「───以上が作戦と言うか、あの『穢れた精霊』を弱体化させる方法です」
「えっ? エレンのあの精霊魔法第二階位にそんな効果があったの?」
「あったというか……何と言うか……」
「あの~。先ほどから何度も出ている『精霊魔法』とは……?」
『『『あっ』』』
エレンがあの『穢れた精霊』の弱体化させる方法を説明すると、何度も出てくる『精霊魔法』という単語に疑問に思ったアミッドが手を挙げたことで、アミッド以外の全員の声が1つになった。
まさかの『穢れた精霊』戦ですっかり失念していたが、アミッドはエレンが『ヒューマン』と『精霊』のハーフ───『半精霊』と呼ばれる存在であることを知らない。
それなのに、先程まで『精霊魔法』と言う単語を連呼させていたことに今更気が付いたエレン達は冷や汗をダラダラと流したが、エレンがとっさの嘘をついた。
「じ、実は……自分の先祖が精霊の血を分けてもらった人で……その末裔である自分は精霊の魔法を扱うことができるんです!!」
「……なるほど。精霊の奇跡を授かった一族だったのですね。では、あの凄まじい回復魔法もその精霊魔法の一端なのですか?」
『『『そ、そうそう! そうなの!!』』』
エレンは同じ派閥の仲間のヴェルフから聞いた話をちょっとアレンジした作り話で、どうにか誤魔化すことができたエレン。
「よし! エレンの作戦で行くわよ! 足止めをしているライラ達を呼び戻s『スマン!デカいのが来るぞー!!』」
そのままの勢いでエレンが提案した作戦を実行することをアリーゼが決めた途端───『穢れた精霊』を足止めしていたライラ達がこちらに戻ってきた。
ライラ達には、『穢れた精霊』の足止めをお願いしており、エレンが持っていた魔剣【火影】、【白雪】、【紫雷姫】の3振りの魔剣を渡していた。
そのライラ達が急いで此方に走ってくる姿を見たエレン達は何事かと思っていると……。
「【代行者ノ名ニオイテ命ジル 与アタエラレシ我ガ名ハ火精霊 炎ノ化身炎ノ女王ーーー】!!」
「ちょっ!? それは不味過ぎッ!!」
4体いる内の1体の『女神を喰らった蠍』が超長文詠唱を完了させようとしており、エレンは急いで魔剣【白雪】を受け取ると全力の回復魔法を注ぎ込み、最大限の増幅を施した。
「【ファイヤーストーム】!!」
「【白雪!!】
極大の炎嵐と絶対零度の氷壁がぶつかり合い大量の水蒸気が発生する。
それぞれの威力は互角───互いの一歩も譲らない精霊同士の火力勝負は互角に終わると、火力勝負の影響で発生した水蒸気の中から戦乙女たちが走り出した。
「【その炎は、穢れを寄せ付けぬ聖なる火】」
エレンは自身の魔法円を最大展開させ、可能な限りの精神力を注ぎ込みながら詠唱を始めていた。
「【これは、神殿を守る火の障壁】」
これは【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』で使った精霊魔法第一階位にあたる『結界魔法』。
「【その聖火(ほのお)は障壁となって我らを守れ───】」
短文詠唱で形成されるこの『結界魔法』はエレンの能力値で高い防御性能を発揮させることができるが、この魔法ではこの戦局を覆すことはできない。
ゆえにエレンは……。
「【───月は満ちた】」
詠唱を繋げた。
「詠唱が、繋がった……。これは【九魔姫】様の『詠唱連結』!?」
エレンの詠唱をマリューに守られながら見ていたアミッドは、エレンの詠唱文が変わったことに気づき、その魔法特性の名を口にした。
『詠唱連結』とは、王族の王女リヴェリア・リヨス・アールヴのみに許された魔法特性だったが、とあるリヴェリアとのキスと魔導書の影響でエレンにも発現した魔法特性。
「【月女神の聖域よ、精霊の楽園よ。今日この日、我が身は祈りを捧げる】」
エレンが詠唱しているのは精霊魔法第二階位。この魔法は第一階位と一緒に発現していたが、その魔法の内容的に『戦争遊戯』では出番がなかった魔法である。
「【燃え続ける聖火は月光へと変わり、精霊の聖域をここに】」
エレンの新たな詠唱によって展開された魔法円はさらに大きくなり、やがて『嘆きの大壁』全体へと広がった。
「【楽園をここに。穢れは消え去り、全ての者に月女神の祝福を】!」
エレンが最後の詠唱文を唱え終えると、展開された魔法円から、月光を放つ粒子が宙を舞った。
エレンのこの魔法は、『天界』に存在する月の女神の領土に存在する『精霊達の楽園』と呼ばれる聖域の疑似再現。
「【月女神の聖域】!!」
エレンがその名を告げると、展開された魔法円は暗い空間を月の光で照らし始めた。
【月女神の聖域】
その効果は展開されている魔法円内の空間に『聖域』を付与させる付与魔法であり、結界魔法でもある『解呪特化』の領域魔法。
この『聖域』内では、如何なる呪詛や呪道具を無力化させることができるが、傷の回復や毒を始めとした状態異常には全く効果を発揮させることができない。
その効果ゆえに【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』では使われることのなかった魔法であるが、今回のような『穢れた精霊』戦では大いに活躍できる魔法だ。
なぜなら……。
『『『アァァァアアアアアアアアアアッッ!!??』』』
「全ての『穢れた精霊』が、苦しんでいるっ!?」
「おいっ! 弱体化している今が好機だ! 今のうちに畳みかけろ!!」
この【テメノス・ディアナ】の真の効果は『対穢精霊特攻』を持っていること。
エレンの回復魔法【聖なる炎】に比べるとやや出力は落ちるが、広範囲に『穢れた精霊』を弱体化できる『聖域』を展開できる。
さらに、この【月女神の聖域】は付与魔法の性質を持っている影響で、アルフィアのように他の魔法も使用することが可能。
だが……。
「(──────ッッ! やっぱりこれだけ広範囲に展開すると、精神力がゴリゴリ削られる……! 持って5分って所かな……?)」
【月女神の聖域】は、エレンが精神力を消費し続けることで維持されるが、その消費量は展開する範囲で大きく変化する。
今エレンが展開しているのが最大範囲であり、その規模はヘイズ・ヘルベットの最大範囲に比べるとやや劣るぐらいだったが、それでもここにいる全ての『穢れた精霊』を包み込むには十分だった。
エレンの【月女神の聖域】の影響で弱体化された『穢れた精霊』達は再生能力が低下し、お得意の精霊魔法をうまく唱えることもできず、アリーゼ達の猛攻を受け着実にダメージを与えていた。
「(このまま【月女神の聖域】を維持していれば勝てる──────でも)」
エレンは【月女神の聖域】が途切れないように意識を集中させてさせていたが、エレンの体にとある変化が起きていた。
「まただ、体が高熱を出しているかのように熱い……!?)」
エレンの体が高熱を出しているかのように熱くなっており、その影響で息が荒くなり、顔には大量の汗がにじみ出ていた。
この現象は【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯』にも同じような症状が出ていたが、この時のエレンは『あれだけ大暴れしたんだから、体が熱くなるのはしょうがないか……』と思っていた……。
しかし、今回の戦いではエレンはそこまで激しい動きはしておらず、しいて言えば『魔法』を大量に使用したぐらいである。
詳しい原因は分からないが体が熱い以外の不調は全くなく、寧ろ調子がいいと感じたエレンは、そのまま『聖域』を維持させていると、自分を狙う殺気を感じたエレンはとっさに体を大きく仰け反らした……。
「うぉっ!?」
「チッ! 外シタカ……」
そこに現れたのは仮面をつけ全身を紫紺のローブで身を包んだ人物で、エレンは何とか銀のメタルグローブの突きを回避した。
「マサカ貴様ガ『精霊』トハナ……。コノママ『生ケ捕リ』ニサセテモラウ」
「断る!!」
予想外の乱入者だが、エレンは【月女神の聖域】が消滅しないように精神力を注ぎながら仮面の人物の相手を始めた。
「グッ!? キ、キサマッ!! 本当ニLv.2カッ!?」
「そう言う貴方はLv.3って所ですか? レベルでは負けていますが───」
「ガハッ!?」
「今はとても調子がいいので、負ける気はしません……」
仮面の人物は銀のメタルグローブで何度もエレンを捕えようとしているが、エレンは『模倣』した様々な動きを駆使して仮面の人物を渡り合って───いや、エレンが善戦していた。
オッタルの『絶対防御』を軸に女戦士の近接戦闘技術と狼人の足技を組み合わせることで、仮面の人物を圧倒していた。
「クッ!? ヤレ、食人花ッ!!」
エレンの攻撃によって吹き飛ばされた仮面の人物は地面に手を置き、その名を叫んだ。
その呼びかけに答えるように地面から無数の触手が打ち出され、エレンはとっさに【炉の女神の大盾】で防御しながら魔剣【火影】を引き剝き、無数の触手を焼き払った。
「クッ! 食人花デハ歯ガ立タナイカ。ナラバ───」
仮面の人物は食人花では力不足と判断し、今度は『巨蟲』を差し向けようとした時だった……。
「──────何ッ!?」
魔剣によって発生した炎の中から突っ込んできたエレンに驚いた仮面の人物は、装着しているメタルグローブを交差させることで大盾の突撃を防御するが……。
「グッ!? 何ダッ!? 攻撃ガ重イ、ソレニ速度モ上ガッテイルダトッ!?」
予想外の威力に仮面の人物は大きく混乱し、エレンはこの隙を見逃さず追加の大盾の突撃を畳み込み、仮面の人物にさらなるダメージを与えることに成功した。
「───何ダ、オ前? ソノ片目ト前髪ハ何ダァ……!?」
「?」
仮面の人物がエレンの変化した容姿について声をあげるが、エレンは自分の容姿の変化に気が付いておらず、ただ体が今まで以上に熱い状態になったいた。
今のエレンの容姿は左目と前髪の一部が青色から赤色に変化しており、身体能力が大きく向上していた。
「分身ドモッ!! 早クコイt────────ガァッ!!?」
仮面の人物が『穢れた精霊』をエレンに差し向けようと号令を掛けようとした瞬間───エレンは向上した身体能力で一瞬で仮面の人物と距離を詰め、顔面を掴みそのまま地面に叩きつけ、号令を阻止した。
「(理由は分からないけど、全能力が上がっている───でも……)」
エレンは回復魔法の炎を纏わせた状態を維持しながら仮面の人物を地面に取り押さえていたエレンだったが、その表情は今にでも倒れてしまいそうな表情をしていた。
「(熱い……! さっきより格段に熱が上がっている……!?)」
全身から汗が吹き出し、息がどんどん荒くなり、生存本能が今すぐ体を冷却をするように訴えていた。
「……えるふ?」
「!!」
何とか暴れる仮面の人物を取り押さえている時だった……。
エレンが地面に叩きつけた時だろうか、罅が入った仮面の一部が割れ、そこからベルと同じ赤い瞳と細長い耳がエレンの視界に映り込んだ。
エレンは視界に入ったその特徴的な部位を持つ妖精の名を口にすると、取り押され、抵抗し、あれだけ暴れていた仮面の人物は一瞬で大人しくなった……。
「……フフ、アハハハハハハハハッ!!!」
「……どうしたんですか? いきなり笑いだし──────っっ!?」
仮面の人物が突然大きな笑い声を上げたことにエレンが戸惑っていると、仮面の人物が抑えているエレンの右手を掴むと突然猛烈な痛みが走り、思わず抑えていた右手を思わず離してしまった……。
「見ロッ!! 私ノコノ穢レタ体ヲッ!! ドウダ? 嗤エルダロウ?」
抑えていた右手が離れてしまった影響で、拘束が緩んだ仮面の人物はエレンの腹を蹴り飛ばし、エレンの拘束から抜け出すと、エレンに自身の右手を見せた。
仮面の人物の右手には真っ赤な血で濡れた口が生えており、くちゃくちゃと音を鳴らしながら何かを咀嚼していた。
「……」
エレンは痛みがあった右手に視線をやると、何か喰いちぎられたような跡があり、傷跡から真っ赤な血が流れており、ジワジワと痛みが込みあがってくるのを感じた。
回復魔法を行使した状態を維持していたことで、喰いちぎられたような跡はどんどん治ってゆき、最終的には傷跡1つない状態になっていた。
「喰ワレタ部分ハ治ッタカ? ドウダ?喰ワレタ感想ハ? 怖イト思ッタカ? ナァ、聞カセテクレ!」
仮面の人物は口に生えた右手を差し向けながら、エレンに問いただしていた。
それはまるで、穢れた自分の存在をあざ嗤ってほしいかのような光景であり、殆どの者は言葉すら発することができない状況だったが……。
「美味しかったですか?」
「──────ハ?」
「いや~。前にもあの個体とは違う『穢れた精霊』にも喰われそうになったことがあったんですけど……そんなに自分って美味しいのかな~と思って」
「………………」
『美味しかったですか?』。その単語が出てくるとは思いもしなかった仮面の人物は思考が停止してしまい、その場に固まってしまった。
それもそのはず、一体どこに自分を食べた感想を聞く変態野郎が存在するのだろうか。
いたよ、ここに。
恐らくこの【下界】に唯一無二の変態野郎の発言に、仮面の人物の右手に生えた口は開いた口が塞がっておらず、半開きの状態になっていた。
「ん?どうしたんですか?」
「……ヘッ? イ、イヤ、アノ、エット───」
「───それに、さっき『怖かったか』って言っていましたけど、聞く相手間違えてますよ?」
「エ?」
思考が上手く纏まらず片言になってしまった仮面の人物だったが、そこにエレンが『聞く相手間違えてますよ?』とケロッとした表情で指摘を加えた。
「地上で自分が何て呼ばれているか───知っていますか?」
「─────────アッ」
エレンの指摘に仮面の人物の頭にはエレンのとある呼び名が浮かんでいた。
その呼び名は神々や冒険者達が勝手に付けた呼び名なのだが、『戦争遊戯』で【アポロン・ファミリア】を蹂躙し、自爆を恐れず、最凶の女神の遺産を身に着ける異常者。
その名も【怖いもの知らず】。
『恐怖』という名の感情が存在しないんじゃないかと噂されている彼の呼び名が、仮面の人物の頭の中を埋め尽くし、ふとっ、エレンの顔を見た仮面の人物は……。
「──────ヒィッ!!?」
『恐怖』した。
ケロッとしたエレンの顔がおぞましいナニカに見えた仮面の人物は急いで戦線を離脱───この『嘆きの大壁』から姿を消してしまった……。
「……逃げちゃった。結局、あの人は何だったんだろう……?」
あっと言う間に消えてしまった仮面の人物を目で追っていたエレンだったが、エレンは『怪人』という存在を知らない。
その証拠にエレンが発動している【月女神の聖域】による弱体化は『穢れた精霊』のみであり、その系譜にあたる『怪人』には効力を発揮していなかった。
これは【月女神の聖域】を発現する時に『怪人』という名の存在を認知していなかったことが原因であり、エレンが『怪人』という存在を知るのはまだ先の話だった。
「いけねぇ! まだ戦闘の途中だった!!」
予想外の乱入者だったが、まだ『穢れた精霊』戦は終わってはいない。
現に蠍型の『穢れた精霊』は全て倒されたようだったが、女王型である『怪物の母』は未だ健在だった。
というか……。
「あ~~~な~~~た~~~♡♡♡」
こっちに来ていた。
階層主を優に超える超巨体を引き摺りながら此方にやってくる光景は、大地が津波として襲ってくるような光景で、『回避不能』、『防御不能』の突撃だった。
「───なら」
回避不能、防御不能……残された選択は『迎撃』のみ。
エレンは魔剣【白雪】と【火影】を融合させ、精剣【エクスカリバー】を造り上げた。
さらに、精剣【エクスカリバー】を変形させた【月女神の大弓】に装着させると、【月女神の大弓】に光り輝く巨大な『魔法』が装填された。
「───【ロンゴミニアド】」
エレンは【エクスカリバー】と同じく伝説の武器の名をこの『魔法』につけた。
正確には【ロンゴミニアド】は『矢』ではなく『槍』の名のだが、見た目がドリルのような形状をしており、『矢』というより『槍』と言った方がしっくり来たのでそう名付けることにした。
エレンが放った【ロンゴミニアド】は高速で回転しながら『怪物の母』に向かって一直線に飛来した。
「アハッ♪ キレイナ光───デモ、残念!」
『怪物の母』は自身の体から寄生先と同一個体である『巨大花』を産み落とし、そのまま【ロンゴミニアド】にぶつけることで、物理的は防御を施した。
産み落とされた『巨大花』はそのまま【ロンゴミニアド】に向かって直進し、その巨体を以てして攻撃を防ごうとしたが……。
「…………ヘッ?」
『巨大花』に体は無抵抗に大きな穴が開けられ、【ロンゴミニアド】は勢いを落とさず、そのまま『怪物の母』の巨体をも貫通させた。
【ロンゴミニアド】は【エクスカリバー】の高い殲滅力を一点集中型の貫通力に変化させた精霊武装。
『巨大花』はその巨体が灰となって消滅。『怪物の母』を貫通した【ロンゴミニアド】は、役目を終えたかのように形を崩壊させ消滅───『怪物の母』の体には大きな風穴が開けられたいたが……。
「───マダッ! マダ終ワッテイナイヨ、エレン♪ 愛ハ不滅ナノヨォォォォッッ!!!」
どうやら、核である魔石が完全には破壊できなかったようで、体に巨大な風穴を開けらにも関わらず、『怪物の母』は健在だった。
一方のエレンはさっきの【ロンゴミニアド】が最後に残された精神力を注ぎ込んだもので、もう精神力は残っておらず、【月女神の聖域】を維持できず、『聖域』はとっくに消滅していた。
自身を弱体化させていた『聖域』が無くなったことで力を取り戻しつつあった『怪物の母』だったが、エレンに意識が向きすぎたが故に、後ろにいる正義の炎には気が付いていなかった。
「───後は頼みます」
「任せて♪」
「エッ?」
精神疲労で意識が遠のきながらも振り絞ったエレンの言葉を聞いたアリーゼが、自身の付与魔法の炎を一点集中させ、全力の一撃を『怪物の母』に向けて叩き込んだ。
「【炎華!!】
アリーゼの付与魔法【アガリス・アルヴェシンス】の発動中に使用できる爆散鍵。
その炎の一撃は、『怪物の母』の魔石を正確に打ち抜き、『怪物の母』は悲鳴を上げることなく空中に大量の灰をまき散らしながら消滅した……。
***
「ちっ!『怪物の母』がやられたか……」
「おや? どうしたのかな? 顔色が悪そうだけど?」
18階層に起こっていた戦いにも終わりを迎えていた。
Lv.6のフィンの参戦で17階層に迎えなかったレヴィスはフィン達に寄って18階層に釘付けにされていたが、今回の異常事態の原因である『怪物の母』の消滅を感じ取った。
殆ど無表情のレヴィスだったが、『怪物の母』の消滅による、ほんの少しの表情の変化をフィンは見逃さず、挑発を込めた発言にレヴィスの表情は一気に険しいものになった。
「……これ以上18階層にいる意味も無くなったな。『怪物の母』が死んだ以上、『アレ』を補足することは困難か……」
エレボスがエレンの体に施した『認識阻害』は『怪人』にも有効であり、レヴィス達だけでは、エレンを『精霊』として認識することはできなかった。
しかし、『穢れた精霊』を介することで、今回のようにエレンを『精霊』することができ、レヴィスと仮面の怪人が参戦してくる事態になっていた。
だが、エレンを補足していた『怪物の母』がやられたことでエレンの補足が困難と判断したレヴィスは撤退をすることを決めた。
「───ッッ!? 待って!!」
「逃げんな、おらっ!!」
「お前達の相手は『こいつ』だ」
その場から立ち去ろうとしたレヴィスの後を追おうとしたアイズとティオネの前に立ち塞がったのは近くの湖から現れた2体の『巨大花』。
2体の『巨大花』はその巨体でアイズ達の目の前に立ち塞がり、レヴィスの追跡を物理的に遮断させられてしまった。
「フィン! 私だけでもあの人を……!」
「……いや、いい。今回は諦めよう」
「えっ!? いいんですか、団長!」
「今回の僕達の目的はあくまで『調査』だ。何より今回の調査にリヴェリアやレフィーヤが参加していなかった分、僕達の消耗も大きい……これ以上の深追いは危険すぎる」
フィンがアイズとティオネの2人を静止させ、目の前に『巨大花』に集中するように命令を出した。
そもそも、18階層には『調査』を目的として来ており、リヴェリアやレフィーヤは地上で待機しており、フィン達は満足に戦えるだけの戦力と道具を用意しておらず、今回の大規模戦闘は明らかな予定外。
下手に相手を刺激し、【ロキ・ファミリア】にこれ以上の被害を出さない方針を固めたフィンの指示に2人は従い、目の前に現れた2体の『巨大花』の討伐することに専念。
少し離れた場所で戦っているガレス達も最後の『穢れた精霊』に止めを刺す終えた所のようで、アイズ達の所もフィンが戦闘に参加することで『巨大花』はあっという間に討伐され、これにて今回の異常事態に終止符を打つことができたのであった。