聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

37 / 40
お待たせしました! 昨日出した作品の残り半分です。今回で【フレイヤ・ファミリア】編は終了です。


37話 【出張治療師(ヒーラー)エレン君】③

「あの、訓練っていうのは……?」

 

「先日の『戦争遊戯(ウォーゲーム)』を見たが、お前は『魔剣』の威力を底上げできるような【スキル】を持っているな?」

 

「えっ? えぇ、まぁ、持っていますけど……」

 

「そうか、なら、その『魔剣』を()()()()()()()()()()()

 

「はい?」

 

「ヴァン達との戦闘はだけは鍛錬として足りん。あの『魔剣』の威力なら鍛錬には申し分ないと判断した。他に理由は必要か?」

 

「……」

 

 

 どうやら、あの『魔剣』の威力なら鍛錬の相手には申し分ないと、この猪人(ボアズ)は言っているのだが、エレンはその内容を全く理解できなかった。

 

 エレンの持っている『魔剣』はただの『魔剣』ではなく、『クロッゾの魔剣』と呼ばれる正式魔法(オリジナル)を超える威力の『魔法』を放てる代物を、エレンの【スキル】でさらに底上げしているのである。

 

 そんな『クロッゾの魔剣』をピッチングマシーンのような感覚で『さっさと撃ってこい』と言ってくるオッタルの姿に『こいつマジか?』とドン引きし、どうしようかと悩んでいたその時……。

 

 

「ん?」

 

 

 ついさっきまでオッタルがいた場所で、大勢の『強靭な勇士(エインヘリヤル)』を治療しているヘイズからもの凄い視線を感じたエレンは、『あっ、やっぱり断ったほうが……』と思っていると、まさかの()()()()()()だった。

 

 

「(いいですか、加減なんてしては駄目ですよ!! 猪の丸焼きが出来るぐらいの勢いで()っちゃってください!! 何なら消し炭にしても構いません!! えっ?恨みでのあるのかって? 全然ありませんよ♪)」

 

「……」

 

 

 『満たす煤者達(アンドフリームニル)』の1人からヘイズの手書きと思われる手紙を見たエレンは『あの人どんだけ恨まれてんの!?』と思っていると、オッタルは『まだか?』と言わんばかりにこちらを凝視していた。

 

 エレンは『はぁ~』と溜息を吐きながら、注文通りに【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】の内側に仕舞っておいた『魔剣』【火影(ほかげ)】を引き抜き、回復魔法の炎を纏わせた状態で、オッタルに向けて放った。

 

 

「【火影(ほかげ)】!!」

 

 

 エレンが放った【火影(ほかげ)】は上級魔導士の長文詠唱並みの威力であり、巨大な炎の波がオッタルに向かって迫っていくが……。

 

 

「フンッ!!」

 

 

 オッタルの大剣の一太刀が、【火影(ほかげ)】の『魔法(ほのお)』を両断した。

 

 オッタルの装備している【覇黒(はこう)の剣】は、37階層の階層主『ウダイオス』が使った『ドロップアイテム()』を素材に使われている。

 

 その強度は『アダマンタイト』を凌駕するほどであり、そこにオッタルの『技』を乗せることで、()()()()()という神業と実現させた。

 

 

「(でも、ここまでは想定通り……)」

 

 

 先程の光景を見せられた『強靭な勇士(エインヘリヤル)』は唖然としていたが、エレンは『やっぱりか~』と声を漏らしていた。

 

 何しろ、このような光景を目にするのは2()()()

 

 1度目の時は、修行の時にザルドに向かって『魔剣』を放ったことがあったが、オッタルと同様に大剣で叩き切られ、『魔法(ほのお)』を無力化されたことがあった。

 

 

「(やっぱり、この人もあの人達と同じ規格外だ……)」

 

 

 大勢の『強靭な勇士(エインヘリヤル)』が口をあんぐり開けているのを見たエレンは『うん、そうなりますよね~』と同類を見つけたような目で見ていると……。

 

 

クイクイッ

 

 

「はいはい、『お代わり』ですよね───ならッ!」

 

 

 大剣を肩に乗せたオッタルが、『さっさと撃ってこい』と催促の手招きをしているの確認したエレンは、その注文に答えるため【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を【月女神の大弓(タウロポロス)】に変形させ、そこに【火影(ほかげ)】に装着させた。

 

 

「───あれは、【アポロン・ファミリア】との戦いで使った大弓か……」

 

 

 離れた場所にいるオッタルは、大弓を弾いているエレンの姿を確認し、肩に乗せていた大剣を構え、飛来してくる『魔剣』の『魔法()』を、最初の『魔法(ほのお)』と同様に叩き斬ろうとしたが……。

 

 

「ぬぅ!?」

 

 

 【覇黒(はこう)の剣】が【火影(ほかげ)】の『魔法()』に衝突した瞬間、物凄い衝撃がオッタルを襲い、今まで無表情だった顔に、驚きの表情が表れていた。

 

 【月女神の大弓(タウロポロス)】で形成される『魔法()』は、高い殲滅力を持つ『魔剣』本来の『魔法』を、高い破壊力を持つ『魔法()』へと『変形』させたもの。

 

 その威力は第一級魔導士(Lv.5)の魔導士の長文詠唱クラスに迫り、あのザルドも認めるほどの威力。

 

 エレンは、間髪入れずに次々とオッタルに向けて『魔法()』を放ち、オッタルを大爆炎で包み込んだ。

 

 オッタルは直撃を回避するために、『魔法()』を叩き斬るが、斬ったことで発生する炎の魔力が、オッタルの強靭な肉体に火傷の傷をつけていったが……。

 

 

「───やっぱり、もう対応してきましたね……」

 

 

 エレンがそう呟くと、オッタルを包んでいた大爆炎は次第に勢いをなくし、最終的には鎮火に至っていた。

 

 オッタルは、この短時間で『魔法()』の特徴を理解し、叩き斬ると同時に大剣を振り下ろした時に発生する風圧を利用し、自身に迫る炎の無力化に成功した。

 

 ザルドも同様の方法で無力化していたのでエレンはあまり驚きはしなかったが、『何でそんなことが平然とできるんですか?』とドン引きしていた。

 

 

「……ん?」

 

 

クイクイッ

 

 

「……マジかよ」

 

 

 オッタルが再び『撃ってこい』と催促の手招きをしてくる姿を確認したエレンは、『マジかよ、あの人!?』と唖然としていた。

 

 しかし、先程からエレンが放っていた『魔剣』は全部()()()()()だった。

 

 一応、【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】も持ってきてはいるが、【火影(ほかげ)】のときと同様に無力化される未来が頭に浮かんだエレンは……。

 

 

「───なら」

 

 

 エレンは、【月女神の大弓(タウロポロス)】を納刀させ、2振りの『魔剣』を装備する。

 

 

「───今度は『魔剣』2振りの同時攻撃か……面白い!」

 

 

 遠くからエレンが先程のとは別の『魔剣』2振りを装備する姿を目視で捉えたオッタルは、エレンが次に起こす行動を即時に理解した。

 

 エレンは、それぞれの手に握った【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】に回復魔法の炎を纏わせ、再びオッタルに向けて振り放とうとした瞬間……。

 

 

「───ん?」

 

 

 エレンは持っている【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】に違和感を感じたエレンは、振り下ろそうとした両腕に急ブレーキをかける。

 

 何とか、『魔法』の発射を寸での所で止まることができたエレンは、両手に持っている【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】の状況を確認すると……。

 

 

「……ナニコレ?」

 

 

 エレンの炎を纏っている【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】は、バチバチと火花のようなものを散らせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……これって、もしかして……」

 

 

 

***

 

 

 

「あ、あの~。ヘスティア様、ちょっといいですか?」

 

「ん?何だい、ベル君?」

 

「えっと、エレンさんって、【ランクアップ】した時に新しい『発展アビリティ』が発現しているのかな~と思って……」

 

「あ~、そう言えばベル君には言っていなかったねぇ~」

 

 

 ベルが引越しの為に、『廃教会』で荷物の整理をしている時だった。

 

 ベルが引越しの為に『廃教会』で荷物を整理しながら、Lv.3に【ランクアップ】した際に書いてもらった羊用紙に目を通していた時だった。

 

 ベルには、新たに『耐異常』の『発展アビリティ』が追加されており、同じく【ランクアップ】した仲間(エレン)にも何か『発展アビリティ』が発現しているんじゃないか?と思い、主神のヘスティアに尋ねていた。

 

 

「エレン君にも新たな『発展アビリティ』は発現しているよ。『潜水』『治療』『治癒』とか、ベル君と同じ『耐異常』も候補にあったね~」

 

「よ、4つもですか……」

 

「うん……まぁ、エレン選んだのは()()()のものなんだけどね~」

 

「5つ目?」

 

 

 ヘスティアが『まさか、あれが発現するとは……』と明後日の方向を見ながら、エレンが獲得した『発展アビリティ』を、ベルに教えた。

 

 

「エレンが新たに獲得した『発展アビリティ』は───『神秘』なんだ」

 

「神秘───あの『神秘』ですかっ!!?」

 

 

 ヘスティアの言葉を聞いたベルは、まさかの『神秘』だった事に驚きが隠せず、慌てた様子であたふたしていた。

 

 『神秘』の所持者は、アビリティはここ【迷宮都市(オラリオ)】でも5人にも満たないレアアビリティ。

 

 さらに、『神秘』持ちは、神が使う『奇跡』の力を秘めた魔道具(マジック・アイテム)を製作が可能となり、【万能者(ペルセウス)】や【戦場の聖女(デア・セイント)】が有名である。

 

 

「確かに、『神秘』持ちの子が神が使う『奇跡』の力を秘めた魔道具(マジック・アイテム)を作ることができると言われているけど、エレン君の場合は()()()()()()かな……」

 

「ちょっと違う……?」

 

「これはボクの勘だけど、エレン君には魔道具(マジック・アイテム)を作ること以外のこともできると思うんだ」

 

「……もしかして、エレンさんが半分『精霊』としての性質を持っているからですか?」

 

「うん、元々、『精霊』には神々(ボク達)と同じように『奇跡』を使うことができるけど、『半精霊(ハーフ・スピリット)』であるエレン君にはその力はなかった。でも、今回『神秘』のアビリティを獲得したことで、エレン君に変化が起きるんじゃないかと思ってるんだ」

 

 

 力ある『大精霊』には、神々が眷属に与えている『恩恵(ファルナ)』に似た力、『加護』を与える力を持っている。

 

 この『加護』を受けた『古代』の英雄たちは、様々な逆境を乗り越えてきたが、【天界】に住んでいた『神々』が【下界】へと降り立ち、『恩恵(ファルナ)』を与え、眷属を増やしていったことで、『加護』の存在は薄れていった。

 

 現在では『火精霊の護布(サラマンダー・ウール)』や『水精霊の護布(ウンディーネ・クロス)』といった形になっているが、それでも並みの防具以上の性能を有している。

 

 ヘスティアは、エレンが『神秘』を獲得したことで何か変化が起きるんじゃないか?と予想していたが、その予想は()()()()()()()

 

 エレンは、手に持っている【紫雷姫(しらひめ)】と【白雪(しらゆき)】の2振りを重ね合わせるように近づけると、2つの『魔剣』が1つの『魔剣』へと()()()()()()

 

 エレンの青い炎に溶かされるように1つの『(つるぎ)』へと姿を変え───その姿、形は【紫雷姫(しらひめ)】や【白雪(しらゆき)】の姿とは全く異なる形状をしていた。

 

 

「……ナニコレ?」

 

 

 エレンは、2つの『魔剣』が混ざって出来た『(つるぎ)』を握りしめたまま、固まっていた。だって、こんなことは今まで起こったことがないのだ。

 

 そして、この光景を見ていた『強靭な勇士(エインヘリヤル)』や『満たす煤者達(アンドフリームニル)』は『そんなことも出来るのかよぉ!?』と言いたげな表情をしている。

 

 このエレンの身に起きた現象は、エレンが『神秘』を獲得して起きた変化の1つ。

 

 

 

 その名も『融合』。

 

 

 

 本来、英雄1人に対して1体の『精霊』が契約を交わすのが殆どだが、稀に複数の『精霊』と契約を交わす英雄も存在し、その際に用いられる『奇跡』の1つである。

 

 複数の『加護』の力を『融合』しあうことで、通常以上の力を与えることができる『反則(チート)』の奇跡。

 

 なお、『穢れた精霊』が用いる『寄生』の能力は、この『融合の奇跡』に分類される力であり、エレンがアルテミスの精霊と混ざったのも、アルテミスの精霊がこの『融合』の奇跡を行使したのが影響している。

 

 エレンも、『神秘』のアビリティを獲得したことで、『融合』の奇跡の一端が発現───それが、『魔剣融合』の奇跡。

 

 2振りの『クロッゾの魔剣』を、エレンの回復魔法の炎を用いることで、()()()()()()()()()()()()()()()()に出現する『剣』。

 

 その『剣』は『魔剣』の域を超える『剣』───『精霊の剣』……『精剣』と呼ばれる『精霊』本人がその身を『剣』に変化させたものと()()()()()()()()

 

 

「───オッタルさん、ちょっといいですか?」

 

「なんだ?」

 

「この『剣』は、さっきの『魔剣』以上の威力があると思います───それでも、まだ続けますか?」

 

「愚問だなぁ。俺は強くならなくてはならない。俺は……ザルドに負けたことで奪われた『最強』の称号を取り戻さなければならない! 我が女神(フレイヤ様)のためにッ!!」

 

 

 どうやらあの人には『覚悟』があるらしい……なら、それに応えてやらねば不作法というもの。

 

 そう思ったエレンは、手に持った新たな『剣』を強く握りしめ、オッタルに向けて振り下ろそうとした瞬間……。

 

 

「(そう言えば、この『剣』に名前がなかったなぁ……)」

 

 

 この『剣』は【紫雷姫(しらひめ)】や【白雪(しらゆき)】とは別物───名無しの『剣』は寂しいと思ったエレンは、この『剣』に伝説の『聖剣』を名をつけることにした……。

 

 

「──────エクス」

 

 

 

 その名も……。

 

 

 

「カリバーーーーーーーーーーーッッ!!!」

 

 

 エレンによって名を与えられた『精剣』エクスカリバーは、振り下ろされたことで、巨大な光線(ビーム)を射出し、オッタルへと直進する。

 

 

「【銀月(ぎん)の慈悲、黄金(こがね)の原野】」

 

 

 オッタルは、自身に迫りくる光線(ビーム)に臆することなく、『魔法』の詠唱を始めた。

 

 

「【この身は戦の猛猪(おう)を拝命せし】」

 

 

 さらに、オッタルは持っている2つの【スキル】───【戦猪招来(ヴァナ・アルガンチュール)】と【我戦我在(ストルトス・オッタル)】を発動。

 

 これによって、今のオッタルは()()()()L()v().()()となり、詠唱を完了させることで迎え撃つための準備を整える。

 

 

「【駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】!」

 

 

 オッタルの【覇黒(はこう)の剣】に黄金の光が宿る。

 

 

「【ヒルディス・ヴィーニ】!!」

 

 

 その『魔法』は、威力を高めるだけの単純極まる『魔法』だが、【猛者(おうじゃ)】の膂力と魔力をかけ合わせることで、絶大無比の破壊力となる。

 

 迫る来る巨大な光線(ビーム)を迎え撃つ『猛る者』。

 

 2つの極大な一撃が衝突し、大きな衝撃が『戦いの野(フォールクヴァング)』に()()()()()()()()の揺れとなり、この日の【迷宮都市】をわずかに()()()出来事を巻き起こした……。

 

 

 

***

 

 

 

「わーん! 行かないでくだざーい! 明日も手伝ってくだざーい!!」

 

「ヘイズ様、何をやっているんですかッ!?」

 

「これから第2の戦場(フォールクヴァング)が始まるんですから、さっさと行きますよ!」

 

 

 エレンの足にしがみ付いていたヘイズは、部下である『満たす煤者達(アンドフリームニル)』に引っぺがされ、第二の戦場へと引き摺られていった……。

 

 日がすっかり沈んだことで、『戦いの野(フォールクヴァング)』での鍛錬は終了───というか、さっきの衝突で『戦いの野(フォールクヴァング)』に隕石が落下したかのようなクレーターが出来てしまい、強制終了。

 

 結果は、オッタルが『精剣』エクスカリバーの光線(ビーム)を防いだことで、オッタルの勝利。

 

 エレンは、『精剣』エクスカリバーの一撃に予想以上に精神力(マインド)を持っていかれ、精神力疲労(マインド・ダウン)寸前の状態に陥っていた。

 

 

「つ、疲れた……」

 

 

 ヘロヘロになりながらも冒険者依頼(クエスト)の報酬でもらった()()()()()()()()の袋を持ちながら、神フレイヤとの会話を思い出していた……。

 

 

 

***

 

 

 

「フフフ、今日はありがとうね♪ あの子の相手をしてもらって」

 

「本当ですよ、冒険者依頼(クエスト)内容は『強靭な勇士(エインヘリヤル)』の治療だけだと思いますが……」

 

「ごめんなさいね。でも、あの戦闘はあの子達の()()には必要だったのよ?」

 

「……? どういう意味です?」

 

 

 冒険者依頼(クエスト)が完了したエレンは、フレイヤに呼び出されて女神の部屋に訪れている時だった。

 

 本来なら『強靭な勇士(エインヘリヤル)』の治療が冒険者依頼(クエスト)だったのにも関わらず、その『強靭な勇士(エインヘリヤル)』と戦う羽目になった理由をその主神であるフレイヤに尋ねると、フレイヤはあの戦闘は『治療』の一環だと言った。

 

 

「今日貴方に戦いを挑んだ子達は、ずっと『能力値(ステイタス)』の数値が上がらなくて悩んでいた子達だったの」

 

「は、はぁ~」

 

「『能力値(ステイタス)』は半永久的に上がるわけじゃない、ならどうするべきか……分かるかしら?」

 

「……【ランクアップ】……ですか?」

 

「えぇ、正解よ♪」

 

 

 部屋に用意されていたテーブルに、向かい合う形で座ったフレイヤは葡萄酒を飲みながら今回エレンが戦った『強靭な勇士(エインヘリヤル)』について話し出した。

 

 

「でも、【ランクアップ】は簡単にはできない。私の眷属(子ども)達は、毎日ここで鍛錬をしているけど、同じ相手と同じことの繰り返しだと【ランクアップ】に必要な『偉業』の質は落ちてしまうの───なら、どうすればいいと思う?」

 

「……『ダンジョン』で足りない『偉業』を稼ぐ……ですか?」

 

「フフフ、正解♪───でも、ここで()()()()()()()()が起こってね……」

 

 

 『ダンジョン』で生まれるモンスターは、階層によっては自身より強いモンスターが生れ落ちるエリアが存在し、『階層主』などがいい例である。

 

 『階層主』の討伐は、大きな『経験値(偉業)』として冒険者に還元されやすく、【ランクアップ】を狙うものはこぞって『階層主』の討伐作戦に参加する。

 

 

「この間、あの子達がほかの眷属(子ども)達と『ゴライアス』の討伐に行った時に、ちょっと『ゴライアス』の奪い合いが起きてしまったらしくてね。死にかけたらしいの」

 

「何やってるんですか……その人達」

 

 

 エレンはフレイヤからもらった葡萄酒に口につけながら、サラッと死人が出かけた話を耳にし、どのような顔をしたらいいか分からない状況になっていた。

 

 『階層主』の討伐は、大規模な冒険者の協力が必須……その分獲得する『経験値(偉業)』の質は低下するが、何回か繰り返すことで確実に『経験値(偉業)』は蓄積する。

 

 しかし、『ゴライアス』の討伐に行った『強靭な勇士(エインヘリヤル)』達は貴重な『経験値(偉業)』を独占するべく、『ゴライアス』の目の前で、奪い合いを起こしたらしい……。

 

 

「一応、そこには『満たす煤者達(アンドフリームニル)』が数人いたから何とかなったんだけど、こんな状況が続きそうなら、あの子達はいつか命を落とすわ───そこで、貴方の出番♪」

 

 

 フレイヤが葡萄酒が入っているグラスをテーブルに置き、エレンの方を指さす。

 

 エレンは、フレイヤの言っている意味が分からず、グラスに口をつけたままで固まっていると、『実はね……』とフレイヤが事情を説明しだした。

 

 

「貴方が『戦争遊戯(ウォーゲーム)』で戦ったアポロンの眷属達が『改宗(コンバージョン)』した時に、【ランクアップ】を果たしていた子が何人かいたの」

 

「……マジですか?」

 

「本当よ? 現に今日も1人、貴方に戦いを挑んだ私の眷属の1人がLv.3になったわ」

 

「……」

 

 

 フレイヤの話だと、ハンマーを装備していた大男が、Lv.3に【ランクアップ】を果たしたとこと。

 

 エレンは半分が『大精霊』の側面を持っている影響で、得られる『経験値』が『()()()』級となっている。

 

 その影響で、前回と今回戦ったLv.2の冒険者達には格上と戦った『経験値(偉業)』を得たとして、何人かが【ランクアップ】を果たしていた。

 

 その話を聞いたエレンは『マジか、やば~』と自分自身のことながらドン引きしてると、1人の侍女が大量のヴァリスの入った袋を持ってきた。

 

 

「だから、元々の報酬の300万ヴァリスに加えて、追加で300万ヴァリスを入れているわ。偶にでいいから私の眷属(子ども)達の相手をしてあげて♪ その分の報酬も上乗せするわ!」

 

 

 エレンは侍女から袋を受け取ると、予想以上の重さに思わず袋を落としようになった。

 

 確かに、600万ヴァリスはありそう袋を受け取ったエレンは、『確かに……』と言って、『廃教会(ホーム)』に戻るために、フレイヤの部屋を後にしようとすると、部屋の主が『残念……』と呟いた。

 

 

「貴方、薬も効かないのね?」

 

「……何のことでしょうか? 薬───まさかッ!?」

 

 

 エレンは、自身が飲んだ葡萄酒が注がれたグラスの視線を向けると、フレイヤは『大丈夫、ただの精力剤よ、最上級だけど♪』と爆弾発言を投下。

 

 【月精霊の加護(アルテミス・ファヴォール)】の効果で、精力剤の効果は出ていないが、フレイヤが再び『今晩、どうかしら♪』と『夜』のお誘いを提案。

 

 それを聞いたエレンは身の危険を感じ、『今日はありがとうございましたー!!』と言い残すと、爆速で『戦いの野(フォールクヴァング)』を後にした……。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

この『融合』の設定は、この作品のオリジナルで、『穢れた精霊』が使う『寄生』を独自解釈させたものです。

この『魔剣融合』で作られる『精剣』は、クロッゾの魔剣2振りをエレンの回復魔法を用い、属性関係なく 融合させることで誕生します。因みに回復魔法の炎を常に纏わせておかないと『融合』が解除され、元の魔剣に戻ります。

その威力は、これまでの『魔剣』の威力を超えていますが、今までの『魔剣』とは異なり、精神力(マインド)を相当な量を持っていかれるので、今のエレンでは連発な厳しいです。

因みに、この『精剣』を【月女神の大弓(タウロポロス)】に装着させると、『ロンゴミニアド』を放つことができます。(本当なら『槍』ですが、この作品では『矢』の設定にしています)


エレン
 『神秘』を獲得したことで、『魔道具(マジックアイテム)』や『精霊の護布』を作ることが可能になった。『魔導』も持っていますので『魔導書(グリモア)』の製作条件を満たしていますが、まだ作ることは無理。

オッタル
 エレンの『精剣』を真正面から受け止めた怪物。なお、その衝撃で『戦いの野(フォールクヴァング)』の半分がボロボロになった……。

フレイヤ
 【ランクアップ】に悩んでいる眷属達の『焦りの解消(治療)』のために、エレンをぶつけた神者(じんぶつ)。なお、エレンが定期的に訪れたことで、悩んでいた眷属達は、【ランクアップ】を果たすことができて満足していた♪

ヘイズ
 わーん! 行かないでくだざーい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。