聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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ちょっとしたご報告です。

31話でエレンが使った【聖火神殿の守護者(クストス・アエデス・ウェスタ)】を使用した部分についてですが、その時に『防御魔法第一階位』と書いていましたが、正確には『()()魔法第一階位』です。申し訳ありません……。


この【出張治療師(ヒーラー)エレン君】編は次で最後の予定です。


40話 【出張治療師(ヒーラー)エレン君】⑥

「やはり、17階層にいたのは『穢れた精霊(デミ・スピリット)』だったか。だが、あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は……」

 

 

 場所は『祈祷の間』。

 

 薄暗い空間で『祈祷』を捧げるこの場所で、1柱の大神が両目を閉じ意識を集中させていた。

 

 

「……不味いな。理由は不明だが、あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は『指輪』を()()()()()()()。」

 

 

 その大神の名は『ウラノス』。

 

 ここ【迷宮都市(オラリオ)】の創設神でもある彼は、両目を開くと深い溜息を吐いた。

 

 

「あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の目的は、もう片方の『指輪』と『エレン・エウロギア』か……。しかも……」

 

 

 ウラノスは頭痛を抑えるように片手で頭を押さえると、重い口を開き、かつて『最凶』と呼ばれた派閥の主神の名を口にする。

 

 

()()めぇ。【オラリオ】を離れてもなお、問題を起こすとは……」

 

 

 

***

 

 

 

「……みんな、戦闘準備。いつでも動けるように……」

 

 

 場所は変わって、17階層の『嘆きの大壁』。

 

 アリーゼ達は、空間(ルーム)を埋め尽くす程の極彩色のモンスターに視線を向けながら、各々の戦闘準備を整え始めていた。

 

 エレンも【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】を構えながら魔剣をいつでも撃てるように準備していると……。

 

 

「──────()()()()

 

『『『はっ?』』』

 

 

 一番奥にいる『大蛇』の体を持った『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の口から出た言葉にアリーゼ達やアミッドが思わず『はっ?』と言ってしまった。

 

 無理もない。だってモンスターの口から『ダーリン』なんて単語が出てくるなんて誰が予想できただろうか……。

 

 なお、エレンは『ダーリン』という単語をがっつり聞こえてしまい、鳩が【ジェノス・アンジェラス】を食らった顔になっていたが、『穢れた精霊(デミ・スピリット)』はさらなる爆弾発言を落とした。

 

 

「モウッ♡ ドコニ行ッテイタノ? ズット心配シテタンダカラ! ホラ! ()()()()モコンナニ大キクナッタヨ。───()()()♡」

 

『『『えぇええええええええええええっっ!!??』』』

 

 

 『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が膨らんだ腹を撫でながら放った発言に、正義の乙女達と聖女はあらん限りの声を上げた。

 

 そりゃそうだ。『ダーリン』という単語だけでも衝撃だったのに、まさかの『妊娠』発言が飛び込んできたのだ。

 

 アリーゼ達は速攻でエレンに近づき、事実確認を行おうとしたが……。

 

 

「─────────────────────────」

 

「「エ、エウロギア様が立ったまま気絶していらっしゃる……!?」」

 

『『『そりゃそうだぁ!!!』』』

 

 

 エレンは立ったまま気絶していた。

 

 まぁ。無理もない。今日初めて会った女性に『ダーリン』や『貴方の子よ♪』と言われ、膨らんだ腹を見せられれば、誰だってこうなる。

 

 元々、今日は【ディアンケヒト・ファミリア】の冒険者依頼(クエスト)で『バベル』で治療士(ヒーラー)として来ており、何やかんやあって17階層(ここ)まで来ているエレン。

 

 まぁ、モンスターが昇ってきたとか聞いた時は耳を疑ったし、なんか無理矢理連れていかれた時は『えっ?』と思ったが、別にエレンは怒ったりとかはしていなかった。

 

 『オラリオ』で活動している者として、モンスターの地上進出なんて見過ごせる話じゃないし、【アストレア・ファミリア】の面々には18階層の救出隊の件や『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の特訓の件とか色々お世話になっている。

 

 その借りを返すつもりでここまでついてきたつもりだし……あと、『指輪』が()()()()()()()()()()のも理由の1つだ。

 

 『ダンジョン』に入ってから『指輪』が反応するようになり、下へ降りていくほど反応が強くなっていく手ごたえを感じ、『いや、まさかなぁ……』とエレンは嫌な予感を感じ、滝のように冷や汗を流していた。

 

 そしたら、まさかの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の登場……しかも、『指輪』の反応があの超巨大な『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の()()()()()()……ナンデ!?

 

 

 

***

 

 

 

「クソッ!! なんだよこの『指輪』は!? 捨てたと思ったら気が付いた時には目の前に現れてやがるぅ……」

 

 

 これは、今回の異常事態(イレギュラー)が発生するほんの1時間前の話。

 

 17階層で『とある作業』をしていた集団の1人が変な独り言をしているのを周りの連中は変人を見ているかのような目で見ていた。

 

 独り言を言っているのはジュラ・ハルマー。

 

 地上でもう1つの【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を他人から盗んでは捨て去った猫人(キャットピープル)だが、絶賛その『指輪』に苦しめられているところであった。

 

 何しろこの『指輪』……捨てたと思ったら目の前に何度も現れて、また捨てを繰り返したもう()()()()()

 

 次第にジュラの精神はどんどんとすり減らされ、半狂乱状態へと陥っていた。

 

 

「……そうだよ。喰わせればいいんだ! そうすれば流石の『指輪』も、もう追っては来られないだろう……!」

 

 

 『指輪』の散々苦しめられたジュラ、大量の魔石の山に『指輪』を混ぜ込み17階層に存在するとある空間(ルーム)に放り込んだ。

 

 

「…………ン?」

 

 

 その空間(ルーム)には赤髪の怪人(レヴィス)が『保険』として17階層(ここ)に置いていた『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が眠っており、ジュラは主神の命令でほかの仲間と共に餌である『魔石』をここに持ってくるように命令を受けていた。

 

 腹を空かせことで目を覚ました『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は、長い触手を伸ばし山のように積みあがった『魔石』を食べ始めた。

 

 『穢れた精霊(デミ・スピリット)』はモンスターと同じように『魔石』を取り込むことで『強化種』と呼ばれる強い個体へと成長を遂げることができる。

 

 『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は次々と大量の『魔石』を口に放り込み、美味しそうに食べている時だった……。

 

 

「ン?」

 

 

 『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は大量の『魔石』を飲み込んだ時に、何か別の物を飲み込んだような違和感を感じたが、既に手遅れだった……。

 

 

「─────────()()()()?」

 

 

 『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が飲み込んだのはジュラが混ぜ込んだ『指輪』であり、『指輪』を取り込んだ影響で、『穢れた精霊(デミ・スピリット)』に変化が起きた。

 

 

婚姻の女神の指輪(ギメルリング)

 それは伝説の派閥(ファミリア)が残した遺産であり、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その想いはヘタな呪詛(カース)以上の厄介な代物であり、聖火の精霊であるエレンでさえも解呪が出来なかった遺産である。

 

 さらに、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】に蓄えられた想いは、モンスターへと堕ちた『穢れた精霊(デミ・スピリット)』を自身の呪詛(おもい)で染め上げていった。

 

 

「ダーリン♪──────待ッテテネ、ダーリン♪」

 

 

 【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を取り込んだ『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は『怪物の母(エキドナ)』へと姿を変え、その体から大量の極彩色のモンスターを()()()()()()

 

 『怪物の母(エキドナ)』が寄生しているモンスターは『大蛇』のような体をしているが、正確には『巨大花(ヴィスクム)』と呼ばれる植物型のモンスター。

 

 『怪物の母(エキドナ)』は自身を苗床(プランター)とすることで、極彩色のモンスターを量産でき、(ごく)まれに『宝玉(たね)』を産み落とすことができる希少種。

 

 今回大量発生した極彩色のモンスターは、全て『怪物の母(エキドナ)』が産み落としたものだったが、【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を取り込んだ影響で、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

***

 

 

 

「───()()……『産マレル』♪」

 

『『『えっ?』』』

 

 

 聞き捨てられない『単語』が聞こえたアリーゼ達が『穢れた精霊(デミ・スピリット)』に視線を向けると、膨れ上がっていた腹部が無くなっていた。

 

 正確には、膨らみが下腹部の方に移動しており、そのまま下腹部の頭の方へと移動していた。

 

 やがて、その膨らみによって下腹部の頭部に到着すると、もう1つの大きな口が開き、口から1体の巨大な『蠍』を吐き出した。

 

 

「──────アハッ♪」

 

「……嘘だろうッ!? あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は『穢れた精霊(デミ・スピリット)』を()()()()()のかよぉ!!」

 

 

 下半身にあるもう1つの巨大な口から産み落とされた『蠍』の体を持った『穢れた精霊(デミ・スピリット)』を目にしたライラは、『ふざけんなぁ!!』と吐き捨てる。

 

 彼女達は、以前の『遠征』で59階層で『穢れた精霊(デミ・スピリット)』と戦ったことがあったが、モンスターであるのにも関わらず、『詠唱』を行い、階層の地形すら変える『精霊魔法』に全滅寸前まで追い込まれたことがあった。

 

これが『怪物の母(エキドナ)』が身に着けた能力。『精霊再誕(スピリット・レナトゥス)』。

 

 その能力(ちから)は、過去に『宝玉(たね)』が寄生し、誕生した『穢れた精霊(デミ・スピリット)』を()()()()()()()()()()()()()()()

 

 しかも、『成体』として産み落とされる『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は生まれた瞬間から精霊魔法を扱うことができ、そのまま即戦力として戦場を蹂躙させることができる。

 

 唯一の弱点は、『怪物の母(エキドナ)』自身が精霊魔法を扱えなくなることと、生まれてくる『穢れた精霊(デミ・スピリット)』のレベルは最高でLv.5であることぐらい。

 

 それでも十分すぎる脅威には変わりなく、目の前でこうも簡単に増殖される光景を見せつけられた正義に眷属達の表情は大きく歪んでいたが、先程の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の言葉にアリーゼが反応した。

 

 

「今……あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は───『また』って言った……?」

 

 

 アリーゼがそう呟くと同時に『ダンジョン』に大きな揺れが発生する。

 

 

 

***

 

 

 

「【メテオ・スウォーム】!!」

 

 

 場所は18階層、『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』。

 

 モンスターが生れ落ちないこの場所は、『安全階層(セーフティポイント)』と呼ばれている階層だが、今その場所は『地獄』と化していた。

 

 

「らぁあああああああああっっ!!!」

 

「ピギャッ!?」

 

 

 一体の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が『詠唱』を完了させ、辺り一帯に隕石の雨を降らせた直後に、1人の狼がその『穢れた精霊(デミ・スピリット)』の頭を蹴り飛ばした。

 

 

「クソがぁ!! きたねぇ、詠唱(うた)を歌ってんじゃねーよぉ!!」

 

「ベートうるさい! 口より手を動かしてよ、クソオオカミ!!」

 

「んだとぉ!! 胸がねぇ、ド貧相女!!」

 

「何だとぉぉぉぉぉ!!」

 

「こんな時に喧嘩をするでないわ!!」

 

 

 狼人(ベート)女戦士(ティオナ)の口げんかに怒りの怒号を上げる土の民(ガレス)の姿を、後方で指揮を執っていた小人(フィン)は苦笑いを浮かべながら頭を痛めていた。

 

 実は、18階層ではフィンを初めとした【ロキ・ファミリア】の幹部達が()()()調()()のため、『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』を訪れていた。

 

 その調査とは、以前レフィーヤが目撃したという白装束を纏った『闇派閥(イヴィルス)』について。『アンダーリゾート(ここ)』で何をしていたのか、手掛かりが残っていないかの調査だった。

 

 しかし、痕跡1つも見つけることができず、収穫を得られなかった彼らが地上に戻ろうとした時に、異常事態(イレギュラー)が発生。

 

 17階層から大量の極彩色のモンスターが18階層に流れ込み、『リヴィラの街』は一瞬で壊滅……その場にいた冒険者達は19階層へと逃げ去っていった。

 

 さらに、極彩色のモンスターの大群の中には50階層と18階層で倒した女体型のモンスターの姿もあり、それを目撃したフィン達は驚きを隠せなかったが……。

 

 

「アリア、アリア!!」

 

「……うそ」

 

 

 なんと、大群の最後尾にいたのは、フィン達が59階層で倒したはずの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』。さらに1体、2体───計5体の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が出現した。

 

 幸いにも、その強さは59階層で戦った『穢れた精霊(デミ・スピリット)』ほどの強さはなく、さっきベートが仕留めた個体で2体目であり、残りが3体の状態だった。

 

 

「団長ぉ! 例の怪人(クリーチャー)が現れました! 現在、アイズさんとティオネさんが交戦中です!!」

 

「……怪人(クリーチャー)まで出てきたか。だが、目的はなんだ?今回の異常事態(イレギュラー)はあまりにも突発的すぎる……」

 

 

 フィンはラウルからの報告を受け、あの赤髪の怪人(クリーチャー)の参戦の情報に表情を歪む。

 

 『レヴィス』と名乗る赤髪の怪人(クリーチャー)は、単純な戦闘能力だけならLv.6の最上位に位置する力を持っている厄介な相手。

 

 アイズとティオネはLv.6の実力者だが、赤髪の怪人(クリーチャー)は極彩色のモンスターを操ることができるので苦戦するのは必須───いや、戦力不足だ。

 

 さらに、ほかの怪人(クリーチャー)の存在も気になったフィンだったが、赤髪の怪人(クリーチャー)は頭1つ飛び抜けている。

 

 

 

 ならば……。

 

 

 

「ラウル! 僕はアイズ達の増援に向かう! 後の指揮は任せたよ」

 

「は、はいっす!!」

 

 フィンは後の指揮をラウルに任せ、アイズ達の増援に向かうべく、槍を手にし、赤髪の怪人(クリーチャー)の下へと向かった……。

 

 

 

***

 

 

 

「退け、アリア。今は貴様に用はない!」

 

「く───ッ!?」

 

 

 悍ましい形をした天然武器(ネイチャーウエポン)の一撃をアイズは『デスペレート』で防ぐが、相手の強い一撃にアイズの態勢が崩れる。

 

 

「私を無視してんじゃねーよぉ!!」

 

「チッ!」

 

 

 そこに『ゾルアス』と呼ばれるククリナイフを装備したティオネが赤髪の怪人(クリーチャー)に畳みかける。

 

 ティオネは相手の間合いを潰すために超近距離戦を仕掛け、『ゾルアス』の二刀流を叩き込むみ、赤髪の怪人(クリーチャー)に無数の傷をつける。

 

 

 

 が……。

 

 

 

「舐めるなぁ!!アマゾネスッ!!」

 

 

 赤髪の怪人(クリーチャー)は、自身の強靭さを盾にティオネの顔に強烈な一撃を叩き込む。

 

 見た目はヒューマンなのにドワーフを連想させるその一撃は、連撃を叩き込んでいたティオネの動きが止まり、後ろから『ティオネ!!』とアイズの悲鳴染みた声が響く。

 

 

 

 だが……。

 

 

 

「オラァァァァァァッ!!!」

 

「──────ッ!?」

 

 

 ティオネはお返しと言わんばかりの力を籠め、全力の一撃を赤髪の怪人(クリーチャー)の顔に叩き込む。

 

 ティオネの一撃を顔面に食らった赤髪の怪人(クリーチャー)は、遥か後方に吹き飛ばされ、大きな結晶の山に衝突し、崩れ落ちる結晶の下敷きにされた。

 

 

「ちっ! 本気で殴ったのにどんだけ固いのよ、あいつ」

 

「ティオネ、大丈夫?」

 

「問題ないわ。殴った方の手に罅が入った程度よ」

 

 

 心配で駆け寄ってきたアイズに対して、ティオネは『へーきよ』と言いながら、罅が入った手に高等回復薬(ハイ・ポーション)を垂らしていた。

 

 すると、崩れ落ちた結晶が大爆発でも起きたかのような音を上げ、粉々に砕け散った結晶が粉雪のように空中を舞い、赤髪の怪人(クリーチャー)が苛立ちの表情を表しながら現れた。

 

 

「邪魔をするなと言ったハズだ。お前たちに用はない」

 

「そうゆう訳に行かないでしょう。そもそも貴方達の目的は何よ?」

 

「言ったハズだ。お前達に用はない。私はただ『餌』を取りに来ただけだ」

 

「餌?」

 

「『あいつ』は長い間、同族を喰っていないせいか、『あれ』を喰わせろとうるさくて構わん。だから、邪魔をするな」

 

「同族……まさか、『精霊』……!?」

 

「噓でしょ!?」

 

 

 赤髪の怪人(クリーチャー)───レヴィスの目的を聞いたアイズとティオナの2人は驚きを隠せず、驚きの表情が顔に出ていた。

 

 無理もない。『穢れた精霊(デミ。スピリット)』が求める程の精霊といったら中位精霊以上……下手をすれば大精霊クラスの存在。

 

 そんな存在がこの【下界】にまだ存在しているとは思ってもいなかった2人だったが、レヴィスが動き出したの機に意識を切り替えた。

 

 

 

***

 

 

 

 

「エクス、カリバーーーーーーーッッ!!」

 

「─────────ッッ!!!」

 

 

 エレンの放った『精剣』の光線が爆発する粉塵をばら撒く『穢れた精霊』を飲み込み、跡形もなく消滅させていく。

 

 さらにエレンは高等精神力回復薬(ハイ・マジックポーション)を飲み干し、『精剣』の融合を解除させ、魔剣【紫雷姫(しらひめ)】を使用し、極彩色のモンスターの群れを灰へと変えていった。

 

 

「ド~シテ私ノ『愛』ヲ受ケ取ッテクレナイノ、ダーリン? イッパイ子供ヲ作ッテ、一緒ニ『空』ヲ見ニ行コウッテ約束シタノニ~」

 

「愛し合ってもいないし、そんな約束したことはないわ!!」

 

「大丈~夫♪ タクサン子供ガデキタラ、ダーリンハチャント食ベテアゲルカラ~。ソシタラ、私達ハズ~ト一緒♪ 私達ハドロドロニ溶ケ合ッテ、1ツニナルノ~♪」

 

「それただの『カマキリ』か『チョウチンアンコウ』の末路じゃねーかぁ!!?」

 

 

 余りにも歪で重過ぎる愛情表現を受けたエレンは悲鳴染みた声を上げながら、『怪物の母(エキドナ)』が産み落とした『穢れた精霊(デミ・スピリット)』と戦っているアリーゼ達に『退避してくださーい!』と声を上げ、再び『精剣』を作り上げ『怪物の母(エキドナ)』に向けて振り下ろした……。

 

 

 

 が……。

 

 

 

「イタイ、イタイヨ、ダーリン……。デモ、残念♪」

 

「ハ、ハハハ──────噓でしょ……!?」

 

 

 何と、『エクスカリバー』の直撃を受けたのにも関わらず、『怪物の母(エキドナ)』はいまだ健在。

 

 『エクスカリバー』の光線で焼け落ちた肉体は瞬時に再生し、あっと言う間に無傷の状態に戻り、自身の体から新たな極彩色のモンスターを産み落としていった……。

 

 

「ちょっと、あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は固すぎでしょ!! 私のバーニングな炎でいくら焼いてもすぐに再生されるんだけどっ!?」

 

「それだけではない。あの蠍型も厄介だ! あの超大型の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が産み落とした個体が全部で4体……」

 

「その全部が『階層主』級の強さだ。このまま戦い続けても埒が明かないぞ!」

 

 

 一旦、態勢を立て直すため、後方まで下がったアリーゼ達がアミッドの回復魔法を浴びながら状況を確認しあっていた。

 

 超大型級の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は精霊魔法を撃ってこないが、その潜在能力(ポテンシャル)は推定Lv.8クラス。蠍型の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は推定Lv.5クラスで『アンフィス・バエナ』と同じくらいの強さを持っていた。

 

 

「(『アンタレス』に寄生した個体が生まれ落ちたのを見た時はゾッとしたけど、『エルソスの遺跡』で戦った個体に比べたら遥かに弱くて助かった……)」

 

 

 エレンは高等精神力回復薬(ハイ・マジック・ポーション)で補給を済ませながら、蠍型の『穢れた精霊(デミ・スピリット)』をじっと見つめていた。

 

 この『穢れた精霊(デミ・スピリット)』は、以前、『エルソスの遺跡』で戦った『アンタレス』に寄生した個体。またの名を『女神を喰らった蠍(ギルタブルル)』。

 

 さらに、『女神を喰らった蠍(ギルタブルル)』は月の女神(アルテミス)を取り込んでいた影響で神の力(アルカナム)をその身に宿し、推定()().()()()潜在能力(ポテンシャル)を持っていた。

 

 『怪物の母(エキドナ)』が産み落とした個体は、そこまでの潜在能力(ポテンシャル)は持っていないが、それでも厄介な事には変わりはない。

 

 流石の状況に、【アストレア・ファミリア】のメンバーは一旦、態勢を立て直し、再び再アタックを試みようとした思った瞬間、エレンが『待った』をかけた。

 

 

「ん? どうしたの、エレン?」

 

「皆さん。あの『穢れた精霊(デミ・スピリット)』が()()()()()……倒せますか?」

 

「……出来るのか?」

 

「恐らくは……。まぁ、ちょっと博打の面もありますが、弱体化はできるかと」

 

「でも、どうやってだよ? そもそもお前にそんな『魔法』や【スキル】ってあったか?」

 

「あったと言うか……。副次的効果と言うか、相性問題みたいなもんで……」

 

『『『???』』』

 

 

 エレンが『弱体化させれば倒せますか?』という質問に、正義の乙女達は『まぁ、弱体化できれば……』と返答しながらも、具体的な方法についてエレンに尋ねていた。

 

 【アストレア・ファミリア】のメンバーは、『戦争遊戯』に向けての特訓の時にエレンの【ステイタス】の内容を把握している。

 

 しかし、エレンの【ステイタス】には相手を弱体化させる類はなかったハズだと思っていると、エレンがとある魔法を口にした。

 

 

()()()()()()()()を使います」




ここまで読んでいただきありがとうございました。

もう片方の【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】の登場でした。なお、『怪物の母(ギルダブルル)』は【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を取り込んだ影響で、()()()()()()()()()()()のような感じになっています。
 
 その影響でもう片方の【婚姻の女神の指輪(ギメルリング)】を持っているエレンを狙って、地上に向けて大量の極彩色のモンスターを向かわせました。


エレン
 『怪物の母(ギルダブルル)』に熱烈なアポローチ?にめっちゃ困惑した半精霊。
なお、『怪物の母(ギルダブルル)』に捕まり取り込まれた場合は、59階層にいた『穢れた精霊(デミ・スピリット)(クラス)がたくさん産まれて、【迷宮都市(オラリオ)】が崩壊するバッドエンドルートが存在します。

【アストレア・ファミリア】のメンバー
 エレンの精霊魔法の『第二階位』の内容は知っていますが、それが『穢れた精霊(デミ・スピリット)』特攻を持っていることを知りません。

アミッド
 この時のエレンは思いっきりアミッドの事を思いっきり忘れており、うっかり『精霊魔法』のという単語を口走っていますが、『エレンは精霊の血を引いていて精霊の奇跡(まほう)を扱える』と言って誤魔化しました。
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