話し合いで、この町に恐らくザルドがいるのは分かっていた。

 

 それでも、今回リヴェリア達が【メレン】に来た目的は食人花のことを調査するためだったので、その調査が終わった後に接触を図る予定だった。

 

 この状況が、ザルドが引き起こしたものならよかったが、リヴェリアの頭の中には1人の女の姿が浮かび上がっていた。

 

 10代でLv.7に上り詰めた、自身と同じ魔導士の女。【ヘラ・ファミリア】の中でも異端の才能を発揮していた化け物。

 

 何より色んな意味でリヴェリアと相性が最悪だった人物なので当たってほしくないと現実逃避をしたかったが、()()()()()()()()()()()、リヴェリアは苦虫を嚙み締めたような顔になっていた。

 

 

「すまない、リヴェリア。遅くなった」

 

「……フィンか」

 

「……一応、確認だけど……これは君がやったのかい?」

 

ゴーンッ!

 

「……私がやったと思うか?」

 

「……いや、いい。犯人は分かった」

 

 

 フィンがリヴェリアの周囲で倒れているアマゾネスを見て、念のための確認だったが、『私がやった』と言わんばかりの鐘の音が聞こえた。

 

 フィンも【メレン(ここ)】に来る間に鐘の音を聞いており……何より、親指の疼きが凄まじいものになっていた。

 

 

「とりあえず、状況を教えてくれ」

 

「アイズ達がこの先で足止めを……そして、ティオネとティオナが……」

 

 

 リヴェリアは持っている情報を全てフィンに伝えた。

 

 無論、ザルドがこの町にいる可能性が高いことも伝えている。

 

 だが、ザルド以上に()()()()がこの町にいる。

 

 フィンはかつての『最凶』の眷属のことを思い出した影響で猛烈に胃が痛いが、事態を収束させるために頭をフル回転させようとした瞬間……。

 

 

「おい、フィン!ベートが『港』に突っ込んで行ったぞ!」

 

「「……」」

 

 

 すでに手遅れだった。団員の1人が危険地帯に突っ込んでしまっていた。

 

 フィンの顔は引き攣った状態で固まり、リヴェリアは片手で頭を押さえながら『あの馬鹿者が……』と呟き、ガレスが『どっちが迎えに行くんじゃ?』と遠回しに行きたくない宣言をしていた。

 

 

 

***

 

 

 

「ぬぅおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

「ッッ!!」

 

 

 『港』ではアイズを含めた【ロキ・ファミリア】の女性団員達が、【イシュタル・ファミリア】団長のフリュネ・ジャミールと大勢のアマゾネスとの戦闘になっていた。

 

 ティオネ達を救出するために『港』に向かっていたアイズ達だったが、【イシュタル・ファミリア】の待ち伏せを食らってしまった。

 

 さらに、Lv.5のハズのフリュネ・ジャミールがLv.6のアイズと()()()()()()を見せ、追い打ちでアイズは1人のアマゾネスから『魔法封じ』の『呪詛(カース)』を受けてしまい【エアリエル(風魔法)】を封じられてしまっている。

 

 さらに、本来アイズが愛用している『デスペレート』は整備に出しており、代剣を使っている。

 

 それに対してフリュネ(相手)は第1等級武装の全身型鎧(フルプレート)と大斧を装備しており、武装の差は歴然だった。

 

 それでも、『技と駆け引き』ではアイズが圧倒的に上であり、『技』を駆使することでアイズは何とかフリュネの攻撃を躱し、反撃を加えていたが、決め手に欠けていた。

 

 このままではジリ貧であり、アイズ達はティオナ達を助けなければならないので時間がない状態だった。

 

 

「このっっ、不細工ゥゥッ!!」

 

 

 自身の顔に傷を付けられたフリュネは、激昂に任せた一撃を叩き込もうとしていた。

 

 アイズはその一撃を代剣では防げないと判断し、回避を選択しようとした瞬間……。

 

 

「【耳障りだ(ゴスペル)】」

 

「ぎゃあっ!?」

 

「えっ?」

 

 

 アイズの目の前にハズのフリュネが視界から突然を消した。

 

 そのすぐ後に、ほかのアマゾネス達も同様に何者かによって吹き飛ばされる。

 

 

「え?何々!?」

 

「助かっ……た?」

 

「でも、誰が……?」

 

 

 アイズを含めた女性団員達が何が起きたのか理解できずにいたが、1人の女性らしき人物がこちらに歩いてくる姿を確認した。

 

 顔はローブを深く被っているのではっきりとは分からないが、少なくともアイズ達が知らない人物だった。そしてその女性は周りの空間が歪んで見えるぐらいの魔力を発しており、只者ではないのははっきりとしていた。

 

 

「なんだ?さっきの耳障りでは表現できない声は。新種のモンスターの鳴き声か?」

 

 

 その女性が近づくにつれ、何やら独り言を零していた。

 

 声からして明らかに不機嫌そのものであり、服装はこの港町では全く見ない漆黒のドレス姿だった。

 

 しかも、その女性の左手にはアイズ達が()()()()()()()()の首根っこをつかみ引きずるように運んでいた。

 

 

「助けてくださいっ!!!」

 

「【五月蠅い(ゴスペル)】」

 

「ごふっ!?」

 

 

 その人物はアイズ達に気づいた瞬間、助けを求めるように手を伸ばしていたが、その女性がゼロ距離で魔法を放って黙らせた。

 

 

「何が『助けてください』だ。私が助けてやっただろう?それなのにこの小娘達に助けを求めるとは、どういうつもりだ?」

 

()()を助けたとは言いませんよ!?本当に天に召されそうになったんですけど!!」

 

「お前が、幸せそうな顔で寝ていたのが悪い」

 

「だからって、気絶している相手にゼロ距離で魔法を叩き込むのはどうかと思うんですけど!?」

 

「【黙れ(ゴスペル)】」

 

「ぶふっ!?」

 

 

 エレンが『ゼロ距離福音(ゴスペル)でたたき起こすのは間違っている』とアルフィアに抗議するが、そんなものが受理されるハズがなく、再びアルフィアの魔法の餌食となった。

 

 少し前にアルフィアの手によって【イシュタル・ファミリア】に捕まっていたエレンは無事に救出?されていた。

 

 しかし、ぐっすりと寝ているエレンの寝顔を見てイラッとしたアルフィアは目覚まし代わりに打撃を混ぜた『ゼロ距離福音(ゴスペル)』をエレンに叩き込んでいた。

 

 その結果……エレンは夢の中で『下界』にいないハズの邪神様(エレボス)と再会を果たし、会って早々に『おぉ、エレンよ……。死んでしまうとは情けないw』と言われてしまった。

 

 その後、アルフィアに地面を引きずられる形で目覚めたエレン。

 

 しかし、その後があまりにも酷かった……。

 

 

 話しかけたら福音(ゴスペル)

 

 悲鳴を上げたら福音(ゴスペル)

 

 少しでも動いたら福音(ゴスペル)

 

 回復魔法で回復していたら福音(ゴスペル)

 

 何もしなくても福音(ゴスペル)

 

 

 あまりにも酷い仕打ちにエレンは『この癇癪持ちのクソババァがぁ!!』と発言。

 

 再び、天に召されそうになっていた。

 

 そんなエレンを引きずり、アルフィアは麝香が染みついているアマゾネス達を蹴散らしながらここまで来てのだ。

 

 

「この不細工がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ちっ」

 

「!? 危ない!!」

 

 

 なんと、アルフィアの魔法で吹き飛ばされていたハズのフリュネが1振りの大斧を両手で握り、アルフィアに向かって走り出していた。

 

 アルフィアの魔法は『音』の魔法であり、まともに食らえばダメージだけではなく三半規管をやられてしまい、うまく動くことすらできなくなってしまう。

 

 この魔法を食らってピンピンしているエレンが異常であり、今のアルフィアの魔法はLv.5の冒険者でも再起不能にするほどの威力になっている。

 

 しかし、フリュネの身に着けている全身型鎧(フルプレート)には『深層』のモンスター『オブシディアン・ソルジャーの体石』が含まれている。

 

 この体石は『ドロップアイテム』として高い人気があるアイテムであり、魔法の効果を減退させる効果を秘めている。

 

 さらに、今のフリュネは()()の力ではあるが、Lv.6。その耐久性をフルに発揮させ、何とか耐えきることができたのである。

 

 フリュネはアイズとの戦いを邪魔されたことと、()()美の女神以上に美しい顔を傷だらけにされたことで完全に頭に血が上っている状態だった。

 

 前衛(フリュネ)後衛(アルフィア)に斬りかかろうとする状況にアイズはすぐにでも割って入ろうとしたが……。

 

 

「今のはなんだ?その程度では竜も斬れまい」

 

「はぁっ!?」

 

 

 アルフィアはフリュネの大斧を()()()()()()()()()()……。

 

 

「ふ、ふざけんじゃないよ!? 今のアタイはLv.6だよ!!」

 

()()()Lv.6で何を言っている? それに()()()()の攻撃……枯れ木のような私でも、『技』さえあれば簡単に防げるぞ」

 

 

 無論、後衛で活躍する魔導士は前衛で戦う戦士に比べると圧倒的に『力』のアビリティが低くなる傾向にある。

 

 アルフィアも『力』の数値はザルドと比べると圧倒的に負けるが、アルフィアは実質Lv.9の冒険者(化け物)

 

 フリュネの振り下ろした大斧を1ミリ単位のミスも許されない卓越した『技』で威力を殺し、アルフィア(自身)の【ステイタス】で受け止めれるぐらいになるまで弱めたのだ。

 

 まさしく『才禍の怪物』と呼ばれたアルフィアだからできる芸当。

 

 

「それに、なんだ?さっきの力任せの攻撃は。刃とはこのように振るう」

 

「ぎっっ──────!?」

 

 

 アルフィアは『手本を見せてやる』と言わんとばかりに()()でフリュネの胴体に向けて一閃を繰り出した。

 

 フリュネはアルフィアの手刀を諸に受け、はるか後方にある倉庫まで吹き飛ばされていた。

 

 さらにフリュネの身に着けていた第1等級武装の全身型鎧(フルプレート)はアルフィアの手刀の跡がくっきりと残っており、その光景を目にしたアイズ達は『えっ?やばっ』と同じことを思っていた。

 

 

「この程度で終わりか?今の『オラリオ』の冒険者は貧弱すぎる。情けない……」

 

「いや、貴方が化け物級に強すぎるだけです」

 

「そうかそうか。貴様も手刀(これ)が欲しいのか?好きなだけ食らわせてやるぞ?」

 

「ひぃっ!!勘弁してくださいっ!!や、やめてっ!!乱暴しないでっ!?」

 

「女とは()()()()()()だ。それを化け物呼びするとは……。一度、女に対する礼儀を教えないといけないな」

 

「鏡見たことあります?───あっ」

 

「なるほどなるほど───『縦』に斬るか?」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 アルフィアが『私はか弱い女だぞ?』との発言に、エレンは『鏡いります?』と発言。アルフィアはエレンが逃げないように胸ぐらをしっかりと掴み、手刀で『縦』に斬ろうとしていた。

 

 因みに、アイズ達は『嘘つけ!!』とつい口に出てしまいそうになったが、寸での所で踏み止まることができ、『処刑』されずに済んでいる。

 

 しかし、目の前では顔見知りの人物が手刀で処刑されそうになっているという助けないといけない光景が広がっているが、『巻き込まれたくない!!』といった感情が彼女達の動きを止めていた。

 

 エレン絶対絶命のピンチ!

 

 しかし、そんな所に救世主の登場である……。

 

 

「……おい。これはどんな状況だ?」

 

「あっ?ベートさん」

 

『あっ』

 

 

 今、この場に来てはいけないベートの登場である。

 

 何しろこの男は口が悪すぎる男代表で有名な男だからである。

 

 具体的な例を挙げれば、王族妖精(ハイ・エルフ)のリヴェリアを『ババア』呼びするぐらいに口の悪い男である。

 

 そんな一種の怖いもの知らずの男が来てしまった光景に、アイズ以外の女性団員達が『あっ、死んだわ。あの男』と同じ言葉が頭の中に浮かんでいた。

 

 

 そして、彼女達の考えは的中したのであった……。

 

 

「おい!そこのババア!何y───」

 

「くたばれクソ犬!」

 

『あっ』

 

 

 案の定、アルフィアの事を『ババア』呼びしたベートは、Lv.6でも反応できない速度の福音拳骨(ゴスペルパンチ)を顔面に食らい、そのまま地面に叩きつけられた。

 

 最早、地面に埋まっているレベルの攻撃に流石のベートも一撃ダウン。

 

 アルフィアは地面に埋まっているベートの頭を鷲掴みにして引っ張りだし『この程度か?』と口に出しては、近くにいたアイズに声をかけた。

 

 

「おい、そこの小娘」

 

「……えっと、私?」

 

「ほかに誰がいる。この駄犬はお前の仲間か?」

 

「えっと、その人はわたs───むぐっ」

 

「いえっ!!こんなダメ男のことなんてちっとも知りません!!」

 

「そうです!!そうです!!この男は私達とは無関係です!!」

 

「はい!!私達女性を『ババア』呼びする男なんて全く知りません!!」

 

 

 天然のアイズが素直にアルフィアの問いに答えようとしたが、ほかの女性団員達に口を押えられ、『その男とは無関係です!!』と嘘の主張をした。

 

 この世には『眷属(ファミリア)は一蓮托生の血に契り』といった言葉が存在する。

 

 簡潔に答えれば、眷属の問題は【ファミリア】の問題。時には【ファミリア】の仲間で協力し合い、互いに助け合って、共に生きていこう!などの捉え方がある。

 

 だが、悪い言い方をすれば、眷属のやらかしは【ファミリア】のやらかし。

 

 今回の場合だと、ベートのやらかしたことでアルフィアの矛先が【ロキ・ファミリア】に向けられる可能性が出てくるのだ。

 

 これを恐れたアイズ以外の女性団員達は、とっさの嘘でこの場をやり過ごし、恐らく援軍で来ているであろう団長(フィン)の助けを呼ぼうと考えていた。

 

 

「そうか……。ならこの駄犬に少し『教育』を施すが、構わんな?」

 

『どうぞどうぞ』

 

 

 女性団員達は取り押さえているアイズと、恐らくベートが届けに来たのであろう『デスぺレート』を回収して、その場を立ち去ろうとしていた。

 

 さらにその集団の中に1名。【ロキ・ファミリア】の()()()()()()()がどさくさに紛れて、その場を立ち去ろうとしていたが、それを見逃すアルフィアではなかった。

 

 

「おい、貴様はここに残れ、()()()

 

「ひぃっ!?」

 

 

 そう。ちゃっかりその場を立ち去ろうした者はエレンである。

 

 『最初から【ロキ・ファミリア】でした!』感を出し、この場をやり過ごそうと考えての行動だったが、その程度でヘラの眷属(アルフィア)の目を誤魔化すのは不可能である。

 

 アルフィアによって回収されるエレン。というか、女性団員達に魔女に捧げる生贄の如く差し出されてしまった。

 

 

「お前とこの駄犬には『女に対する作法(礼儀)』を叩き込んでやる。しっかりと学べ」

 

「無理無理無理!!アルフィアさんの攻撃をそう何度も食らったら死んじゃいます!!」

 

「安心しろ。何とか息ができる程度で加減してやる。私は優しいからな」

 

「それ虫の息では!?最早死んだも当然です!!っていうか、強くなりすぎでしょう!?この短期間でどんだけ強くなってるんですか!?」

 

「知らん。その原因の殆どは()()()()()()()

 

「……はい?」

 

 

 そう。アルフィアがこんなに強くなってしまったのは、エレンが原因である。

 

 

 

***

 

 

 

「おい、()()。【ステイタス】の更新をしろ」

 

「15年ぶりに再会した主神()に対しての最初の言葉が『【ステイタス】の更新をしろ』だとは……。このバカ娘が」

 

 

 これはアルフィアが【メレン】に訪れる前のこと。

 

 あのクソ爺(ゼウス)からの願いで『アンタレス』討伐を完了させたザルドとアルフィア。

 

 その2人に対する報酬はヘルメス経由で手に入れた『半精霊(エレン)の血』だった。

 

 その血を飲んだザルドとアルフィアは、元々エレンの回復魔法で薄まっていた『ベヒーモスの猛毒』と、治りかけの『不治の病』が完治した。

 

 さらに、そのままザルドは【ステイタス】を更新させ、Lv.8に【ランクアップ】を果たした。

 

 アルフィアの場合はそこに主神のヘラがいない為、【ステイタス】の更新ができずLv.7のままだった。

 

 ザルドがLv.8となり、『なんかザルド(あいつ)に負けた感じがして癪だ』と感じたアルフィアはLv.8になったザルドをボコボコにして、ヘラに会いに行った。

 

 ヘラの居場所はヘルメスから聞き出しているためすぐに見つけることができ、その足でヘラが住んでいる屋敷に突撃。

 

 屋敷の中には眷属を増やしたのか恩恵を持った女性が大勢住んでおり、門番を吹き飛ばして中に入ってきたアルフィアを『侵入者』として排除するべく、アルフィアに襲い掛かるが……。

 

 

「【邪魔だ(ゴスペル)】」

 

 

 アルフィアに敵うはずもなく全滅。

 

 アルフィアは、最初から住んでいたかのように屋敷の中を堂々と進み、主神部屋に突撃。

 

 今に至るのであった……。

 

 

「しかし、驚いたぞ。まさか、眷属を新たに増やしていたとはな」

 

「ただの神の気まぐれよ。『オラリオ』の外に出て、あの人(ゼウス)を探す以外にすることがなくてなぁ。適当な娘を拾っては眷属にしている」

 

「……」

 

 

 女神ヘラは神々の間では最強最悪(クレイジーサイコ)超絶残虐破壊衝動女(ハイパーヒステリー)などと呼ばれているが、本質は『善神』よりの女神である。

 

 現にアルフィアやメーテリアも、親を『不治の病』で喪い孤児になっていた所をヘラに拾われている。

 

 ヘラ本神(ほんにん)は『ヘスティアだったらこうしている』と珍しくほかの女神の真似をしていると話しているのを、耳にしたことがあった。

 

 口では『バカ娘』と言っているが、ヘラは内心久しぶりにアルフィアとの再会を喜んでいる。

 

 そのまま、アルフィアの言う通りに【ステイタス】の更新するヘラ。

 

 

「……アルフィア。お前、一体何があった?」

 

「……なんだ?また変な【スキル】でも発現させたか?」

 

「【スキル】のこともあるが、この数値はなんだ?この数値は───いや、そういうことか」

 

「?」

 

 

 背中越しの会話にヘラは何やら疑問に思っては、勝手に納得していった。

 

 ヘラはそのまま【ステイタス】を更新させ、Lv.8に【ランクアップ】させた。

 

 『偉業』に関しては、『リヴァイアサン』と『アンタレス』の討伐の功績で溜まりきった状態だった。

 

 しかし、問題なのは【ランクアップ】する()()数値である。

 

 

 

アルフィア

 

LV.7

 

力:D548→SSS2068

 

耐久:G202→SSS1212

 

器用:S999→SSS3011

 

敏捷:S999→SSS2831

 

魔力:SS1001→SSS3591

 

 

 

「……何だこの数値は?真面目にやれ、ヘラ」

 

「大まじめだ、バカ娘。私が簡単な文字の書き写しができないとでも思ったか?」

 

「なら、この数値はどう説明する?いくら15年【ステイタス】の更新をしていなくても、この数値はおかしいだろう」

 

「……恐らく、原因はこの【スキル】の()()だと、私は考えておる」

 

 

 

<スキル>

 

才禍代償(ギア・ブレッシング)

・ステイタスの常時限界突破(リミット・オフ)

 

・交戦時及び発作時、『毒』『麻痺』『機能障害』などの複数の状態異常併発。

 

・発動中、半永久的に能力、体力、精神力が低下。

 

 

 

「……これは?」

 

「書いてある通り。お前の【スキル】……。【才禍代償(ギア・ブレッシング)】のデメリットの部分が消滅しておる」

 

「……」

 

「私の勘ではあるが、この【才禍代償(ギア・ブレッシング)】の効果で下がっていた【ステイタス】の数値が、この()()()()()()()()()()されたことで、お前に還元されたんじゃないかと考えておる」

 

「……」

 

「……アルフィア。お前を苦しめていた『不治の病』はどうなった?」

 

「治った」

 

「……一体どうやって?」

 

「『精霊の血』を飲んだ」

 

「……なるほどのぉ。まだ、()()()()がおったか」

 

「?」

 

 

 アルフィアの言葉にどこか納得し、一生治ることがないと思っていた『不治の病』が治ったと聞き安堵の表情を見せる一方、その反面どこか辛そうな顔をしていた。

 

 

「……アルフィア。今の『下界』に大精霊が殆ど残っていない理由を知っているか?」

 

「? 『寿命』じゃないのか?精霊は神々(お前達)の分身と言われているが、()()()()()()。寿命が尽きて数が減ったのではないのか?」

 

「それもある。しかし、本当の理由は()()()()()()()()()()()()

 

「……どういう意味だ?」

 

「大精霊にとって『血』とは、()()()()()()()()()()。血を与えられた者はお前のようにどんな傷や病も治り、精霊由来の魔法を開花させたりできるが、与える方は力と寿命を大きく削られる……。さらに、精霊は己の血を作ることができないから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

「だが、精霊は英雄が大好きなのだ。だから、多くの大精霊が己の血を分け与えては多くの英雄を救ってきたがその分、多くの大精霊がいなくなってしまった……。正直、この『下界』には大精霊は残っていないと思っていた」

 

「……」

 

 

 ヘラが話したのはこの『下界』に大精霊がいない理由。

 

 ヘラはとても複雑そうな表情で話したが、アルフィアはヘラの説明に疑問を感じていた。

 

 

「(弱体化?あいつにはそんな様子はなかったぞ)」

 

 

 アルフィアが考えていたのはアルフィアが飲んだ『精霊の血』の持ち主のエレンのことである。

 

 エレンはアルテミスやヘルメスに自身の血を渡しているのは知っていたが、ヘラ言うような弱体化のような症状は出ていなかった。

 

 さらに、『精霊の血』を分け与える行為が自身の命を削る行為であるのなら、あの女神(ヘスティア)が何も言わなかったというのが、アルフィアはとても疑問に思っていた。

 

 実際は、今のエレンは精霊とヒューマンのハーフ。エレンの血は半分がヒューマンの血のため、精霊由来の魔法の発現ができない分、()()()()()()()()()()()()

 

 その結果、自身の血を分け与えられても弱体化のリスクはなく、寿命が減るリスクもない。

 

 その分、エレンからは劣化品ではあるが『精霊の血』を採取することができるので、この情報が洩れれば、エレンはあらゆる存在から狙われることを意味する。

 

 ヘスティアがエレンに自身の血を極力使わないように念押ししているのは、これが理由である。

 

 

「まぁ、その精霊については、暇を見て礼をするとしよう。所でアルフィア。お前、今まで何処で何をしていた?」

 

「……」

 

「この15年間生きていたんだ。てっきり『門番』でもしているかと思っていたが、違うのだろう?ほれ、話してみろ」

 

「……」

 

 

 アルフィアはエレンのことについて色々と考えていたが、ヘラから最悪の質問が飛んできた。

 

 アルフィアは殆どの時間をベルとの時間に使っており、ヘラはメーテリアに子供が出来ている事実を知らない。

 

 仮にヘラがメーテリアの子(ベル)の存在を知れば、何が何でもベルに会いに来る。

 

 かつての【ヘラ・ファミリア】ではヘラに似た性格になった多くの団員達をアルフィアは見てきているので、ベルをヘラ色に染まらせたくない思いで知られないようにしてきた。

 

 嘘を言っても、神には下界の住民の嘘はバレるので意味がない。

 

 なら、どうするか?簡単だ。話題を()()()()()()

 

 

「おい、ヘラ。あのクソ爺(ゼウス)の居場所を知っているが……どうする?」

 

「今すぐ教えろ!!」

 

 

 結果、ザルドは住処を追われ、【メレン】に向かう切っ掛けとなり、ゼウスはヘラに捕まることとなった。

 

 

「……そんな感じで、今の私はLv.8だが、実際はLv.9ほどの数値になっているらしい」

 

「あ、あぁぁ……」

 

「だが、未だに『調整』が終わっていなくてな。体の調子がおかしいから付き合ってもらうぞ?殆どお前のせいだからな。確か……『責任を取れ』……だったか?」

 

「それ絶対違うやつッ!!!」

 

 その後の女性団員達の話では、団長(フィン)達と合流するために動き出していたが、後ろの方からは悲鳴と鐘の音が絶え間なく聞こえていたらしい。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回の『精霊の血』や『ヘラ』の設定は独自解釈で作った内容です。

アルフィアの【ステイタス】の数値は『こんな感じかな?』と思って設定していますが、特段意味はありません。

この馬鹿げた数値の上昇は、Lv.1の時に発現させた【才禍代償(ギア・ブレッシング)】の効果で半永久的に下がっていた数値が還元されたのが原因です。


エレン
 アルフィアにボコボコにされる精霊。お可哀そうに……。

アルフィア
 エレンの血で『弱点』がなくなった怪物。この後、エレンとベートをボコボコにしたお陰で、『ズレ』がなくなった。

ヘラ
 アルフィアの『不治の病』が治り、内心喜んでいる。現在、ゼウスが逃げないように自身の手足を手錠で繋げた二人三脚状態で暮らしている。

あと少して、ヘラの屋敷(監獄)にゼウスを連れていく予定。

ゼウス
 『ベルゥゥゥゥゥッ!! ザルドォォォォォォ!! 助けてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
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