聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか 作:フェイト・
【ヘスティア・ファミリア】が【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』に勝利した日から数日。
【オラリオ】は『戦争遊戯』が終わったにも関わらず、熱狂に包まれた状態であり、未だ居酒屋で酒を飲んでは騒いでいる者や、昨夜の戦いを見て火が付いた冒険者達が続々と『ダンジョン』に潜っていったりした。
さらに、『戦争遊戯』開始前にラーファル王が宣言した通り、エレンがリヴェリアに対する罪は帳消しとなり、エレンがエルフ達に命を狙われる心配は一応なくなった……。
そして、そのラーファル王はというと……。
「……」
「……」
喧嘩別れをした
場所は、『ウィーシェ』という喫茶店で中にはラーファル王とリヴェリアの貸し切り状態。
外にはラーファル王の護衛のエルフと、リヴェリアの護衛でアリシアを筆頭にした
「……変わったなぁ、リヴェリア」
「そうか?我々は
「そう言う話じゃない。私が言っているのは『中身』のことだ」
「中身?」
「あぁ、今のお前は妻にとても似ている……。男勝りな部分は変わっていないが、母性を得たというか……『森』にいた時に比べると、今のお前の方がいいと思っている私がいる───とても複雑な気持ちだがなぁ」
「……私も父上が『森』から出てきたと聞いた時はとても驚いた。父上は誰よりも『外の世界』を怖がっていた、あの父上が……」
「……あぁ、だが同時に興味もあった。私のお前と同じく『外の世界』に出てみたいと思っていたが……まさか、このような形になるとはなぁ」
互いに向かい合った状態で、他愛もない親子話をする父親と娘。
『森』にいた時は、『国王』と『王女』の関係に2人だったが、今この瞬間だけは、ただの親子の関係にあった……。
そこからは、互いの離れていた間に起こった様々な話をする親子2人。
約20年ぶりの親子の会話につい話が弾んでしまい、気が付いた時には、すっかり約束の時間が迫っていた。
「むぅ? もうこんな時間になってしまったか?」
「……早いものだなぁ。もう少し滞在していてもよかっただろうに……」
「そうもいかん。私としたことが、衝動に駆られて『森』を飛び出してきた身だ。雑事を放り出すことはできん」
ラーファル王は、今日にでも【オラリオ】から【アルヴの王森】に戻ることになっている。
互いに立場の関係で、出発するこの瞬間にしか時間を作れなかったが、お互いにとって有意義な時間を過ごすことができた。
「所で、リヴェリア」
「ん? 何だ、父上?」
「
「───ッ!? ゴホゴホッ!?」
もう話すことはないと思っていたリヴェリアだったが、まさかの『爆弾発言』に飲んでいたアルヴの聖水が変な所に入り込みせき込んでしまった……。
「
「な、何を言い出すんだ、父上!?
先ほどまで、優雅にアルヴの聖水を飲んでいたリヴェリアだったが、『結婚』のワードを聞いた途端、その表情が一変した。
顔は真っ赤になり、あたふたする
「まぁよい。私は【アルヴの王森】に戻るが、たまには帰ってこい、リヴェリア」
「……最後に1ついいか、父上」
「なんだ?」
「エレン・エウロギア───彼は何者だ?」
「……」
「私は父上がやって来たと聞いた時は、正直、彼の命は父上の手によって断罪されるものだと思っていた……。だが、実際は、断罪処か彼を助けるような行動を父上はとった───なぜ?」
「事情が変わった───それだけだ。もし、あの者の正体が知りたければ尋ねてみるがいい……私からはこれぐらいしか話せない」
「……」
ラーファル王はそう言い残すと、席から立ち上がり『ウィーシェ』を後にした……。
リヴェリアも少し経ってから『ウィーシェ』を後にするが、彼女の頭の中には
「(結婚……結婚かぁ……)」
リヴェリアは
しかし、冒険者とは様々は職の中で、
理由は様々あるが、一番の理由は
『ダンジョン』という名の危険地帯に自ら潜り、
さらに、リヴェリアのいる【ロキ・ファミリア】は『ダンジョン』探索に力を入れている派閥であり、彼女は副団長を任されるほどの実力を持っている。
ゆえに、常に前線などの危険地帯に身を置く存在でもあり、考え方によっては
そんな危険地帯に身を置く存在と結婚したいなどと考えるものは極少数であり、仮に結婚している者がいたとしても、片割れを失っている者がとても多いのが現実だ。
あとは、冒険者は基本的に【ファミリア】に所属している者が殆どであり、派閥内の恋愛ならまだしも他派閥との恋愛は、派閥同士の相性や主神同士の関係などが絡まり、基本的には無いに等しい。
これらの要因により、冒険者の結婚率はとても低く、結婚する者の多くは、結婚と同時に冒険者を引退するのが一般的である。
「あの、リヴェリア様……?」
「……ん?あ、あぁ、どうした、アリシア?」
「いえ、何だか難しそうな顔をしていらしていたので、どうしたのかと……」
「あぁ、すまない。少し考え事をしていた」
団員から心配の声をかけられるが、リヴェリアは『問題ない』と返事を返すが、彼女の心には
「(どうして私は、
リヴェリアは、あの『戦争遊戯』が終わったからというもの、この謎の苛立ちに悩まされていた。
しかも、この苛立ちの矛先は『戦争遊戯』で大活躍したエレンであった。
彼は、18階層の時に『ポイズン・ウィルミス』の時や、『ベヒーモス・オルタナティブ』の時に自分達を助けてくれた恩人というべき存在でもあるにも関わらず、
そして、このような感情が芽生えた原因も分かっているからこそ、尚更、彼女を困惑させる原因にもなっていた……。
「(エレンが【
リヴェリアは【
【
考えようによっては婚姻を司る【ヘラ・ファミリア】らしい特徴であり、エレンがその効果を発揮させるため、左薬指に指輪をはめるのは何もおかしいことではないのに、なぜかその行為が『気に食わない』と感じているリヴェリア。
「(全く、私はどうしてしまったんだ……!?)」
今までの人生で感じたことのない感情に振り回されるリヴェリア。
まるで、【ファミリア】に入ったばかりの頃のアイズに振り回されているようで、違うような感覚。
そんな妖精の姫に『未知』の感情を植え付けた罪深き
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
「死ねオラッ!!」
「貴様が死ねぇ!!」
「……」
【フレイヤ・ファミリア】
***
1日前……。
「え~と、何かな? この羊用紙の山は……?」
「全部エウロギア氏宛の
『『『うわぁ~』』』
場所は【ギルド】本部の個室。
ベル達の担当アドバイザーのエイナから『大事な話があるから【ギルド】本部に来てほしい』との連絡があったので、ヴェルフ達の正式な移籍手続きや、ベルの
余談だが、エイナは『
裏で色々と手を回してくれたとか、例の手配書は
少しでもエレンがほかの同胞達に見つからないようにと、本人とはかけ離れた容姿に仕上がるように何度も手を加えた産物だった。
話は逸れてしまったが、エイナに案内されたエレン達が最初に目にしたのは、大量の羊用紙の山だった……。
最初こそは何の冗談だと思ったエレン達だったが、羊用紙の山からそれぞれ1枚ずつ取り出して中身を確認すると……。
『『『【出張
『『『あ~~~』』』
エレンに対する
最初は、【ギルド】の上層部の無茶ぶりに対する処置であり、その時のエレンの知名度がなかったことと、
そこから【出張
「殆どが『ダンジョン』探索での
「これは、椿の奴じゃねぇか!? え~と、試し斬りの為の荷物持ち兼
「これは、【ディアンケヒト・ファミリア】からの
「え~と、『えっと、勝負、しよ?』───なんだろう、既視感が……」
リリ、ヴェルフ、命の3名がそれぞれ手にした羊用紙に書かれている
羊用紙の山の殆どが、
あと、ベルが読んでいるものは『
「う~ん、どうしようか?」
「とりあえず、何件か受けましょうか、ヘスティア様?」
「いいのかい、エレン君? 『
「まぁ、流石に内容は絞らせてもらいますけどね。この量の依頼は流石に……」
「では、内容はどうしましょうか……?」
「……どんなのがいいと思いますか?」
「リリは報酬が一番いいのがよろしいかと。【ヘスティア・ファミリア】も団員や新しい
取り合えず、数を絞って依頼を受けようと思ったエレンだったが、どのような内容で絞ろうかと悩んでいると、リリが『報酬が一番高いものがいいかと』と提案してくれた。
今回の『
さらに、命の要望の『風呂』の導入、ヴェルフは『作業用の炉』を、ベルは生み母親が愛した場所『廃教会』を買い取った。
エレンもヴェルフと似たような要望を出しており、リリは前にいた【ファミリア】の脱退金に使ったりするなどして、賠償金が殆ど残っていない状態になっていた。
ゆえに貯蓄が
この危機を脱するべく、報酬がいい
しかし、どれもこれも良い報酬の
一回の同行に数十万ヴァリスの報酬のものが殆どであり、中には
だが、中には謎の挑戦状?の
「あっ! ありました! 報酬がいい
エイナが数ある
『『『
「これです!! この
「う、うん───ん? でもこの
ベル達は、巨額な
「あ、あの~、神ヘスティア。 少しよろしいでしょうか?」
「ん? 何だい、アドバイザー君?」
「神ヘスティアは
「フレイヤ? まぁ、フレイヤとは仲がいいとは言えない関係だけど……なんでフレイヤの名前が出てくるんだい?」
「いえ、その~。さっきの
『『『へっ』』』
「待つんだぁーーー!! サポーター君! その
ベル達は
ヘスティアがリリを捕まえた時には、既に手続きが完了した後であり、リリはいい笑顔で『手続き完了しました♪ヘスティア様!』と満面の笑みで報告し、ヘスティアは『アホォーーー!』と言いながらリリの頭に頭突きを食らわせていた。
ヘスティアは急いでリリが出した
リリもいきなりヘスティアから頭突きをもらったことにとても怒っていたが、ベルからさっきの
「で、でも
「甘い!! 甘いよベル君ッ!! なんたってあのフレイヤだぞ!! いくらエレン君が『魅了』に対して耐性を持っていたとしても、相手は美の女神なんだぞ!! 気が付いた時にはペロッと食べられているに決まってるー!!」
「何か食べられる前提で話をしてますけど、フレイヤ様って普段【バベル】の頂上にいるんじゃ……」
「まぁ、そうなんだけど……この
「問題、ですか……?」
「この
『『『……』』』
「まぁ、行くたびに報酬は出るみたいだけど……」
『『『……』』』
エレン……出張
***
次の日
「♪~~~」
「……あの、フレイヤ様?」
「あら、何かしら?」
「なぜ、自分の隣に座っているんですか?」
「あら、この馬車は私の馬車よ? 私がどこに座ってもいいでしょう?」
「それなら、向かい側の方に移動しますね」
エレンがそう言い残すと、向かい側の座席に座ると同時に、フレイヤも向かい側の座席に移動してエレンの隣に移動した。
「……」
「♪~~~」
ずっとこのような、いたちごっこの状態が続きエレンはとうとう諦めることにした……。
因みに、今日は昨日受けた
「……今更ですけど、良かったんですか? 【バベル】の方に向かわなくて……」
「いいのよ。今日は『お休み』の日だし、こっちの方が面白そうだったし♪」
「は、はぁ……」
エレンの問いにフレイヤは『問題ないわ♪』と答えるや否や、エレンの体に寄りかかるように、体を密着させてきた。
「ねぇ、エレン。貴方は何者なのかしら?」
「……」
「私の『魅了』にここまで抗えるなんて、処女神ぐらいよ?よかったら教えてくれないかしら?───なんなら、今日の『夜』にでも……どうかしら?」
フレイヤはエレンの体に密着させた状態で、片手をエレンの顔を添え、唇が触れそうなぐらいに顔を近づけ、抑えていた『魅了』の力を開放してはエレンを誘惑していた。
『美の女神』は力を抑えていようが、他者を『魅了』してしまう存在。
それこそ、この狭い馬車の中に二人っきりの状態になっただけでも『魅了』に堕とされてしまうなのだが、エレンは全くそのような事にはなっていなかった……と言うか、この状態でもエレンが『魅了』に堕ちた気配は全くなかった。
さらに、『美の女神』
「あら、残念……」
エレンは何も言わず、ただフレイヤからぷいっと視線を逸らして否定の意を示した。
エレンは【
元々、処女神2柱の『
だが……。
「(いつまでこの状況が続くんだーーー!?)」
エレンは処女神の『
フレイヤはエレンの体に密着した状態であり、それによりエレンの体には
さらに、このようなスキンシップには全く耐性を持っていないエレンは顔が赤くなっており、フレイヤの問いかけや『夜』のお誘いの拒否も兼ねて顔を逸らしたが、フレイヤにはバレバレだった。
「ふふっ、やっぱり『魅了』にとても強い耐性を持っているみたいね。体質?それとも【スキル】───もしくは」
フレイヤはエレンの顔を片手で触れながら、もう片方の手でエレンの左手に触れ、薬指につけている『指輪』に触れていた。
「この『指輪』のお陰かしら?」
「……」
フレイヤがまたしてもエレンに尋ねるが、エレンは先程と同じように無言で顔を背ける。
『下界』の住人は、神々の前では『嘘』が見破られてしまい、『
そんな神々に唯一抵抗できる手段が『黙秘』であり、エレンがやっている行為がそれにあたっていた。
しかし、その『黙秘』も神々の前では悪あがきでしかなく、他にも方法は色々とある。
例えば、エレンの目の前にいる
他にも『魅了』を使わなくても今まで多くの男と体を重ねてきた経験を生かして、エレンを快楽に溺れさせ、口を割らせることもでき、今フレイヤがやっている行為がまさにそれにあたる。
まぁ、今フレイヤがやっている行為は、誘惑に必死に抗っているエレンの反応が面白くて、ついからかっているだけの『お遊び』だが。
一方のエレンは、相手が都市最強派閥の主神であり美の女神でもあるフレイヤに、下手な抵抗をしたせいで傷をつけることを恐れて何も出来ない状態だった。
抵抗で傷の1つでもつければ、【ヘスティア・ファミリア】は【フレイヤ・ファミリア】に消される。
我慢できずフレイヤを襲えば、【ヘスティア・ファミリア】は【フレイヤ・ファミリア】に消滅させられる。
この2つの可能性を恐れたエレンは、何の警戒心を抱かずにフレイヤの馬車に乗り込んだ過去の自身を呪いながら、無抵抗にされるがままの状態を必死に守っていた。
なお、フレイヤがワザと馬車を遅く走らせるように馬を引いている
「ん~~~♪とても楽しい時間だったわぁ~~~♪」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
ようやく目的地に着いたフレイヤ一行……。
フレイヤは、1時間たっぷりと弄びエレンの色んな表情を見ることができ大変満足しており、その影響か肌が異様にツヤツヤの状態になっていた。
一方のエレンは、フレイヤに1時間たっぴり弄ばれた影響で顔が真っ赤のになり、息が絶えない状態になっていた。
そして、この光景を目にした門番をしていたフレイヤの眷属達は、エレンが敬愛する主神に手を出した不届き者であると判断。
エレンの命を狩るために動き出そうとした瞬間、
「というか、何で都市最強と言われている人が馬車を操縦していたんですか……?」
「……フレイヤ様の命令だ。それ以外に理由は必要か?」
「まじかよ」
何を隠そう、フレイヤとエレンが乗っていた馬車の手綱を握っていた人物は【フレイヤ・ファミリア】の団長であり、都市最強の名を持つ男、オッタルだったのである。
そんな人物が馬車を操縦している姿を見たエレンは最初は『ただの見間違いかな?』と思っていたが、まさかの主神命令だったと聞いて『絶対イジメられているだろう、この人』と思った。
まだ、
「……どうしました、フレイヤ様?」
「ねぇ、エレン」
「はい」
「私を中まで運んでくれないかしら?」
「???」
「あ♪ せっかくだから『お姫様抱っこ』でお願いね♪」
「??????」
なんかとんでもない事を言いやがったぞ、この女神。
しかも、変なオプション付きの内容にエレンは聞こえなかったフリをしてやり過ごそうとすると、しくしくとすすり泣くような声が聞こえてきた……。
「そう……。そうやって用済みになった女を捨てているのねぇ。私みたいに……」
「何ッ根も葉もない事を言っているんですかッ!!」
「馬車の中では、あんなに私を弄んでいたのに……酷いわぁ」
「逆ですよねぇ? 馬車の中で弄ばれたのは自分で───ちょっと待ってくださいっ!? 違うんですぅ!! 誤解なんですぅ!?」
誰がどう見てもウソ泣きと分かる演技にも関わらず、真に受けたフレイヤの眷属達が装備している武器を抜刀し始めていた。
何なら、その馬車を操縦していたオッタルまでの混ざっており、『貴方はさっきの発言が嘘だって知ってますよねぇ!?』とエレンは思っていることをそのまま口に出してしまっていた。
最終的には、フレイヤの『
「……失礼します、フレイヤ様」
「えぇ、お願いね♪」
何が『お願いね♪』なのだろうかと思いながら、エレンはフレイヤの要望通りに『お姫様抱っこ』を実行。
これによって門番をしていたフレイヤの眷属達の殺気は物凄いものになっていたが、エレンは何も考えないことにした。(だって頭痛が酷くなるだけだし)
「ねぇ、エレン?」
「何でしょうか?」
「貴方、このお姫様抱っこ、とても手慣れたような感じがするのだけど……?」
「……」
「フフッ、もしかしてヘスティアにしてあげたことがあるのかしら?」
「……」
「図星ね」
「……何のことでしょうか?」
『何故ばれた?』と思わず口に出してしまいそうになるが、グッと堪えた。
うちの
なので、強制的に起こすためにヘスティアをベットからリビングに移動させるため、ベルと交代でお姫様抱っこで移動させていたので、エレンは結構手馴れていた。
その経験がこんな形で生かされたことに、とても複雑な思いをしながら、生と死が同居する平原───『
ここまで読んでいただきありがとうございました。
エレン【出張
エレン
リヴェリア
今まで無縁だった感情に振り回されている妖精の姫。喧嘩別れをした父親とは、仲直りはできた。
フレイヤ
エレンの反応が面白くて色々とちょっかいをかけた女神。あと、エレンに