聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

34 / 40
いつも高評価、誤字脱字の報告、感想等ありがとうございます。

そのおかげさまでお気に入り数が2000を突破しましたー♪ マジ?

これからも、面白いも思ってもらえるような作品を投稿していこうと思っているので、応援よろしくお願いします!


34話 大番狂わせ(ジャイアント・キリング)

【ジェノス・アンジェラス】

 

 

 エレンが最後の詠唱を完了させ、上空には小さな青い鐘が罅割れていく光景が、冒険者達の表情を絶望へと染め上げていった。

 

 それこそ、()()()()()()()でも起きただけでも、気を失いそうなぐらいの精神状態───その時……。

 

 

「なんちゃって♪───あっ」

 

 

 エレンが指パッチンをしたと同時に、塔の1つが激しい大爆発が発生───それを【ジェノス・アンジェラス】の発動と勘違いをした冒険者達が、続々と口から泡を吹いて倒れていった……。

 

 因みに、【ジェノス・アンジェラス】はエレンが解除(キャンセル)したことにより、小さな青い鐘は、破滅の咆哮を上げることなく発散された……。

 

 

「う~ん。ハッタリ目的で発動したけど、ベルの砲撃と被っちゃうとは……」

 

 

 エレンの2度目の【ジェノス・アンジェラス】を()()()()()()()()()()()()

 

 いくら、アルフィア(本家)の【ジェノス・アンジェラス】に劣るとはいえ、馬鹿正直にぶっ放せば、死傷者が出かねない……。

 

 故に、【ジェノス・アンジェラス】を()()()()として利用し、少しでも向こう側の注意を引こうとしたが、まぁ結果オーライってやつである。

 

 

「ベルも予定通り、ヒュアキントスの所まで行けたみたいだね───なら」

 

 

 エレンが大暴れしている間に、ルアンに変装したリリが裏門からベル達を『要塞』の中に侵入させ、ベルとヒュアキントスが大将同士の一騎打ちの状態に持っていく───これが今回の作戦。

 

 ヴェルフと命の2人は、ベルが無傷の状態でヒュアキントスの所に行けるように護衛と増援の足止め。

 

 リリは、ベルの所に増援を向かわせないように、『要塞』の中で冒険者達を攪乱させる手筈になっている。

 

 ベルの大砲撃で、崩壊した塔の上から剣戟がぶつかる音が聞こえてくる。

 

 すると、ベルの大砲撃の音を聞きつけた他部隊が崩壊した塔に向かっているのを確認したエレンは、向上したLv.2の【ステイタス】で壁を駆け上がり、他部隊の前に立ち塞がった。

 

 

「なぁ!? き、貴様は……!」

 

 

 部隊の先頭を走っていた大斧を背負い立派な髭を生やしたドワーフの戦士が、エレンの登場に急制動をかけ、大斧を構える。

 

 他の団員達もエレンがやって来たことに驚きつつも各自の武器を抜き、臨戦態勢を取った。

 

 

「こんばんは♪ 今ベルの大事な戦いの真っ最中なんだ……。だから、邪魔しないでくれると助かるんだけど───どうかな?」

 

「ふざけるなぁ!! 貴様をさっさと倒して俺たちは団長の所に向かう! 【リトル・ルーキー】を討ち取りさえすれば、我々の勝利なんだ!」

 

 

 エレンがダメ元で交渉を行うが、槍を装備した青年の狼人(ウェアウルフ)が即決で拒否する。

 

 

「それに、貴方はもう戦う力は残っていないんでしょう? さっさと降伏したらどう?」

 

「?」

 

「とぼけないでッ!! 超長文詠唱を連続詠唱させるなんて、貴方の精神力(マインド)はもう底を尽きてもおかしくない状況───違う?」

 

 

 杖を装備しているヒューマンの女魔導士が、今のエレンには戦う力は残っていないと断言するが、エレンはその内容に首を傾げる。

 

 

「リッソスには劣るが、俺達は全員Lv.2だぁ!! それに、俺達は『ゴライアス』を討伐した精鋭部隊!! 貴様ができる事はもう何もない!」

 

「あ、貴方の戦う所をずっと見てたけど、精神力回復薬(マジック・ポーション)を服用していなかった。り、理由は知らないけど、貴方は精神力(マインド)を回復できていない───倒すなら、今しかない……」

 

 

 さらに、リッソスと同じエルフの双剣使いの男が『自分達は精鋭部隊だ!!』と豪語し、その後ろでは、弓を弾いている弓使い(アーチャー)小人(パルゥム)の少女が口にする。

 

 超長文詠唱とは、それだけ精神力(マインド)の消費が激しいもので、『魔道』のアビリティを発現させている魔導士でも安易に発動できる代物ではない。

 

 そして、エレンはここまでの戦いで、精神力回復薬(マジック・ポーション)()()()()()()()()()、体に月の光の粒子を纏っている状態だった。

 

 この現象には、『(映像)』を見ていた多くの魔導士達も疑問に思っていることであり、当然、都市最強魔導士のリヴェリアやその弟子のレフィーヤも例外ではなかった。

 

 

「ん~~~。なんか変な勘違いをしているようなので、1つだけ訂正させてもらってもいいですか?」

 

「……なんだ? 俺達が、何を勘違いをしていると言うのだ?」

 

 

 青年の狼人(ウェアウルフ)が、エレンに向けて装備している槍を突き刺し、『言ってみろ』と発言する。

 

「自分……【ジェノス・アンジェラス】を()()()()()()()()とか、一言も言っていないんですけど?」

 

『『『───はっ?』』』

 

 

 エレンの発言を受けた【アポロン・ファミリア】の精鋭部隊が一同、耳を疑った……。

 

 『どうせ、ハッタリだろうッ!』と青年の狼人(ウェアウルフ)はあざ笑っていたが、エレンの()()()の詠唱を耳にして、余裕の表情が一気に青ざめていった……。

 

 

「───【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪】」

 

『『『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!???』』』

 

 

 

***

 

 

 

「……ありえない」

 

「レフィーヤ、どうしたの?」

 

「だ、だって、……あのヒューマンは超長文詠唱を連続で詠唱しているんですよ? 『(映像)』を見る限りでは、精神力回復薬(マジック・ポーション)を使っている様子なんて全くありませんでしたよ!? 一体如何なっているんですかぁ!?」

 

 

 本拠(ホーム)で、エレンは本日3回目の【ジェノス・アンジェラス】を詠唱し始めたエレンの姿を見たレフィーヤは、そう言わざるを得なかった……。

 

 主神(ロキ)から『魔力バカ』と言われるほど高い魔力と大量の精神力(マインド)を持っているレフィーヤでも、エレンのような長文詠唱を超える超長文詠唱の連続行使は、精神力疲労(マインド・ダウン)を引き起こしてしまう。

 

 それなのに、Lv.2になり立てほやほやの冒険者が、なぜあそこまでの連続行使を可能にしているのか、理解できず目を回らせていた。

 

 

「リヴェリア、君はエレンのあの『絡繰り』についての考えを聞かせてくれないかい?」

 

「どうした、急に? フィンの事だから、大方見当はついているだろう……?」

 

「まぁね。でも、魔導士の君の意見を聞きたくなってね? 今の君はどのように考えているんだい?」

 

 

 『(映像)』を見ていたリヴェリアに、唐突にフィンが声をかけてくる。

 

 話の内容は、『超長文詠唱を連続行使させるエレンの絡繰りについて』であり、リヴェリアが『お前はもう見当がついているだろう』と呟くが、フィンは『是非とも、都市最強魔導士()の意見が聞いてみたいよ』と、わざとらしい笑みを浮かべていた。

 

 

「まぁ、いい。あの『絡繰り』は、恐らくは【スキル】による『精神力(マインド)の自動回復』によるものだろう。最初から纏っている月の光の粒子が恐らく【スキル】による産物なのだろう……」

 

「やはりか……しかし、超長文詠唱を連続行使を可能にするほどの回復力───可能なのか?」

 

「恐らく、厳しい条件があるハズだ……多分、ベートの【スキル】に似ているんじゃないかい?」

 

「あ”? 俺様が何だって?」

 

「【月下咆哮(ウールヴヘジン)】か? 確かのベートの【スキル】に似た性能なら、納得できる……か?」

 

 

 フィン、リヴェリア、ガレスの3人がそれぞれの考えを照らし合わせ、エレンの『絡繰り』について考察をし、幹部のベートと似たような【スキル】なんじゃないかとたどり着いていた。

 

 ベートの【月下咆哮(ウールヴヘジン)】は、狼人(ウェアウルフ)が発現させる『獣化』の【スキル】である。

 

 その内容は、月の光を浴びることで体に宿る獣性と力の解放であり、身体能力の向上、【全能力値(アビリティ)】に超高補正、状態異常の無効化など、非常に強力な反面、月の下でないと発動できないデメリットを抱えている。

 

 この【スキル】に似た内容なら、エレンの『絡繰り』にも納得できるが……『流石にやり過ぎなんじゃないか?』と思った3人だった。

 

 

 

***

 

 

 

「これが、【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の最後の効果なの? ヘスティア」

 

「あぁ、エレン君の【ランクアップ】と同時に判明したんだ。まぁ、『ダンジョン』じゃ使えない効果だから、活躍の機会はあまり無いと思うけどね……」

 

「それでも、とんでもない効果よ……発動条件は厳しいけど、発動さえしちゃえば()()()使()()()()()()じゃない……」

 

 

 【バベル】30階層にいるヘスティア達が、エレンの【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の最後の効果について話していた。

 

 【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の最後の効果はフィン達が予想しているような内容だったが、それでも書かれている効果内容にアストレア達は苦笑いを浮かべていた。

 

 【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の3つ目の効果。

 

 それは、『月の光を浴びている間、精神力(マインド)()()()()()()()()()()』である。

 

 

「「『精神力(マインド)の常時超回復状態を付与』って何?」」

 

 

 【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の3つ目の効果を見た、アストレアとヘファイストスの第一声がそれだった……。

 

 精神力(マインド)とは、基本的には精神力回復薬(マジック・ポーション)などの道具(アイテム)で回復を済ませるケースが殆どだ。

 

 一部例外に発展アビリティ『精癒』と呼ばれる精神力を自動回復させるものや、【スキル】の効果で回復できるケースもあるが、どれもレアケースであり、回復量も微々たるものだったりする。

 

 しかし、エレンの【月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の3つ目の効果は、上位精神力回復薬(ハイマジック・ポーション)以上の回復力があり、しかも自動回復……。

 

 【ジェノス・アンジェラス】のような超長文詠唱に必要な精神力(マインド)も、十数秒単位で回復することができる。

 

 これにより、エレンは()()()()で戦い続けることができ、さらに、回復魔法による持続的な戦闘も可能───不死に近い存在になっている。

 

 そんな変な進化を遂げたエレンは、【アポロン・ファミリア】の精鋭部隊と交戦を始めたようだった……。

 

 

 

***

 

 

 

「ふんッ!!」

 

 

 先陣を切ったドワーフの冒険者が、持っている大斧を思いっきりエレンに振り下ろした。

 

 エレンは、その攻撃を【精霊の才現(スピリット・アルフィア)】で模倣(コピー)した『平行詠唱』を用いて難なく回避し、ドワーフの冒険者の盾の突撃(シールドバッシュ)を叩き込もうと思った瞬間……。

 

 

「うわぁッ!?」

 

 

 槍を持った狼人(ウェアウルフ)の青年が、エレンの回避を想定したかのように、回避した場所に、ピンポイントで槍を突き刺してきた。

 

 これも、エレンは何とか体を強引に捻じることで、回避できたが僅かに脇腹を掠り負傷……さらに、強引に体を捻った影響で左足を痛めてしまった……。

 

 

「はぁぁぁッ!!」

 

「あ~、もうっ!! ちょっとは待ってくださいよ!!」

 

 

 エレンの訴えもガン無視し、エルフの双剣使いが両手にそれぞれ長さが異なる剣を装備して向かってきた。

 

 エレンは【ジェノス・アンジェラス】の詠唱を一時中断し、【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を装備して迎撃準備をしようとした瞬間……。

 

 

「───げぇっ!?」

 

 

 エルフの双剣使いの顔の真横から、1本の矢が飛来。

 

 あと少しで眉間に突き刺さろうとした所を、首を横にズラすことで回避。

 

 しかし、矢を回避した影響で双剣使いの攻撃を迎撃できず、体に無数の斬り傷を付けられてしまった。

 

 

「───にゃろッ!!」

 

 

 双剣による負傷を負っても、【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を振り回して攻撃をしかけるが、双剣使いは難なく距離を取りエレンの攻撃を難なく回避。

 

 エレンは大勢を立て直そうと距離を取ろうとした瞬間───魔力の気配を感じたエレンは感知した。

 

 

「これは───あの魔導士の!?」

 

 

 エレンから離れた場所で『詠唱』を行っている女魔導士が魔法円(マジックサークル)を展開してた。

 

 エレンは急いで『詠唱』の完成を阻止するべく、魔導士の所に向かおうとするが『詠唱』を行っている魔導士の後ろで、弓を弾いている弓使い(アーチャー)小人(パルゥム)によって行く手を阻まれていた……。

 

 狙いはどれも正確であり、しかも速射で次々と飛来してくる矢にエレンは、回避と防御で精一杯だった。

 

 

「これは───火薬ッ!?」

 

 

 エレンが飛来する1本の矢を叩き落すと、真っ黒い粉が空中に舞い上がった。

 

 エレンは臭いで、この真っ黒い粉の正体が火薬であると分かると、その場から離れようとした途端、2本の矢がエレンの両足に突き刺さりエレンの動きを止めた。

 

 そこに、魔導士の『詠唱』が完了。

 

 エレンにいた場所に炎の大火球が投下……さらに追い打ちとばかりに、空中に舞い上がった火薬に引火したことで大爆発が発生した。

 

 

「やったか?」

 

「───いえ、まだです……!」

 

 

 女魔導士の問いかけに、弓使い(アーチャー)小人(パルゥム)が信じられないものを見たかのように答えた。

 

 黒煙が次第に晴れると、ボロボロの状態のエレンの姿があらわになった……。

 

 

「チッ、『誘爆』して欲しかったけど、これでだいぶ削れたハズ───今度こそ!」

 

 

 魔導士の女が再び『詠唱』に入ると、同時にエレンを逃がさないように前衛職の冒険者達が、前と後ろを挟むように取り囲んでいた。

 

 

「(回復薬(ポーション)は───さっきの攻撃でダメになっちゃったか……)

 

 

 エレンは、周りを警戒しながら腰に身に着けているポーチに手を伸ばしたが、中に入っている回復アイテムがダメになっていることに気が付いた。

 

 いつのもエレンなら、自身の回復魔法で傷やダメージをすぐに癒すが、今のエレンは【ジェノス・アンジェラス】の詠唱を中断させ、待機状態を維持していた。

 

 この状態のエレンが回復魔法を使いたい場合は、『詠唱』途中の魔法(【ジェノス・アンジェラス】)を破棄する必要があるが、【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】に『装填』されている『魔法』は、今中断されている【ジェノス・アンジェラス】で最後であり、破棄した場合、残段数は『0』になる。

 

 何より、エレンを囲んでいる冒険者達が、一撃離脱(ヒット・アンド・アウェイ)に徹したり、今のボロボロのエレンに追撃を加えないのは、中断させている【ジェノス・アンジェラス】のお陰でもある……。

 

 

 

***

 

 

 

「あ、あの~。アイズさん。少々いいでしょうか?」

 

「ん? 何、レフィーヤ?」

 

「え~と、どうしてあのヒューマンを取り囲んでいる冒険者達は、攻撃を仕掛けないんでしょうか? 今が絶好の機会(チャンス)のように思えるんですけど……」

 

「ん~~~と、多分……」

 

 

 『(映像)』を見ていたレフィーヤが、エレンとその周りを囲んでいる冒険者達が、膠着状態になっている光景に疑問に思い、近くにいるアイズに質問していた。

 

 魔導士であるレフィーヤの見立てでは、今のエレンは【ジェノス・アンジェラス】の『詠唱』を中断させている状態……つまり、ほかの魔法を使えない状態。

 

 怪我も『(映像)』を見る限り相当酷い……その怪我を回復しない様子から道具の類もさっきの攻撃でダメになってしまったと予想。

 

 明らかに弱っている『今』がチャンスなのに、周りを囲んでいる冒険者達は攻撃を仕掛けてこない理由が魔導士のレフィーヤには分からず、近接戦闘が得意なアイズに尋ねることにした。

 

 なお、レフィーヤに聞かれたアイズは『先輩としてしっかりと答えてあげないと!』と、あれこれ考えるがどう伝えたらいいか内容が纏めることができず目を回していると、まさかの人物が答えてくれた。

 

 

「んなもん、あの腰抜け共が盾野郎に()()()()()からに決まってんだろうぉ」

 

「えっ? ビ、ビビってるって……何に、ですか……?」

 

「あ”ぁ そんなの()()()()()決まってんだろう」

 

「???」

 

 

 まさかの人物。ベートがレフィーヤの疑問に答えてくれたが、言葉足らずと言ってもいい内容に、レフィーヤの疑問はますます大きくなってしまった。

 

 

「(ビビってる?、怖い?、何が……?)」

 

 

 疑問がさらに大きくなってしまった影響で、アイズと同様に目が回ってしまったレフィーヤに気が付いた師のリヴェリアは『言葉足らずにも、程があるだろう』と愚痴を零しながら、ベートの発言に対して補足を始めた。

 

 

「レフィーヤ。部隊(パーティ)で、我々魔導士が求められているものは何だ?」

 

「はいっ!? え~と、求められているものの多くは『火力』です。どんな不利な状況でも、それを覆す程の『火力』があれば、部隊(パーティ)を危機から救うこともできます」

 

「そうだ。故に我々魔導士は、何が何でも『魔法』を完成させなければならない。それは分かるな?」

 

「は、はい!! もちろんです!!」

 

 

 リヴェリアの解説を聞きながら、レフィーヤは過去の出来事を思い出しながら、魔導士としての再認識を始めた。

 

 魔導士とは、発展アビリティ『魔道』を発現させた者を指すことが多く、『階層主』戦には、欠かせない存在でもある。

 

 故に魔導士に求められるものの多くは圧倒的な『火力』であり、いかに『火力』をさせられるかが魔導士には求められる。

 

 

「だが、我々魔導士は部隊(パーティ)の『火力』であると同時に『爆弾』でもある。これの意味が分かるか?」

 

「ば、『爆弾』ですか……? 確かに私達の扱う『魔力』は魔力操作を怠ると『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』が発生し、自分だけじゃなくて周りにいる仲間にも被害が───あっ!」

 

 

 リヴェリアのさらなる問いに、レフィーヤは自身の知識の中から回答を導き出していると、疑問が解消された。

 

 今のエレンは、【ジェノス・アンジェラス】という名の『魔法(爆弾)』を抱えた存在。

 

 『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』の爆発力は、『魔法』の規模や、注がれた『魔力』によって大きく差ができるが、上級冒険者を再起不能状態にできるほどの威力を秘めている。

 

 さらに、その爆発力は近くにいる敵味方関わらず、被害をもたらすので『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』の抑止は、魔導士にとっては()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「つ、つまり……あのヒューマンは……!?」

 

「うん、彼は『生きた爆弾』のようなものだね。 最初に放った【ジェノス・アンジェラス】の威力は、【アポロン・ファミリア】は嫌というほど知っているからね~。 向こうも下手な攻撃が出来ないのさ」

 

「あの若造も『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』の恐ろしさを分かったうえで『詠唱』しておるのだろう……。 あの部隊全員を倒せれば『魔法』を消せばいいし、負けても『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』で道連れにできる───ワシ等のような近距離で戦う者からして見れば、あの若造は()()()()()じゃわい……」

 

 

 レフィーヤが、ベートの言った内容が理解できると同時に、表情が真っ青になった。

 

 さらに、フィンとガレスが近接戦闘を行う冒険者として『エレンのような存在が最も厄介』と評価し、さらにレフィーヤの表情が青くなる。

 

 確かに『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』も使い方次第では『相打ち』に持っていくこともできるが、『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』で一番被害を受けるのは、()()()()

 

 外からの攻撃で受けるダメージとは異なり、『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』は内からダメージを負う感覚……いや、()()()()()()()()()()である。

 

 下手をすれば術者本人が命を落とす危険性すらある『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』を利用するエレンに、レフィーヤは『まともじゃない!?』と恐怖した……。

 

 

 

***

 

 

 

「(───さて、どうしようか……)」

 

 

 囲まれている状態のエレンは、周りを警戒しながらこの危機をどうやって脱するか考えていた。

 

 向こうも『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』による『自爆戦法』を警戒しているようで、今の所攻撃を仕掛けてくる気配はないが、何時までこの状況が続くかは分からない。

 

 『魔剣』を使えば何とかなりそうだが、威力が高すぎて下手をすれば死人が出る危険性があり、いくら『自爆戦法』」を使うエレンでも、人殺しは不本意だった。

 

 

「(───使()()())」

 

 

 ザルドやヘルメスが『極力……いや、絶対使うなぁ!!』と言っていたが、状況が状況。

 

 エレンは、【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を納刀させると、懐から()()()()()()を取り出した。

 

 

「(黒い指輪……? 魔道具(マジック・アイテム)かぁ!?)」

 

 

 ドワーフの冒険者が気が付いた時には、黒い指輪はエレンの左手の薬指にはめられていた。

 

 

「解析、開始……!」

 

 

 エレンが黒い指輪をはめると同時に、エレンが何かを呟くと、エレンの頭の真上に()()()()が出現し、エレンが攻撃の反撃が始まった。

 

 

 

***

 

 

 

「エレン・エウロギア選手! 突然、輪のようなものが現れたと思った途端、攻撃を仕掛けたぞー!! 今度は一体何を─────こ、今度は何だーーーっ!?」

 

 

 『(映像)』には、頭の真上に青い方陣が浮かび上がっている状態で戦っているエレンの姿が映し出されているが、いきなり、多くの男や男神達が発狂しだしていた……。

 

 

『『『あqwせdrftgyふじこlp』』』

 

「だ、誰かぁーーー!! 治療師(ヒーラー)呼んでぇ!!」

 

 

 実況席が置かれている広場は発狂した男や男神達が、訳のわからない言葉を発しながら次々と倒れていった。

 

 アーディはすぐに、【ディアンケヒト・ファミリア】に救助要請をするように、近くにいた団員に声をかけたが、【バベル】ではもっと騒ぎになっていた。

 

 

 

***

 

 

 

『『『あqwせdrftgyふじこlp』』』

 

『『『何で、ヘスティアの眷属(子ども)が『黒い指輪(あれ)』を持っているんだ!?』』』

 

 

 『(映像)』で『黒い指輪』を見て、男神達は発狂しては口から泡を吹いて倒れ、女神達は驚愕の声を上げていた。

 

 この女神達の中には、フレイヤも含まれており、口につけていた葡萄酒を近くにいたヘルメスに吹き出して、せき込んでいた。

 

 ヘルメスは大声で『ありがとうございます!』と感謝の言葉を口にし、近くにいた眷属(アスフィ)に肘打ちをもらい吹っ飛んでいた。

 

 そんなヘルメスに構う暇もなく、フレイヤは『黒い指輪』について、主神()であるヘスティアに問い詰めに行った……。

 

 

「ヘスティアッ!? 何で貴方の眷属(子ども)が『黒い指輪(あれ)』を持っているのよぉ!!」

 

「な、なんだよ、フレイヤ!? そんなに慌ててどうしたんだい……?」

 

「どうしたのも何もっ!? あの『黒い指輪』は【()()()()()よぉ!!」

 

「へぇっ?」

 

 

 フレイヤのまさかの内容に、近くにいる神友(しんゆう)のアストレアとヘファイストスの方を見るが、その2()もフレイヤと同じ反応だった。

 

 だが、ヘスティアは【ヘラ】の遺産について、()()()()()()()()()

 

 今この場で【ヘラ】の遺産に関わっていたのはヘルメスであり、アルフィアから『持ってこい』と脅され、泣く泣く【ギルド】の保管庫から持ち出された代物である。

 

 【ヘラ】の遺産───その名も【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】。

 

 【ヘラ・ファミリア】が『最凶』と呼ばれる前の大昔、【ヘラ】の眷属の1人が真っ白い『魔法石』と呼ばれる石を加工して、主神への贈り物として献上したものだったらしい。

 

 眷属からの贈り物だった白い指輪を【ヘラ】はとても大切に扱いっていたが、長い年月、自身の『神威』や浮気男の『血』を浴び続けた結果───真っ黒い指輪へと変貌しており、『特殊武装(スペリオルズ)』化したとされている。

 

 

 

 その特殊効果は───。

 

 

 

***

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()……ですか?」

 

「あぁ。それに、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】には、『杖』としての役目もあるから、彼の『魔法』の性能を底上げできる」

 

「しかも、あの若造は【スキル】の力で複数の発展アビリティを発現できる。本来、発展アビリティの『昇華』には、膨大な『経験値』が必要だが、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】は装備するだけで効果を発揮するからの……。全く、あの若造には驚かされてばかりじゃのう」

 

「……」

 

「それじゃあ団長。あの雄の頭の真上にある青い輪のようなものは……?」

 

「うん。少なくとも【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】の能力じゃない。恐らくは彼の【スキル】によるものだろう───多分、模倣(コピー)に関するね」

 

 

 エレンが【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を身に着けている姿を『(映像)』越しで見ていたフィンとガレスは引き攣った笑みを浮かべており、リヴェリアに至っては、なぜか不機嫌だった。

 

 『(映像)』では、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を装着させたエレンが頭の真上に青い方陣を出現させた状態で戦い続けており、違う『(映像)』には、ベルとヒュアキントスの一騎打ちをしている様子が映し出されていた。

 

 

 

***

 

 

 

「【禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】」

 

「『平行詠唱』……!?」

 

「こ、こいつッ!? あれだけのダメージだぞ!! なぜ動ける!?」

 

「しかも、最初のより『魔力』の量が尋常じゃねーぞッ!? と、止めろぉぉぉぉぉ!?」

 

 

 エレンが槍を装備した狼人(ウェアウルフ)の青年に攻撃を仕掛けたことをきっかけに、ドワーフとエルフの双剣使いが動き出した。

 

 今のエレンは、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を装備した影響で『魔導』のランクが『I』から『H』に上がっている。

 

 これは、発動する『魔法』の威力が底上げされることを意味し、エレンの足元に展開されている魔法円(マジック・サークル)は、最初より大きなものに変わっていた。

 

 さらに、エレンは模倣(コピー)した『平行詠唱』と女戦士(アルガナ)の近接技術を駆使し、槍使いの『解析』を開始していた。

 

 エレンが発現させた【スキル】───【精霊の才現(スピリット・アルフィア)】の模倣(コピー)には『解析』が必要。

 

 エレンが『解析』を発動すると、自身の頭の真上に青い法陣が出現すると同時に『解析』が始まり、時間経過で『解析』が完了すると同時に、青い法陣が回転することでエレンは『模倣(コピー)』した動きを『再現』できる。

 

 最初は、亀のような解析スピードだが、その間に『解析』したい『対象』の()()()()()や、()()()()()()などの条件で『解析』の時間が加速する。

 

 『解析』の時間は『対象』によって大きく異なるが、エレンよりレベルが上の存在を『解析』しようとすると、膨大な『解析時間』が掛かるのはアルフィアとの修行で確認できている。

 

 エレンは、『平行詠唱』を行いながら、槍使いの『解析』を始めていた。

 

 

「【神々の喇叭、精霊の竪琴、光の旋律、すなわち罪禍の烙印】」

 

「クソッ!? 詠唱を止めることができねぇ……!?」

 

「こっちは3人だぞ!! なぜ、攻撃が当たらない!?」

 

「それにその怪我でなぜ動けるッ!? 明らかに重傷だろうッ……!?」

 

 

 エレンは『平行詠唱』の『攻撃』を捨て、残りの『防御』『移動』『回避』の3つに集中し、『詠唱』を続けていた。

 

 今の負傷した状態では、碌なダメージを与えることができないと判断したエレンは『詠唱』の完成を目標に設定した。

 

 さらに、【ジェノス・アンジェラス】をいつ爆発するか分からない『爆弾』として利用し、相手をけん制───向こうは気が付いていないが、攻撃を当てられないのは『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』という『爆弾』を恐れるあまり攻撃の手が緩んでいるせいでもあった……。

 

 さらに、常に一対一の状況になるように立ち回りながら、女弓使いや女魔導士が誤射を恐れて攻撃できないように、エレンは動き回っていた。

 

 

「【箱庭に愛されし我が運命(いのち)よ砕け散れ。私は貴様(おまえ)を憎んでいる】」

 

 

 【ジェノス・アンジェラス】の『詠唱』が確実に進み、冒険者達の表情がどんどん青ざめていき、攻撃も比例して疎かになりつつあった……。

 

 

 

 さらに……。

 

 

 

 ガコンッ!

 

 

「な、なんだッ!? なんの音だ!?」

 

「どこから鳴りおった!?」

 

「あ、アイツだッ!! アイツの輪が()()()()()()()!!」

 

 

 【精霊の才現(スピリット・アルフィア)】の効果で出現した法陣が回転した音が鳴り響いた。

 

 しかし、これといって変わった様子はなかったが、エレンは薄っすらと笑みを浮かべており、槍使いの狼人(ウェアウルフ)へと急接近した。

 

 

「ッ!? こ、このぉーーーーッ!!」

 

 

 エレンの接近に驚きつつも槍の一撃を突き出すが、エレンは突き刺さる寸での所で回避し、狼人(ウェアウルフ)の槍を強引に掴んだ。

 

 

「お、おいっ!? はなs───がぁッ!!」

 

 

 エレンは『()』と呼ばれる(やいば)がある場所とは正反対のある『石突(いしづき)』と呼ばれる部分を上に向けて振り上げ、狼人(ウェアウルフ)の顎を打ち抜いた。

 

 顎を打ち抜けれた狼人(ウェアウルフ)はその場で倒れこみ、エレンが狼人(ウェアウルフ)が装備している()()()()()()()

 

 ドワーフとエルフの2人から距離が離れたことにより、誤射の心配がなくなったと判断した小人の女弓使いがエレンに向けて10本の

弓を射るが……。

 

 

「嘘ッ!? 全部撃ち落としたぁぁぁ!?」

 

「アイツっ!! 槍を扱えるのぉ!?」

 

 

 エレンは奪い取った槍を高速で回転させることで、飛来してきた矢を全て叩き落すと同時に、今度はエルフの双剣使いに向けて()()()()を仕掛けた。

 

 エレンは槍のリーチを生かして、相手の双剣の攻撃範囲の外から攻撃を仕掛けた。

 

 エルフの双剣使いは、何とか双剣を駆使し攻撃を捌くことができたが、エレンは槍の猛烈な突きの連続攻撃を仕掛けた。

 

 

「(こ、これは、ウェアウルフ(あいつ)の動きッ───ガァッ!?)」

 

 

 エレンはさっきの狼人(ウェアウルフ)の『模倣(コピー)』した動きを駆使して槍の猛攻を仕掛け、ドワーフの冒険者の攻撃にもしっかりと対応していた。

 

 エレンは、『模倣(コピー)』した狼人(ウェアウルフ)の槍使いの動きを駆使して、槍を叩きつけてからの回し蹴りを決め、エルフの双剣使いを吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされたエルフが壁に激突して意識を失うと同時に、ドワーフの冒険者との一騎打ちになったエレン。

 

 相手は全身を全身型鎧(フルプレート)で防御しており、槍の攻撃が全く通用せず、寧ろ奪った槍がダメになってしまった……。

 

 

「……」

 

「ガハハッ! 槍がダメになったか?一応言っておくが、儂はさっきの奴らより頑丈じゃぞ?」

 

 

 ドワーフの冒険者が身に着けている全身型鎧(フルプレート)を自慢するように見せびらかしながら、エレンを挑発していた。

 

 ドワーフはほかの種族に比べると、『力』と『耐久』に優れた種族。

 

 そこに、性能が高い全身型鎧(フルプレート)が加わっている影響で、【アポロン・ファミリア】随一の耐久力を誇っていると自慢すると、エレンは()()()()()()()()()()

 

 

「……随分と耐久力に自信があるようですねぇ───なら!」

 

「むぅ!?」

 

 

 エレンはダメになった槍をドワーフに向けて投擲し、ドワーフは『フンッ!』と、全身型鎧(フルプレート)で防御されている腕で弾き飛ばしたが、目の前にいたエレンが姿を消していた。

 

 

「あやつ、一体どこに───ぬぅッ!?」

 

 

 エレンを見つけ出そうと、被っている甲冑のバイザーから辺りを見渡していると、背後から誰かに羽交い絞めにされた。

 

 

「【代償はここに。罪の証を持って万物を滅す】」

 

「ま、まさかお主……!? ()()をやるつもりかぁ!!??」

 

 

 背後から聞こえる『詠唱』と尋常じゃない魔力が暴走する気配を感じたドワーフの表情が一気の青ざめた。

 

 

「我慢比べをしましょう?」

 

「やめろぉおおおおおおおおおッッ!!!」

 

 

 ドワーフは装備していた雷の魔剣をゼロ距離でエレンに向けて放つが、魔力の暴走は止まるどころかさらに加速していった……。

 

 

「【哭け、聖鐘楼】───ッッ!!」

 

 

 エレンが最後の詠唱文を読み上げると同時に、エレンの体から暴走した魔力が輝きを放ち、大爆発を巻き起こした。

 

 さらに、エレンの大爆発と連動するように、ベルが戦っていたヒュアキントスが放った『アロ・ゼヒュロス』が爆散鍵(スペルキー)によって、爆散し、高威力の爆裂弾がベルを襲った……。

 

 2つの大爆炎が『(映像)』に映し出されており、2人の眷属が大爆炎に巻き込まれる姿を見たヘスティアは大きな悲鳴を上げた。

 

 

「嘘……? ほ、本当に自爆した……?」

 

「で、でもッ!? 今度こそ倒れたハズですッ!!」

 

 

 遠くからエレンの『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』を見ていたヒューマンの女魔導士と小人の女弓使いが、背筋をゾッとさせながら呟いていた。

 

 Lv.2の冒険者1人相手に精鋭部隊の前衛3人がやられる異常事態だが、まだ『戦争遊戯』は終わっていない。

 

 魔導士の女は念のために詠唱を終えて待機状態にしている魔法を維持した状態で、ヒュアキントスの所に向かおうとすると、仲間の様子がおかしいことに気が付いた。

 

 

「ねぇ、どうしたの?」

 

「あ、あぁぁ!? あれはッ!?」

 

 

 震える声で指を差す方向を見ると、『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』で発生した()()()()()()()()()()姿()があった。

 

 土煙が風によって次第に薄れていくと同時に人影の状態が判明する。

 

 最初は、『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』に巻き込まれた仲間のドワーフだと思った2人だったが、その人影が()()()()()()()()()()を目にすると、2人の表情は一気に恐怖に包まれた。

 

 

「そんな化け物を見るような顔はやめてくれます? 結構傷つくんですけど……」

 

 

 土煙の中から現れたのは、回復魔法の青い炎を纏ったエレンだった。

 

 度重なる攻撃や魔剣による魔法攻撃……さらには、『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』による自爆攻撃の影響で、身に着けている服がボロボロの状態だが、エレンは()()()()()

 

 このエレンの姿を見てすっかり恐怖した2人は、すかさずエレンに攻撃を加えた。

 

 魔導士の女は待機状態にしていた魔法を発動させようと杖を握り、弓使いの小人は速射でエレンを狙い撃つが、既に慣れてしまったエレンに躱されてしまった。

 

 エレンは『お返しだ!』と言わんばかりに飛来してきた矢を一本を掴み取ると、納刀していた【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を【月女神の大弓(タウロポロス)】に変形させると、掴み取った矢をかけ、()()()()()

 

「えっ?───きゃぁ!?」

 

 

 エレンが飛ばした矢は魔法を発動させようとした魔導士の杖に命中し、まさか撃ち返してくると予想していなかった魔導士は、腰を抜かしその場に倒れこんでしまった。

 

 

「「あっ」」

 

 

 なお、そのせいで完成直後の魔法は行き場を失ってしまい自爆……『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』程ではないが、魔力による爆発が巻き起こされた。

 

 

「ふぅー。取り合えずここは終わったかな? ベルの所に応援は───いらないみたいだね」

 

 

 【アポロン・ファミリア】の精鋭部隊との決着をつけたエレンは、ベルの増援に向かおうと思った瞬間───『戦争遊戯』の終了の鐘が鳴り響いた。

 

 勝敗は大将のヒュアキントスを討ち取り、【ヘスティア・ファミリア】の勝利。

 

 圧倒的戦力差を覆す大番狂わせ(ジャイアント・キリング)に、戦いを見ていた【オラリオ】では、大きな歓声が広がっていた。

 

 

 

***

 

 

 

「ホームを含めた全財産は没収、【ファミリア】も解散───そして主神である君は永久追放、二度と【オラリオ】の地を踏むなァ──────ッッ!!」

 

「ひぎゃああああああああああああああああああっっ!?」

 

 

 【バベル】30階層では、【ヘスティア・ファミリア】が勝利を収めたことで、ヘスティアがアポロンに容赦のない罰則を叩きつけていた。

 

 自分が負けると思ってもいなかったアポロンが調子に乗って言ったことであり、ヘスティアは容赦なく自分の眷属の貞操(すべて)を付け狙う危険神物(じんぶつ)の排除に乗り出していた。

 

 

「ふぅ~、ボクはまだまだ物足りない感じだけど、ここから先は君に任せるよ───()()()()()

 

「へっ?」

 

 

 腰を抜かしたアポロンを見下ろしていたヘスティアだったが、突然、アポロンの後ろの方に視線を向けて、とある女神の名を口にした。

 

  アポロンが恐る恐る後ろを振り向くと、エレンと同じ青い長髪を持った女神がアポロンを見下ろしていた。

 

 さらに、その表情は笑っているように見えるが、その女神からはとても禍々しいオーラが溢れんばかりに漏れ出しており、アポロンの顔が絶望に染まっていった……。

 

 

「ア、アルテミスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!??」

 

「私の『オリオン』と『息子』が随分世話になったそうじゃないか───()()()()

 

「アホロン!?」

 

 

 アルテミスが怒りに満ちた笑みを浮かべながらアポロンに詰め寄り、アポロンは腰を抜かした状態で何とか後退するが、ジワジワと距離を詰められていった。

 

 なお、周囲のいた神々の反応は『アルテミスゥ!?』とか『オリオンって誰?』とか『息子って誰だ!?』とか『【天界】に送還されたんじゃないのぉ!?』など様々な反応があり、ロキやフレイヤもアルテミスを亡霊を見ているかのよう驚いていた。

 

 しかし、そんな周りの反応なんてお構いなしに、アルテミスはアポロンの顔を鷲掴みにし、あらん限りの力を込めた。

 

 

「アダダダダダダダダダダッッ!!!!」

 

「『オリオン』と『息子』は私にとって大切な存在だ。そんな子たちの手を出したんだ。覚悟はできてるんだろうなぁ……?」

 

 

 武神としての側面を持っているアルテミスの拘束から逃れられるハズもなく、アポロンはアルテミスの手によってどこかに連れていかれアポロンはほかの神々に助けを求めたが……。

 

 

「アホロン……お前はいい奴だったよ、多分」

 

「元気に逝ってこい、アホロン!」

 

「お前のことは忘れないぜ、アホロン!」

 

 

 発狂から回復した男神達から、両手で合掌され、見送られる始末……。

 

 アルテミスによって引きずられるアポロンは、暗闇の通路へと消えていき、男神達はアホロンの最後に敬礼をした。

 

 そして、この日の夜は【オラリオ】の光が消えることのない熱い夜となり、その熱量は数日間は続いたらしい……。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

エレンの【精霊の才現(スピリット・アルフィア)】の『解析』には【呪術廻戦】の『魔虚羅(まこら)』の要素を取り入らせてもらっています。

法陣が回転すると、それが『解析』が一段落終了した合図であり、その時点で『模倣(コピー)』した動きを『再現』できる仕組みになっています。

なお、この『解析』には()()()()()()、法陣が回転するほど『模倣(コピー)』の『再現度』は高くなりますが、その分『解析』には時間がかかります。

なお、アルフィアの『解析』には、法陣1回の回転に2時間かかっています。(そのせいで、開始時刻が夜まで伸びています)


月女神の加護(アルテミス・ファヴォール)】の3つ目の効果はベートの【スキル】と同じで、『ダンジョン』内では発揮できず、月の光を浴びている間のみの条件ですが、ぶっ壊れの内容です。


婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】は今作のオリジナルであり、『ギメル』はラテン語で『双子』を意味しており、1つに重なる特殊な指輪です。

主に、『永遠の愛』と言う意味合いで使われていますが、エレンが身に着けている【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】は()()()()()であり、もう1つは()()()()()()()です。


エレン
 色々と派手に暴れたり、ヤバイ物を身に着けたり、自爆したりと大暴れした影響で2つ名ではないが【怖いもの知らず(ドレッドノート)】と呼ばれるようになった。

アルテミス
 『オリオン(ベル)』や『息子(エレン)』に手を出したアポロン(アホロン)をこれでもかとボコボコにしてアルフィアに明け渡した。

アルフィア
 ヘルメスに【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を持ってこいと脅した人物。なお、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】の片方が無くなっていると聞いてヘルメスをボコっている。
 
 なお、アルテミスから送られたアポロン(アホロン)をさらにボコボコにし、息子(ベル)に二度と近づけれないように【ヘラ】の所に着払いで発送した。

アポロン(アホロン)
 敬礼!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。