聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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27話 『絶対悪』と書いて『エレン』

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

「こっちに逃げたぞっ!! 逃がすなぁ、殺せぇ!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!??」

 

「高貴なお方を()()とは……万死……いえ、それすら生温いっ!!未来永劫!!その魂の全てを持って償えぇぇ!! 絶対悪(エレン・エウロギア)っ!!!

 

「絶対悪!!??」

 

 

 エレンは全速力で()()()()()。何からって?【オラリオ】()()()()()()からである。

 

 本来、交わることのない他派閥同士のエルフ達が、一致団結して、絶対悪(エレン)を仕留めようとしている理由は、1時間前のこと……。

 

 

 

***

 

 

 

「諸君、今日はよく足を運んでくれた!」

 

 

 高らかな声が響き渡った。

 

 室内の全ての人と神が目を向けると、その視線の先には1柱の男神が立っていた。

 

 

「今回は私の一存で趣向を変えてみたが、気に入ってもらえただろうか?」

 

 

 その男神の後ろには、2日前に会ったダフネとカサンドラの姿を確認したエレンは今しゃべっているのが、神アポロンなのだろうと推測していた。

 

 

「多くの同族、そして愛する子供達の顔を見れて、私自身喜ばしい限りだ。───今宵は新しき出会いに恵まれる……そんな予感すらする」

 

「?」

 

 

 神アポロンが話している途中、エレンは自身とベルに視線を向けたと思うと、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡しているような動きをした。

 

 ベルは視線を感じたのか後方を確認したりしていたが、アポロンはそんな事を気にせずに挨拶を続けた。

 

 アポロンの挨拶が終わると同時に神々の歓声が上がった。

 

 酒場の一件があったエレン達は真っ先に話がしたかったが、アポロンは挨拶回りのためか、多くの神々に囲まれており、ヘスティア達は少し時間を置いて会うことにした。

 

 普段は、神々のみで開かれる『神の宴』と聞いて、礼節とか大丈夫なのかと、緊張していたベルとエレンだったが特に堅苦しい雰囲気とかなくて、一安心して食事や会話を楽しんでいた。

 

 ベルはアポロンのことが気になっていたのか、ヘスティア達に質問し、ヘルメスが答えていた。

 

 『天界』ではヘスティアやヘルメスと同郷で、ご近所のような関係だったそうだ。

 

 後は、()()()()()()だったりとか、()()()()とか気になるワードがヘルメスの口から出てきて、気になったエレンが尋ねようとした途端、会場の入り口から大きなよどめきが起きた。

 

 エレンの視線の先にいたのは、巨身の獣人を従えた銀髪の女神であり、その姿に多くの者達が釘付けになっていた。

 

 エレンの隣にいたベルもフレイヤの姿に視線を奪われ、ぼけっとしている姿を見たヘスティアは勢いよくベルに向かって飛びついていた。

 

 

「フレイヤを見るんじゃない、ベル君!!」

 

「へあっ!?」

 

下界の者(こども達)が『美の女神』を見つめると、たちまち虜になって『魅了』されてしまう!」

 

「……確か、『美の女神の権能』でしたっけ?」

 

「あぁ、俺達神々や下界の子ども達も、万人を例外なく『魅了』してしまう、『美』そのものとも言える超越存在(デウスデア)……言ってしまえば、『チート』そのものだ」

 

 

 エレンの疑問に近くにいたヘルメスが答える。

 

 数多くいる神々でも頭1つ飛びぬけている『権能』の力。

 

 ヘルメスの説明を裏付けるように、各派閥の団員たちはフレイヤに魅入っていた。その中には女性も含まれていたが、美の女神の前では性別などは全く問題にもならなかった。

 

 エレンの近くにいたアリーゼ、輝夜、リュー、アスフィなどは視線を逸らし、フレイヤを直接見ないようにしていた。

 

 美の女神の魅了は、存在しているだけで多くの者を魅了させるが、視線を逸らすだけでも多少は受ける影響を減らせるらしいとのことだった。

 

 それでも、『魅了』の()()()()()()()()()()()の場合の話であり、抑えていなかった場合は、この会場に入った瞬間に、『魅了』されてしまうそうだ。

 

 そんな会話をしていると、こちらに気が付いたフレイヤが従者を引き連れてこちらにやってきた。

 

 

「来ていたのね、ヘスティア。それにヘファイストスとアストレアも。神会(デナトゥス)以来かしら?」

 

「やぁ、フレイヤ。何しに来たんだい?」

 

「別に、挨拶をしに来ただけよ?珍しい顔ぶれが揃っているものだから、足を向けてしまったの」

 

 

 フレイヤのそう言ってほかの神々の視線を向けた。

 

 女神のヘファイストスやアストレアは『こんばんわ、フレイヤ』、『元気そうで何よりよ』と返していた。

 

 男神のヘルメスはすでにデレデレ状態。タケミカヅチはフレイヤの魅了に当てられたのか軽く赤面しており、ミアハは『今宵もそなたは美しいな』と褒めていた。

 

 しかし、眷属の女性達に打撃され、足を踏まれ、抓られるなどして悲鳴を上げていた。

 

 そして、次にフレイヤが目を付けたのがベルだった。

 

 フレイヤは慣れた手つきでベルの頬にすっと撫でると、そのままの状態でベルに1つ尋ねた。

 

 

「今夜、私に夢を見せてくれないかしら?」

 

「見せるかぁ!!」

 

 

 まさかの夜のお誘いだった。

 

 ベルはフレイヤのお誘いの意味が理解できたのか、一瞬で顔を真っ赤にさせたが、その光景を見ていたヘスティアがすぐにフレイヤの手を叩き落としてベルを救出した。

 

 ベルのような兎は、美の女神から見れば食べやすそうなご馳走なのだろう。とエレンが思っているとフレイヤは『残念』と言いながら、()()()()()()()()()()

 

 

「それじゃあ、貴方はどうかしら?」

 

「へっ?」

 

「はぁっ!!??」

 

 

 ベルをヘスティアに取れれてしまったフレイヤは、今度はエレンに目を付けた。

 

 多くの者達が美の女神(フレイヤ)の見惚れている状態にも関わらず、目の前の人物(エレン)は全くフレイヤに()()()()()()()()()()()

 

 それに、こんなに近くにいる状態にも関わらず、エレンの魂を見ることができないフレイヤはますますエレンのことが気になってしまい、ベルと同じく頬に手を添えて尋ねた。

 

 ただ、ベルと違う点があるとすれば、抑えていた『魅了』が()()()()()()()()()ことだろうか。

 

 『魅了』の力がエレンの全身を包んでしまった。『魅了』の力に当てられてしまった者は、()()()()()()骨抜きにされてしまうの美に女神の権能(チート)

 

 

 

 なのだが……。

 

 

「……?」

 

「あら?」

 

 

 エレンが全く『魅了』に堕ちた手応えをフレイヤは感じなかった。

 

 今度は、フレイヤの意思でエレンに『魅了』を施してみたが結果は同じ。『魅了』が通じない……いや、正確には()()()()()()だった。

 

 この感覚を、フレイヤは処女神相手に『魅了』を施そうとしているように感じた。

 

 『魅了』が通じない処女神ならまだしも、下界の住民がそれを成し遂げた者がいたことに驚いたフレイヤは、エレンにますます興味をそそられたフレイヤがさらにエレンに近づこうとした瞬間……。

 

 

「コラーー!!何ボクの眷属(子供)に『魅了』をかけてるんだ、君はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 ベルに続いてエレンにまで手を出してくるとは思ってもいなかったヘスティアだったが、ベルをアストレアに渡すと同時に、今度はエレンの前に出てきて子犬を守る母犬のようにフレイヤを威嚇した。

 

 心なしか『ガルルルッ!!!』と唸り声が聞こえて気がするが気のせいだろうか?

 

 一方、フレイヤはお気に入りの玩具を取り上げられたように少し落ち込んだが『ヘスティアの機嫌を損ねてしまったようだし、もう行くわ。それじゃあ』と言って、獣人の従者を連れて遠ざかって行った。

 

「……ねぇ、ヘスティア。その子、フレイヤに『魅了』されていたけど、大丈夫なの?」

 

「そうよ。見た感じ無事みたいだけど、どうなっているの?」

 

「?」

 

 

 先程の光景を見ていたアストレアとヘファイストスがエレンの顔などをペタペタと触りながら、ヘスティアに尋ねていた。

 

 美の女神の『魅了』から逃れられるのは処女神ぐらいである。エレンは処女神(ヘスティア)の精霊なのはアストレアとヘファイストスは知ってはいるが、魅了耐性がここまで高いのは予想していなかったようだ。

 

 エレンの【アルテミス・ファヴォール(スキル)】は美の女神の『魅了』にも有効であり、イシュタルの時と同様に全自動(フルオート)で無力化する。

 

 無論、全自動(フルオート)で無力化するため、エレンは何が起こったのか理解できずにいると、フレイヤが去った方向とは別の方から声がかかった。

 

 

「……ロキが言っていたが、本当に『魅了』が効かないんだな。お前は」

 

「ん? 君はロキのハイエルフ君じゃないか」

 

「あぁ、神ヘスティア。会うのは今回で2回目だな」

 

 

 次に声をかけてきたのは、【ロキ・ファミリア】の副団長のリヴェリアであった。

 

 白をベースにしたドレスを身に纏っており、金色の装飾が派手過ぎず、ドレスの美しさを引き立てていた。

 

 しかし、彼女(リヴェリア)がいると言うことは、その主神()がいる事を意味するが、未だにロキの姿が見当たらなかったヘスティアはリヴェリアに尋ねた。

 

 

「なぁ、ハイエルフ君、君の主神()はどこにいるんだい?ロキのことだから真っ先に来そうなのに、その気配すらないんだが……」

 

「……ロキならあそこだ」

 

「「「ん?」」」

 

 

 ヘスティアの問いにリヴェリアは自身の後ろを指をさした。

 

 その方角には、なぜか男装をした女神(ロキ)が、ドレス姿のアイズとレフィーヤの肩を必死に揺らしている光景があった。

 

 

「……ロキは何をやっているんだい?」

 

「……神フレイヤの『魅了』だ」

 

「……あっ」

 

 

 リヴェリアの言葉にヘスティアが()()に心当たりがあった。

 

 先程までここにいたフレイヤである。

 

 彼女がエレンにかけたつもりの『魅了』がほかの者達にも影響を及ぼしていた。

 

 現にアイズとレフィーヤは惚けきった顔で『フレイヤ様~♪』と呟き、それを聞いたロキが『正気に戻れやぁ!! アイズたん、レフィーヤっ!!!』と悲鳴を上げていた。

 

 

「リヴェリアさんは無事だったんですか?」

 

「……いや、無事ではないなぁ」

 

「えっ?」

 

「私も多少『魅了』を浴びているようだ。何とか正気を保ってはいるが……正直きつい」

 

「……」

 

 

 

 エレンはリヴェリアの顔をよく見ると、少し頬が赤くなっているのに気が付いた。

 

 ほかの人達は、アイズとレフィーヤ(あの2人)と同じようにフレイヤの『魅了』に当てられて完全に堕ちてしまっている。

 

 この状態で正気を保っているリヴェリアは流石と言えるが、その本人のだいぶ辛そうな感じだった。

 

 

「はぁ、エレン君。悪いけど、フレイヤの『魅了』に掛けられている子ども達に回復魔法をかけてくれないかい? 君の魔法なら解除できるから」

 

「分かりました。それじゃあリヴェリアさん。回復魔法をかけるので、こちらに」

 

「……そういえば、【メレン】の時にアイズに掛けられた『魔法封じ』の呪詛(カース)も解呪していたな」

 

「あぁ、この子の回復魔法はちょっと特殊なんだ。大抵の毒や呪いとかなら、この子の魔法で十分対処できる」

 

「……そうか。なら、頼めるか、エレン?」

 

「はい」

 

 

 その後のエレンはリヴェリアを始めとしたフレイヤの『魅了』にかかった人達に回復魔法をかけていった。

 

 エレンの回復魔法を受けて人達はヘスティアの読み通りに『魅了』を解くことができたが、自身を値踏みするような視線を感じたエレンはその視線の方を振り返ると、フレイヤがこちらをじっと見ていた。

 

 その視線はまるで、自分の中身を覗かれているような感覚であり、物珍しそうなものを見つけたようなものでもあり、その視線に耐えられなくなったエレンは、そそくさとヘスティアの元に戻っていった。

 

 

「あ~~~っ。行っちゃった。もう少し見ていたかったのに……」

 

「フレイヤ様の『魅了』が効かないだけではなく、解除までやり遂げるとは……。あの者は何者なのでしょうか」

 

「ふふっ、私の『魅了』が効かない男なんて、神々にもいなかったのに『魅了』を解けるなんて……w 本当、今日『宴』に来た甲斐があったわ!」

 

「あの者については如何なさいますか?場合によってはフレイヤ様に危害をもたらす可能性も……」

 

「そうね、私達『美の女神』にとって、『魅了』が効かない処女神なんかは『天敵』みたいなもの。まさしくあの子は処女神とほぼ同じと見るべきね……でも」

 

「でも?」

 

「あの子の活躍を見ているのも面白そうだし、このままでいいわ♪」

 

「畏まりました。ほかの団員達にも通達しておきます」

 

「お願いね、オッタル。あっ!ついでにあのエレン()についての調査もお願いね」

 

「はっ」

 

 

 退屈凌ぎの『宴』の参加だったが、珍しいものを見られてフレイヤはご機嫌だった。

 

 ベルに続いての面白そうな子の登場。エレンが【ヘスティア・ファミリア】に入った影響か、あの子(ベル)の魂の輝きも増している。

 

 この調子で進めば、ベルの魂の輝きはより一層輝くを増し、立派な『伴侶(オーズ)』になってくれるだろうとフレイヤは確信していた。

 

 だから、()()エレンには手は出さない。しかし、先の事を見越してあの子のことを知っておこうと思い、フレイヤは自身の眷属(子ども)にエレンの調査をお願いしていた。

 

 この先、どんな面白いものを見せてくれるのだろうと胸を高鳴らせているフレイヤだが、まさか自身が狙っていた【最凶】の【ファミリア】の『遺産』を持っていかれるとは、この時のフレイヤは予想もしていなかった……。

 

 

 

***

 

 

 

「すまない、エレン。私の我が儘に付き合わせてしまって……」

 

「アハハ、オキニナサレズニ……」

 

 

 『宴』が開かれ約2時間ぐらい過ぎた頃だろうかぁ。エレンはリヴェリアは大広間で()()()()()

 

 事の発端はベルがアイズと踊っているところだった。

 

 エレンはヘスティアの紹介で、様々な神々と会話を楽しんでいると、大広間の方が騒がしくなっているの気が付いたエレンがその方角に視線を向けるとベルがアイズと踊っている光景を目にした。

 

 しかし、2人ともダンスが初めてのせいか、動きがとてもぎこちない感じで、全く嚙み合っていなかった。

 

 そこで、登場したのがリヴェリアである。

 

 彼女は、王族と言うこともあってか、多くのエルフからダンスのお誘いを受けていたが、彼女は『先約がある』と嘘を言ってずっと断っていた。

 

 しかし、アイズが誰かと踊っている光景を目にしたリヴェリアは『あの子がダンスをするとはな~』と意外な一面を目にしていた。

 

 だが、そのダンスは全く形になっておらず、ついに見かねたリヴェリアが『ダンスの作法を教えてやる!』と言って近くにいた知り合い(エレン)の手をとって、大広間でアイズ達に『手本』を見せた。

 

 本来なら、男性が先導(リード)しないといけないのだが、エレンもダンスなんて一度もしたことがなかったが、そこは全部リヴェリアが先導(リード)した。

 

 彼女は王族の生まれ。教育の一環としてこのようなダンスも叩き込まれており、お手の物だった。

 

 エレンはリヴェリアが先導(リード)しやすいように体を預けるだけだったが、会場にいる全てのエルフから殺意に似た視線を浴びて、気が気じゃなかった……。

 

 中には山吹色のエルフを含めて数名が魔法を歌いだすハプニングが起き、アリーゼ達に取り押さえられるなどの光景が目に入ったが、エレンは全力で見なかったことにした。

 

 しかし、リヴェリア達のダンスの姿を見たアイズとベルは段々と動きが様になり、ついには2人で円舞曲(ワルツ)を踊れるようになっていた。

 

 2人はダンスを存分に楽しんでいるようなので、こちらもダンスを楽しむべきなのだろうが、ほかのエルフの視線を感じすぎてエレンはそれどころではなかった。

 

 

(コロスッ!)

 

(リヴェリア様から離れた時が、貴様の最後だぁっ!!))」

 

(ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!ギルティ!)

 

「(ひぃぃぃぃ!?)」

 

「お、おい! いきなり足を止めるなぁ───あっ」

 

 

 おかしい……。耳では全く聞こえないのに頭の中に直接流れてくる感じで、ものすごい怨念染みたものが流れ込んできた。

 

 一刻も早くこの場から逃げ出したいが、ダンスはまだまだ終わりそうな気配は全くなかった。

 

 今ここで逃げ出したりしたら、王族のリヴェリア顔に泥を塗ることになるので、そうなったらここにいるエルフ達から全力で命を刈り取られてしまうことになる。

 

 何とか無事に?生きて帰れるように最善を尽くそうとしたが、物凄い殺気に似た視線に思わず、動かしていた足を止めてしまった。

 

 そして、エレンが足を止めた結果。リヴェリアの足とぶつかってしまい、バランスを崩し転倒。

 

 それだけなら、どれだけよかっただろうか……。

 

 リヴェリアはエレンの上に覆いかぶさるように転倒。エレンは何とか踏ん張ろうとしたが、大勢が余りにも悪く、受け身もまともにできず、頭を床に思いっきりぶつけてしまい気絶してしまった。

 

 一方のリヴェリアは、エレンがクッションの役割を果たした形になったおかげで、()()()なかった。

 

 

 

 ()()()……。

 

 

 

「ア、アァァァァァッ!!!」

 

「何と、何ということだぁぁぁっ!!??」

 

ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサイ

 

 

 多くの妖精達が、沸点が飛び越えたなどでは表現できないぐらい怒り心頭状態になっていた。

 

 あるものは『増援』を呼ぶために会場を飛び出していき……。

 

 あるものはあの下郎(エレン)を仕留めるために近くにあったナイフやフォークを手にして、アスフィ達に取り押さえられたり……。

 

 あるものは全力の魔法行使を始めようとして、アリーゼ達に取り押さえられてりしていた。

 

 『えっ?なんでこんなに妖精(エルフ)達がブチギレてるの?』だって……。そりゃあ……。

 

 

『高貴なお方の()()()()とは、この下郎者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

 

 と。言う訳である……。

 

 正確に、リヴェリアがエレンの上に倒れこむ形で唇が重なってしまった感じなのだが、妖精(エルフ)達にはそんなのは全く関係なかった。

 

 王族妖精(ハイエルフ)とは、妖精(エルフ)達から尊敬される存在であり、かつて世界を救った内の1人。『王女セルディア』の影響で最早『信仰』レベルに至っている。

 

 そんな高貴な血が流れるリヴェリアの唇が異種族の男に奪われる事態を、妖精(エルフ)達が許せるはずがなかった。

 

 状況はいつ爆発してもおかしくない事態にまで発展。この状況を収めることができるとすれば、まさしく『王族』のリヴェリアしかいなかったのだが……。

 

 

「─────────」

 

「ハイエルフ君っ!! 起きてくれっ!! 君がいないとエレン君が酷い目に遭っちゃうんだぁ!!」

 

「退け、ドチビ! こんな時は王子様のキスで目覚めるもんやぁ! つまりウチがブチューすれば目覚めるもんやー!」

 

「君はもっと真面目にやらないかぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぐへぇっ!?」」

 

 

 リヴェリアの方は、エレンとの口づけ(キス)で気絶……いや、『石化』してしまっていた。

 

 何しろ、リヴェリア・リヨス・アールヴ。この長い時間を生きているが、男性経験は0である。

 

 しかも、その人生の半分以上の生まれ故郷の【エルフの森】で鳥籠の中の鳥のように過保護の域で、大切に育てられた王女様である。

 

 さらに、【メレン】にいた際にロキから渡された際どい水着を見て『石化』してしまうぐらいの耐性の無さを兼ね備えている。

 

 その結果、ヘスティアが必死にリヴェリアの肩を揺らして起こそうとしても、リヴェリアの『石化』が解除されることがなかった。

 

 一方のエレンは、意識を取り戻し、ゆっくりと体を起こして周りの状況を確認した。

 

 エレンを中心に大勢のエルフ達が殺気を剝きだした状態で、円になるように周囲を覆っていた。

 

 エレンは何が起きているのか理解できず、近くにいたヘスティアから何が起きているのか事情を全て知らされた。

 

 事情を全て知ったエレンは顔面が真っ青を通り越して、真っ白になっていた。

 

 そして、エレンを守っていた防衛ラインが突破され、大勢のエルフ達がエレンの始末するために流れ込み、エレンは命からがらその場から逃亡……。

 

 最初の冒頭に至るのであった。

 

 

 

***

 

 

 

エレン。エウロギア(絶対悪)は【ダイダロス通り】を南に逃走!ほかの同胞達にも伝達を!絶対に逃がすなぁ!!」

 

「どうか、どうか許してくださいっ!! ワザとではないんですっ!? ただの事故だったんです!!」

 

「黙れっ!!! 絶対悪!!! 貴様は高貴な血が流れているリヴェリア様をっ!! セルディア様の末裔のリヴェリア様を……貴様は、穢したぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!??」

 

 

 エレンが逃げ込んだ場所は。【ダイダロス通り】と呼ばれている場所。

 

 以前、ベルとヘスティアが『怪物祭』の時に逃げ出した『シルバーバック』から追われている際に逃げ込んだ場所でもある。

 

 エレンがここまで逃げ込むまで、【アストレア・ファミリア】や【ガネーシャ・ファミリア】、【ロキ・ファミリア】などの助けがあったおかげで、何とか命拾いしているが、それでも【オラリオ】全てのエルフを相手にするには、どうしても手が足りなかった。

 

 その結果……。エレンは未だに保護が出来ておらず、【ダイダロス通り】に逃げ込んだ影響もあってか、アスフィもすぐにはエレンを見つけ出すことができなかった。

 

 エレンは持ち前の回復魔法で体力を全快状態を保ちながら、全速力で逃げていた。

 

 さらに、【ガネーシャ・ファミリア】の憲兵が持っていた大盾を拝借して【ウェスタ・ダイモーン(スキル)】の発動条件を満たして全アビリティを超向上させ、全力で逃げていた。

 

 それでも、Lv.1のエレンの『敏捷』では、精々時間稼ぎがいい所であり、『絶対悪(エレン)抹殺部隊』との距離は徐々に短くなっていた。

 

 

 

 そんな状況に、さらなる刺客がエレンの命を奪おうとしていた。

 

 

「ん? 黒妖精(ダークエルフ)……?」

 

 

 全速力で走っているエレンの遥か前方に立ちはだかる1人の妖精の姿をエレンの目は捉えていた。

 

 真夜中の闇に溶け込むような黒い衣装に身を包んでいる長剣を持った冒険者。

 

 その姿が一瞬ぼやけたように見えた瞬間……。エレンは自身の首に猛烈な殺気が向けられているのに気が付くと同時に、体を大きく仰け反らした。

 

 そして、エレンの首の位置があった建物の壁には大きな傷が出来ていた。その傷は何かに斬れたように綺麗な斬り痕だった。

 

 

「……驚いたぞ。我が剣を躱すか」

 

「あっぶねぇ!?」

 

 

 これはアルフィアの理不尽な暴力を浴び続けた結果に身についた『不意打ちじゃなかったら1発は避けることができる』謎特技である。

 

 それでも、間一髪躱すことができた感じであり、エレンの首には少しの斬り傷が出来ており、少量の血が流れていたが、エレンは回復魔法の炎で一瞬で癒していた。

 

 

「だが、次の攻撃は躱せまい」

 

「へっ?」

 

 

 黒妖精(ダークエルフ)の言葉に疑問に思ったエレンだったが、その直後、脇道から魔力の高まりを感じた。

 

 

「【永伐せよ、不滅の雷将】!!」

 

「ちょっとm───」

 

 

 紡がれるのは超短文詠唱の攻撃魔法。一点集中の威力に特化した魔法であり、ゼロ距離で放てばLv.5の冒険者でも肉体すら容易に焼き尽くす威力を持っている。

 

 

 

 その魔法の名は……。

 

 

「【ヴァリアン・ヒルド】!!」

 

 

 超至近距離で放たれた雷の『魔砲』がエレンの体全体を容易に包んだ。

 

 さらには、放たれた『魔砲』はその勢いのまま近くの建物を溶解させ、大きな風穴を作っていた。

 

 

「【黒妖の魔剣(ダインスレイブ)】に、【白妖の魔杖(ヒルドスレイブ)】……!?」

 

「【フレイヤ・ファミリア】……」

 

 

 先程まで絶対悪(エレン)を追いかけていた『絶対悪(エレン)抹殺部隊』の妖精(エルフ)達はその名を口にした。

 

 彼らは【フレイヤ・ファミリア】の『最強戦力』の一角……『白黒の騎士』と呼ばれている魔法剣士の2人組(コンビ)である。

 

 その内の1人『魔()剣士』と呼ばれているヘディン・セルランドの攻撃を至近距離で食らったのだ。

 

 ヘグニや、ヘディンの後にやってきた【フレイヤ・ファミリア】の妖精(エルフ)達もエレンは骨も残らず消し炭になっただろうと確信していた。

 

 

 

 だが、ヘディンは違った……。

 

 

 

「(ちっ! あのヒューマンは一体何でできている……?)」

 

 

 ヘディンは自身が放った『魔砲』の跡を見て苛立ちを覚えていた。

 

 その場所は黒い焼け跡のように黒焦げが出来ており、エレンが持っていた大盾はドロドロに溶けていた。

 

 しかし、そのドロドロになった大盾の残骸の少し先にあるマンホールの蓋がこじ開けられていた。

 

 まさか、ヘグニの攻撃を躱し、自身の『魔砲』の直撃を浴びてもなお、仕留めることができなかったエレンの認識をヘディンは改めざるを得なかった……。

 

 

「聞け、同胞達よ! あのエレン・エウロギア(絶対悪)はまだ生きている!!」

 

『!?』

 

「奴は【地下水路】に逃げ込んだ。これより包囲網を作る。ネズミ一匹……いや、ウサギ一匹見逃すなぁ!! 見逃せば、それは高貴な方の顔に泥を塗る行為だと思えっ!!!」

 

『はっ!』

 

 

 

***

 

 

 

「いや~、冗談なしに死ぬかと思った~」

 

 

 『いや何で生きてんだよ!?』とツッコミは無しである。

 

 何しろエレンはアルフィアの魔法をいくら浴びてもケロッとしているぐらい頑丈な精霊である。

 

 それでも【ウェスタ・ダイモーン(スキル)】の効果で発現した『魔防』が無かったら、ちょっとヤバかった。

 

 火傷などの傷もエレンの回復魔法で綺麗に治っているが、せっかく高いお金で買ったばかりのスーツはボロボロだった。

 

 エレンは少しでも距離を稼ぐべく【地下水路】を走っていたが……。

 

 

「おい、そっちにいたか?」

 

「ダメだ。こっちにはいなかった! まだここには来ていないようだ」

 

「(噓でしょう!?)」

 

 

 エレンの進んでいる先に魔石灯を持ったエルフの集団が現れたの見たエレンは、すぐに進路変更をした。

 

 いくら【地下水路】にいるのがバレたとは早すぎるでしょう!? 心の中でツッコミを入れながら全速力で【地下水路】を走った。

 

 しかし、いくら走ってもエレンの目の前に現れ続ける『絶対悪(エレン)抹殺部隊』のエルフ達。

 

 エレンはその度に進路変更を余儀なくされたが、この状況が詰将棋状態なのに気が付いた時には、既に手遅れ状態だった。

 

 

「(しまったぁぁぁぁぁぁぁ!? 囲まれたぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)」

 

 

 前からも後ろからも、魔石灯の光が迫ってくる。

 

 まさしく袋の鼠状態。エレンは何か手はないかと辺りを必死に探るが、()()()()()などといった都合のいいものが出てくるはずがなかった……。

 

 

「(あ~~~~~。これは、終わったな~~~~)───って!?、うわぁっ!?」

 

 

 絶対絶命の状況に、エレンは諦めの境地に立たされ、片手を壁にあては瞬間……。手を置いたレンガが奥に差し込まれると同時にエレンの前のレンガの壁が突然、隠し扉のように開き、隠し階段が現れた……。

 

 

「……噓でしょう」

 

 

 なぜ、こんな隠し階段があるのか分からないが、今も迫ってくるエルフ達の足音が聞こえたエレンはその隠し階段の中に急いで逃げこんだ。

 

 隠し扉は、エレンが入ると同時に閉じてしまい、壁の向こうではエルフ達の会話の声が聞こえていた。

 

 エレンは来た道を戻ることができなくなり、隠し階段の先を進むしかなかった。

 

 先程までの【地下水路】とは明らかに違う構造が異なる通路を進むエレン。

 

 その通路は大型のモンスターが余裕で通れそうなほど大きく、通路の先には3メートルを超える紅い宝玉が煌めく巨大な扉があった。

 

 

「……ナニコレ?」




ここまで読んでいただきありがとうございました。

原作では『宴』の時にベルの引き渡しを要求されますが、この作品ではエレンの騒動が原因でタイミングを逃しています。

なので、【アポロン・ファミリア】の宣戦布告は【ヘスティアファミリア】を襲撃するときになっています。

エレンが迷い込んだ場所は『クノッソスの扉』です。果たしてエレンは無事に生還できるでしょうか? 次回もお楽しみに!


エレン
 親のエレボスの『絶対悪』の名を不本意で引き継いでしまった半精霊(息子)
なお、気絶していたが、唇には微かに柔らかいものが当たったかのような感触と、甘い味が残っていたとのこと……。

ヘスティア
 逃げ出したエレンの後を追おうとしたが、アストレアとヘファイストスに『危険だからダメ!』と言われてベルと一緒に本拠(ホーム)の『廃教会』で待機しておくように言われてしまった。
なお、帰ってきた眷属が『息子』から『娘』になって超ご機嫌だった。

ベル
 エレンを助けようとしたが、ほかの女神たちから『万が一の場合はヘスティアが狙われる可能性があるから守ってあげなさい!』と言われて本拠(ホーム)でエレンの帰りを待っていた。
なお、エレンの変わった姿を見て固まっていた。

リヴェリア
 ファーストキス(初めて)を失った王族妖精(ハイエルフ)。(現在石化中)
エレンと唇が触れた瞬間、意識を失った(石化した)ため、ロキとヘスティアがやってくるまで、唇同士がくっついていた状態だった。

アイズ
 気絶(石化)したリヴェリアを回収して『黄昏の館』に戻り。フィン達に事情を知らせた。
なお、この時には【ロキ・ファミリア】のエルフ達は『絶対悪(エレン)狩り』で本拠(ホーム)を飛び足していた。

【オラリオ】中のエルフ達
 『殺すっ!!!
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