聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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39話 【出張治療師(ヒーラー)エレン君】⑤

 『ダンジョン』

 

 そこは、恐ろしいモンスターを生み落とす地下迷宮。

 

 富、力、名声などを求める『冒険者』が、日々『ダンジョン』に潜り、『魔石』を始めとした『怪物の宝(ドロップアイテム)』を持ち帰ることで、【迷宮都市(オラリオ)】に大きな利益をもたらしている。

 

 

「【セイクリッドフレア】」

 

 

 そんな『ダンジョン』で、多くの冒険者を癒しす1人の治療師(ヒーラー)───いや、1人の『半精霊』がいた。

 

 

「大丈夫ですか~?」

 

「あ、あぁ……助かっt───って!? 【怖いもの知らず(ドレッドノート)】かよっ!!」

 

「ははは。ごめんなさいねー、()()()じゃなくて♪」

 

 

 重症だったドワーフが、青い炎を浴びて途端に、傷が綺麗に消えていき、最終的に傷1つ無い状態へと戻っていた。

 

 ついさっきまで走馬灯を見ていたドワーフには、目の前にいる治療師(ヒーラー)が聖女に見えたのだろうが、残念♪ その人物は男……しかも、【怖いもの知らず(ドレッドノート)】と呼ばれる人物だった。

 

 その男の名は、エレン・エウロギア。

 

 Lv.2になった治療師(ヒーラー)であり、二つ名ではないが【怖いもの知らず(ドレッドノート)】と呼ばれる【ヘスティア・ファミリア】の団員。

 

 そんな不名誉な呼び名で呼ばれているエレンは、少し離れた場所で回復魔法を行使している()()に視線を向けながら、周囲を警戒していた。

 

 

「【ディア・フラーテル】!!」

 

 

 その聖女を中心に白い光が広がり、怪我を負っていた多くの冒険者達を癒していく。

 

 ことの発端は、今から1時間前のことだった。

 

 この日のエレンは、【ディアンケヒト・ファミリア】の冒険者依頼(クエスト)を受けていた。

 

 冒険者依頼(クエスト)の内容は『治療』。

 

 毎日のようにやってくる負傷者の治療をエレンに【バベル】の治療施設で、治療師(ヒーラー)として働いてもらう内容だった。

 

 エレンの回復魔法は超短文詠唱で高い回復効果を発揮できる。

 

 その回復魔法をフル活用し、エレンは【バベル】の治療施設に運び込まれてくる負傷者を次々と回復させていった。

 

 まぁ、運ばれてくる冒険者達の殆どが回復薬(ポーション)では回復しきれない重症者ばかりだったが、幸いにもエレンの回復魔法で治せる範囲の人達が殆どだった。。

 

 内容は骨折を負った者が殆どだったが、全部エレンの回復魔法でしっかりと治し、その日の内に退院していった。

 

 

 

 そんな時……。

 

 

 

「……なんか、下が騒がしいような……?」

 

 

 治療施設の中の怪我人が0になり、すっかりと暇になったエレンは、治療施設(ここ)を担当している【ディアンケヒト・ファミリア】の団員からもらったお昼ご飯を食べている時だった。

 

 何やら、慌ただしく動いている人の気配に気が付いたエレンは、『何かあったのかな?』と思っていると、治療施設の扉が勢いよく開き、1人のギルド職員が入ってきた。

 

 

「お、おいッ! 急いで【バベル】の地下1階に来てくれ! 怪我人が大勢いるんだぁ!!」

 

 

 全身汗だくの状態で息を切らせながらやってきたギルド職員の話によると、理由は不明だが『ダンジョン』から怪我人が大勢運び込まれてきたらしいとのこと。

 

 その話を聞いたエレンは、治療施設にいたほかの治療師と共に、【バベル】の地下1階へと向かったが、現場に到着した時には既に()()()()()()()()だった。

 

 現場には、白い光が負傷した冒険者達の傷を癒しており、その光景に周りにいた冒険者達は、視線を釘付けにされていた。

 

 その白い光の中心には、1人の『聖女』が祈りを捧げるかのような姿勢で魔法を行使しており、白い光が消えた時には、周りには怪我人が0の状態になっていた。

 

 

「あれ? 無駄足だった?」

 

「フフフ、そうみたいね、エレン♪」

 

「ん?」

 

 

 急いで向かっていたハズだったが、今回の依頼人(クライアント)でもある都市最高の治療師(ヒーラー)と呼ばれている人物が怪我人の治療をしていた。

 

 その人物の名は、アミッド・テアサナーレ。神々から【戦場の聖女(デア・セイント)】の二つ名を授かった聖女である。

 

 そして、エレンに声を掛けてきたのは、【アストレア・ファミリア】の団長、アリーゼ・ローヴェル。

 

 さらに、その後ろにはライラやネーゼの姿があり、如何やら巡回中に騒ぎを聞いてやってきたらしい。

 

 アミッドに関しては、冒険者依頼(クエスト)を受けたエレンの状況が気になり、様子見で訪れた所に、今回の騒動を目撃したらしい。

 

 幸いにも都市最高峰の治療師(ヒーラー)の活躍で、死傷者はでなかったが『ダンジョン』で何があったのか尋ねると、まさかの内容だった。

 

 

「「「『中層』のモンスターが上がってきた?」」」

 

「ホントだってッ!! いきなり『ヘルハウンド』や『アルミラージ』が12階層に押し寄せてきたんだぁ!!」

 

「「「マジか~」」」

 

 

 彼らの主張だと、『中層』から生まれてくるモンスターが『上層』に上がってきたと言っているのだ。

 

 もし、その話が本当だった場合は、ただ事ではない。

 

 その話を聞いた周りの冒険者達は、大きなざわめきが起きていたが、【アストレア・ファミリア】の反応は『またかよ~』といった反応だった。

 

 何しろ、彼女達は前に1度モンスターの地上進出を防ぐために戦ったことがあったが、あれは地獄だった。

 

 『深層』のモンスターに加えて『階層主』も上がってくる異常事態(イレギュラー)に彼女達は阿鼻叫喚になりながらも、何とか異常事態(イレギュラー)を終息させることができた。

 

 しかし、その地獄が再び始まろうとしている状況に、戦乙女達の表情が曇っていると、1人の聖女が立ち上がった。

 

 

「アリーゼ・ローヴェル様」

 

「ん? 何かしら、アミッド?」

 

「私はこれから『ダンジョン』に()()()と思うので、護衛をお願いできないでしょうか?」

 

「はい?」

 

 

 何か聞き間違いのような言葉が聞こえたが、その声の主はさらなる言葉を重ねてきた。

 

 

「先程の冒険者様の話だと、如何やら逃げ遅れた冒険者がまだ大勢いるようなのです。早く助けに行かなければ」

 

 

 アミッドの話だと、『ダンジョン』には逃げ遅れた冒険者が取り残されているようで、中には怪我人も存在しているとのこと。

 

 ゆえに助けに行かなければ! と、アミッドは護衛をアリーゼ達に依頼しているのだが、アリーゼ達は『マジかよ、この聖女』とドン引きしていた。

 

 

「おいっ、アリーゼ。どうするんだ?」

 

「……そうね。もし、本当にモンスターの進出が本当だった場合は、手遅れになる前に対処したいわ」

 

「了解だ。おい、そこのギルド職員! 街の巡回をしている他の奴らを集めさせといてくれ!」

 

「わ、分かりましたッ!!」

 

 

 ライラから指示を受けたギルド職員は急いでその場を離れていった。

 

 アリーゼ達は、すぐにでも『ダンジョン』に潜るべく準備を進めながら、近くにいる治療師(ヒーラー)1人を捕まえた。

 

 

「え?」

 

「フフーン♪ 貴方も来なさい♪」

 

「え? いやっ。ちょっ!?」

 

「後衛がいねぇんだ。お前さんの『魔剣』なら十分活躍できるぞ!」

 

「行くって一言も言ってませんよっ!?」

 

「「いいかいいから」」

 

 

 アリーゼとネーゼは、エレンの両腕をそれぞれ拘束し、そのまま『ダンジョン』へと潜っていった。

 

 その後に続くようにアミッドとライラもダンジョンへと潜っていったが、迷宮には1人の青年の悲鳴が木霊していたらしい……。

 

 

 

***

 

 

 

「ホント。その『魔剣』の『魔法()』は便利でいいわよね」

 

「『詠唱』要らずであの威力なんだよな~」

 

「『階層主(ゴライアス)』とかいい的だろう」

 

「だからって、全部押し付けることなかったですよね!? ここに来るまでの殆どのモンスター全部相手にされたんですけどッ!?」

 

 

「「「だって、そのほうが早くて楽できるし」」」

 

 

 場所は『ダンジョン』の11階層。

 

 ここには多くの負傷した冒険者が集まっており、12階層に繋がる通路は魔法の氷によって塞がれている状態だったのをアリーゼ達が発見し、アミッド達が治療を施していた。

 

 因みに、ここに来るまでのモンスターは全て、エレンの【月女神の大弓(タウロボロス)】の『魔法()』で瞬殺している。

 

 上級魔導士の魔法以上の威力がある『魔法()』を遠距離から『無詠唱(溜めなし)』で連射できるエレンの火力のごり押しで、11階層(ここ)まで最短で到達することができた。

 

 

「で? 私達は、『中層』のモンスターが『上層』に上がってきたって聞いたけど、ホントなの?」

 

「あ、あぁ……。見ての通り、通路は塞いでいるから今のところ大丈夫だが、いつまでもつか……」

 

 

 アリーゼが1人の冒険者から話を聞いていたが、やっぱり本当のことだったらしい。

 

 冒険者が指をさす先には、氷で塞がれた12階層への通路があり、アリーゼは『ちょっと行ってみましょうか』と言いつつ、エレンの方を視線を向ける。

 

 

「じゃあ、お願いね♪」

 

「はぁ~」

 

 

 その一言で何を求められているのか理解できてしまったエレンは、【月女神の大弓(タウロボロス)】に装着されている【火影(ほかげ)】で造られた『魔法()』を引き、通路を塞いでいる氷を破壊した。

 

 治療が終わった冒険者達には、地上に戻るように指示を出し、障害物が無くなったアリーゼ達は、12階層に続く通路の先へと進む。

 

 12階層に続く通路には、モンスターが襲ってくる気配はなく、不気味な静けさが漂っていた。

 

 

「……モンスターがいない?」

 

「『中層』に引き返した……とか」

 

 

 アミッドとエレンがモンスターの姿が確認できないことに疑問に思っていると、正義に眷属達は、警戒心を解くことなく、通路の先を凝視していた。

 

 

「いえ、いるわよ。この先に……」

 

「だが、この声は……モンスターの『悲鳴』?」

 

「モンスターが襲われているってか?」

 

 

 【アストレア・ファミリア】のメンバーはこの先にモンスターの気配を感じていたが、同時に違和感も感じていた。

 

 エレン達は気づいていなかったが、12階層からモンスターの悲鳴のような鳴き声が聞こえていた。

 

 アリーゼ達は、何時でも戦えるように得物に手をかけた状態で12階層に入ったが、そこには目を疑う光景が広がっていた。

 

 

「───────────────ッッ!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 アリーゼ達が足を踏み入れた12階層では、数えきれない数の食人花と、同じ色をした巨大な芋虫が『中層』のモンスターや、12階層にいたであろうモンスターを()()()()()()()()

 

 

「モンスター、モンスターを襲っている……!?」

 

「黄緑の……芋虫?」

 

 

 アミッドはモンスターがモンスターを食い漁っている光景に驚きを隠せず目を大きく見開き、エレンは初めて見るモンスターに視線が釘付けにされていた。

 

 

「もしかして、『中層』のモンスターが『上層(ここ)』まで上がってきたのって……」

 

「あの極彩色のモンスターから逃げてきたんだろう……。だが、不味いな」

 

「あぁ、あの食人花は問題ねぇ。問題なのは()()()()()

 

 

 アリーゼ達は、予想外もモンスターの出現に驚きはしたものの、すぐに冷静さを取り戻し、状況の把握に努めていた。

 

 幸いにも、極彩色のモンスターは『食事』に夢中になっているお陰で、こちらに気づいていなかったが、彼女達(前衛)にとって()()()()()()()がいた。

 

 それは、芋虫型のモンスター。名は『巨蟲(ヴィルガ)』。

 

 その潜在能力(ポテンシャル)はLv.4クラスであり、動きは遅いがこのモンスターは『アダマンタイト』を簡単に溶かす超強力な溶解液を吐き出してくる。

 

 しかも、近接攻撃でダメージを与えるとその傷口からも溶解液を出したり、倒しても自身を爆発させ、周囲に溶解液をばら撒くなど、とても厄介なモンスターだった。

 

この『巨蟲(ヴィルガ)』の唯一の攻略法は、遠距離から魔法で仕留めるか、『不壊属性(デュランダル)』で攻撃するしか方法がなかった。

 

 ゆえに、彼女(アリーゼ)たちは……。

 

 

「「「あのモンスター達は頼んだ!」」」

 

「えっ?」

 

 

 またしても、エレンに押し付けることにした。

 

 

「……」

 

「おい、そんな嫌そうな顔をすんなよ。あの芋虫はとても厄介なんだって……」

 

「あの芋虫が出す溶解液は何でも溶かしちまうんだ。前衛の私達にとっちゃ天敵なんだ」

 

「だからね☆ エレンが持っているその『魔剣』で全部吹っ飛ばしてほしいなーって♪」

 

「本音は?」

 

「「「ローンが払い終わっていないから溶かされたくない」」」

 

「こいつらぁ……!」

 

 

 ライラ、ネーゼ、アリーゼがあの芋虫の厄介性について力説するが、エレンが『本音は?』と尋ねると『ローンが残っているから』と素直にゲロった。

 

 だが、この数のモンスターを殲滅するには『魔法』で吹き飛ばすのが手っ取り早いのは明らかだったので、エレンは深いため息を吐きながら、2振りの『魔剣』を取り出した。

 

 

「じゃあ、ちょっと行ってきます」

 

「ちょっ!? 待って───」

 

 

 エレンは【白雪(しらゆき)】と【火影(ほかげ)】を装備すると、12階層の入り口から飛び降りたエレン。

 

 アリーゼはこの場所から『魔剣』を撃ちまくってもらおうと思っていたのに、まさか飛び降りていくとは思ってもおらず、急いで止めようとしたが一手遅かった。

 

 

「【セイクリッドフレア】」

 

『『!!』』

 

 

 地面に着地したエレンは、回復魔法の炎で包まれた状態の『魔剣』2振りを()()()()()

 

 しかし、その魔力に反応した極彩色のモンスターが一斉にエレンのいる方向に視線を向ける。

 

 

「───────────────ッッ!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 まるで、新たな御馳走が目の前に現れたかのように、極彩色のモンスターの大群がエレンに向けて一斉に押し寄せていく。

 

 誰がどう見ても絶体絶命の状況だったが、エレンは慌てた様子を見せず、光り輝く『精剣』を握りしめ、横に大きく『精剣』を薙ぎ払った。

 

 

「───────────────」

 

 

 『精剣』から放たれた光の光線は極彩色のモンスターを飲み込み、()()()()()

 

 12階層を埋め尽くすほどいた極彩色のモンスターは一匹も残っておらず───なんなら、アリーゼが厄介と言っていた溶解液の1滴すら残っていなかった。

 

 

「「「……マジ?」」」

 

 

 先ほどの一部始終を見ていたアリーゼ達は『何それ知らん、怖い』と言ってドン引きし、アミッドは『あの方は本当に治療師(ヒーラー)なのですか?』と疑いをかけていた。

 

 

 

 一方のエレンは……。

 

 

 

「(やっぱり、この『精剣』は精神力(マインド)を大きく消費するな~)」

 

 

 エレンは精神力回復薬(マジックポーション)を1本、2本、3本と補給しながら、先程の戦闘を振り返っていた。

 

 エレンは、今まで【精霊の奇跡(スピリット・ミラクルム)】の効果で『魔剣』の寿命(消費)を帳消し、火力アップを施している。

 

 それには、回復魔法の炎で包んでいるのが条件になるが、エレンの回復魔法は超短文詠唱なので、精神力(マインド)の消費はとても小さかった。

 

 しかし、この『精剣』を使う場合は、精神力(マインド)の消費がとても激しい。

 

 ヘスティアの話では、本来、力ある大精霊が自身を剣に変化させることで精製される『精霊武装』。

 

 エレンは半分がヒューマンであるため、生来の大精霊より消費が激しいんじゃないか?とのことだった。

 

 エレンが補給を済ませるとそのままアリーゼ達と合流し、この次の行動を尋ねた。

 

 

「ここにいたモンスターは全滅させましたが……これで一件落着?」

 

「どうだか。あの極彩色のモンスターがここまで上ってきた理由を調べたいが、()てがないからな~」

 

 

 エレンの質問に、ライラが頭を掻きながら答える。

 

 彼女達も、今回の異常事態(イレギュラー)に極彩色のモンスターが関わっているとは思ってもおらず、次にどのような行動を取るか悩んでいる時だった……。

 

 

「すまん。遅くなった」

 

「あっ! 来た来た♪」

 

 

 アリーゼ達に声をかけたのは、輝夜を始めとした【アストレア・ファミリア】のメンバーだった。

 

 彼女達は、様変わりした12階層の光景に一体何があったのか尋ねると『極彩色のモンスターがたくさんいたけど、全部エレンがやっつけちゃったわ。一発で♪』とアリーゼが答え、彼女達をドン引きさせた。

 

 

「一発で極彩色のモンスターの大軍を全滅させるって、どんな威力だよ……」

 

「『階層主(ゴライアス)』をワンパンできたりして?」

 

「ん~。そこまでは……。どうなんだろう?」

 

「「「よし! 今度試し打ちに行こう!」」」

 

「え~……」

 

 

 こうして、エレンの精剣『エクスカリバー』の試し打ちの的が確定になった『階層主(ゴライアス)』にエレンが心の中で合掌を捧げていると、輝夜がアリーゼに一枚の羊皮紙を渡した。

 

 

「ん? 輝夜、これは?」

 

12階層(ここ)に来ようとした時に渡された。あの『骨』からだ」

 

「「ほね?」」

 

 

 エレンとアミッドが『骨』という単語に首を傾げていると、アリーゼは『え~』と嫌そうな顔をして輝夜から羊皮紙を受け取って、その中身を確認した。

 

 

 

17階層に向かえ。そこに今回の『元凶』がいる

 

 

 

「うわぁ~」

 

「で? どうする、団長?」

 

「行くしかないでしょう。でも、【戦場の聖女(デア・セイント)】。貴方は地上に戻りなさい。この先は危険だわ」

 

「自分は?」

 

「いえ。私も同行させてください。必ず役に立って見せます」

 

「あの~」

 

「う~ん。確かに都市最高峰の貴方がいれば確かに心強いけど……」

 

「おーい」

 

「いいんじゃねーか? 治療師(ヒーラー)は多くてわりぃことはねぇ。【戦場の聖女(デア・セイント)】がいてくれれば百人力だぞ?」

 

「そうね。なら、アミッド。このままお願いできるかしら?」

 

「お任せを。皆様の傷は全て私が癒して見せます!」

 

「……」

 

 

 こうして、このまま【戦場の聖女(デア・セイント)】が同行してくれることが確定したが、約1名の治療師(ヒーラー)が話を聞いてもらえず、1人寂しく取り残されていた。

 

 【アストレア・ファミリア】の戦乙女達は、都市最高峰の治療師(ヒーラー)の参戦で士気が高まり、そのままの勢いで指定された17階層に向けて出発。

 

 エレンはこっそりと帰ろうとしたが、輝夜に『行くぞ』と首根っこを掴まれ、引き摺られながら『中層』へと続く洞窟へと入っていった……。

 

 

 

***

 

 

 

「ん~。()()()()()()()()()()()()()()わね~」

 

「大方、あの極彩色のモンスターに食われたんだろう。見ろよ。ドロップアイテムが至る所に落ちてるぜ」

 

「拾って持ち帰れば、そこそこの金になるだろうがほっとけ。だが、妙だな……。極彩色のモンスターすら出てこない」

 

 

 アリーゼが先頭を歩き、ライラが周りに落ちている怪物の宝(ドロップアイテム)を指さし、輝夜が『ほっとけ』と言いつつ辺りを警戒していた。

 

 今、アリーゼがいる場所は15階層で、あともう少しで目的地の17階層に辿り着く所にいた。

 

 ここに来るまでの道のりでは『ヘルハウンド』や『アルミラージ』を始めとした『中層』のモンスターが1匹もおらず、代わりの食人花が数匹出てきた程度であり、その数匹も正義の派閥の妖精2人によって瞬殺された……。

 

 

「あの~。マリュー様。少しよろしいでしょうか?」

 

「ん? 何かしら、アミッドちゃん?」

 

「あのお二人は、なぜ、あそこまでピリピリしていらしているのでしょうか。それに、エウロギア様をまるで【九魔姫(ナイン・ヘル)】様のように扱っているのは、一体……?」

 

「あ、あ~。そ、それは……。そう! 前にあの子を大勢のエルフ達が追い回していた時があったでしょう!? その罪滅ぼし的なぁ~」

 

「……そういえば、そのようなことがありましたね。確か、『絶対悪(エレン)狩り』……だったでしょうか?」

 

「うん。まぁ、その……色々とあって、あんな感じになっちゃった感じ……」

 

 

 アミッドが『中層』に入ってから気になっていたことを、同じ治療師(ヒーラー)のマリューに尋ねると、マリューはどこか言いにくそうな表情でアミッドに()()()()()説明を行った。

 

 アミッドが言った『あの二人』とはリューとセルティの事を指しており、その2人はアミッドが言った通り、エレンを『王族』扱いしていた。

 

 アミッドが知らないが、エレンは半分が『大精霊』……つまり、『王族妖精(ハイエルフ)』と同格の存在。

 

 そんな高貴なお方を妖精(エルフ)である彼女達が見過ごせるハズがなく、エレンに過剰と言えるほどの王族接待を行っていた。

 

 これには、エレンが『そこまでしなくていい!』と言ったり、ノインを含めた数名の団員が説得しても効果が無く、ここに来るまで道中の極彩色のモンスターは、リューとセルティが率先して倒していた。

 

 その後は、特に問題なく16階層に到着したエレン達一行だったが、ここでとある以上に全員が気が付いた。

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!』

 

 

「おい、この声とこの地震……!?」

 

「『ゴライアス』……でも、次産間隔(インターバル)はまだ先のハズよ!?」

 

「【リヴィラ】の連中が報告を怠った?……或いは……」

 

「……みんな、急いで『階層主』のいるエリアに向かいましょ。何が起きているのか確かめないとっ!」

 

 

 ドワーフのノインが嫌でも聞こえる大きな咆哮と大きく揺れる地響きに動く足を止め、ヒューマンのアスタがその咆哮の主の名を口にするが同時に『ありえないっ!?』と告げ、同じくヒューマンのリャーナが今起こっている異常事態(イレギュラー)を推測していた。

 

 アリーゼの言葉に全員が頷き、移動スピードを上げ、『階層主(ゴライアス)』のいる『嘆きの大壁』へと向かったアリーゼ達。

 

 『階層主(ゴライアス)』が生まれ落ちる場所は、『嘆きの大壁』と呼ばれるとても広い空間(ルーム)

 

 アリーゼ達は、急いで『嘆きの大壁』へと向かったが、耳を覆いたくなるような咆哮は段々と弱まっていき、彼女達は『まさか!?』と各々の言葉が重なると同時に『嘆きの大壁』へと到着。

 

 

 

 そこで、彼女達が目にした光景が……。

 

 

 

「あ、ははは。嘘だろう……!?」

 

 

 ライラが乾いた声で呟くが、無理もなかった。

 

 17階層の『階層主』である『ゴライアス』が()()()()()()、その死体を大量の極彩色のモンスターが覆いつくしていた。

 

 

 

 さらに……。

 

 

 

 「おいっ! あれを見ろッ……!!」

 

 

 輝夜が大きな声を上げ、大量の極彩色のモンスターで埋め尽くされている『嘆きの大壁』の中から、()()()()()を発見した。

 

 その個体は、ほかの極彩色モンスターに比べるとひと際大きいが、何より気になったのはその『姿』だった。

 

 歪ではあるがその2体の個体の上半身は人型……いや、()()の姿であり、モンスターとは違う異質を放っていた。

 

 

「……あれは、『穢れた精霊(デミ・スピリット)』? でも、私達や【勇者(ブレイバー)】が見た59階層の個体とは全く違う……」

 

「恐らく、【ロキ・ファミリア】からの情報にあった成長途中の個体だろう。だが、それも『魔石』を大量に取り込めば、あの厄介な化け物が誕生するだろうな」

 

 

 【アストレア・ファミリア】は前回の【ロキ・ファミリア】の『遠征』に参加しており、59階層で『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の存在を確認している。

 

 さらに、50階層で戦った個体と、18階層で戦った個体についても情報は共有されていたが、実物を見たことがなかった彼女達は、その正体に気づくのに少々時間が掛かってしまった。

 

 

 

しかし、1人。その正体にいち早く気づいていた者が存在した。

 

 

 

「(あの2体は、『アンタレス』に寄生していた奴。確か……『穢れた精霊(デミ・スピリット)』……だったかな?)」

 

 

 ある意味、同族でもあったエレンがいち早くその正体に気が付いていたが、彼が警戒していたのは、その2体の女体型ではなく、死体となっている『ゴライアス』の近くの壁に空いている超巨大な『大穴』だった。

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

『『『!!!』』』

 

 

 すると、エレンが警戒していた『大穴』から巨大な食人花が現れ、『ゴライアス』の死体にかぶりつき、そのまま『ゴライアス』を壁に空いた『大穴』へと引きずり込んでいった。

 

 

「信じられないっ!? あれは一体なんだぁ!?」

 

「あの巨体を引きずり込むって───って、なになに、地震!?」

 

 

 リューが今まで見たことがない光景を見せられたことで、その美しい妖精の顔が歪んでしまい、同じ同胞のセルティも同じようなことを呟こうとすると、彼女達を大きな揺れが襲った。

 

 その揺れは『嘆きの大壁』全体を大きく揺らしており、『階層主』を産み落とす大壁には大きな亀裂が入り、『ゴライアス』を引きずりこんだ『大穴』全体が大きく罅割れ、そこから1体の『大蛇』のような形をしたものが這い出てきた……。

 

 

「おいおいっ!? いくら何でもデカすぎるだろうっ!? 『ゴライアス』なんて比じゃねーぞ!!」

 

「超大型……いえ、これはもう……それ以上の……!」

 

 

 ネーゼは、そのあまりにも大きすぎる姿に全身の毛が逆立ち、アミッドは過去に何度か見てきたどの『階層主』以上の大きさに驚きを隠せずにいた。

 

 『大穴』から這い出てきた『大蛇』───いや、正確には()()()()()()()()()()()は、とても奇妙は姿をしていた。

 

 下半身は蛇のような顔があり、上半身は女体型だったが、腹部がまるで()()()()()()()()()()()()姿をしていた。

 

 さらに、体からは触手のように大きな食人花が伸びており、その口には真っ赤な血がべっとりとこびりついていた……。

 

 

「アハッ♪」

 

 

 その『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の名は『怪物の母(エキドナ)』。

 

 『女王型』と呼ばれるこの個体は、1人の怪人(クリーチャー)が『保険』として17階層に隠していた個体であり、今までの『精霊の分身』には無かった()()()()()を秘めている怪物である。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回出てきた『怪物の母(エキドナ)』は、ダンメモのクリスマスイベント『舞い散る奇跡と降誕祭(ホーリィデイズ)』に出てきた『穢れた精霊(デミ・スピリット)』をアレンジさせたものです。

怪物の母(エキドナ)』の外見はFGOに出てくる『エキドナ』をイメージしています。

【アストレア・ファミリア】は、愚者(フェルズ)異端児(ゼノス)のことを知っています。破壊者(ジャガーノート)との戦闘で重症を負った彼女達を救助隊が来るまでの間、守っていたのが異端児(ゼノス)達です。


エレン
 ただの冒険者依頼(クエスト)だったはずが、『階層主』(クラス)の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』との戦いに巻き込まれた治療師(ヒーラー)。(しかも『怪物の母(エキドナ)』を含めた計5体)
なお、今回の異常事態(イレギュラー)の原因には()()()()()()()()()()()()が、ただのとばっちりです。

アミッド
 今回エレンに冒険者依頼(クエスト)を出した張本人。次の回で【戦場の聖女(デア・セイント)】の本領を発揮する予定。

【アストレア・ファミリア】のメンバー。
 誰が予想できたでしょうか。これから複数体の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』と戦うことになることを。(まぁ、この戦いで数人が【ランクアップ】するから大丈夫か)
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ダンジョン潜って5年、地上に出たら色々変わってました。(作者:一般通過社会人)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ダンジョンで5年過ごした主人公がやらかす、ドタバタコメディ!(なお周りは曇る模様。)


総合評価:1337/評価:6.79/連載:15話/更新日時:2026年05月25日(月) 21:16 小説情報

輝きたる君、その世界で何を思う?(作者:シュトレンベルク)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

人知を超越したるもの、その地に降り立つ。▼大いなる力の先に降り立つ何かの降誕に、世界は何を見るのか?▼その輝きを見てしまった者たちはどうなってしまうのか?▼それは誰にもわからない。▼これは超越者の物語。


総合評価:1321/評価:7.53/連載:14話/更新日時:2026年04月22日(水) 07:00 小説情報

完成しているのは間違っているだろうか(作者:新人作家)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

レベルとアビリティ以外が最初から完成している状態。


総合評価:4293/評価:7.01/連載:10話/更新日時:2026年05月07日(木) 22:00 小説情報

(仮)購買意欲が勝った転生者(作者:Celtmyth)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 死んで、転生する事になった彼が望んだ能力は戦うものではなかった。


総合評価:3438/評価:8.12/連載:8話/更新日時:2026年05月24日(日) 18:00 小説情報

ダンジョンで"救護"するのは間違っているだろうか(作者:救護騎士団オラリオ支部)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

ダンまち本編にブルアカのミネ団長のような転生者を突っ込んでみました。▼AI生成を使用しています。▼【他の作品】▼ブルアカ×エンジェリックレイヤー▼https://syosetu.org/novel/411255/


総合評価:4672/評価:8.13/連載:61話/更新日時:2026年05月18日(月) 23:00 小説情報


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