聖火の精霊が英雄達を手助けするのは間違いだろうか   作:フェイト・

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お気に入り数2500に到達しました。投稿する度に多くの人達からの感想は投稿主にとって、とても励みになっています。

そして、申し訳ありません……。リアルの方で残業続きのため、中々、小説を描く時間が取れなくなってきてますので、投稿頻度が遅くなる可能性があります。(今回みたいに)


43話 新しい本拠(ホーム)

「う、う~ん……」

 

 

 時間は()()()()()()に差し掛かろうとして時だった。

 

 館の中では仲間が引っ越し作業をしている中でエレンは重い瞼をゆっくりと開き、ベッドの上から新しい部屋を見渡していた。

 

 

「……あと、5分、だけ……Zzz」

 

 

 二度寝に入りやがったぞこいつ?一度は目を覚ましたエレンだったが襲い掛かってくる睡魔の誘惑に秒で負け、エレンの意識が深い夢の底に沈みそうになった時だった。

 

 

「───今、何時~……?」

 

 

 二度目から目を覚ましたエレンは三度寝の態勢に入ろうとしたが、念のため現在の時間確認を行った。

 

 エレンは何とか思い瞼を開き、部屋に置かれてあった時計を凝視するが視界がぼやけてしまっており、目をこするなどして何とか時計の針を視認することに成功した。

 

 

「───何だ、まだ1時か…………1時?」

 

 

 2つの針が指している時計を視認した『な~んだ。まだ一時か』と安堵の息を漏らしたが、窓から差し込んでくる日の光に気が付き、急いでベッドから立ち上がった。

 

 

「───まさかッ!?」

 

 

 ベッドから急いで飛び起きたエレンは日の光が差し込んでくる窓から外の景色を確認するが、そこには多くの人が行き交っており、エレンの顔は冷や汗が大量に流れ次第に青ざめていった……。

 

 

「ね、寝坊したぁーーーーーーーーーーッ!!??」

 

 

 今日は引っ越し作業をすることは昨日聞いていたはずだったのに、大寝坊をかましてしまったことに気がついたエレンは大きな声を上げ、その声を聞いたほかの団員たちは『あっ、今起きたんだな~』と察するのであった。

 

 

「ごめんッ!!寝坊しましたぁーーーー!!」

 

 

 直されていない寝癖や乱れた寝間着姿で引っ越し作業をしていたヴェルフやリリの目の前に現れたエレンは、腰を90°に折り謝罪したが『おう、おはよう!』や『おはようございます、エレン様』と普通に挨拶をされ、エレンはあれ?っと思った。

 

 

「……怒ってないの?」

 

「逆に何で怒られると思ってんだよ?昨日はヤバいモンスターと()りやってきたんだろ?流石にそんな奴に朝っぱらから働かせる奴がどうかしていると思うぞ?」

 

「それにヘスティア様から大体の話は聞いていますし、えっと……『精霊状態(モード)』でしたっけ? 初めての『変身』だったからエレン様が思っている以上に負荷が掛かっているはずだから寝かせて置いてほしいと言われていましたし……」

 

 

 どうやら、昨日部屋で話した内容はベル達に共有済みだったようで、エレンが今まで起こされなかったのはわざとのようだった。

 

「で?熱はどうなんだ?」

 

「ん?あぁ、熱は引いたみたい。それよりあの大勢の人の集まりは何?」

 

「あ~。あれはですね───」

 

 

 ヴェルフが熱を出していたエレンを心配して尋ねてみるが、『水精霊の護布(ウンディーネ・クロス)』が上手く エレンの中に溜まった『魔力(ねつ)』を排出してくれたようで熱もすっかりと引いていたエレンはその事を伝えると同時に外で大勢いの人だかりができていることを尋ねるとリリが一枚の紙を渡した。

 

 

「『【ヘスティア・ファミリア】、入団希望者募集! 来たれ、子供達!!』───ナニコレ?」

 

「見ての通り、団員募集の広告紙ってやつだ。俺達の『戦争遊戯(ウォーゲーム)』で一躍有名になった影響だな」

 

「『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の映像は、【迷宮都市(オラリオ)】が宣伝目的で世界中に流していたようで、都市外(そと)から大勢の商人や冒険者が流れ込んでいるようです」

 

 

 ヒューマン、ドワーフ、獣人にアマゾネスや小人族(パルゥム)半亜人(ハーフ)など様々な種族が集まっており、その光景は『圧巻』の一言についたが、()()()()()の姿がないことに気がついたエレンは『あれ?』と思った。

 

 

「……妖精(エルフ)が1人もいない……?」

 

「……まぁ、当然っちゃ、当然だなぁ」

 

「『あれ』だけのことがあったんです。それに、今のエレン様はエルフ達から『畏怖』の象徴として捉えらていますので……」

 

「どゆこと?」

 

 

 広告紙を見て集まってきたであろう人だかりの中には妖精(エルフ)半妖精(ハーフエルフ)の姿が見当たれなかったことに疑問に思ったエレンだったが、その疑問はすぐに解消された。

 

 それは【アポロン・ファミリア】が開催した『宴』の時に起きた出来事だった。

 

 リヴェリアとダンスをしていた時に発生した事故(アクシデント)で、リヴェリアの唇を奪ってしまったエレンは【迷宮都市(オラリオ)】のにいる多くの妖精(エルフ)達から『絶対悪(エレン)狩り』と呼ばれる事件が発生したことだった。

 

 何とか周りの手を借りたり、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』で勝利を収めたことで、一応『絶対悪(エレン)狩り』を終息させることができたわけなのだが、リリの口から『畏怖』という名の単語が出てきた。

 

 

「『戦争遊戯(ウォーゲーム)』ですよ、エレン様。借り物の魔法とはいえ、超長文詠唱の『平行詠唱』に、補給なしの『連続詠唱』───さらには、超長文詠唱を利用した『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』。魔法種族(マジックユーザー)であるエルフ達は『何であんなことができるのぉ!?』とか『無理無理っ!!絶対死んじゃうぅ!!』とか『青い髪……ヒューマン……怖い……』と言った話題が今広がっている最中です」

 

「初耳なんだけど?」

 

「あと、今日の朝に【アストレア・ファミリア】の何人かが【ランクアップ】した速報が流れたなぁ。で、Lv.6になった団長さんが()()()()()()()()()()()()()()

 

「それも初耳だし何があった?」

 

 

 リリから大まかな事情を聞いた直後に、ヴェルフからアリーゼを含めた数人が【ランクアップ】した事と、そこの団長であるアリーゼが仲間から追い回されていることを聞いて、エレンの頭の中に大量の?マークが浮かび上がった。

 

 どうやら、アリーゼ、輝夜がLv.6になり、ネーゼ、アスタがLv.5に【ランクアップ】したとのことらしく、今の【迷宮都市(オラリオ)】でLv.6の領域に入ったのは【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】しかいなかったので、その速報は大きな話題になったらしい。

 

 

「全員じゃないんだ……」

 

「まぁ、流石にといいますか。【アストレア・ファミリア】の皆さんは、全員が第一級冒険者になれる逸材と評価されている人達ですが、第二級(Lv.4)から第一級(Lv.5)への昇格(ランクアップ)は困難を極めると言われています」

 

「それでも、昨日の戦闘は相当ヤバいものだったんだろう? 今回がダメだったとしても、そう遠くない内に【ランクアップ】するんじゃないか?」

 

 

 ヴェルフの言う通り、昨日の『怪物の母(エキドナ)』との戦闘はとても激しいものだったこともあるが、その前に『女神を喰らった蠍(ギルダブルル)』の影響で発生した『ダンジョンの暴走』の一件も大きく関係していた。

 

 今回、【ランクアップ】しなかった者達も能力値(ステイタス)がそれなりに伸びており、『偉業』も相当貯めることができ、()()()()の状況まで来ているのであとは時間の問題だった。

 

 

「まぁ、話は分かったけど、何でアリーゼさんが追い回されているの?」

 

「あぁ~。それは……」

 

「『いつもの』、です」

 

「いつのも?」

 

「お前はオラリオ(ここ)に来たばかりだから知らねぇのも無理ないが、あの団長さんは何かしらやらかしていっつも追い回されているぞ」

 

「前回は確か……『リオンに春が来たわー!』と大声で叫んで、【疾風(しっぷう)】と全力の鬼ごっこをしていましたね」

 

「正義の派閥とは……?」

 

「ですが、逆に考えればその分『平和』ということです。【アストレア・ファミリア】(あの人達)は【迷宮都市(オラリオ)】の秩序を象徴しているようなものですし……」

 

「【オラリオ】の住民達も昨日の一件で不安がっていたが、【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】が追い回されている姿を見て安心したぐらいだしなぁ!」

 

「───最後はどうなったの?」

 

「最後の最後には捕まって、【アストレア・ファミリア】の本拠(ホーム)に連行されていったそうです」

 

「あ~……」

 

 

 どうやらアリーゼは逃げ切ることが出来なかったようで、捕まってしまったらしい。

 

 エレンは空に浮かんで見えたアリーゼに敬礼を捧げると、集まった入団希望者の前に立ったヘスティアが入団面接を開始しようとした直後だった───。

 

「ヘ、ヘスティア様ぁーーー!?」

 

「ん?」

 

「どうしたんだい、命君?」

 

「に、に、荷物の中からっ……!! ()()()()()()()()の契約書がぁ──────!?」

 

「ぶふっ!?」

 

『『『はぁぁっ!!?』』』

 

 

 命につけられた高級紙にヘスティアが噴き出し、リリ、ヴェルフ、エレンはそのあまりにも大きすぎ金額に大声を上げ、ベルと大勢の入団希望者は目を点にした。

 

 ヘスティアは命が持っていた借用紙を奪い取ってり、顔から大量の汗を流しながら、『ち、違いぞー!これは悪い借金じゃなくて……』や『これは、その……愛の結晶で……』と必死に言い繕っていたが、二億という莫大な借金が判明したことで集まった入団希望者はあっという間に姿を消してしまった……。

 

 

「命様~。大丈夫ですか~?」

 

「……」

 

「お~い、ヘスティア様~?」

 

「……」

 

「ダメだ。2人とも気絶してる。でも、この二億ヴェリスって一体───ん?」

 

 

 リリは倒れている命とつつき、ヴェルフは固まっているヘスティアの顔の前で手を振るが2人とも完全に気絶してしまっており、完全に沈黙してしまっており、エレンはヘスティアが持っている借用書の目を通すと、神聖文字(ヒエログリフ)で書かれている2柱の女神のサインが書かれていることに気が付いた。

 

 

「ねぇ、ヴェルフ~?この神聖文字(ヒエログリフ)で書かれているサインって、()()()()()()()様の名前かな?」

 

「ん?ちょっと見せてくれ。……あぁ、間違いない。あの方のサインだ。よく分かったな」

 

「最近、神聖文字(ヒエログリフ)の勉強を始めたんだけど、最初に教えられたのが神様達の名前だったからそのお陰かな。でも、この借用書って───本物?」

 

「間違いないと思うぞ。形式も正式なものだし───ほら、『ヘスティア・ナイフの代金として』と書かれているぞ」

 

「『ヘスティア・ナイフ』……ベルがいつも使っているあの黒いナイフのことかぁ。なぁ、ベルは知ってい───ベルッ!? しっかりしろっ!!?」

 

 

 エレンとヴェルフの会話が聞こえていたようで、まさか『ヘスティア・ナイフ』の借用書だとは思わなかったベルは頭の情報量を遥かに超える衝撃によって意識を失い、その場に倒れこんでしまった。

 

 

 

***

 

 

 

「どーいうことですか、ヘスティア様!!」

 

「あ、あははは……」

 

 

 後始末や気絶したベルの介護などですっかりと夕方になってしまっていた。

 

 ホームの中にあるリビングでは呻き声を上げて寝込んでいるベルがいる中、主神(ヘスティア)を囲うように残りの眷属達が取り囲んでいた。

 

 

「じ、実は……ベル君のナイフをヘファイストスに作ってもらった時、色々あって……」

 

 

 そして、ヘスティアが語ったのはベルが使っていた『ヘスティア・ナイフ』に関する話であり、神友であるヘファイストスに無理を言って作ってもらったナイフだったようで、その対価として途方もない借金(ローン)を背負うことになったらしい。

 

 

「やっぱり、二億の武器って凄いものなの……?」

 

「あぁ、性能にもよるが値段だけでいえば第一級相当の値段だ」

 

「……因みに、あのヘスティア・アイギス(大盾)って、どのぐらいの値段になるの……?」

 

「ヘファイストスの話だと、『大盾』と『素材』の持ち込みだったから『神件費』のみで()()()()()()だって」

 

「ぶふぅっ!?」

 

「えぇぇぇっ!? また、別の借金があるんですかっ!?」

 

「エレン君の使っている『大盾』は別件だからその心配はいらないよ、サポーター君」

 

 

 ベルが使っているナイフの値段を聞いたエレンは自分が使っている大盾の値段を恐る恐る尋ねてみると、まさかの1億ヴァリスという驚愕の値段を聞き、思わず吹き出してしまった。

 

 エレンが使っている【炉の女神の大盾(ヘスティア・アイギス)】は、譲り受けた【ゼウス・ファミリア】の遺産【魔除けの大盾(アイギス)】に、『アンタレスの素材』を持ち込みで使ってもらっている分、ベルのナイフよりかは安くなっているが、それでも相当な値段になっていた。

 

 なお、この一億ヴァリス(神件費)はエレンが友神(アルテミス)を救ってくれたお礼ということもあって、免除されているので借金にはなっていない。

 

 

「……先程街に行ってきたのですが、噂が広り……『【ヘスティア・ファミリア】は借金漬けの爆弾【ファミリア】』だと、そう認知されています」

 

「───と、いうことは……」

 

「もう入団希望者は現れないでしょうね」

 

 

 リリが偵察の報告を伝えると、命が何とか絞り出した声で尋ねるが、リリは無慈悲な現実を突きつけることで、部屋の中が一気に冷え込んだかのように寒くなったように感じた。

 

 さらにリリは本拠(ホーム)の改装などで賠償金を使い果たしていること、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の勝利や増員にベルやエレンの昇格(ランクアップ)などで派閥の等級(ランク)が『E』まで上がり、【ギルド】に納める税金が年間で推定百万以上かかることを告げた。

 

 

「だ、大丈夫! これはボクの借金でボクが自分の手で返すものだ! 借金を隠していたのは悪かったけど……約束する、眷属(きみ)達には迷惑をかけない」

 

「……でも。 神様は……僕のために、借金までして、このナイフをくださったんですよね?」

 

「……気に病まないでくれよ、ベル君。これはボクが勝手に……」

 

「───手伝わせて、ください」

 

「……え?」

 

「僕は、2人で一緒にお金を返していきたいです」

 

 

 ベルのまさかの言葉に驚きの表情を見せるヘスティアだったが、ベルの熱意に次第に押されていき───。

 

 

「あははっ。君に手伝ってもらったら、ボクの立つ瀬がないんだけどなぁ……」

 

 

 ベルのまっすぐな意思に負けてしまったヘスティアはふっと笑ったと思うと『借金まみれの主神(かみ)で悪いけど……いいかなぁ?」と笑いヘスティアにベルは『も、勿論です!』と返した。

 

 

「───決まったみたいだね。今後の方針が……」

 

「だなぁ」

 

「そうですね」

 

「今後、こんなことはないようにしてくださいねっ」

 

 

 エレンに続くようにヴェルフ、命、リリがそれぞれ立ち上がり、今後の【ファミリア】の方針についての話し合いをすることなり、テーブルが置かれているところに移動した。

 

 

「今後の方針についてですが、十分な生活費の確保と【ギルド】に納める税に備えた貯蓄を含めた資金集めが必須です」

 

「リリ殿。今の【ヘスティア・ファミリア】の残り残高ってどのぐらいなのですか?」

 

「エレン様が冒険者依頼(クエスト)で稼いできた報酬の600万ヴァリスと賠償金の残りがほんのちょっと残っているぐらいですね」

 

「何だよ、エレン。【フレイヤ・ファミリア】からのクエスト報酬は全部、【ファミリア】に入れたのか?」

 

「まぁね。今回の改修費で()()()()()()()()()()()()だし、その補填の意味もあったりするけど……」

 

「そういえば、エレンさんって何をお願いしたんですか?」

 

 

 【アポロン・ファミリア】からの賠償金は、ベルは『廃教会』の購入、ヴェルフは『工房』、リリは『脱退資金』、命は『檜風呂』と様々な形で使われることになったが、金額でいえばエレンの『注文』が一番高かったのだ。

 

 

「まぁ……見れば分かるかな?」

 

「「「「?」」」」

 

「そうだね。みんな~。ちょっ~とエレン君の部屋に移動するよ!」

 

 

 エレンは『見れば分かるよ』と言い、ヘスティアは全員でエレンの部屋に向かうように号令を出すが、ベル達は互いの顔を見合わせながらエレンとヘスティアの後をついていった。

 

 

「ほいっと、到着」

 

「ヘスティア様の言われたとおりに着いてきましたが、このエレン様の部屋に何かあるんですか? 特には───」

 

 

 エレンが開けた扉を潜ったベル達だったが、エレンの部屋は他の部屋とあまり大差ないように感じると、エレンが部屋の置かれている本棚に向かうと、その中にある1つの本を()()()()()()()

 

 すると、本棚が大きく動き出したと思うと本棚の1つ扉が出現し、ヘスティアの手招きによって隠し扉を潜り、ベル達はとある部屋に入っていった。

 

 

「みんなも知っていると思うけど、エレン君は『神秘』を獲得している。そして、【スキル】の効果で『魔導』のアビリティも発現している」

 

「───まさかっ!!?」

 

「クククッ! 勘の子は嫌いじゃないぜ~、サポーター君。これはエレン君と話し合って決めたことなんだけど……」

 

 

 ヘスティアが隠し部屋中には、机に上に大量に置かれている書類や、中身が真っ白になった2冊の本、製作途中の青い布が垂れ下がっている機織り機を指さしながら自信満々の笑みを浮かべながら力説を開始した。

 

 この隠し部屋は、エレン専用の作業場として使われる予定の物で、ここでやろうとしていることは『神秘』を活用した魔道具(マジックアイテム)の製作や『精霊の護布』。さらには、『魔導書(グリモア)』の作製を試みているというのだ。

 

 

「えぇぇっっ!!? エレンさんは『魔導書(グリモア)』を作れるんですかっ!?」

 

「正確には『作製するための条件が整った』と言った方が正しいかな。『魔導書(グリモア)』にはなるべくランクの高い『神秘』と『魔導』のアビリティが必要みたいだけど……」

 

「今エレン君が装備している『指輪』の効果でエレン君の発展アビリティは二段階上昇させることができる。つまり、『指輪』を装備している状態だと、魔導が『F』。神秘が『G』の状態になっているからね~」

 

「でも、『魔導書(グリモア)』を作製するには『神聖文字(ヒエログリフ)』の読み書きが必須みたいらしいんだけど───めっちゃムズイ」

 

「あ~。だからあの時、ヘファイストス様のサインが読めたのか」

 

 

 現在、エレンは『魔導書(グリモア)』を作製の為に、『神聖文字(ヒエログリフ)』の勉強を始めているのだが、進展はあまり良くなかった。

 

 主神であるヘスティアに教えてもらいながら何とか勉強は進んでいるが、習得にはまだそれなりの時間がかかりそうだったので、エレンは()()()を制作している最中だった。

 

 

「まぁ、今は『精霊の護布』の製作に専念しているから、『魔導書(グリモア)』については当分先かな……」

 

「『精霊の護布』……この青い布のことですか……?」

 

「そう。まだ途中だけど、結構いい物が出来そう感じなんだよね~」

 

「大精霊が作る『精霊の護布』かぁ……。防具を造る鍛冶師(おれ)からしてみれば、なんとも複雑な感じだな」

 

「あははは……」

 

 

 『精霊の護布』は高い魔力耐性を持っている防具だが、エレンは大精霊という事もあって【迷宮都市(オラリオ)】に出回っている『精霊の護布』を遥かに凌駕する物が出来上がるのは明らかだった。

 

 これは、エレンから採取できた『精霊の涙』と呼ばれる特殊な鉱石(そざい)を介することで魔力を糸に変換できるようになり、機織り機を使うことで『精霊の護布』を作ることが可能になった。

 

 

「上手くいけば、この『精霊の護布』を売ってお金にできないかな?」

 

「いけますね! エレン様が作る『精霊の護布』なら既存の『精霊の護布』の性能より高い性能があるはずなのでかなりの値段で売れるはずですぅ!!」

 

「「「おぉ~!!」」」

 

 

 『精霊の護布』は貴重な代物で場合によっては手に入らないことも珍しくない。それを高品質で生産できるというのは、ダンジョン探索を主な収入にしている探索系ファミリアにとってはとても大きな利益になる。

 

 二億ヴァリスという莫大な借金を聞き、少々のこの先に不安を感じていたベル達だったが、エレンの話を聞いたことである程度解消できたようだ。

 

 そして、この日は新しい本拠(ホーム)の改築祝いとして少しばかり豪華な食事を楽しみ、明日の引っ越し作業を終わらせるべく、今日は早く寝ることにした。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

魔導書(グリモア)』には『神聖文字(ヒエログリフ)』が使われている設定はオリジナルです。今のエレンではヘスティアから教えてもらった神様達の名前が何となく読める程度です。

エレンが作っている『精霊の護布』は凄まじい魔法耐性があり、第一級相当並みの性能があります。(そのせいで、将来地獄の労働が待っています)

エレンが一番のお金がかかった理由は、隠し部屋の他にも『魔道具(マジックアイテム)』や『精霊の護布』を造る為の道具を揃えたりするのに結構お金を使っています。


エレン
 『神秘』を発現したことで体質が変化しており、『精霊の涙』や癒しの効果がある『出汁』が出るようになっています。(起きた時には枕元に『精霊の涙』が転がっていたり、エレンが入った後のお風呂が回復効果があったりしています)
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